僕は君を愛してはいけなかった。でも愛してしまった。

誰も幸せにならないとわかっていながら

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ガルパンはいいぞ。以下注意事項

・ガルパン親世代(しほ千代世代)話・なので原作キャラの大半でません・軽いシリアス風味・しほさんも千代さんもでるけど幸せになる図はないかもしれない・『なんでもできる菊代さん』

上記が大丈夫な方はスクロールどうぞ


いつもの日、変わり始めた日

「今日の練習はこれまで」

 黒森峰学園戦車道部ガレージ。多数の生徒がいる前でしほがそう告げると生徒たちから『ありがとうございました!』と返事が返ってくる。

 しほは一回頷くとガレージ内にある隊長室兼作戦会議室に入る。

 扉が閉まった瞬間にガレージでは年頃の女子生徒達の声があがる。それを聞きながらしほは日誌を取り出すと机に座って今日の日誌を書き始めた。

 西住しほ。二年生でありながら戦車道強豪で知られる黒森峰学園戦車道部の隊長を務めていた。

 それというのも、しほは日本戦車道で知らぬ者はいない西住流の後継者であったからだ。だが、ただ西住流の後継者というだけで黒森峰の隊長になったわけではない。

 しほには戦車道の天賦の才があった。指揮能力にカリスマ性、そして作戦立案能力。それら戦車道の隊長に必要な資質をしほは全て兼ね備えていた。同年代でしほと並ぶ才能の持ち主は島田流の後継者である島田千代しかいない。

「隊長、失礼します」

 しほが日誌を書いていると一人の女子生徒が入ってきて、しほの顔をみて驚いたような表情を浮かべる。

 それをみてしほは顔を顰めて口を開く。

「菊代、何かしらその顔は」

 しほの言葉に菊代はころころと笑う。

「あら。隊長はいつもだったらもうあの人のところに行っている時間じゃないですか」

 菊代の言葉にしほが時計をみると、確かにいつもだったらもう隊長室を出ていた時間だった。

 しかし、しほは顔を顰めて菊代に言う。

「別にあの人と約束しているわけではありません」

「でも毎日行っていますよね?」

 菊代の言葉に黙り込んでしまったしほをみて、菊代は楽しそうに笑う。しほにとって菊代は部下であると同時に西住流を共に学ぶ学友であり、幼い頃からの親友でもあった。

 だから戦車道部だけでなく、黒森峰の生徒の大半から敬遠されるしほにも気安く接する。

 にやにやと笑いながら菊代はしほが書いていた日誌を取り上げて中身を確認する。

「うわぁ……厳しい言葉ばっかりですね……」

「必要なことです」

「いえ、お嬢様にはお嬢様と他の生徒の間に立つ私の身にもなって欲しいんですけど」

 菊代の言葉にしほの眉尻が少し下がる。しほに直接文句の言えない生徒達はまず菊代に苦情をつける。その苦情の中から必要な情報を選んで菊代はしほに報告してくるのだ。それが今の黒森峰戦車道部という形であった。

 しほによる半独裁体制。

 これは『彼』が今の黒森峰戦車道部を評した言葉だった。

「……迷惑をかけるわね」

「いつも言葉足らずなお嬢様をフォローしているうちに慣れましたよ」

 菊代の苦笑しながらの言葉にしほは本気で申し訳なくなる。

 だが、しほは今の生き方を変えることができない。

 何せ変え方を知らないから。

 内心で申し訳なく思っているしほを知ってか知らずか菊代は日誌を持って隊長室からでていく。

「ほらほら、はやく行かないとあの人が帰ってしまいますよ」

「菊代!」

 しほの焦ったような言葉に菊代は「きゃーこわ~い」と笑いながら出て行った。

 しほが溜息をついて時計をみると、確かにいつもより少し遅くなっている。

 しかし、しほはすぐには歩きださない。何せここで『彼』のところにいったら菊代の言葉通り、まるでしほが会いたくて『彼』のところにいっているみたいだ。

「……そうです。私は彼にまだ戦車道将棋で勝っていません。だから行くのです」

 菊代が聞いたら渋面で「うわ!お嬢様めんどくさ!」と間違いなく言われるだろうが、この場にいない人物の話をしても仕方ない。

 しほは隊長室からでて、ガレージに残っていた生徒達の挨拶に頷きながら歩き出す。

 向かう場所は黒森峰戦車道部が練習をしている練習場を見渡せる鐘楼。

 階段を昇りながら上を目指すと、ある楽器の音色が聞こえてくる。

 彼が引いているフィンランドの民族楽器である『カンテレ』の音色だ。

 物心ついてから今まで戦車づけだったしほには音楽の良し悪しはわからないが、それでも彼が引くカンテレの音色は好きだった。

 しほは一度立ち止まり、菊代に持たされた手鏡で一度身だしなみを整えると、鐘楼を昇り切る。

 練習場だけでなく、海も見渡せるその場所に彼はいた。

 夕日を背にカンテレをひく姿は絵画のようだ。

「おつかれさま」

 彼はしほをみることもなく、ただ眼をつぶってカンテレをひきなはらそう告げた。しほも慣れているので彼の向かい側に座る。

「勝負です、北条くん」

 単刀直入な物言いのしほに北条と呼ばれた少年は小さく笑った。

 北条氏繁。二年生になってから黒森峰のしほのクラスに転校してきた生徒だ。クラスメイトからも恐れられるしほに対して氏繁は極自然に話しかけ、今は普通に仲良くなっている。

 しほが菊代に氏繁を友人として紹介すると「お嬢様にお友達が……!? まさか地球滅亡の前触れ……!?」と超絶失礼なことを言っていたことをしほは今でも覚えている。

 だが厳格なしほも氏繁といるときは一人の少女としていられた。それは氏繁がしほのことを『西住』としてみていなかったからかもしれない。

 だから本来見学禁止な黒森峰戦車道部の練習をこっそり覗いているのを見逃しているし、練習終わりにこうやって会って戦車道将棋をさしたりしている。

「勝負……それに意味はあるのかな?」

「お得意の話そらしですか? 私には通用しませんよ」

 どこか雲のような雰囲気を持った氏繁は俗世間から超越している雰囲気を感じることがある。その話しぶりとあいまって聞かれたことをけむに巻くことも多い。

 だが、西住流のしほは違う。氏繁の雰囲気で話が代わりそうになっても「うるせぇ、私はこう聞いているんだから答えろ」を地でいってしまう。

 その点、二人は相性が最悪なような感じもするが、意外とうまはあっていた。

 てきぱきと戦車道将棋を準備するしほに、氏繁は一度苦笑しながらカンテレを指で弾いて高い音をだすと、膝の上にカンテレを置く。

 そしてしほと氏繁は戦車道将棋盤を挟んで向き合う。

「先行はどっちにしますか?」

「いまだに僕に勝てたことのないしほさんに譲るよ」

「その減らず口も今日までです」

 そう言ってしほは初手をさす。するとすぐに氏繁もさしてきた。

 それからはしばらく無言でお互いに戦車道将棋をさしていく。

 そしてどんどんしほの表情が険しくなっていった。

 勝負開始から1時間。しほの表情は酷く険しくなっていた。

「…………負けました」

「うん。僕の勝ちだ」

 しほの敗北宣言を聞いたのか聞いていないのか、氏繁は立ち上がって鐘楼の電気をつける。そこでしほは気が付いたが、外がもう暗くなっている。

 一人暮らしの氏繁はまだいいが、しほは寮の門限がある。

 だからしほの言葉は決まっていた。

「もう1勝負です」

「君、門限あるだろう?」

「今更でしょう」

 何せ彼と練習後に会うようになってから菊代がいらん気をきかせてしほ不在でも大丈夫なようにしている。しほがすべきなのは寮監に見つからずに寮に戻ればいいだけだ。

 ちなみにそれも菊代が用意してくれているので実質しほがやることはない。こうやって時間ギリギリまで氏繁と戦車道将棋をさしているだけだ。

 二戦目を始めるとしほは氏繁に尋ねた。

「私の何が問題だと思いますか?」

 何気ない言葉だ。しほも返答を欲していないし、氏繁も普段ならいつもの薄い笑みで終わりだ。

「そうだな。しほさんは一人でやろうとしすぎる」

 ぎょっとした表情でしほが氏繁をみると、氏繁は優しい笑みを浮かべていた。

「戦車道将棋でもそうなんだけど、しほさんはこうまっすぐだ。そして立ち止まることを知らない」

 ジェスチャーをこめながらの言葉にしほは黙って聞いている。

「たまには立ち止まってごらん。そして周囲を見渡しごらん。君は一人じゃない」

「一人じゃ……ない」

 その言葉がしほの心にすとんと落ちる。そして背負っていた重荷が少し軽くなった気がした。

「……感謝します」

「ああ、感謝なんてしなくていいよ。飛車はもらうから」

「あなたと言う人は……!!」

 

 

 

 氏繁は一人で暮らしているアパートに帰る。すると家の留守電に一件要件が入っていた。その内容を確認してから氏繁はある人物に電話をかける。

 するとすぐに相手はでた。

『はい、ダージリンです』

「僕だよ、千代」

『あら、氏繁さん。私のことはダージリンと呼んでちょうだい』

「聖グロリアーナのよくわからない伝統に僕を巻き込まないでくれ」

 氏繁の言葉にダージリンと名乗った、現在は聖グロリアーナ女学院戦車道部の隊長を務める島田千代は笑った。

『ふふふ、氏繁さんも聖グロリアーナに転校してくれたら美味しい紅茶を御馳走しますよ』

「聖グロリアーナは女子高だろう。それに僕が黒森峰にいるのは『島田流』の都合さ」

 氏繁の言葉に千代は押し黙る。

 氏繁が黒森峰にいるのはスパイだからだ。西住流の強い影響力のある黒森峰。島田流が影響力を持つ聖グロリアーナ女学院。何かにつけて対立する両校であったが、西住流後継者であるしほと、島田流後継者であう千代が入学したことによってその対立は激化。今はさしずめお互いの流派の代理戦争の様相を呈していた。

 しほと千代が一年生のときは黒森峰が勝利し、これを不快に思った島田流の幹部達がある手段にでる。

 千代の婚約者であった氏繁をスパイとして黒森峰に送り込んだのだ。

 氏繁の北条家も島田家の分家。その家柄から次期家元最有力候補の千代の婚約者となったが、今度は比較的自由な立場だったことからスパイとして送り込まれることになった。

 そして氏繁はしほに近づき、黒森峰戦車道部の情報を千代を通じて聖グロリアーナ女学院に流していた。

『今日も大丈夫でしたか?』

 千代の心底心配そうな声に氏繁は微笑む。

「大丈夫だよ。”いつものように隠れてみていた”から誰にも会っていないし、バレていない」

『それでも私は心配よ? 黒森峰は敵地みたいなものなのだし、やっていることもスパイ活動なのだもの……本当にあのクソ婆ども……』

「千代」

『あらごめんなさい。聖グロリアーナはいつでも優雅に』

「やっぱり千代は聖グロリアーナ向いてないよ」

 幼い頃から一緒にいる氏繁だからわかる千代の素顔。それは世間一般的に言われるお嬢様像とは半歩ほどずれていた。

 まぁ、それを指摘しても「私もうまくやっていますから」で済まされてしまうので氏繁も深くは突っ込まない。

 そして”今日の情報”を千代に話す。電話口の向こうで千代がメモを書いているのもわかっている。

「今日のところはこんなところかな」

『氏繁さん。今日も有益な情報をありがとうございました。でもご無理はなさらないでくださいね』

「大丈夫だよ、千代。おやすみなさい」

『はい、おやすみなさい。氏繁さん。愛しています』

「ああ、僕も愛しているよ」

 そう言って氏繁は電話を切る。

 千代に言った言葉は嘘じゃない。北条氏繁は確かに島田千代を愛している。それは親愛の情であり、友愛の情でもある。

 だが……。

「千代以上に愛した人ができたらどうすればいいんだ」

 そう呟いた氏繁の頭に浮かんだのはしほの顔であった。




北条氏繁
オリ主。島田千代の許嫁で黒森峰に送り込まれたスパイ。しほさんに惚れてしまった。フィンランドの民族楽器であるカンテレを常に持ち歩いている。

西住しほ
メインヒロイン1。何も知らないしほさん。

島田千代
メインヒロイン2。氏繁ぞっこんLOVEな聖グロリアーナ隊長。余計なことをした島田流のBBA達が嫌い

菊代さん
しほさんの幼馴染兼親友。なんでもやってくれる人



ガルパンはいいぞ(挨拶)

そんな感じでネタ自体はだいぶ前からあったのを、劇場版ガルパンをみてきたことでガルパン熱が上がったので執筆開始。メインヒロインは作者のガルパンでの推しであるしほ千代。BBAって言った奴ガレージ裏な

全部で五話くらいで終わらせる予定です。終わったらいいなぁ……

ちなみに予告しておきますと誰も幸せにならないENDですのでそれを覚悟してお読みいただけると幸いです。

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