冒涜戦線 ~冒涜されし神々と人類の最終聖戦~   作:オジロワシ

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第肆拾参話 激突!! ソコトラ島沖海戦!!

 渦潮に呑まれ、動きを半ば封じられた護衛艦隊。されど、銃砲は死んでいない。

 

『アヴェンジャー八、本艦より十時方向!!』

「左舷火力集中!!」

 

 号令と共に、グループで分かれて弾幕を張っていた左舷の対空砲群全てが八機のアヴェンジャーに襲い掛かる。

 

 進行方向を文字通りに埋め尽くす対空弾幕で、八機のアヴェンジャーは直ちに撃墜。数秒も待たずに全滅を遂げる。

 

 だが、辺りの空はどこにでも敵機が存在している。制空権は皆無。レーダーも敵機が雲より高く逃げれば上手く機能しなくなる。

 

 故に、奇襲を許さざる負えないのである。

 

『九九艦爆!! 数一二、本艦直上!!』

「ここは僕が!!」

 

 雷撃機の接近を許さぬため、弾幕を張り続ける対空砲群に代わり、大和の甲板上よりルカが対空射撃を展開。

 

 鎖弾は正確無比に命中。三機撃墜するも、このペースでは間に合わない。ルカは咄嗟に腕から鎖を生やし、横薙ぎに投擲。

 

 解かれた鎖の一つ一つが空へと落ちるように投げ出され起爆。一瞬空を黒い閃光が埋め尽くし、ボロボロとアルミと肉の破片が落ちてくる。

 

「ふぅーっ......流石にそろそろ減ってきた??」

 

 辺りを見渡せば、黒煙を上げている艦は何隻か居るものの、元気に対空射撃を続けている。目立った損害こそないようだが、渦潮は未だ収まらず、身動きは取れない。

 

 そうこうしていると、熾烈に攻撃を続けていた敵機編隊も流石に損害を無視できなくなったのか。雲の中へと遁走を開始した。

 

 ルカは流石に休憩が必要だと艦橋へと飛び戻る。

 

「ルカ軍曹か、丁度良かった。敵機編隊は撤退を開始したから、今はひとまず安心だ。それと、ほら。戦闘糧食だ。何か腹に入れておいた方がいい」

「ありがとうございます」

 

 束の間の休息、ということで。艦内では早速戦闘糧食が配られていた。

 

 肝心な内容はというと、赤飯と牛肉の缶詰。流石は食に拘る国。非常に美味である。

 

 ロシアの工業用潤滑油で炒めたみたいな脂ギットギトの戦闘糧食とは比べ物にならない。

 

「ネヴィル君もご苦労だった」

「いえ、私は居ただけですから」

「そうは言うが、ネヴィル君が居なければこの艦隊は成り立たなかった。戦艦や巡洋艦を造る余力の無い日本に、出撃を要請された時はどうなるかと思ったが......ネヴィル君のおかげでなんとかやっていけてるよ」

 

 ネヴィルは配られている戦闘糧食を受け取らず、ただ一人荒れる海原を眺めている。瞳は厳しく、少し緊張しているようにも見える。

 

「......食べないんですか?」

 

 食べきれず未開封のままの缶詰片手に話しかける。

 

「私は結構です」

「ほんとに?」

「私は食事を必要としないので。それに、海がきな臭くて食欲も湧いてきませんからね」

「きな臭い......この渦潮のことですか?」

「えぇ。この渦潮、どこかで見覚えがあるのです。古い記憶ですので、確証は持てませんが」

 

 艦隊を取り囲む渦潮は段々と落ち着いてきてはいる。だが、未だに身動きが取れず、撤退は物理的に不可能。

 

 次いつ来るともしれぬ第二波攻撃に、艦隊の誰もが不安と緊張感とを拭えないでいた。

 

 そして、皆の不安は不幸にも的中することとなる。

 

「レーダーに感!! 本艦隊より一〇時方向、距離六二〇〇〇!! 敵艦隊です!!」

「遂にお出ましか!! 数は?!」

「推測ですが、戦艦四、巡洋艦八、駆逐艦一六!!」

「クソ、主力艦隊か......渦潮はまだ収まらないのか?」

「ダメです......多少舵は効くようになってきましたが、それでも身動きは取れません」

 

 こうして渦潮から出ようと足掻いている間にも、敵艦隊は距離を詰めてきている。もしこのまま砲撃戦に移行した場合、護衛艦隊は圧倒的な不利を背負うことになる。

 

 その前に攻撃を加えるか、撤退するか。現状を鑑みるに、攻撃を加える他に無いだろう。

 

「VLS発射用意! せめて打撃を加えるぞ!!」

「了解。VLS発射用意、諸元合わせ」

 

 諸元入力が終わると共に、ありったけのVLSが打ち上がる。大和以下、各補助艦艇より放たれた巡航ミサイルは空中で姿勢を調整。一路、レーダーで捕捉されている敵艦隊の座標へと向かう。

 

 だが、敵は海を従えるレヴィアタン率いる亡霊の艦隊。この戦いにおける主導権など、護衛艦隊には存在しえなかった。

 

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「残念、お見通しだよ~」

 

 迫りくるミサイルに対し、レヴィアタンは海水を打ち上げ迎撃。大質量の海水に衝突したミサイルが悉く迎撃され、護衛艦隊の攻撃は失敗に終わっていた。

 

「敵艦隊まであとどれくらい~」

"敵艦隊までは距離六〇〇〇〇、間もなく主砲の射程内に入ります"

「ん~......速力ってこれ以上あがらないの~?」

"これ以上は無理です。足の遅い戦艦も居ますので、それに合わせるとなると......"

「うーん......ま、足止めは出来てるしいっかな~」

 

 そうして何事も起こることは無く、艦隊は更に接近。遂に武蔵の四六サンチ主砲の射程内である四二キロ圏内へと突入した。

 

"武蔵、主砲射程内です。他戦艦はまだ射程外ですが、どういたしますか?"

「いいよ、撃っちゃおうか。目標、敵艦隊。うち~か~た始め~」

"了解。目標、敵艦隊。諸元合わせます"

 

 艦隊先頭を走る武蔵の主砲が旋回。敵艦隊に向かっている都合上、一番主砲と二番主砲のみが発射可能となる。

 

 細かい調整は後にして、諸元に合わせて砲身が微動。固定される。

 

"主砲、交互撃ち方にて射撃します"

 

 暫しの静寂を経て、折れ曲がり裂けた砲身が火を吹き散らす。

 

 電探の搭載されていない武蔵では、この最大射程距離での命中は期待できない。だが、敵艦隊のどこか至近に主砲弾が着弾すればそれはプレッシャーとして機能する。

 

 当たらずとも効果が出るのである。当たればもちろん万々歳。どちらにしても、自由自在に行動可能なこちらの方が有利なことに変わりはない。

 

"続けて第二斉射。射角調整、射撃します"

 

 数十秒待ち、第二斉射。計六つの四六サンチ砲弾が発射された。

 

 続けて第一射の弾着を確認し、諸元を修正。第三斉射と続く。

 

「やっぱり当たんない~?」

"えぇ、もう少し近付かなければ命中は期待できません"

「有効射程は?」

"三五キロです"

「ん~、まだちっと遠いねぇ」

 

 適当な会話で暇を紛らわしていると、風切り音と大和の四六サンチ砲弾が着弾。巨大な水柱を叩き上げる。

 

 弾着点は流石にかなり遠いものの、こちらの測距着頼りの射撃よりかは至近だ。

 

「ふぅ~、近いねぇ。流石は最新技術」

"しかし相手は渦潮に足を取られています。いくら最新技術と言えど、自身の船体が安定していなければ命中は厳しいかと"

「だね~。よし、進路はそのまま~、更に接近しようか」

"了解"

 

 武蔵と大和は互いに射撃を続け、どんどんと距離が詰まっていく。そして三五キロまで迫り、武蔵の主砲弾が挟叉(きょうさ)。大和も武蔵の至近に着弾せしめるも、未だ遠弾。

 

 遂に砲撃の命中率において差が生まれてきたのである。

 

"主砲、挟叉(きょうさ)。そろそろ命中弾が出る頃合いです"

 

 更には武蔵に続き、他の戦艦も射撃を開始。武蔵の諸元を参考にし、早々に大和に対し至近弾を発生させていく。

 

 しかし、大和もただ嬲られるだけではない。武蔵より遅れること二斉射分。遂に大和も武蔵に対し、挟叉(きょうさ)を発生させる。

 

「流石は近代戦艦。あの状況で挟叉(きょうさ)させちゃうか~」

"ですが数ではこちらが有利です"

「そうだね~。でもちょっと、長丁場になりそうかなぁ」

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