吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
原初を刻む初投稿です
「いやぁ、あんたらには本当に助けられてるよ...それにしても、その、背中の...でっけぇの。あれだなぁ。『姫さん』の振り回してる奴みたいだなぁ」
禁足地の調査のための派遣された調査隊。千年前に現文明と分たれてから一切の情報がなかった領域の調査は、困難を極めることが予想されたが、想定よりも調査は順調に進んでいた。
禁足地の住民と大した衝突もなく、友好的な関係を──それも、拠点をおくことを許して貰えるほどの関係を築くことが出来たのは、これも単に鳥の隊のハンターの人徳が成せる技だろうか。
そんなことを考えながら、編纂者である彼女──アルマは、現地人の言葉に耳を傾ける。
何もハンターも四六時中狩りに出ているわけではない。自分の相方が別の作業をしている間は、現地人と交流を深め、今後本格的に参入するであろうギルドが受け入れられやすい土壌を作る役割がある。これも立派な仕事の一つだ。そもそも、文化人類学が専門だった彼女は、その視点から禁足地の文化を理解することもギルドから期待されている。
「『姫さん』、ですか?」
「ああ、あんたらが来る前から、たまに見かけるようになったんだよ。金色の、でっかい蟲さ。外側はグラビモスっぽいゴツゴツした感じなんだけど、中はピカピカの金色で、なんとも綺麗なんだ。
最初に見つけたのは、油氏族の連中だったんだがな──あいつら、試しに持ち物を置いてみたら、そいつがモンスターから守ってくれたって言うんだ。信じられないだろ? でも、実際に俺も助けられたんだよ。だからまあ、世の中には不思議なこともあるもんだなぁって。
ん? どうした、そんな青い顔して。」
ギルドの、ある一定以上の地位にある者。或いは、各分野で一定以上の成果を上げた学者は、皆その特徴に当てはまるモンスターを知っていた。勿論、彼女も例外ではない。
今、最も危険視されているモンスター。もし、想像しているモンスターと同じモノが禁足地に来ているのだとしたら。
「え、助けられた時の話をしてほしいって?特に面白い話でもないんだが──
実際、この話を聞いた後、他の里でも調査を行ったところ、クナファ村でも、モリバーたちの間でも助けられたという話があった。
彼の女王は、社会構造というものを孤立した個体でありながら理解している。禁足地という、モンスターに対する直接的な対抗策を持たない脆弱な社会の中で、彼女は守護者としての地位を確立しようとしていた。
縄張りの頂点という意味ではなく、下に民を敷く貴族としての意味合いを持つ「支配者」になりかけていたといえよう。*1
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吾輩である。アトラル・カである。
「ピギャアアア(我ながら惚れ惚れするフォルムであるな...)」
長い時間をかけて作成した、二門の破龍砲を眺める。全長50m、総重量3.5kt。対古龍兵器の名に恥じない超火力兵器。鈍器としても強い超重量の超兵器。
吾輩じゃなきゃ持ち運べないのであるよ、この重さ。今までのどんな兵器をも凌駕するかもしれない超火力!当たれば古龍もタダでは済まないのである。
この不思議な土地に流れ着いてどれぐらいの時間が経ったのだろうか。天敵のいないゆったりとした日々というのは生活を豊かにしてくれるのである。準備が終わったらそのうち旅立つけど。
これだけの超兵器、作成にはかなりの時間がかかったのである。いつもだったら狩人やら他のモンスターやらに邪魔されて中断されること間違いなしであるが、ここなら安心である。現状、1匹だけ厄介な奴はいるのであるが、それ以外は基本的に大砲撃ってればどこか行くのであるし、1匹に関しては縄張りから出てこない。よほどの事がない限り戦いにはならないのである。
まぁよほどの事があったからこの前戦うことになったのであるが。
破龍砲の隣に並んでいる、超巨大な「竜」の人形を眺める。
これを前にすると、他の人形がおもちゃに見えるのであるよ。というかこれが完成するまで拠点のスペースがありえないほど狭くなって辛かったのである。
寒冷地帯で、異常な寒気を感じ取った時に出会った、金属にも似た超大型モンスター。そいつに踏み潰されかけていた奴が言った言葉を直訳するならば、おそらくその名前は「ジン・ダハド」。全長40mを超える化け物である。
操る冷気も尋常じゃないし、デカいし、妙に素早いし、正直言ってこれで古龍じゃないってマジ?と言いたくなるやつであった。
あれは、吾輩がまだこの土地に来たばっかりの頃の話である。
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その日は、妙に寒かったことを覚えている。
砂漠を超え、熱帯雨林っぽいところをこえ、いきなり寒冷地帯だから感覚がバグったのかな?とか思ったことを覚えている。
「ピギャアアア(浮遊する瓦礫...絶景であるなぁ)」
どうやって浮いてるのだろうか。吾輩の持ってるナルハタタヒメ人形でもここまで永続的に浮かせることはできないのである。吾輩の推理にはなるのであるが...これ自然現象じゃなくて純然たる技術の結晶であるな。欲しいのである。
こういう絶景を眺めるために旅しているところもあるのである。
...もっとも、こういう古代文明の香りがするところギルドが放っておくとも思えないのであるが、ここではその気配がしないのである。実はこの場所って相当な厄ネタ...?
「ピギャアアア(それにしても寒いのである)」
キリン亜種の冷気と比べては屁でもないが、寒いものは寒い。ホットドリンクを貫通する寒さである。もっこもこのセーターを上から着込むか悩むのである。吾輩がセーターを着込んだらすぐズタズタになりそうであるが。一応片方の鎌は残ってるし。
氷霧。いや、ダイヤモンドダストであるか?ともかく、こんなところで生活するのは無理だろう、って感じの気候である。
それにしても寒いのである。流石に毎日この寒さだったら生態系なんて生まれないのであるよ。異常気象。嫌な予感しかしないのである。
そう思いつつ、ひらひら浮かぶモンスターの群れやらを眺めながら、美味しい果物とか生えてないかなぁ、と彷徨ってると妙なところに出てしまった。
なんかやけに広い空間。しかも、そこには奴がいた。
龍なのかい!?そこにいるのかい龍!?
何かでっかくて寒いやつ。明らかにこの極寒の元凶である。
「ピギャアアア(巨大きいのであるなぁ...)」
向こうもこっちには気付いてないようだし、こういうのは関わらないのが1番である。そんなことを思いながら双眼鏡で何かでっかくて寒いやつを眺める。古龍かなぁ。古龍であるよなぁ。でもそんな圧力は感じないのであるよ。アルバトリオンのせいで感覚狂ったのであるかなぁ。
デカいやつは、なぜか苛立たしげに暴れ回っている。縄張り争いであろうか。こんな大型の相手に喧嘩売る奴がいるのであるか。イビルジョーぐらいしか思い当たる相手はいないのである。
いや待て、違う。何やってんだアイツ、何やってんだアイツ!?
おそらく猫*2。この先マタタビが有効だ。じゃねえ何やってるのであるかあのアイルー...アイルー?メラルーでもないし、テトルーでもない...森林で何度か見たやつに似てる。...じゃない!ちょっと待て、何やってるのであるか!?「これが私の運命か──」みたいな顔してるけど最期まで生きるのを諦めるな、救出、救出──!
なんて慌ててたら、今度は吾輩の乗っていた崖が崩れ始める。よくよく考えれば当然のことであった。吾輩の重さは、数十トンは軽く超える。こうなるのは必然であった──
そんな吾輩が太ってるみたいなこと言わないで欲しいのである。度々起こる激戦のせいで肉がえぐれる速度の方が太る速度より速いのである。これが究極のダイエット法。
吾輩が落ちてきたことで、流石に猫(おそらくは)よりは吾輩の方が脅威だと感じたのか、ターゲットが我輩に移ったおかげで、猫は逃げおおせたのである。
ちなみに何かデカくて大きいやつ──ジン・ダハドは強敵であった。硬いし速いしデカいしタフだし必殺技は持ってるし。やっぱこいつ通常生物の中だと大分上位の実力であろうな。
まぁ今までの敵と比べたら、そこまででもないのである。というかあのキリン亜種に勝ってこの程度の相手に負けてたら顔向けできないのであるよ。硬いだけならブラキディオスの拳で殴って突破である。あれ、地味に持ってるどんな素材よりも硬いのである。
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そんなこんなで、戦うことになったジン・ダハド。おかげさまで1ヶ月分の食料が確保できたのである。その上、人形にする上で素材としての適性が高かったのである。
発光した後に放つ大技、膨大な冷気を放出するあの一撃は、間違いなく通常生物が出せていい威力ではなかったのである。層角を起点にして循環する冷気を放出させる機構は、吾輩が持って帰ってきたアルバトリオンの素材と相性が抜群であったのである。
元々固かった外殻を金属で補強し、冷却機構をアルバトリオンの角や他氷属性モンスターの素材を使って強化した、ジン・ダハド人形。明らかに威力がオリジナルより高くなっているのである。その上、その巨体を生かした盾性能、物理攻撃力耐久力ともにトップクラス。シャガルマガラやナルハタタヒメと共に活躍してくれるであろう。いや、使う機会なんてない方がいいのであるが。
とはいえ、激闘になったのはその一件ぐらいであり、しばらくはゆっくりした日々が続いているのである。今後も大した異変もなく、穏やかに暮らせたらいいと思うのであるよ。
いやぁ、いい作品が出来上がった時はテンションが上がるのである。今日はちょっといい素材を使って美味しいご飯を食べようかなぁ。
なんて、思った時から数週間。
我輩は、この世界において「ハンターがいない」ことの恐ろしさを思い知ることになる。
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ある時は森林地帯で。
趣味とは心を豊かにしてくれる。我輩はそう思うのである。
彫刻刀片手に、石をモンスターの形に削り出す。最近、我輩は兵器開発や料理以外にも趣味を探してみようかと色々始めたのである。
今は、外装を作る際の技術を活かしての彫刻活動をしているのである。研磨作業に水が必要だから、今日は森の方まで出張である。
石を削りながら作るのは、今までであってきた様々なモンスターや、前世で戦ってきたモンスター。これが思いの他楽しく、最初はドスランポスに始まり、リオレウス、ブラキディオス、オストガロア、遂には黒龍まで掘ってしまっていた。少し集中し過ぎたのである。それにしても今にも襲いかかってきそうな迫力。どうやら吾輩は芸術の神にも愛されていたようだ。
なんて自画自賛をしていた時のこと。突如として吾輩がいた場所が波に流される。少し気が抜けていたのかもしれない。近くでモンスターたちが縄張り争いをしていたようだ。
「ピギャアアア(まって、吾輩の最高傑作が流され──)」
吾輩の傑作が崖下まで流されて虚空に消える。*3いや、彫刻の行方を気にしている場合じゃない。明らかに巻き込まれたのである。タマミツネ、ラギアクルス、波起こす奴の三つ巴の縄張り争い。タマミツネは明らかに天眼だし、ラギアクルスは希少種レベルの出力を見せてるし、波起こすやつはなんか歴戦の猛者って雰囲気があるのである。
3匹とも、すっごいこっちを見てるのである。そしてその真ん中にいるのは、逃げ惑う、おそらく猫。...またなのか、またなのか!?
えぇい吾輩も巻き込まれた身!乗ってけそこの猫!なんでそんな危ない場所にいるの君!?
ある時は火山地帯で。
その日、我輩は絵を描いていたのである。
──その絵は、あまりにも恐ろしかった。体のバランスや、骨格という要素が全くと言っていいほど考慮されておらず、かといって子供が描くような微笑ましい絵でもない。間違いなくまともな感性を持った人間が見れば、吐き気を催すような絵だった。あまりにも冒涜的な、下手とか上手いとかではなく、「絵を描いてはいけない」、そう思わせるような絵だった──
後に、その絵を見たハンターからそのような感想を抱かれることなど知らずに、蟲の女王はお手製の画材片手に絵を描いていた。いやまぁ手は無いのだが。
その昔、ラピスラズリが絵の具に使われていたように、自然界を探せば色は意外と集まるものなのである。まぁ道具はあっても我輩に絵の才能は無かったようであるが。
今、我輩は火山地帯の風景画に挑戦しているのであるが、これが中々に難しい。今までは問題なかったのであるが、実際蟲の視界ってのは人間と異なるのであるからなぁ、人に見られたらどんな感想を抱かれるのかわかったもんじゃないのである。彫刻は自信あるが、絵は自信ないのである。
例えば今我輩は、視界の端に映る、何かと縄張り争いしている蛸のようなモンスターの絵を...絵を...
襲われているのは人間ではないか!?なんで!?なんで武器も持たずに外に出てるの!?
流石に目の前でその場面見ちゃうと「不幸な事故だったね...」では済ませられないのである!救出!救出──!
適当にグラビモスの人形を操って、モンスターを追いはらう。人間の方は、逃げる時に背負った荷物とか全部落としていったみたいであるが...これは貰っていくのである。多少は痛い目見ないと反省しなさそうだし...持ち物的に、素材採取目的っぽいのであるが、あまりにも軽装すぎるのである。これでよく滅ばないなあの里。
その日は興も削がれたし拠点に帰ったのであるが、似たようなことはその後も何回かあったのである。油を採取してたら、明らかに子供と言える年齢の子が、紫色っぽい口が蚊みたいなモンスターに追いかけられていた場面に出くわすし、爆発する猿に追いかけられている人にも出会った。やはり大自然...過酷である。まぁこれに関しては他の土地でもよく見かけるのであるが。
しかし、この土地の人間は...何故か逃げる時に必ず荷物を全部置いていくのである。思い切りが良すぎるのである。*4もう油を採取する装置がいっぱいだよ。
砂漠地帯でも、無数のワームっぽいモンスターに追いかけられているダチョウっぽい何か──セクレトというらしい──に追いかけられている子を逃したりと、なんか出会う先々で現地の人々と交流せざるを得なくなっている気がするのである。砂漠の人々が置いていくチーズは美味しかった。
閑話休題、そんなこんなである意味では充実した日々を送る我輩ではあったが、その中で妙なモンスターに出会ったのである。
それは、我輩が味噌造りに挑戦していた頃のことである。
その日は、妙に周囲が騒がしかったことを覚えている。
最近のルーティーンに従って、バルファルクの翼を使って森→砂漠と横断する朝のお散歩をしていたら、砂漠で見たことのないモンスターを見かけたのである。
灰色...いや、白色の体毛を持ち、鎖のような器官をもつ竜。
それが、頭がレールガンになっている竜──レ・ダウというらしい──に襲い掛かり、食っていたのだ。明らかに頂点捕食者であったレ・ダウを容易く抑え込む捕食者。
しかも、そいつは十分に離れていたはずの我輩を見つけると、捕食を切り上げて我輩に突撃してきた。迫ってくるなら返り討ちにしてやると反撃したところ、なんと奴は逃げおおせたのである。しかも、一瞬の衝突の瞬間に、迎撃に使った龍結晶やら龍気やらのエネルギーをごっそりと持って行かれた感覚があるのである。
戦って負けるとは思えなかったのであるが...他者のエネルギーを捕食する竜。我輩の知るアイツみたいな存在だったらすごい嫌だし、何より絶対渡しちゃいけないエネルギーを渡した気がするのであるよ。あれ?これ不味いのではないか?
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変励みになっております。
Q.これって不味いのではないか?
A.不味い
出会う敵が殆ど規格外なせいで忘れられがちだがアトラル・カくんちゃんは実はちゃんと強い。
次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)
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掲示板if②
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擬人化if
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vsアルバトリオン