総帥の詠唱ってなんだかんだでかっこいいよねって、割とマジでそれだけの話。何番煎じやねんこれ。
 

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 久々にDies irae開いたノリと深夜のテンションで書き上げた。詠唱って良いよね。
 
 
 


総帥の詠唱ってかっこいいよねって話

 

 

 

 

 

 暗く、暗く、暗く。

 

 闇よりいでて、尚暗く。

 黒より溢れ、尚黒く。

 深淵の奥底で昏く光る星。

 

 ───ああ、欲しい。

 

 どうしようもなく、全て欲しい。

 余すことなく、この手中に。

 己が裡で燻る欲望は、既に歯止めなどきくはずもなく。

 

 ───奪ってしまおう、そうしよう。

 

 (だいち)よ。宇宙(そら)よ。世界(すべて)よ。

 畏れと共に、その名を刻め。我こそ───

 

 

 

 

 ─────『エデンの星(█████)』を統べる者なれば。

 

 

 

 

 

 ☩☩☩

 

 

 

 

 

 ─────考えるのも馬鹿らしくなるほどだだっ広い空間が、粛然と広がっていた。

 

 無限の広がりを見せる永久(とこしえ)の闇。その帷に包まれた星々が心許なく光を発し、己が存在を示し出す。ここは、掛け値なしの宇宙であった。

 故にこそ、その光景は異様の一言に尽きる。

 星の間を縫うように進む、大小様々な無数の(くろがね)の塊。そのひとつひとつが、並の惑星の大きさを優に凌駕している。敢えて我々の常識に当て嵌めて形容するのならば───()()、だった。巨大な、それは巨大な戦艦が、宇宙空間に犇めいているのだった。

 

 ありえない。船が、ましてや我々が知る地球が霞んで見えるほどの戦艦が、宇宙を飛ぶなど。───されど、此より始まるのは超常の大戦。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 「──目標は」

 

 戦艦のうちのひとつ。他の戦艦よりも、一回りも二回りも大きいそれの内部。複雑な構造の船内の最奥にあるモニタールームで、荘厳な装束を纏う艦長らしい人物が、周囲よりも一段ほど高くなっている椅子に腰掛け、目下で機械と向かい合い忙しなく手を動かす乗員達に声をかける。

 

 「30光年先にて、未だ動きを見せず。沈黙を貫いています」

 「……様子見のつもりか」

 

 歯噛みし、睨む先のモニターの青白い光が映し出すのは、一人の少女。

 足元に届くほどの長い髪、星々よりも明るく煌めく黄金の瞳、十字が連なるような尻尾に、側頭部に生えた巨大な角。風もないのに白銀の髪を()()()()()、腕を組みながら微動だにせず、ただ無機質な瞳でじっと此方を見ている。

 その風貌と───なにより、宇宙空間に生身で存在していることが、その少女の異常性を示していた。

 

 「…いくらラプラトン星の生き残りとはいえ、この数にはそう簡単に手出しできまい」

 

 その、たった一人の少女に対峙するこちらは、百、千、万を超える、宇宙中からかき集めた、()()()()制圧用戦艦。

 数百にのぼる惑星が力を合わせ、己らの持てる最高戦力を注ぎ込んだ、星間連合艦隊である。実に、銀河一つを制圧するには十分過ぎる戦力。故に───

 

 「──にしても、これだけの戦力を集中させるとは。……命令とはいえ、流石に過剰なのでは?」

 「さてな。上もここで徹底的に潰しておきたいのだろう。あの惑星の危険性は、先の大戦で分かっている筈だ」

 「それでも、ですよ。相手はたった一人───それに、ラプラトン星人の末裔とは云えど、まだ少女です」

 「だからこそ、だ。未来で芽吹きかねない厄災の種は、早急に取り除くのが吉だ」

 

 そこには覆せない差があると。これより始まるのは、こちら側の一方的な蹂躙であると。

 ───そういった慢心があったのは、否めない。

 少女の髪を靡かせているのが、溢れ出る膨大な魔力であると気付けたのなら。そのエネルギーが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と気付けていたのなら───或いは、その結末も変わっていたのだろうか。

 

 その違和感に最初に気付いたのは、何気なく少女を映したモニターを見ていた乗員の一人だった。

 

 「ん─────?」

 

 最初は、映像の乱れかと思った。少女を中心に現れた、ノイズのような何か。

 

 「どうした?」

 「え、いや、なんか、歪────」

 

 惚けたようにモニターを見つめる乗員に気付いた別の乗員が声をかけるが、その瞬間にもどんどんと広がっていく歪み(ノイズ)。仕舞いには、モニター全体に映る映像が、ひん曲がったレンズを通したもののように歪む。

 

 「なんだ───?」

 「おい、あれ───」

 「カメラの故障か───?」

 

 不審がる乗員達の前で、映像は次第に捻れだし─────

 

 ─────ばきり、と。

 

 少女の真横の映像が──否。()()()ひび割れる。蜘蛛の巣のように入った罅は、どんどんと広がってゆき───

 

 「──なんだ、あれは」

 

 果たして、そう呟いたのは誰であっただろうか。その一言が、艦内全ての乗員の総意であった。

 ステンドグラスを叩き割ったような穴が空間上に穿たれたかと思えば───そこから顕れたのは、異形の影だった。

 まず伸びたのは、羽。どこまでも広がる二対の翼。少女を覆うように(はためく)それは、宇宙の闇より更に暗く、一切合切の光を呑み込む色をしていた。

 そうして開かれた翼は、穿たれた穴の縁へと押し当てられ。べきり、ばきり、と。強引にその穴が、()()()()()()()

 

 かくして───深淵の主が、この世に顔を出す。

 

 頭部らしき肉塊の前面に付いた無数の眼球は翡翠に怪しく煌めき、長く曲がった嘴には細い牙が並ぶ。左右不対称に生えた三本の足は鋭い爪が生え揃い、その身体に不釣り合いなほど大きな四枚の翼は、三十光年離れた戦艦の乗員たちにも()()()その姿を認識させた。何処か辺境の惑星に住む──確か、カラスとかいった鳥に、この世全ての不浄、邪悪、混沌といった概念を捩じ込んだ様な。そんな見た目をしていた。

 

 理解出来ない。否、脳が理解を拒む。───果たして、それはどれ程の幸運であっただろうか。アレを()()()()()()()()()暁には、脳はぐずぐずに溶け、二度と思考など持てないような、物言わぬ廃人になってしまうと──己の生物としての本能が、極限の警鐘を鳴らすのだから。

 

 突如として、少女が手を伸ばす。艦隊を前にしても、己の前に埒外の化物が現れようとも───まるで、全てが些事とでも言うように。ぶっきらぼうに、化物へと手を差し伸べる。

 

 ぴくり、と化物の体が蠢いた。数瞬ほどその無数の視線を少女へと集中させていた化物は───己の体よりも遥かに小さい少女に。まるで番犬、或いは王に忠誠を誓う騎士のように。その、()()()()()

 

 あ、と。戦艦の乗員の一人が声を漏らす。どうやら、漸く己らがどんなモノに相対しているのか理解したようだ。──ふつふつと、恐怖が沸き起こる。歯の根が合わない。肌が粟立つ。ぐわんぐわんと揺れる視界の中で───モニター越しに、少女と目が合った。

 

 脊髄に氷嚢を叩き込まれたような。或いは、絶対零度の掌で、心臓を握り潰されたような。そんな感覚が、全身を駆け巡る。

 

 少女が、ゆっくりと手を上げる。船員達には、それがギロチンの縄を握った処刑人の動きに見えてならなかった。その掌が此方へと向いた時──それに呼応するように、頭を下げていた化物が此方を向いた。

 

 感情の読めない無数の瞳が、モニターを埋め尽くす。じっと此方を見つめていたそれは、暫くして、ぐぱり、と口を開いた。──そして。その時点で()()()()()()()()()と気付いた者は、艦隊の中で一人もいなかった。

 

 

 『オ゙』

 

 

 音が、響く。

 

 

『▆█▂▆▆█▂█▆──────!!!!』

 

 

 大気の無い宇宙空間で、その振動は空間そのものを揺さぶりながら艦隊へとその鳴き声を伝えた。

 

 激動、激震。

 

 果てしなく巨大な惑星が爆ぜたような衝撃は、全てをバラバラに、欠片欠片(バラバラ)に変えていく。

  

 「───何、が」

 

 直前に展開した魔力の障壁によってなんとか原型を留めた戦艦の中で、艦長である人物が呆然と呟いた。

 

 「魔力排出弁損傷! 駄目です、このままだと───」

 「主砲、及びその他武装、全て壊滅───」

 「ほ──本艦以外の──艦隊の、応答が、ありません──。まさか───」

 

 慌ただしく乗員が駆け回る中───罅割れたモニターの先で、少女が片眉を上げた。

 

 『───ほう。今ので仕留めきるつもりだったんだが』

 

 ぴたり、と。脳内に鈴を転がすような、場違いなほど可愛らしい声が響き渡り、乗員の全員が動きを止めた。

 

 『ただの鈍臭い鉄の塊だと思ってたが。案外、やるな』

 

 くつくつ、と脳内の声が笑い、モニターの奥の少女もまた、目を細め口で弧を描く。この声の主があの少女であることは一目瞭然であった。

 

 『さて。それでは侮った礼だ。せめて、吾輩の力を焼き付けてから死にゆくがいい』

 

 誰一人として動かない。動けない。その内にあるのは、蛙が蛇に──否、龍に睨まれたかのような恐怖か。何処にも逃げ場は無いのだという本能からの諦めか。

 少女の頬肉が釣り上がる。明らかな嘲笑と共に、獲物を前にした獣のように、その表情が獰猛に歪む。

 

 

 

 『では、刮目せよ』

 

 

 

 ───魔力が、集う。

 

 紫に輝く、力の奔流。宇宙に流れ出した魔力は星雲が如き広がりを見せ、少女の周りで畝り、渦巻き出す。

 

 

 『Heroische Geister, die aus dem Abgrund erscheinen(深淵より現れし英霊たちよ)

 

 

 神話に刻まれた至高の存在へと訴えかける詠唱が開始すると同時、少女の背後に魔法陣が展開される。幾千もの複雑な術式が現れ、絡み合い、混ざり、ひとつの巨大な幾何学模様となってその形を整えていく。魔法陣が少女の躯を通して己の回路に魔力を取り込んで、次第に紫の極光を帯び出す。

 

 

 『Die schwarze Flamme ist auf meinem Arm ,(黒き炎は我が腕に) Die tiefschwarze Dunkelheit ist in meinem Herzen , (漆黒なる闇は我が心に) Der Stern Eden liegt in meinen Händen(エデンの星は我が手中に)

 

 

 ─────宇宙だった。果てしなく膨大な、無限の魔力の満ちた魔法陣は、これより少女が起こす事の補助の為に描かれた物にも関わらず──その内に、無数の星と、銀河と、空間を内包している。その在り方で、単一の宇宙を完結させていた。見る者の眼と、魂を焼く程の眩さを放つそれを背負う少女の姿は逆光となって暗く影となっていたが───その中でも、二つの黄金の瞳はそれよりも遥かに明るく、煌々と光を放つ。

 

 

 『 Versammeln Sie sich jetzt im Namen von Laplacesss Teufel(吾輩の名の下に 今集え)

 

 

 最高級の神秘が、少女の目前へと圧縮されていく。光が満ちる。奇跡が充ちる。そうして集った無限の力を前にして───

 

 ──────世界が、反転する。

 

 魔力の塊の濃度が臨界点に達するその刹那、少女を中心に放たれた不可視の波が、世界の事象を書き換えていく。星は光を失い、宇宙は眩い光に包まれる。時は滅茶苦茶に跳び、止まり、巻き戻る。空間はその広がりを喪う。因果は意味を失い、死に絶える。

 

 そして────無限は、虚無へと反転する。

 

 

 

 

 『─── Absolute Darknesss Infinity(告魔・楽園を墜とす暗黒の極光)

 

 

 

 

 少女の目前、一点に集束された虚無(やみ)は、その性質通りに現実(ひかり)を喰らっていく。後には何も残らない。森羅万象を塵芥に。尽くを食い千切り、ただ総てを消し去っていく。

 

 「──────あ、悪魔だ───!」

 

 死滅の極光が迫り来るのを呆然と見つめながら、ただひとつ最後に残った戦艦の乗員は、震える声で、己の最期の言葉を絞り出した。

 

 「ラプラスの、悪魔───────………」

 

 ばつん、と。

 

 

 世界に、空白地帯が生まれた。

 

 

 

 

 ☩☩☩

 

 

 

 

 「────んがっ」

 

 holoXアジトのど真ん中で、ラプラスは昼寝から目覚めた。

  

 「..........夢オチとか、サイテーだわマジで」

 

 

 





 
 続かない。
 
 

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