小さな商店街の小さなパン屋さんの看板猫、みどりちゃんのお話。
表紙:表1・4
1頁:中表紙
2・3頁:
そんなに遠くない、昔の話だと思うんです。
大都会の隅っこの小さな商店街に、小さなパン屋さんがありました。
パン屋には○○ベーカリーという名前がありましたが、街の皆は、みどりちゃんのパン屋さん、と呼んでいました。
お店の前に、いつも、みどりちゃんという看板猫がいたからです。
4・5頁:
みどりちゃんはふっくら優しい焼きたての、よもぎパンみたいな猫でした。
6・7頁:
ケーキ屋の女の子は、いつもお父さんとケンカをしていました。
「お父さんの作るダサいケーキなんて時代遅れなのよ」
ケンカをすると女の子はみどりちゃんの所へやって来ます。
「あたし、都会のお洒落なケーキ屋で働いて、カリスマパティシエになって、お父さんを見返してやるんだ」
みどりちゃんは女の子の話を、じっと聞いてくれました。
8・9頁:
本屋のお兄さんは、この街が大嫌いでした。
くすんだ街と埃っぽい店に、自分がどんどん埋もれて行く気がしていました。
「お前がこの街で一番フリーダムだな」
10・11頁:
酒場のお姉さんは、いつも寂しいと思っていました。
知らない国、知らない習慣の人たちが、どうしても怖くて馴染めなかったのです。
みどりちゃんに会う時が、お姉さんの唯一の安らぎでした。
12・13頁:
団子屋の坊やは、この街に来た所でした。
全然喋らない子供だと、団子屋のお婆さんはボヤいていました。
坊やが喋らなくても、みどりちゃんは静かに傍にいてくれました。
14・15頁:
みどりちゃんは誰にだって同じように優しかったです。
ある年の十二月いつもの場所にみどりちゃんの姿が見られなくなりました。
椅子の上にはカゴではなくて、モミの木の鉢植えが置かれていました。
16・17頁:
しばらくするとモミの木にリボンがひとつ結ばれていました。
リボンには子供の字でこう書いてありました。
「みどりちゃん、はやくよくなってね」
それで皆、みどりちゃんが病気なのだと知りました。
誰言うともなしに、通りすがりにリボンを結んで行きました。
モミの木はたちまちリボンでいっぱいになりました。
18・19頁:
街には華やかなクリスマスツリーが溢れていましたが、小さなモミの木はそのどれよりも美しかったと記憶しています。
ケーキ屋の女の子は思いました。
「あたし、この街のヒト達を笑顔にするケーキを作りたい」
その途端、あやふやだった行く道が、はっきり見えた気がしました。
20・21頁:
「本当に嫌いだったのは、不満ばかりで何も分かろうとしない自分自身だったんだ」
どこの国の人も、根っこの所は同じなんだ。
お姉さんはここで生きる勇気が少し湧きました。
22・23頁:
団子屋の坊やは、みどりちゃんみたいになりたいと思いました。
だから、お母さんが帰って来たら、優しくしてあげようと思いました。
ある寒い朝、鉢植えが片付けられて、久しぶりにみどりちゃんのカゴが置かれていました。
中に何かがありました。それは・・
24・25頁:
子猫の頃のみどりちゃんの、セピア色の写真でした。
それでもう皆は、みどりちゃんはここへ帰って来ないのだと悟りました。
26・27頁:
朝、出勤した人が、夕方戻る頃には、写真は色とりどりの花に囲まれていました。
その夜雪が降りました。
28・29頁:
雪は、すべての寂しさも哀しみも、覆い隠してくれます。
みどりちゃんみたいに・・
30・31頁:
大都会の隅っこの、小さな商店街の小さなパン屋さん。
○○ベーカリーという名前がありますが、街の皆は今でも、みどりちゃんのパン屋さん、と呼んでいます。
そんなに遠くない昔の話だと思うんですよ。
お読み頂き、ありがとうございました。
みどりちゃんには二匹のモデルがいます。
舞台の商店街もモデルがあります。
人物は完全にフィクションです。ストーリーもおおむねフィクションですが、
こんな感じの可愛いパン屋さんがあります。
味は抜群なのに見栄えが残念な、老舗のケーキ屋さんもあります。
不況の中、頑張ってくれている個人商店の本屋さんもあります。
絵本は、【文フリ東京37 2023/11/11(土)】で頒布します。