冒涜戦線 ~冒涜されし神々と人類の最終聖戦~   作:オジロワシ

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第参拾漆話 接敵、飛雷母種!!

 ── 一〇月一四日 一〇時四二分 アラビア海──

 

 コロンボ軍港を出立し、散発的な敵の襲撃を迎撃しつつ進んで早三日。大和率いる艦隊はアラビア海のど真ん中。ソコトラ島まで約一〇〇〇キロの地点まで進出した。

 

 艦隊の行動というのは非常に鈍い。アラビア海は比較的狭いとはいえ、ここまで来るのに三日も掛かっている。

 

 無論、その間暇なほど穏やかな海域でもない。

 

「レーダーに感。艦隊前方、一二時方向。距離七五〇〇〇」

「相変わらずレーダーの映りが悪い......敵部隊の規模はどの程度かね?」

「は、飛雷母種(アーセナルセタス)と思しき反応が五。砲艇種(ディアラパクス)と思しき反応が五〇。また、それとは別に詳細不明の反応が複数」

「詳細不明?」

 

 不穏な情報に、高野大佐は眉を歪める。

 

「はい。二時方向に複数の反応が。艦艇であるように思われますが......レーダーの映りが非常に悪く、安定していません」

「うーむ......ネヴィル君が居るから、故障の線は無い......となると、まさか件の............」

 

 頭を悩ませる高野大佐の下に、新たな情報が舞い込んでくる。

 

「対空レーダーに感!! 敵機、敵の航空部隊です!!」

「なんだと?! どこからだ!!」

「一時方向、距離一〇〇〇〇。高度一二〇〇!! 推定八〇機!!」

「近いっ! 全艦隊近接対空戦闘用意!! 敵航空部隊の襲撃に備えよ!!」

 

 洋上において、航空猟兵種(ヴンダーヴァッフェ)の活動は確認されていない。仮に同種の襲撃だとしても、航空猟兵種(ヴンダーヴァッフェ)の基本編制単位は二〇〇から五〇〇匹であり数が少なすぎる。

 

 ともすれば、何か別の存在。ロシア方面の灯台作戦では、かつての大戦で使用された重戦車群が出てきたと聞いている。

 

 杞憂であれば、いいのだが。

 

「ミサイルを使用しますか?」

「いや、主砲で墜とす。ミサイルは再生成まで時間も掛かる。掃討用に残しておこう」

「了解しました。そのように各艦に伝達します」

 

 警報が轟き、主砲が旋回。全艦の主砲が空を仰ぎ、迫りくる敵機に備えていく。

 

 大和の主砲が旋回しきる前に、高野大佐は艦橋待機のままのルカに声を掛ける。

 

「さて、ルカ軍曹。そろそろ海戦も見飽きてきた頃だろうし、君にも任務を与えよう」

「は、なんなりと!!」

「うむ、いい気概だ。だが、慣れない海上での戦いだ。立てる足場は無く、敵の性質も陸上種とは異なる。過大な戦果は期待しない。やれる範囲でやってくれ」

「そう言ってくれると助かります」

 

 レーダーで敵部隊の位置を再確認し、高野大佐は大和の前方を指し示す。

 

「艦隊前方、一二時方向。距離七五〇〇〇。そこに敵の海洋部隊が展開している。ルカ軍曹。君にはこの海洋部隊を迎撃してもらいたい」

 

 七五〇〇〇、つまるところ七五キロ。一〇〇〇キロ以上のロシア戦線を横断していた身からすれば、至近距離と言えよう。

 

「集団の砲艇種(ディアラパクス)は統制射撃で濃い弾幕を張ってくる。接近する際によく注意してくれ」

 

 それと、と続けて口を開く。

 

「最優先撃破目標は飛雷母種(アーセナルセタス)。巨大な(クジラ)に似た海洋種だ。全長はおおよそ三〇〇~五〇〇メートル。自己誘導飛雷(タルユー)の母船となる種で、射撃開始距離は五〇キロ」

 

 ルカはふと疑問を抱く。

 

「五〇キロ、ですか?」

「そうだが......何か知っているのかい?」

「いえ、ドニエプル大攻勢の直前に黒海より射出されたと推定された自己誘導飛雷(タルユー)は、バクー油田を破壊しています。本来の射程は意外と低いんでしょうか?」

「それは初耳だな......だが安心してくれ。そのような超長距離からのアウトレンジ攻撃は受けていない。無論、ドニエプル大攻勢の前にも後にもだ。恐らく、その個体が特殊だったのだろう」

 

 ともすれば、気になるのは移動速度だ。敵部隊の速度はそのまま迎撃できる時間に直結する。

 

「敵部隊の速度はどの程度か、分かりますか?」

「概ね四〇ノット。飛雷母種(アーセナルセタス)のサイズに比して、機動力は高い。慣れない海洋だ、振り回されないように気を付けてくれ」

「主砲射撃用意よし!! 艦長、いつでも撃てます!!」

「よし、対空射撃!! 諸元はイージス、FCSと連動。自動照準射撃だ......それではルカ軍曹、前方の敵部隊は任せるよ」

 

 ルカは軽く敬礼を送り、艦橋最上部の防空指揮所から甲板へと飛び降りる。

 

 大和の主砲の射撃に巻き込まれてはまず無事では済まない。甲板の装甲を信じ、全力で地面を蹴る。足元で何か拉げた気がしたが、まぁ戦艦だ。大丈夫だろう。

 

 鎖を展開し、空中で起爆させつつ大和より離脱。水面に足を付けないよう気を付けながらルカは一路、敵海洋部隊へと向かった。

 

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「......見えた!! あれが海洋種......」

 

 迎撃できる時間は少ない。ロシアの時と同じ感覚で空を飛んだせいか、ものの数十秒で敵部隊が見えてきた。

 

 青白い表皮を海面に出し、身体中に付いたフジツボのような突起物。

 

 体躯の左右には帯状に眼球が生え揃い、それぞれが独立してあちらこちらにせわしなく目線を向けている。恐らくは件の飛雷母種(アーセナルセタス)

 

 上空から様子見していると、一つの眼光がルカを真っ直ぐ捉えた。

 

「っ?! まず──」

 

 危険を感じて横に飛ぶと同時、無数の水圧砲がまばらに飛んでくる。精度は劣悪。だが、あまりにも酷すぎる精度が故に避けづらい。一発脇腹を掠らせてしまった。

 

「......っっぐ、この!!」

 

 捻じれた傷口から鎖を生やし、砲を生成。すかさず目に入った一匹の砲艇種(ディアラパクス)に撃ち込んでやる。

 

 数秒して弾着。吸い込まれるが如く頭部にクリーンヒット。真っ黒な黒煙を上げて沈んでいく。もう一発隣の個体に撃てば、同じようにクリーンヒットして沈んでいく。

 

 これは面白い。つい口角が上がってしまうほど、よく弾が当たる。

 

「これなら全然......時間も無いし、やってやる!!」

 

 これまで異生物群(グレートワン)との戦闘は辛酸を舐めさせられてばっかりだった。ルカ自身は意識してなくとも、それなりにストレスは溜まる。

 

 この程度、憂さ晴らしには丁度良いだろう。

 

 そうしてルカは警戒もほどほどにして、槍の如き陣容を成す敵海洋部隊の只中へと降下した。

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