【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
星菱レイは、横田ユイを狙って突進してきた敵HFを捕捉し、迎撃に転じた。
現れたイーグルは通常機と異なり、装甲が簡略化され、両肩には
味方となったミリィ・メイポートからもたらされた情報にある、三傑の一人。サツ・ジゲン流の使い手、シロウ・カデナの愛機に相違ない。
初太刀を躱せたのは、事前の情報があったからだ。『初太刀は絶対に躱せ』――それがサツ・ジゲン流を相手にする際の鉄則。もし無策で受けに回っていたら、防御ごと叩き斬られていただろう。
『二の太刀要らず』と称される流派だが、初太刀を外された際に対応する二の太刀、三の太刀の技法も当然存在する。油断は一瞬たりとも許されない。
敵HFが再び
(来る……!)
瞬きする間もなかった。衝撃波を纏う電光石火の打ち下ろし。外には聞こえないが、コックピット内でパイロットは「猿叫」と呼ばれる凄まじい叫びを上げているはずだ。
レイは横へと滑り、回避に徹する。後ろへ下がれば、追撃の二の太刀に捉えられる。躱した直後に反撃へ転じたいが、敵の連撃には隙がない。下手に手を出せば、逆にこちらの急所を突かれるだろう。
一直線の速度で攻め立てるシロウと、円を描くように躱し続けるレイ。状況は防戦一方。だが、いつまでも避けていられるほど甘い相手ではない。かといって、あの重厚な斬撃を刀で受けることは不可能だ。
(防げないのなら、いっそのこと――テン・シント流極意居合術・
──
独特の歩法で回避され続ける。かなりの手練れだ。だがシロウは焦っていない。主導権はこちらが握っている。このまま攻め抜けば、必ず捉えられるはず……。
そう確信した瞬間、敵が予想外の挙動を見せた。
(納刀した……だと!?)
青いHFが刀を鞘に収め、低く構える。抜刀術の構えだ。
「そげんもんでは、おいん初太刀は防げんぞ!」
裂帛の気合を猿叫に乗せ、上段から唐竹割りに打ち下ろす。長年の鍛錬によって培われた殺人的な踏み込み。まさに必殺の一撃。
今度は避ける挙動はない。シロウは勝利を確信したが、
「何ッ!?」
敵の頭部を叩き割るはずだったシロウの刀が、手から離れた。否――手首から先が、宙を舞っていた。
居合で狙われたのは、兜でも装甲でもなく、手首の継ぎ目。
鞘から最短距離で放たれた一撃は、手甲と腕部装甲のわずかな隙間を精密に切断した。シロウ自身の強力な踏み込みと打ち下ろしの慣性が、かえって切断の威力を高めてしまったのだ。
「ぐわっ……!」
返す刀で袈裟斬りにされるサムライイーグル。深刻なダメージを受けた機体から、自動的に
負けた、と悔やむ暇もない。シロウは操魂球が地面をバウンドすると、一か八かで脱出した。見事な受け身で飛び出し、遮二無二岩陰へと身を潜める。
青い敵機は周囲の警戒を続けながら、転がった操魂球を回収し、その場を後にした。シロウが脱出したことには気づいていない。
シロウは息を殺し、岩場の陰を縫うようにして戦場を離脱していった。
続く