⚠️ネタバレ注意
本編が終わってから1,2ヶ月後ぐらいの世界。
宮崎県の東の海岸にある小さな町。
ある程度栄えた港町で、私が小さな頃から暮らしている街。
そんな思い出の詰まった街に―――
大地震の危機が迫っていた。
1週間休んだせいで追いつくのにも一苦労な高校の授業が終わって放課後。
何だかいやぁ〜な気配がして窓の外を見ると、嫌な予感的中。
赤黒い「ミミズ」が天を目指して這いずっていた。
それを見た私は考えるより先に身体が動いていたみたいで、鞄に荷物を適当に詰め込んで学校を飛び出していた。なにかのプリントが潰れる音が聞こえたし、靴だってかかとを踏んじゃってるがそんなことを気にしている場合ではない。
早く、早く後ろ戸を閉めないと、戸締まりしないと!
走りながら、急いでカバンの中から鍵を探す。
もちろん家の鍵じゃない。
「絶対に無理をしない」という条件で草太さんからなんとか貸してもらった、閉じ師の鍵。
「あった!」
ふふ、私が1人で後ろ戸を締めちゃったって知ったら草太さんどんな反応するかな。
驚くかな?それとも褒めてくれるかな?いや、草太さんのことだから私のこと心配してくれるかも。
自分で口角が上がるのを自覚しながら走る。
ミミズが地面に倒れる前に!早く!
「あそこだ!」
急いで走った甲斐があって、ミミズが天に昇っているうちに後ろ戸が見つかった。
表札から見るに、昔は小学校だったらしい木造の建物。その昇降口からミミズは這って出てきている。
なんだか軽快な音が鳴っている気がするが気に留めず校庭だったものを駆ける。
草太さんから教わった祝詞を走りながら、息継ぎしながら唱える。
そして、
ガチャリ。
『先生さようなら!』『気をつけて帰るのよ〜』
ガチャリ。
『次の授業なんだっけ〜』『国語じゃなかった?』
ガチャリ。
『準備体操するぞ〜、整列!』
ガチャリ。
『おはようございま―――
ヒュッ、と。思わず息を飲んだ。
――人が、いる。
遠くからだとミミズの中にいて分からなかったが、背丈にして大学生ぐらいの男の人。ポケットに手を突っ込んでる。
草太さんかな。と思考が頭の中を過ぎるが、あの人からは特にこっちに来るような連絡は来ていないし、ネックレスを掛けるような趣味じゃないはず。
思いっきり叫ぶ。
「あの!そこの人!危ないのでその扉から離れてくださぁーい!」
その口から紡がれた言葉はあまりにも衝撃だった。
「おや、閉じ師かな。今この辺りにはいないはずなのだが、妙だね」
なんで知ってるの、あなたは誰なの、ミミズが見えるの。
一気に疑問が押し寄せて、どれから言えばいいか分からなくなってしまう。
「あ、あの、えっと…あなたは「ああ、心配しなくてもいい。このミミズは私が呼んだものだ」?!」
その言葉を聞いた瞬間。
教室でもそうしたように、考えるより先に動いていた。
幸い祝詞は半分以上詠み終わっている。
「かしこみ、かしこみ、謹んで!」
「待ちなさい」
その人が行く手を阻む。
「なぜ人の話を聞こうとしないんだい」「だってミミズが、ミミズが倒れちゃう!」
「――別にいいじゃないか」
……は?
今、なんて?
「ミミズが倒れても問題ない、と言ったんだ。この爆風で聞こえなかったかい?」
でも。ミミズは。地震が。沢山の人が。
思考回路が凍りつく。
止めなきゃ。
咄嗟にその人を突き飛ばして前へ進む。後で謝ることにしよう、今はそれどころじゃない。
手首を強く掴まれる。
「離して!行かなきゃ!!」「人の話を聞けよ!!」
「別にこの地に恨みがあって大災害を起こそうとしているとかじゃあないんだ!」
「えっ」
―声が漏れる。
「ようやく落ち着いたか。私は『
ビーッ、ビーッ、ビーッ。
まるで緊急地震速報のようで、少し違う音が鳴り響く。
「あ、まずい…急がなきゃ!」
彼はさっきまでの余裕綽々な表情とは打って変わって焦った表情になる。
そして呆然としている私を置いて
どうにかミミズの風に逆らって彼を追いかけて見てみると、昇降口の奥にある手洗い場。その鏡からミミズは出てきていた。
今までの戸締まりとは全く違う状況に、私の脳が悲鳴を上げる。
さらに混乱することに、彼が詠み始めたのはよく知る祝詞ではなかった。
そう唱えると同時に、彼のネックレスと片側のポケットが光り出す。
ネックレスを手際よく首から外して左手首に巻き付け、光ったポケットから剣の鍔のようなものを取り出す。
ネックレスの光が一際強くなる。
剣の鍔を中空に放ると、そこから淡く光るなにかでできた柄と、両刀直刀の刃が飛び出す。
そうして彼は光る柄を、力強く両手で握り……
―――ミミズを、斬った。
もうなにがなんだか分からない。草太さんからはミミズに攻撃できるなんて教わってないし…
あっ、そうだ雨!こんな室内でミミズが爆ぜたら、飛んでもない水量になるに違いない!でもどうすれ――
「閉じ師の子!そこにいると巻き込まれるぞ、逃げろ!」
手が引かれた。
されるがままに引きずられ、校庭の中ほどまで来た時。
ミミズが倒れて、地震が起きた。
足元が強く揺れ…強……
あれ、そんなに揺れてない。震度4に行かないぐらい?
でも廃校からはガラスが割れる音が聞こえるから、そこそこ大きな地震だったのかな。
スマホが震えた。大方、環さんからの心配のメッセージだろう。
一応見ておくと的中。今日はよく読みが当たる日らしい。
うーん、最近短くなってきたとはいえやっぱり文章長いなぁ〜。
適当に『大丈夫です』って返しとこ。
…スタンプも1つつけちゃえ。
「あ、そうだ。そこのあなた!」
ぴし、と。
あんまり良くないけど彼に指を差し、て……
いない?!どこに消えたの?!
すずめちゃんのキャラ崩壊してたらごめんなさい。
2話目投稿するか迷ってます。好評ならするかも。
2話目以降は…草太さんとの絡みとか羊朗さんとの話し合いとかかな。
下に設定集があります!
【2話目以降を投稿しなかった時用の設定開示】
・そもそも閉じ師のやってることって対症療法なんじゃねぇかな、と思ったのが執筆のきっかけ。呪術廻戦でいう九十九さんみたいなのがいてもおかしくないよねって。
・逃れ師とは。
わざとミミズをちょびっと引っ張り出してきてぶった斬ることでミミズ本体を削ってる。所謂原因療法。
室町時代から戦国時代にかけて衰退してって滅びた。今は彼だけ。応仁の乱とかでバタバタ死んでったのかな。
・彼について。
名前は平戸 誠一。男。東京で一人暮らししてる。大学3年で専攻は古文、苦手科目は英語。実家は京都の二条城近くにある。
・なんで彼は逃れ師について知ってるの?
大学の課題で『巻物1巻読んで解釈添えて意訳しろ』ってのが出て、
そんときに実家の蔵を漁って出てきたのが逃れ師に関する巻物。
他の巻とか焼け跡とかも頑張って読んで祝詞とか鍔とかネックレスとか再発見した。
・逃れ師の祝詞とか剣とか
勘のいい人は祝詞とかで察してると思うけど、天皇継承の儀を再現することで一時的に現人神的なのになり、ミミズに物理干渉できるようになる。負担はデカい。
応仁の乱でバタバタ死んだの、さてはこれを常用してたせいか。
三種の神器は埋めてあって、巻物に埋め場所が書いてあった。
鏡→ミミズの出てきてる鏡。実はミミズを呼ぶには、鏡の後ろについてるあの取っ手をなんでもいいから光を反射するものの表面に触れさせるだけでいい。取っ手は鏡に吸われるけどミミズを斬れば勾玉と剣の元に帰ってくる。
勾玉→手首に巻いたネックレス。
剣→他の条件が揃うと封印が解けて鍔から出てくる。
ちなみに剣だけはマジモン。壇ノ浦の戦いで失くしたのを先祖がちゃっかり回収して鍔に封印した。
他は神器の力の一部を貸し出して貰ってるだけのただの鏡の取っ手と勾玉。勾玉ネックレスは翡翠玉と真珠が半々に勾玉1個で出来てる。
1個しか埋められてなくて、ネックレスとかの常に持ち歩ける形に出来なかったらしい。
普段鍔と鏡の取っ手はスマホに着けてキーホルダー的な感じにしてる。
多分めちゃくちゃ無礼。
祝詞考えるのクソ大変だった。