転生したら西野武子だったので、原作知識を生かして無双します! 作:たかきょう
今までごく普通の生活をしていた自分がある日、大好きだった小説の世界の登場人物になるなんて誰が予想しただろうか?
この私がこの世界に転生したのは本当に偶然だった。連日に及ぶ仕事に疲れて昼寝でもしようとほんの少しのつもりで意識を手放した結果...気がつくと自分はバスの中にいた。
(えっ?何これ...どうなってるの!?)
私は咄嗟に周囲を見渡した。
私の周りにはたくさんの乗客がいたが、中でも多かったのは私が見慣れている
そう...高度育成高等学校という学校の制服に...
(ちょっと待って!?もしかして...異世界転生ってやつ?しかも大好きだったよう実の世界に!?)
どうやら、この世界は私が大好きだった『ようこそ実力至上主義の教室へ』略してよう実という小説の世界のようだ。
そして、私はよう実に登場するとあるキャラに転生していたのだ。
「なるほど、私は.........になっちゃったのか...」
私が転生したキャラが綾小路清隆、堀北鈴音、一之瀬帆波、櫛田桔梗、龍園翔といった初期からの主要キャラではなかった事に本当に安心していた。
私が転生したキャラは最後に読んだ2年生編10巻時点ではそこまで目立っていない存在...要するにマイナーキャラと言うべきなのだろう。
普通のファンだったら、『どうせなら、綾小路とかに転生して無双したかった~!』などという発想に至っていただろう...だけど、私は違う。
(ちょうど良い...当分は主要キャラと深く絡む機会はなさそうだし、私は影で主要キャラ達の勇姿を見学させてもらおうかな?)
私が最も大切にしたいのは『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界観なのだ。綾小路清隆vs龍園翔のバトルや堀北鈴音の成長、一之瀬帆波の覚醒、山内春樹の退学の瞬間といった原作屈指の名シーンを原作のままでこの目で密かに見てみたいと思っている。なので、私が主要キャラに干渉して物語の内容を変えてしまうのは絶対にあってはならない事だ。
(夢みたいだよ~!私が本当によう実の世界に来れちゃうなんて~!)
私自身は目立つつもりはない。マイナーキャラ...ただの生徒としての学校生活を過ごしつつ、主要キャラ達の勇姿を影で見物するのだと心の中で誓っていた...
・・・・・
高度育成高等学校に入学して私が最初の異変に気づいたのは5月1日の事だった。
(あれっ?クラスポイントがおかしい...Aクラスが少し減ってるし、Cクラスが...えっ?かなり増えているんだけど!?)
AクラスとCクラスのクラスポイントが原作から変動していたのだ。一応、Aクラスに関しては誤差の範囲内といってもいいものなのだが、Cクラスに関しては明らかにおかしい。無人島試験の結果次第ではBクラスへの昇格もあり得るラインなのだ。
気になった私が調査してみたところ、Cクラスでは西野武子という女子が真っ先にSシステムの詳細を見抜いていたらしい。
(ちょっと待って!西野武子って...少なくとも、1年生編の間は影が薄くて目立たない...今の私と似たようなポジションのはずだったよね!?もしかして...)
そこからだろうか?私の中で西野武子に対する疑念が生まれたのは...
そして、原作通りに中間試験が迫っていた事もあって私は独自で過去問を手に入れるべく、上級生と交渉をして無事に手に入れる事ができた。もちろん、クラスメート達に配布しようなどという考えはない。無駄に目立ちたくはないし、どうせ主要キャラがすぐに気づくだろうと判断していたからだ。
そんな中で私は偶然にも目撃してしまった...
例の綾小路清隆vs堀北学のバトルを...だ。
(凄い!小説では分かりにくかったけど実際にはこんな高度な技の応酬だったなんて...綾小路もだけど、堀北学の身体能力も高すぎ!)
小説では書かれていただけのバトルでアニメでは描写が描かれていたとはいえ...やっぱり、画面の向こう側から見るのと自分の目で直接見るのとでは全然違う!
私は感激のあまりにこっそりとその瞬間を携帯で録画していた。盗撮は良くない事だけど悪くは思わないで欲しい...そう思いながら、現場から去りゆく堀北学を最後まで録画しようと彼を尾行していた。
「おい、そこにいるのは誰だ?」
しかし、さすがは歴代最高の生徒会長の堀北学といったところだろうか?彼は私の気配にあっさりと気づかれてしまった。
幸いにも、現場からはもう距離が離れていたので既に綾小路清隆と堀北鈴音の姿はない。よって私は堀北学の前に姿をあらわすと一部始終を全て録画していた事を告げた。
「ふふっ!生徒会長、いいものを見せてもらいましたよ?」
私としては『かっこいい戦いを見せてくれて感謝します!』と伝えたかったのだが堀北学は私に脅されていると勘違いしたらしく、口止め料として300万ポイントを私の携帯に振り込むと言ってきた。
その光景を見た私の中で名案が浮かんだ。
(そうだ!ここで堀北学を上手く利用すれば、私が悪目立ちせずに西野武子について探る事ができるかもしれない...)
そこで私は堀北学に一つの提案をした。それは【口止め料を200万ポイントに減らす代わりに堀北学は一度だけ私の言う事を聞く】というもので堀北学はすんなりと受け入れてくれた。
ちなみにその際に生徒会にも勧誘されたが、目立ちたくなかった私は断っている。同時に私の存在は他人には明かさないようにと堀北学にお願いしておいた。
次の日、私は担任に中間試験の点数を購入する事は可能か聞きにいった。もちろん、万が一にも退学になってしまっては笑えないからである。担任の答えはYESであり、原作通りに1点につき、10万ポイントで売っているらしい。
続いて私が事前に10点を購入するのは可能なのかを聞くと、担任は私にそんなポイントは払えないだろうと私を鼻で笑っていた。しかし、私の携帯に表示されていた所持ポイントの額を見てその表情は一変した。
(何せ、200万ポイントだもんね~!)
結局、事前にポイントを購入するのは諦めたが、帰り際に担任が『これでは1点につき、10万は安すぎるのでは?』と呟いていたのは別の話だ。
その後、中間試験は無事に乗り越えられたのだが、この頃から一部のクラスメート達からの視線を妙に感じるようになった。私は単に中間試験で上位5人に入ったってだけなんだけどな~?
・・・・・
次の異変に気づいたのは7月1日の事だった。
(暴力事件の内容が変わってる?Cクラスが狙うのはDクラスだったはずじゃ...)
暴力事件の加害者がCクラスの石崎大地ら三人から、同じくCクラスの真鍋志保に...暴力事件の被害者がDクラスの須藤健から、Bクラスの白波千尋に変わっていたのだ。
何よりも原作だとCクラスと敵対していたはずのDクラスの生徒達がCクラスに加勢していたのにも驚かされた。須藤健に至ってはCクラス側の目撃者として審議に出席したくらいなのだ。
これ以上、原作を乱されるわけにはいかない...そう判断した私は密かに堀北学を訪ねると前述の【一度だけ私の言う事を聞く】権利を使用して、今回の事件の審議にて絶対に再審議に持ち込むようにお願いしたのだ。
堀北学は【原則中立】の立場を破る事に難色を示していたが、こちらに弱みを握られている以上は断れない。不自然なタイミングではあったが、何とか再審議に持ち込ませる事に成功した。
後は一之瀬帆波が原作通りにCクラスを脅して訴えを取り下げさせる...これで原作通りの流れに戻る。脅す相手が石崎大地達ではなくて真鍋志保なのが不安だが大した問題ではないし、これで完璧だと私は思っていた。
しかし、甘かった...
何と真鍋志保が一之瀬帆波の策を見抜いたらしい...しかも、一之瀬帆波が真鍋志保に訴えを取り下げさせようと脅す場面が校内ネットにて生配信されていたことで彼女の評判はガタ落ちしてしまったのだ。
結果的に白波千尋の件のみならず、一之瀬帆波の行動も悪質として裁かれる事になった。そして、再審議の結果でクラスポイントが移動した事もあってCクラスはBクラスに昇格した。
そんな中で私は考えていた。
(どう考えても真鍋志保が一之瀬帆波の策を自力で見抜けるとは思えない...誰かが...いや、西野武子が入れ知恵したんじゃ...)
思い返してみれば西野武子は審議にも出ていたそうではないか...十分にあり得る話だったのだ。
極めつけは無人島試験の結果だった。
高円寺六助がリタイアしなかったり、戸塚弥彦がリーダーではなくなっていたりと序盤から原作を大きく外れていった挙げ句、Aクラスが最下位、C(元B)クラスが3位、B(元C)クラスが2位と1位のDクラス以外の順位がバラバラ...獲得ポイントに至っては全てが異なっていたのだ。
そして、2位に輝いたBクラスの生徒達の視線を集めていたのが西野武子だった。ここまでくれば、もう西野武子が私と同じ転生者であるのは確定だろう。
(ねぇ?西野武子...あなたは私と同じ転生者だというのに!どうしてよう実の世界観をぶち壊しちゃうの!?よう実に思い入れとかないわけ!?)
とにかく、このままではよう実の世界観がどんどんぶち壊されてしまう。これ以上、西野武子を放置しておくのはまずい...
(決めた!西野武子を退学に追い込む...そうすれば全てが元通りになるはず!でも、そのためには協力者が必要になるね...最悪の場合、綾小路に協力してもらう事も考えないと!)
この日、私は西野武子を退学に追い込む決意をしたのだった...
もう一人の転生者について
・・・西野とは違ってよう実の世界観を守る事を重視している。しかし、自身の行動もまた原作改変に繋がっている事に気づいていないタチの悪い人物。
改めまして、次回こそは船上試験&夏休み編です!