冒涜戦線 ~冒涜されし神々と人類の最終聖戦~   作:オジロワシ

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第肆拾壱話 緊急号令! 敵艦隊ヲ殲滅セヨ!!

 第一護衛艦隊の奇襲により、突如として通信が途絶したU-09。これを受け、アラビア海で通商破壊の任を任されていた潜水艦隊は独自の判断で集結。

 

 第一護衛艦隊に対し群狼戦術を展開、包囲し無数の雷撃を浴びせかけていた。

 

 しかし、あくまでも各艦の独断専行。ソコトラ島沖で停泊していた主力艦隊の方針とは相容れぬものであり、この独断専行の報せは彼女らの予定を大きく狂わせることとなった。

 

潜水戦隊(ウルフパック)が独断専行、敵艦隊に攻撃して~、主力艦隊に応援を要請~?」

"......我々としては、仲間をみすみす見殺しにするわけには......"

「あ~分かってるよ~。私もそこまで鬼畜じゃない。いいよ~。予定がめちゃくちゃだけど、助けてあげようか」

"ありがとうございます"

 

 場違いな濃霧の立ち込めるソコトラ島沖で、歪んだ通信波が空をなぞる。

 

"武蔵より第一打撃艦隊全艦に達する。錨を上げよ。我が艦隊は、これより独断専行を行い、敵艦隊を攻撃せしめた潜水戦隊(ウルフパック)の救援に向かう"

 

 武蔵はまるで深呼吸するかの如く、一拍置いて発する。

 

"全艦、我に続け"

 

 号令に従い、停泊中の各艦が我先にと錨を上げ始める。錆びた金属の擦れ合う轟音と、巻き上げられる飛沫の音色が重なり辺りは騒々しさを増していく。

 

"こちら第一打撃艦隊、第一機動艦隊。応答せよ"

"こちら第一機動艦隊。要件は何か"

"潜水戦隊(ウルフパック)が独断により敵艦隊に攻撃を開始した。これにより、我が艦隊は予定を繰り上げて敵艦隊殲滅のため出撃する。貴艦隊は他機動艦隊と協同。我が艦隊の接敵まで潜水戦隊(ウルフパック)の援護を願う"

"了解。これより発艦準備を行う"

 

 武蔵の号令に従い、大和率いる護衛艦隊を葬る為。戦艦を主軸とした打撃艦隊がソコトラ島沖より出撃した。

 

 艦隊陣容は戦艦四、巡洋艦八、駆逐艦一六。別海域で活動している空母機動艦隊は空母四隻からなる大艦隊であり、小国を滅ぼして尚余りある戦力がたった一つの艦隊に差し向けられようとしていた。

 

"こちら第一機動艦隊。これより第一波攻撃隊を発艦させる。第一波攻撃開始は約三〇分後。二波攻撃は第二機動艦隊に引き継ぐ。伴い、第二機動艦隊の指揮権を貴艦に移譲する"

"こちら第一打撃艦隊。了解した。貴艦隊は航空機を収容した後、損耗が激しい場合はソマリア沖で補給を行われたし。補給に際し、第四水雷戦隊を指揮下に置くことを許可する"

"了解"

 

 巨大な鉄塊が水を切り、照り付ける朱い陽光が古びた船体を不気味になぞる。

 

 水を吸った海藻が光を受けて煌めき、その姿は正しく亡霊が如く。

 

「到着までどれくらいかかる?」

"敵艦隊の進路に大きな変化が無ければ、接敵予想は二時間後です"

「結構かかるなぁ~......その間に航空機だけでやれちゃいそうだね」

"それはないでしょう"

「............自信満々に言うじゃん。どうしてそう言い切れるの~?」

"大和が......私の姉が、そう簡単に沈むとは思えませんから"

 

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 ──ソコトラ島沖四〇〇キロ、一〇月一四日 一七時三〇分──

 

 潜水艦との戦闘が開始してから一時間。潜水戦隊(ウルフパック)との戦いは長丁場と化していた。

 

「いったい何隻いるんだ......もう二〇隻は沈めてるぞ?」

「現状、水中爆発が連続しており、ソナーが機能しておらず......潜水艦の総数も、突発音すら聞き取るのに難儀しています」

「......しつこいな」

 

 また魚雷が一本。大和へと迫るも、巨大な船腹に刺さることなく船底の下を抜けていく。

 

「また素通りか、多いな......狙っているわけではないのだろうが」

 

 敵潜水艦の魚雷は潜望鏡での測距も、ロクなトリム調整もしていないのか船底をすり抜けるものがおおい。

 

 だが、それでも船底に近い船腹に命中すれば如何に大和と言えど安くはすまない。回避すべき魚雷と、勝手に素通りしていく魚雷の見極めが難しい。かといって全て回避するというのも無理なものだ。

 

 それだけならまだいい。こっちはこっちで何も出来ずにうずうずしているままのルカ軍曹も宥め無ければいけないのだから、大変である。

 

 やる気のある無能も嫌だが、やる気のある化け物も大概だ。

 

『潜望鏡視認!! 艦隊より一〇時方向、距離一五〇〇!!』

 

 艦橋最上部の防空指揮所から報告が上がる。

 

「ようやく出てきたか。諸元入力、アスロック発──」

「ま、待って!! 僕にやらせてください!!」

 

 案の定、出しゃばってきた。出来ればノーを突き付けたいところだが、この手のものは抑制されると暴走する可能性もある。

 

 ここは一つ、ルカを一人の軍人として信じてみよう。

 

「......モールスは分かるね。潜望鏡を見つけたら、発光信号で位置を伝える。潜望鏡深度の潜水艦だから、大丈夫だとは思うが......油断しないように」

「了解!! ありがとうございます!!」

 

 そうして水を得た魚のように、ルカは艦橋を飛び出ていった。

 

「あれを放っておくのは感心致しませんね。高野大佐」

「ネヴィル君......確かに、ああいう子は一人にしておけば何をしでかすかは分からない。けど、ルカ軍曹は"兵器"としてロシアの戦場で戦い抜いてきた。彼はもうれっきとした軍人だと思わないかい?」

 

 ネヴィルは一つため息を付き、瞳を鋭く光らせる。

 

「ジャガーノートも、ブラフマーも。彼女らも立派な神だと言うのに、好き勝手やったら私に丸投げしてきました。神ですらこれですから、ただの子供を信用しろというのは......」

「......そんなに酷かったのかい??」

「ええまぁ。どっちも好き勝手やってましたね」

「ネヴィル君は確か......秩序と維持の神だったか。確かに、中間管理職は辛いだろうね」

 

 ネヴィルは無言の肯定を示す。

 

「......ですが、あの少年には私も期待しているところがあります。この戦争を終わらせるキーがあるとしたら、それは彼になるのでしょうね」

「キツく当たっていた割には肩を持つのだね」

「事実と感情は別です。彼女らはその住み分けが出来ていない」

 

 そんな会話をしつつ気を紛らわしていると、艦隊の前方で大きな水柱が上がった。先程潜望鏡を視認した位置だ。

 

 双眼鏡でよく確認すると、無数の鉄片が水面に浮いている。どうやら、早速一隻仕留めたようだ。

 

「速いね。流石は灯台守の英雄様だ」

「その二つ名は嫌いです」

 

 相も変わらずなネヴィルに、高野大佐は肩を竦める。

 

『潜望鏡視認! 艦隊より四時方向!!』

「よし、発光信号! 潜望鏡深度の潜水艦はルカ軍曹に一任、我々は深深度の潜水艦を重点的に狙うぞ!!」

 

 大和率いる艦隊は、未だ迫る脅威に気付けていない。

 

 潜水戦隊(ウルフパック)との戦いが長引くに連れて、空には灰色の雲に包まれていく。

 

 広大な海原に光の灯るものは無く、厚い曇天で月光も、レーダーすら次第に遮られ。次第に辺りは深淵が如き暗闇へと飲み込まれていく。

 

 航空隊来襲まで三〇分。

 

 敵艦隊との接敵まで、あと二時間。

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