暗殺教室×呪術廻戦   作:ストレスマッハ

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3章 5月編
16話 飛んで火に入るなんとやら


 

 

 人は見るからに毒を持つ見た目をした生物を目の当たりにすると、普通は嫌悪感を抱く。

 だから目の前のアレに顔を顰めてしまっても、決して悪くない筈だ。

 

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」

 

(うっさんくさぁ……)

 

 そこには殺せんせーの右腕にしがみ付いて、

 大好きっ! 感を出してる新しい臨時講師の女がいた。

 豊満なボディ。手入れの行き届いた長い髪。スラブ系の美麗な顔。完璧な外面だ。……人当たりの良い、貼り付けたような表情さえ無ければ。あそこまでいくと完璧過ぎてキショい。

 

「本格的な外国語に触れさせたいという()()の意向だ。英語の半分は、彼女の受け持ちで文句は無いな?」

 

「……仕方ありませんねぇ」

 

 烏間先生と奴の会話には、言葉にされていない部分がある。それは“イリーナが殺し屋である”という事。今の反応からして、殺せんせーも気付いているな。

 

(確か、奴は元人間の殺し屋だったはず。ならハニトラなんぞに引っ掛かる訳が……)

 

 そう思って奴の反応を伺っていると……それはもう幸せそうに満面の笑みを浮かべていた。

 

(あ、あれは……流石に擬態だよな? そうだと言ってくれよ……)

 

 そう願ってじっくり見るも、デレッデレに緩んだツラしか映らない。

 コレを殺そうとしているこっちが悲しくなってきた。

 

「その正露丸みたいなつぶらな瞳……曖昧な関節……私、虜になってしまいそう……!」

 

「いやぁ、お恥ずかしい」

 

(駄目だ頭痛がしてきた)

 

 目の前で繰り広げられる茶番に、朝っぱらから不調を感じる徹だった。

 

 

 ……

 

 

 朝の一幕からしばらく後の休み時間。

 リフレッシュも兼ねて、グラウンドで先生に暗殺を仕掛けるクラス。サッカーボールが飛び交う中、ナイフと銃弾がセットで付いて来る。

 

「殺せんせー!」

 

 そこに、甘ったるい猫撫で声が聞こえてくる。

 あの女狐だ。

 

「烏間先生からお聞きしました! すっごく足が速いんですって?」

「いやぁそれ程でも」

 

 また始まった。

 

「お願いがあるの。一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて……私が英語を教えている間に、買って来て下さらない?」

 

「お安いご用です!」

 

 その声が聞こえたと思ったら、文字通りマッハで飛んでった。そこまでやるか……

 

 で、グラウンドには俺たちとあの女が残った訳だが……

 

「……えーと、イリーナ先生? 教室戻ります?」

 

 磯貝が行った! やっぱりこいつはイケメンだ……! 

 

 しかし、返答は皆の想像とは異なった。

 

「授業? ……あぁ、適当に自習でもしてなさい」

 

 タバコに火を付け、印象を180度ガラッと変えながら、適当に返事をするイリーナ。もうクサい芝居はお終いらしい。

 

「それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる? あのタコの前以外では先生を演じるつもりは無いし……イェラビッチお姉様と呼びなさい」

 

 皆がその豹変ぶりに困惑している中、カルマが知ったこっちゃないとばかりにぶっ込む。

 

「……で? どーすんの? ビッチねぇさん」

「略すな!」

 

(ツッコミ鋭いな……さてはアイツ、素は結構歌姫先輩寄りか)

 イジられる時の反応を見て、内心ここにはいない誰かと重ねる。ああいうタイプ、イジる側からすると何回噛んでも味がするガムみたいで楽しいんだよね! ──by五条悟。

 

「あんた殺し屋なんでしょ? クラス総がかりで殺れないモンスターを、ビッチねぇさん一人で殺れんの?」

 

 カルマの問いを鼻で笑うビッチ。

 

「……ガキが。大人にはね、大人のやり方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」

 

 そう言って渚の方に近づき ──自身の舌を口の中に捩じ込んだ。唐突の衝撃に硬直した渚は、息つく間もなく口内を蹂躙される。ほんの数秒後には舌技だけで気絶しかけた憐れな犠牲者の姿があった。

 

「後で教員室にいらっしゃい。あんたが調べた奴の情報、聞いてみたいわ」

 

 名前の通りのビッチぶりで、腰砕けにした渚に情報提供を促す。しかも、さりげなく渚の頭をご自慢の胸に押し付けている。流石プロ、徹底しているな。

 

「有力な情報持ってる子は話しに来なさい! ……良い事してあげるわよ?」

 

 すると向こうの方から、見慣れない男達3人がやって来た。大方、イリーナの手駒だろう。……それにしても……

 

「技術も人脈も全て有るのがプロの仕事よ。ガキは外野で大人しく拝んでなさい。あと、少しでも私の邪魔をしたら……」

 

 “本物の銃”を男から受け取り、言い放った。

 

「殺すわよ」

 

 確かな殺意が乗った言葉。

 皆が本物の殺し屋を目の前に、畏怖と嫌悪を感じる中、徹は……

 

(何であのおっさん、あんなに鼻曲がってるんだろう……)

 

 イリーナの後ろに控える男を見て、とてつもなくどうでもいい事を考えていた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 それからはもう、ビッチは好き勝手にしまくった。殺せんせーをパシリにしまくり、その時間を暗殺の下準備に当てる。4時間目には、授業放棄して一人クスクスと笑っていたので、今のところ上手くいっているのだろう。

 その際もご丁寧に生徒を煽っており、クラスの不満が爆発するのとどちらが早いか気になるところだ。

 

 

 そして迎えた5時間目の体育。

 これから行うのはハンドガンタイプの銃での射撃訓練だ。殺せんせーの等身を模したターゲットに、円形の的を取り付けたものを狙う。

 決められた距離から、静止状態で如何に的の中心を狙って当てられるかの精度を求められる。

 

 銃本体はエアガンだが、それでも触った経験のある者自体ほとんどいない。中々狙った通りに弾が飛ばず、苦戦する生徒が多い。

 

 交代交代に撃つ中、待ち時間の生徒はそれぞれ会話を弾ませる。

 

「あー、どうも投げるのと違って銃で撃つのはしっくりこないんだよなぁ……」

「はは……確かに慣れない感じがするよね」

 

 杉野と渚も、お互いの手応えを話し合っていた。

 

「そんな事言ってるけど、渚は割と当たってるじゃんか……コツとかなんか無いのかよ?」

「うーん……上手く言葉に出来ないけど……よく狙って撃つこと?」

「俺だってちゃんと狙ってるんだよなぁ」

 

 が、あまり芳しく無いようだ。

 そんな折、杉野がちょうど視界に入った女生徒に話し掛ける。

 

「あ、神崎さんも結構上手いよね! 何か意識してる事とかあるの?」

 

「私? そうだね……」

 

 そう言って考えてくれるのは、クラスのマドンナと評される神崎有希子。彼女はその容姿だけでなく、言動や佇まい、動作の所作に至るまで美麗であり、正に大和撫子そのものであると言える。クラスの男子に気になる女子を聞いたなら、1位間違いなしと噂される程だ。

 

「あくまで私の感覚だけど、例えば……さっき渚君が言ってた『よく狙う』にしても、ただ中心を狙うだけじゃないと思う。当たるまでの過程も重要なんじゃないかな? 杉野君もボールを投げる時、どういう軌道になるか、どういう変化をするか、そこを考えて投げない?」

 

「成程……! つまり、射撃も野球と同じで、撃つ時の握りやフォームなんかも重要になってくるって事か……ありがとう神崎さん! すっごいイメージしやすいよ!」

 

「ふふ、力になれたなら良かった」

 

 的確な表現で2人を感心させる神崎。

 

「それにしても意外だなぁ……神崎さんがこういうの得意って思いもしなかったもん」

 

「確かにそうだよな! いつものお淑やかってイメージとは打って変わって、構えてる時の顔付きも滅茶苦茶カッコ良かった……!」

 

「あはは……ありがとう?」

 

 杉野の熱い褒め言葉(?)に、少し困惑気味に礼を言う神崎。

 

「でも私はそんなに大したものじゃないよ? あの3人と比べたら……」

 

「あー……あれか。あれはなぁ……」

 

 彼等の視線は今まさに撃っている人物達の方へ向いた。

 

 千葉龍之介。静止状態での射撃を得意としており、特に長距離の射撃へは才を感じさせる。実際にピストルの有効射程範囲から大きく離れた場所から見事命中させた。

 速水凜香。動体視力と手先の器用さを生かした、動く対象への射撃はこの教室の中で群を抜いている。クレー射撃さながらの芸当も可能だ。

 若木薫。先の2人より得意な距離は狭いが、その中での当て感は先の2人を凌ぐ勢いだ。極め付けは、得意な距離内での空間認識能力の高さ。一度対象との距離を把握すれば、目を瞑っても当てている。実演して見た際には、教師の烏間さえも若干引いていた。

 

 この3人が射撃において頭角を表している。

 今行っている基礎射撃においても、その実力は変わらない。

 

「ほんとお前ら3人やっばいな……! 何であんな外さんの?」

 

 ほぼ的から外す事なく撃ち終わった者達が交代し、待機の列に戻って来たと同時に杉野が声を投げかける。

 その問いに3人は顔を見合わせ、

 

「「「……何となく?」」」

 

 などと抜かした。

「真面目に答えろよー!」と言う抗議が上がるも、千葉は自信なさげに答える。

 

「と言ってもな……。教えたいのは山々なんだが、俺自身感覚に頼っている所が大きくてな。言語化するのが難しいんだ」

 

 その言葉にうんうん頷く速水。

 納得のいっていなさそうな反応を見て取った薫は続けて補足する。

 

「俺は何も特別な事をやってた訳じゃない。基礎の反復だ。それで、たまたま自分に合った撃ち方をみんなより早く見つけられたんだよ。だけど、その感覚がみんなに合っているかは別だろ? 下手に変なクセつけてみろ、烏間先生に叱られるぞ?」

 

 いつの間にか周りが耳を傾ける中、うげ……と渋い顔をする者多数、えっ! と少し喜色を浮かばせる者1名。

 そこ! ちょっと良いかもって思うんじゃない、というツッコミを入れつつ、薫は雰囲気をリセットする。

 

「もちろん真似するのが全部無駄って訳じゃない。ただ、それをするよりも基礎を固める方が、自分に合った撃ち方を見つける近道って話だ。……こんな感じでいいですか、烏間先生」

 

 その言葉と共に振り返り、烏間に確認する。

 

「ああ、ありがとう若木君。やはり君をサポートにしたのは正解だったな」

「俺の意思はガン無視でしたけどね……!」

「遊ばせておくのは勿体ないからな。使えるものは使う主義なんだ」

 

 恨めしげな生徒の視線をどこ吹く風と言わんばかりにスルーしつつ、どこか得意げな鬼教官。

 

 そんなやり取りをしていると、

「おいおいマジか……2人で倉庫にしけ込んでくぞ……!」

 

 三村航輝の声に、全員がそちらを見る。

 

「なーんかガッカリだな殺せんせー。あんな見え見えの女に引っ掛かって」

 

「……烏間先生。私達……あの人のこと好きになれません」

 

 その様子を目の当たりにして、クラスから不満が漏れる。

 返ってきた答えは、力になれないというものだった。

 

「……すまない。プロの彼女に一任しろとの上の指示でな。だが、わずか1日で全ての準備を整える手際……殺し屋として一流なのは確かだ。俺が動けるようになるのは、彼女の暗殺の結果次第だろう」

 

 皆が不服そうな表情を浮かべる中、

 

「え? もしかして、本気で成功すると思ってる?」

 

 薫が周りの反応を見て言った。

 彼の言葉に、千葉が疑問を返す。

 

「そういう訳じゃないが……若木は絶対成功しないって考えてるのか?」

 

「そりゃね」

 

 薫は今しがた2人が消えていった倉庫の方を見ながら続ける。

 

「あのタコに色仕掛けが効くとは思わなかったけど……よくよく考えたらアイツは賞金首だ。だったら近づく奴は全員警戒してるに決まってる」

 

 そして呆れを隠さない表情で息を吐きながら言った。

 

「どーせ手入れする為に罠張ってるだけでしょ……体目当てで」

 

 その言葉に皆同じような表情になり、あー……という納得の声が上がる。

 

 

 ……え? 結局どうなったかって? 言うまでもなく失敗して手入れされてたよ。案の定触手で念入りに。流石に少し同情するなぁ。

 

 




お読み頂き感謝します。
評価、感想、お気に入りして頂いた方、誠にありがとうございます。
大変励みになります。

呪術、フリーレン 、アンデラのアニメがクオリティ高すぎてびっくり。
毎週が楽しみです。
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