にわかで原作と違う点あるかもですけど許して……。
主はレオニとワンダショが好きです。
少女は両親が好きだった。
両親は劇団で様々な役をこなす劇団員で多くの人に笑顔を届けていた。名の売れている劇団ではなく、構成員も少人数でよくこんな人数で回せるものだといわれるくらいの規模だが、劇団の演劇はそこにいる人すべてを笑顔にしていた。演劇を見る観客も、裏方で支える人たちも、壇上で役を演じる団員たちでさえもすべてが楽しそうに笑っている。
そんな光景が少女はとてつもなく好きだった。
物心ついたときには自分もあんな風に、両親のように誰かを笑わせたいと思うようになっていた。
拙く、ぎこちなさが残るがそれでも幼いながらに楽しく演じ、周囲に笑顔をばらまいていく。周囲もその姿につられて笑みを浮かべていく。
夢のような時間だった。
これからはそんな日々が続き、これからは両親の背中を追い、劇団員としてやっていけるように練習や勉強に励むんだろうと思っていた。
そう信じて疑わなかった。
「……最悪」
眠気でしょぼつく眼をこすり、先ほどまで浮かんでいた光景を頭を振って振り払う。昔のことを考えないようにして最近ではめっきり見なくなっていた光景が夢となって襲い来る。
なぜ今になって……と
そんなことを考えながら二度寝をかまそうとして思いとどまる。こうして嫌なものを見て気分の上がらない朝は一刻でも早く忘れ去るために再度惰眠をむさぼるに限るのだが、本日は月曜日であり当然学生の詩折は学校での勉学に励むという果たすべき義務がある。
もう一度ため息をつき、重い足取りで洗面台へと向かう。洗面台の鏡に映る表情は最悪そのもので、薄く開いた眼は目つきが悪くなり睨んでいるようにも見え、寝不足なんじゃないかと指摘されてもおかしくはない隈が人相をより悪くしている。月曜日の朝から見るようなものではないなと詩折は鏡から目を移す。
朝の支度を着々と進め、朝食を摂ろうと思ったが食欲がわかずとらなくてもいいやとスルーする。
世間一般の高校生は実家から高校に通うことが多いとは思うが詩折は違い、両親とは離れて一人暮らしをしている。今通っている高校は実家からでも通えなくはなかったのだが、事情があって両親とは離れて暮らすことにしている。
そのため家事は自分で行わなければならない。気分が乗らない時や体調が悪い時はやはりさぼりがちになってしまう。
だからといって汚部屋になっていたりさぼりすぎて何日も怠惰な生活を送っているというわけではないが。
朝の準備を終わらせて玄関に立つ。
「いってきます」
誰に向けて言うでもなく、習慣になってしまっている言葉を呟く。誰もいない空間に響くだけでそれに対する返答は聞こえてこない。
そんな誰もいない部屋を背に詩折は家を後にする。
扉を開けた先はすがすがしいほどの晴天で春の日差しが心地よい。これで寝ざめもよければなとため息がこぼれるが思ってもどうしようもないことだと吐き捨て、心地よい光を放つ太陽を背に学校へと歩みを進めるのだった。
詩折が通うのは神山高校という共学の高校で、全日制に加え夜間定時制という制度も存在する新設の学校である。神山高校に近い位置にあるお嬢様学校とは違い自由度は比較的に高い学校であるため様々な人間が在籍している。校則というものがあるのかと疑問に思う時がたまにあるが、縛るところは縛っているのでちゃんとしてはいるのだろう。
たまに爆発音だったり学校で聞く機会がないようなすさまじい機械音が響いたりと騒ぎが起きることがあるが、神山高校にとってはある意味日常風景だ。日常にしてはならない気もするけど。
今日はそんな珍事が起こるのだろうかと思案していると件の神山高校へと到着する。
詩折の所属しているのは1-B。比較的静かなクラスで問題行動を起こす生徒も少なく、詩折自身も平穏に過ごせている。そのため学校でいれば勉学という考えるべきことが発生するので他の嫌なことを考えることなく平穏に過ごすことができる。
そういう点でいうと、詩折にとっては学校というのは自宅以外の心が落ち着く場所であった。
現在時刻にはまだ余裕があるため、紙業まで同時間をつぶそうかと歩きながら思案する。
(一旦教室に行こうかな……。幸いまだ余裕はあるし、どこかに行くとしても荷物が邪魔だし)
背負っているかばんをまずは置いて来ようと詩折は自分の教室に向かう。その時だった。
「おーい、そこの君!」
大きく快活な声が周囲に響く。こんな朝から響くほどの声が出せるのはよほど朝に強い人じゃないと無理だろうなと心の中で思う。
他の誰かが呼ばれているだろうから自分には関係ないだろう、そう思う詩折だったが。
「む、聞こえていないのか?おーい!」
誰かを呼ぶ声がボリュームを増して響き渡る。そこまで大きな声なのに聞こえないというのもおかしな話だが、それにしても無視し続けるのはよくない。
「君だ君!聞こえていないのか…?」
教室へと向かっていた詩折の目の前に人影が現れる。詩折よりも大きく、突然のこともあり詩折は足を止めて見上げる。
そこにいたのはおそらく先ほどから大声を上げていた声の主だろう。毛先にかけて橙色のグラデーションのかかった金髪は日の光に照らされキラキラと輝いているようにも見え、こちらを見る表情は困ったような心配しているような表情でこちらの様子をうかがっている。
神山高校の二年生で名の知れた有名人、というよりも名の知れた変人の天馬司がそこにはいた。
「……?何か用ですか?」
「何食わぬ顔で…いやまあいい。これを落としていたぞ」
「それは…」
司が差し出してきたのは歪な紺色の花が刺繍された薄緑色のハンカチ。それは小さいころから使っていたもので、刺繍は母親が下手ながらもつけてくれたものだ。
ポケットに入れていたはずなのになぜと思い、ポケットに手を突っ込むとそこの半分くらいが縫い合わされた糸がほどけて穴が開いたようになっている。
なるほど、ここから落ちたのかと納得はするがこんなことあるかとため息をつきたくなる。
「あの、ありがとうございます」
「ふっ、スターを目指す俺にはこのくらいのこと当然のことだ!」
「すたー…?」
「いや、すまんこちらの話だ。だが、それほど大事にしているのであれば次からは落とさぬように気を付けるんだぞ!」
「なぜ大事にしていると?」
「…?そんなもの見ればわかるだろう」
何を当然のことを聞くんだとでも言いたげな司の視線に詩折は目を背ける。大事にしていないわけではない。だが特別大事なものだと認識したこともないのだが、ここでそう反論しても意味はないし朝から面倒な問答をしたくもないので言おうとした言葉を飲み込む。
「とにかくありがとうございました。それでは私はこれで」
「ああ!もう落とすんじゃないぞ!」
二回も同じこと言わなくてもいいのにと思いつつ、穴の開いていないポケットにハンカチをしまい司に背を向けてその場を去った。
詩折が去った後、司はその場で立ち止まって唸っていた。
「なんなのだろうな、この感じは」
詩折とは普通のやり取りしかしていない。短い時間ではあったが彼がいつも一緒にいる友人達と話しているような感じで話していたはずだ。だが話しているとき、彼女の視線は自分に向いていたはずなのになぜかその瞳には自分が映っていないように感じた。直感だが、こちらを見ているのに目が合っていないそんな違和感を感じたのだ。
まるで誰も見ないようにしているかのような。
「こんなところで珍しいね、司君。考え事かい?」
優しくやわらかな声が背後から聞こえてくる。振り返るとそこには司と同じく神山高校の二年生で有名人、校内で知らない人はいないレベルの変人の神代類がにこにこと笑いながら手を振っていた。
「おお、類か!まあそうだな。少し考え事をな」
「ふぅん。朝から考え事とは…いったいどんな悪だくみをしているんだい?」
「悪だくみなどではない。それよりもだ、いつもより早くないか?」
「そういう気分だったというのと試したいことと相談したいことがあってね。もちろん司君に」
心底愉快そうな笑みを浮かべる類を目の前にして嫌な予感が脳裏に走る。こういう時は碌なことが起きないし確実に自分が割を食う結果になることが多い。
ふふふと怪しげに笑う類に気圧され後ずさりし、今なら間に合う、今から逃げさえすれば始業まで巻き込まれずに済むだろうと考え事に回していた脳のリソースを逃げることだけに回す。
「そ、そうか。しかし残念ながら俺はこれから用事があるのでな!それじゃあな!」
「おっとその手には乗らないよ。まだ時間はあるんだ、付き合ってもらおうか!」
脱兎のごとく逃げ出した司を微笑みながら追いかける類。変人たちによる追いかけっこの結果はその後に学校校内に響き渡った爆発音が物語っていた。
「それで今朝は何を考えていたんだい?」
放課後、授業が終わった後に今朝の爆発の件で呼び出しを食らっていた類は同じく呼び出されていた司に尋ねる。
教室などの物思いに耽っていてもおかしくない場所であれば類もここまで聞くことはなかったのだが、止まるはずがない校門を過ぎたあたりで立ち止まっていたため何かあったのではないかと気になっているのだ。
「うむ、少しな。類、相手の目を見て話す場合、少なくとも話し相手とは目が合うはずだよな?」
「そうだね。当たり前のことだとは思うけど、それがどうかしたのかい?」
「そうだよな…そうなんだよな」
至極まっとうな返答が返ってくるのは当たり前だ。しかし反ってそれが司の頭を悩ませる。
あの感覚はおそらく間違いではない。こちらは目を合わせているのに彼女の目は何か別のものを映していて全く目が合っていないような奇妙な感覚。それにハンカチを手渡す際に何かを言おうとしていた気もする。
いくら考えてもなぜ、どうしてと疑問しかわいてこない。そもそも答えに繋がるようなものなど何一つないので結論なんて出るわけがなかった。
「司君?」
「いや、なんでもない。朝の考え事は別にそこまで重要なことではないから気にするな」
「そうかい?まぁ気が向いたら話しておくれよ」
「気が向いたらな」
こういう時、類はすんなりと引き下がる。考え事の内容が何であるかは知らないだろうが伝えるべき相談すべきことであれば自分から話すだろうと司を信じていることからくる行動だろう。
察しがいいなと思いつつもこのことについては今後話す機会はないだろうなと先ほどまで頭の中にあった考え事を隅に追いやる。
「そういえば朝に相談したいこととはなんだ?結局あの騒ぎで聞くことができなかったが」
「おっとそうだった。次行うショーのことについて少しね」
「おお、次か!相談事というのは演出のことか?」
「それもある。あるんだが今回は別のことでね。」
「別のことだと?いったい何が」
「人が足りない。正確に言えばキャストが足りない」
「なんだと!?」
司の所属する劇団は四人で構成されている。確かに少ないがどんな役でもどんなショーであろうと演じられると確信があった。
にもかかわらず足りないと断言されるとは思っていなかったため、司にとっては衝撃的だった。
「足りないといっても一人でなおかつできれば程度なんだけどね」
「一人でかつできれば…?」
「そう。いなかったとしても僕達なら最高のショーを演じきれるとは思う。けど、完成度を求めるのならもう一人いた方がもっと良くなるっていうだけなんだけどね」
「なるほど…」
「誰か心当たりとかないかい?」
「ふむ、心当たりか…」
正直心当たりがないわけではないのだが、自分の求めるショーに参加して演じてもらえるような光景が想像できない。
類の言葉では現状の四人でも最高のショーはできるというらしい。だが可能であるならばより良いものを届けたい。
だが、他に心当たりなんて今の司には―――
「…………あ」
いた。スターを志す司自身でさえ不思議な感覚に陥るような存在感を持った少女が。
彼女であればより良いものが届けられるのではないかと。確証はないが、謎の確信がどこからともなく湧いてくる。
司はふっと笑みを浮かべてから類に向き直る。
「いたぞ。とびきりの奴がな!」
キャラ崩壊してそうだし文章おかしくなってそうで……っていう不安が……。
次回早めに投稿できるように頑張ります。
依井さんの簡易的なプロフィールこの後に記載しておきますね。
・依亥詩折
淡い紺色の髪を型あたりで揃えハーフアップでまとめている。前髪には白の髪留めを×にして留めてある。ハーフアップにまとめる際のゴムや髪留めは気分によってものを変えている。
誕生日:4月14日
身長:161㎝
学校:神山高校
学年:1-B
委員会:緑化委員
バイト:本屋
趣味:散歩、一人用のRPGゲーム
特技:お菓子作り
好きな食べ物:ジャンクフード
嫌いな食べ物:酸っぱいもの
一人称:私