「頭部外傷に伴う逆行性健忘……言ってしまえば、記憶喪失という奴ですな」
「えぇ……」

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溺愛してくれる彼女のことを思い出せない

 

「頭部外傷に伴う逆行性健忘……言ってしまえば、記憶喪失という奴ですな」

 

 記憶喪失。

年配の医師のしてくれた病状の説明を、上の空でどこか他人事のように聞いていた。

あまりに実感の湧かないまま言葉が脳裏を流れていく。

へえ、それはまた大変なことで、ご愁傷様です……え、それっておれのことなんですか。

どうやら自分、記憶喪失になってしまったらしいです。

 

 

 その翌日。

起きたら家族がお見舞いに来てくれていた、看護師さんが呼んでくれていたらしい。

父にも母にも弟にも随分泣かれてしまった。

どうやら自分はこの家庭に大切にしてもらっていたようだ。

 

 こうなった経緯も親から訊かせてもらった。

暴走した自動車から小さな子どもを庇って轢かれたおれは、頭部を強く打ってまるまる一ヵ月も寝たきりの昏睡状態が続いてたらしい。

過去のおれ、中々やるじゃん。

誰かを助けて負った怪我なんて全部勲章だ。

一生分の話のタネにはなったし、そう悪いことばかりでもない。

 

 家族は誰一人としておれの記憶のことには触れないまま、自然に家族の思い出話を聞かせてくれた。

気を遣わせているとは感じたけれど、不思議と居心地は悪くなかった。

何一つとして思い出すことのできないおれのことを温かく迎えてくれたこの人達となら、これから新たな思い出を築いていけるだろう。

 

 看護師さんに、この後のことを訊かれた。

精密検査をして異常がなければ、その後の処遇は自分で決められるらしい。

おれ自身か家族のどちらかが望むなら、サナトリウムのような施設に転院して入院生活を続けることもできると言う。

家族とその場で相談して、退院を選択した。

なんせ身体は今のところ五体満足で健康なのだ。

肝心の記憶も空っぽなのだから、喪失感を覚える余地もない。

閉じた病棟にそのまま引き篭もっているメリットを感じなかった。

後は検査の結果次第だ。

 

 

 

「はい先輩、梨剥けましたよ」

 

「お、ありがとう。 鷲見さん」

 

「みどりちゃん」

 

「鷲見さん」

 

 記憶というのは、ないならないで案外困らない。

一部分だけが欠けているなら却って不在が目立ってしまうかもしれないけれど、全部を失ってしまえばそもそも元からあったことにさえ気付けない。

例えるなら、いきなり男子高校生の身体に憑依してしまったような違和感だけがある。

言ってしまえば、家族も入院生活中に廊下ですれ違う人もおれにとっては等しく全員知らない人だし、それを相手に告げるのは失礼だったり傷付けてしまうから、ただ笑って誤魔化すことも多い。

 

「みどりちゃん」

 

「……みどりさん」

 

「……………………まあ、及第点としましょう」

 

 だからこういう時、原初、笑みを浮かべるのは威嚇行動だった、という話をよく思い出す。

がるるるる。

分かったから笑みを浮かべたまま威圧しないでくれ。

まず梨を剥くのに使った刃物を手元に置くなりしてから話せ。

 

 さっきからおれに自分の名前を呼ばせようと圧を掛けてくるこの女性は鷲見 翠。

名前自体が難読漢字の塊のような女だが、すみ みどり と読む。

 

 よく手入れされていることが分かる、光沢を帯びた艶のあるロングヘア。

怜悧で聡明な印象を与える、深い知性を宿した切れ長なツリ目。

大きな瞳はあまりに神秘的でこの世の秘奥を湛えたみたいに美しい。

まっすぐに伸びた鼻梁、薄い唇はほんのりと桜色に色づいていて、総じて彫刻のように完成された美を持つ端正な顔立ちの美少女だった。

 

 その現実離れした端麗な容姿からは想像も付かない程に気さくで接しやすい彼女は、なんと記憶を失う前のおれの彼女(人称代名詞の方ではなく、人生のパートナーとしての方)だと言う。

過去のおれ、中々やるじゃんその2である。

 

「どうです? みどりちゃんに食べさせてもらった梨美味しいって、言ってください」

 

「うん。 みどりさんが持ってきてくれた梨、美味しいよ。 果物は重かったでしょ、本当にありがとう」

 

「………………まあ、先輩好きでしたもんね、梨………………」

 

「声ちっさ。 言わせといてなに照れてるのさ」

 

 水分を多く含んだ梨は口いっぱいに爽やかな香りとジューシーな味わいをもたらしてくれた。

病院食は想像していたよりはずっと美味しいものの、やはり甘味には欠ける。

芳醇で上質な甘みを摂取できるのは素直に嬉しい。

 

 そうか、以前のおれは梨が好きだったのか。

家族がそういった話題を避けていた分、今の言葉はダイレクトに響いた。

おれの記憶はいつか何かの拍子に一部でも戻ったりするのかな。

みどりさんは、一緒に居た頃の思い出の大部分を共有できない今のおれでも変わらずに愛してくれるだろうか。

 

 

 

 

 

 入院生活というのは、謂わば如何にして膨大な余暇時間を潰すかの勝負になる。

真っ白で殺風景な部屋とベッド、娯楽は食事とお見舞いに来てくれた人との会話のみ。

天井の無機質なトラバーチン模様もいい加減見飽きて、手慰みに何度も読み明かして暗記してきた文庫本に手を伸ばした所で、廊下に繋がる扉が開いた。

お見舞いの時間のようだ。

 

「こんにちは先輩、愛しのみどりちゃんが来ましたよ~」

 

 県内一番の偏差値を誇る小園高校の制服に身を包んだみどりさんが現れた。

飾り気のない制服も華やかに着こなしている、透明感のある透き通った乳白色の肌が眩しい。

地味な装いに身を包んでも、どうしたって彼女には華がある。

居るだけで空間をきらびやかに彩ってしまう、常人とは放っているオーラが違うのだ。

なんかいい匂いもするし。

みどりさんは別にパーソナルスペースが狭い方ではないので、いくら恋人であってもそんなに近寄って話したりはしてない筈なんだけど、なんかこの人がお見舞いに来てくれた時だけは生花のような香りがする。

 

 どうも来院時間を見るに、彼女は毎日学校が終わると一目散にこの病院に駆けつけてきてくれているらしい。

学校から病院までそんなに離れていないとしても、それらに自宅までを含めた往復に掛ける時間を思えば一声掛けたくもなるものだけど、その結果泣かれかけてしまってから何も言えないでいる。

煙るような細く長いまつ毛の先に涙を浮かべ、迷惑でしたか……? と控えめに問うみどりさんの悲し気な表情は暫らく忘れられそうにない。

二度とあんな顔をさせないようにしないと。

 

「今日は果物持ってきてないんです、かわいいかわいいみどりちゃんだけで我慢して下さいね」

 

「そんな田舎のお婆ちゃんみたいな……みどりさんが来てくれるだけで十分嬉しいよ、いつもありがとう」

 

「………………そですか………………」

 

「だからさ、照れるなら始めからそういうこと言わなきゃいいじゃん……」

 

 毎回毎回大きい果物持ってこられたらお腹たっぷたぷになっちゃうよ。

果物ってそれなりに重たいし、そんなに気を遣わなくてもいいのに。

 

 

 

 

 

 みどりさんは距離感が近い人ではないが、身体的な接触を好む。

今日も学校であった他愛のないことを訊かせてくれる間中ずっと、右手は繋がれたまま。

絡めた指を不意にくすぐるようにまさぐられると、とてもこそばゆい。

入院中に触るものなんて紙コップとか小銭とか自動販売機のボタンとかどれも無機質なものばかりだから、じんわりと染み込むように伝わる人肌の温もりが無性に嬉しい。

 

 繋がれた指を眺めていると、綺麗な人は手先まで綺麗なんだな……なんて馬鹿なことを思う。

分厚くて太いおれの手と繋がれているから、みどりさんの白磁のように白くて華奢な手が殊更繊細に映える。

短く切られた爪の先まで丹念に磨かれてピカピカ輝いている。

全体的にゴツゴツしてて何ら面白味のないおれの手と本当に同じ部位か疑わしいな、同じ人間なのにこうも違うかね。

触ってみると一つ一つのパーツがきめ細かくてツルツルしている。

 

「くすぐったいですよお、もう……今日は甘えたさんなんですか?」

 

 つい手の観察に夢中になって肝心のみどりさんの対応になおざりになっていた、ごめん、と言う間もなく抱き寄せられ、頬に口付けされる。

その細腕のどこにそんな力が。

 

「すき、すき、大好き。 愛してます。 先輩のこと、ずっと大好きですからね」

 

 桜色した唇をおれの耳に近付けて、囁かれる酩酊してしまいそうな愛の言葉。

花のような甘い香りが濃く漂って、少しずつ思考が麻痺していく。

 

「相変わらずお耳が弱い先輩、かわいい。 ふふっ、どうしてあげましょうか」

 

 耳元でぽしょぽしょ囁かれると、コトコトした優しい声が耳朶に直接届いてとてもこそばゆい。

駄目だ、溺れてしまう。

一番記憶に焼き付いて脳に刻み込まれるのは香りだから、嗅覚を支配されるのは危険なのだと分かっていて、それでも強烈な負の走光性に抗えずに溶かされていく。

リップ音が耳朶に直接響いて、耳にキスされたことに気付いた。

やっと耳から顔を引いてくれて向かい合ったみどりさんの大きなアーモンド型の瞳の深奥には、星の海があった。

この天球に浮かぶ星の海に燦然と煌めく彗星になれたなら、弧を描いて夜を跨げたなら良かった。

その指向性が今も形を保ったままでいるのか、確かめる術はない。

 

 面会時間が終わるまでの間、おれたちは花の芳香が艶やかに香る病室で口付けをかわしあっていた。

 

 

 

 

 

 甘い香り、と一口に言っても様々ある。

砂糖菓子や綿菓子のような甘味料と糖の香り。

水分を含んだ大地で育てられた果実のような瑞々しくフルーティーな香り。

子ども心を思い起こさせるクリーミーで心地よいミルクのような香り。

みどりさんの香りは、そのどれにも該当しない。

凛と咲く花のように甘酸っぱいフローラルな香りで、香水のようなわざとらしい甘ったるさとは対極にある。

造花には出せない優しい華やかさが香る、そういう意味ではフローラルでありながら瑞々しい。

 

「首筋、そんな真剣に嗅がれると流石に恥ずかしいです先輩……」

 

「罰です、甘んじて受け入れなさい」

 

 みどりさんを抱き締めて拘束しているのには訳があった。

あれは先日のこと、大変な不覚だった。

確かにおれが無防備ではあった、繋がれたみどりさんの手や指を触ったり撫でさすったりしていた。

それが意図せずみどりさんのスイッチを点けてしまったようで、あれよという間に抱き寄せられ、耳に吐息を吹きかけられたり言葉攻めされたり耳元で囁かれたり、時間を忘れて二人で顔中にキスの雨を降らせてしまった。

 

 当たり前だが、お見舞いの時間には限りがある。

この病院では原則30分、それが一日の面会で許される時間の全てだった。

先日はその貴重な時間を殆どキスで消化してしまったわけである。

サキュバスかこの人。

 

 

 今日も快活な挨拶と共にお見舞いに来てくれたみどりさんが、さり気なくおれの唇をずーっと注視しているのは知っている。

彼女は用意された椅子に座り込むやいなや鞄からリップグロスを取り出し、ぷるぷるした瑞々しい唇に塗り始めるなどという暴挙に出た。

ツヤツヤと光沢を放つ唇はあまりに淫靡で、元より浮世離れした美しさのみどりさんをより麗しく彩っている。

自分で強調して視線を誘導しておきながらおれの目線に気付いたみどりさんは、羞恥で僅かに頬を紅潮させながら唇を手で隠す。

その指の先で、口元が弧を描いているのがよく分かる。

 

「……えっち」

 

 まるでおれを咎めるようなことを口では言いながら、目を細めてより淫靡な表情を形作りゆっくりとしなだれかかってくるみどりさん。

あれ、なんか良い雰囲気では?

いけない、既視感が凄い。

このままでは先日の失態の二の舞を踏みかねない。

もう時間いっぱいまで二人して仲睦まじく乳繰り合うわけにはいかないのだ。

そしておれはみどりさんにこれ以上狼藉をさせないよう、思い切り抱き締めることで拘束するのだった。

以上がこの体勢に至る経緯。

やっぱりこの人サキュバスなのかもしれない。

 

 

「……キスがしたいです、先輩……」

 

「そんな悲しそうな声出しても、駄目なものは駄目」

 

 こうしてみどりさんを抱き締めていると、よく花を思い出す。

病院の廊下ですれ違う見ず知らずの他人の家族が見舞いに持ち寄る、病室で生けるために持ち込まれた生花が酷く羨ましかった。

花のように、綺麗な形を残したまま誰かに手折られることができたら。

鮮やかなまま枯れたいと思う。

 

 それが叶わないなら、せめて誰からも綺麗さっぱり忘れ去られたい。

誰も知らない場所で一から人生を始めて生まれ直したい。

人が本当に死ぬのは、誰かの想い出の中から消えた時だ。

そういう意味で、おれはまだ大切な人の中で生き続けている。

16年の歳月を生きてきた、今のおれと同じ姿をした似て非なる自分。

 

 人は記憶を失ってしまえば人格まで損なわれてしまうのか。

おれは、その通りだと思う。

今まで培ってきた経験が、記憶が人格を形成する。

それら全てを失くしたならそれはもう、同一人物とは呼べないんじゃないか。

 

 家族も彼女も、おれと交わる視線の奥に過去のおれを重ねている。

彼らの願いを叶えることはできない、過去とは記憶に連続性がないから。

おれは自分の知覚しない過去の自分のことを、どうしても同一人物には思えない。

未だに他人の人生を追体験しているような非現実感だけがあって、借り物の身体に生まれたばかりの心が宿っている。

どうしようもなく過去に囚われていた。

今までの自分はこびりついて拭えない油汚れのようだった。

 

 実際には逆なのだと思う。

誰からも望まれてないのはこの自意識で、あるいは今の自分のせいでほんの少し前までこの身体を動かしていた本当の自分が表出できないのかもしれない。

鏡写しの向こう側に今までの自分がいて、それは表裏一体のような感覚。

今死ねば、同じ傷を負えば向こう側の自分に全て戻るならこれ以上誰も悲しまずに済むのに、現実はそう簡単じゃない。

 

「ふぅーっ……」

 

 刹那、温かな吐息が耳の中を吹き抜けた。

耳だけは特別に鋭敏な感覚があるため身体が反応してしまい、一気に思考が呼び戻される感覚があった。

口元を指で隠して上品な笑みをみせるみどりさんに、なんだか恥ずかしくなってしまった。

ほんとに油断も隙もないな……

 

 曇天から晴れ間がのぞいて、窓から夕陽が差し込んだ。

眩さに目を細めれば、おれを抱きすくめる腕にぎゅっと力が込められたのを感じた。

少し痛いぐらいに。 

 

「こうすることで太陽から先輩のこと隠してます、奪われちゃう」

 

 みどりさんからの好意は素直に嬉しい、身体より心が痛いほど。

それはおれに向けられたものじゃないことを分かっているから、心臓が軋んでいく。

光が強いほど、影は色濃くなる。

空を黄昏色が支配したのはほんの僅かな間だけで、斜陽はすぐに翳りを見せ病室は瞬く間にどうしようもないような夜闇に覆われた。

それが途方もなく恐ろしいものに感じられて、おれはみどりさんを抱き締める腕に力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い物に出掛ける度、父親に連れられて歩く子どもが羨ましかった。

自分の周りには全幅の信頼を寄せて隣を歩ける、頼れる大人など一人もいなかったから。

母親に買って欲しいお菓子をねだる子どもが妬ましかった。

私は母親から必要最低限の生活費しか貰えなかったから。

 

 父親の顔を知らずに育った、私が生まれる前に蒸発したと言うから、碌な人間じゃなかったんだろう。

物心が付く頃から家事は一通りこなすことができた。

自分でしなければ生活が立ち行かないからだ。

 

 典型的な機能不全家庭で育った私は、母親の死後親戚中をたらい回しにされている内に取り繕うことを覚えた。

外で人と会う時の母親のように明朗快活で溌剌とした人間を装った方が他人からの覚えが良いことを理解してからは、強固な外骨格は手放せなくなっていた。

幸いにも私は容姿の作りが良いらしい。

築いたコミュニティ内で揉め事が起こりそうな時は毅然としていれば、黙っていても周囲が私のために尽力してくれた。

生まれて初めて、少しだけ親に感謝した。

嘘だ、ありがたいと思えたのは親が繋いだ遺伝子だけ。

私に無関心でいた彼女から受け継いだ優れたX染色体だけが役に立っていた。

興味がないなら、必要のない命だったらどうして私を生んだのだろう。

死ぬ前についぞ直接訊くことの叶わなかった疑問が、脳裏をずっと覆っている。

鏡を見遣れば母親譲りの童顔が、処世のために覚えた薄気味悪い愛想笑いを浮かべていた。

 

 何親等なのかも分からないような遠縁の元へ預けられて、そこの家庭のご厚意で高校に通わせてもらえることになった。

流石に申し訳なくて、幾度か話し合いをした。

他人にこれ以上迷惑を掛けてまで生きていたくはない。

くだらない愛の結果で生まれ落ちて、誰にも望まれていないのにこれ以上呼吸を強いられるのは苦痛だった。

あなたはもう家族なのだから何も気にすることはない、と言われて脳が理解を拒んだ。

だって、この世に無償の愛なんてものは存在しないと私は身を持って知っている。

人付き合いとは損得勘定でするものであって、見合うメリットを提示できない私には進学なんて選択肢はない筈だった。

 

 身の丈以上の平穏には代償が必要だと思った。

やがて私は、ずっと自分で自分を許せないでいる自罰的な意識を自傷行為という形で消化し始めた。

自らの身体に傷を付ける行為に耽っている間は、些末な他事に心を奪われることなく澄んだ心根でいられた。

この陰鬱の類いも全て切り裂いてしまえればと、幾度も願った。

誰に恥じることなく凛と立って生きていける自分に変わることができれば、醜い自分のことも少しは愛してあげられたのに。

 

 きっかけはほんの些細なことだった。

委員会の活動で少し関わった程度の顔見知りの先輩に、油断して手首の傷痕を見られた。

彼は他人のために涙を流していた。

私は何故だかその雫を美しいと思った。

昔から人から寄せられる視線には敏感な方だったから、不自然なまでに彼と視線が合うことには気付いていた。

鳳 千沙 先輩。

おおとり なんて珍しい苗字だなとか、千沙って女性みたいな名前だとか、他の不躾な人たちに比べたら凄く落ち着いていていつでも自然な振る舞いなのに紳士的でまさに先輩って感じとか、その程度の認識でいた人。

他の有象無象よりは少し上の顔見知り、ぐらいにしか思っていなかった千沙先輩のことを知りたいと思った。

私の醜い傷痕に侮蔑や憐憫を向けない初めての人が今までどんな人生を生きてきたのか、関心を覚えた。

 

 ご飯を食べてる時に話し掛けられるのを嫌う。

お肉やお魚より野菜の方が好きで、なんにでもポン酢をかけて食べる。

甘いものはあんまり好きじゃないけどカボチャと梨は好き。

生まれてから一度も虫歯になったことがなくて、ホワイトニングしたみたいに歯が真っ白で綺麗。

休み時間、時たま教室のベランダで無防備に眠ってるらしい。

人が話したそうにしてる時は黙って目を見つめて言葉を促してくれる。

面倒事を率先して引き受けるようにしているから友だちは多くないのに人に頼られやすい。

騒がしいのがあまり好きじゃないから、楽しそうにしている皆を遠巻きに眺めてぼんやりしていることが多い。

 

 あなたのことを一つ知る度に世界が広がっていく。

尊敬とか慕情とか、知らなかった気持ちが沸々と芽生えて募っていく。

母が夭逝した理由が手に取るように分かった、この感情は危険だ。

自傷行為で得られる心の静謐が嘘のように、その何十倍もの脳内麻薬が報酬系を満たしているのが肌感覚で理解できた。

だって今や、あなたの欠落すべてが愛しい。

マイペースで人付き合いがあまり上手ではない所も、日中でも時々ずっと眠そうにウトウトしている所も、実は陰でこっそり人気があってあまり活動的ではないクラスメイトからは倍率が高い所も。

瞬く間にあなたに惹かれてしまって、恋人になるまでにそう時間は掛からなかった。

 

 望んでいたあなたの愛が手に入った、そうなると今度は後ろめたさが私を襲った。

過去の私がどれだけ愚かな行為に手を染めたのか理解した頃には、全てが手遅れだった。

左手首の醜い傷痕は生涯消えない、こんな薄汚れた身体では先輩にも愛されない。

でもあの日の私が理不尽な社会の軋轢から逃避するためには、自傷する他に道はなかった。

前借りしていた罪過と責任を持って対峙しなければならない時が来た、それだけの話だった。

私はどこで道を間違えたんだろうか。

人生はいつもこんな調子だ。

ただ必死にその場を凌いで生きているだけなのにいつまでも不幸が染み付いてしまって、私だけどうあっても幸せには近づけない。

 

 一度幸福を知ってしまったから、痛みはより増した気がした。

先輩は人数こそ少ないけど友だちもちゃんといるし、経済的に安定している極一般的な核家族の元で毎日幸せに暮らしている。

そのことを恨むつもりはない、大切な人の幸福は純粋に嬉しい。

片や私は上辺だけの付き合いの友人未満に囲まれて、引き取り先の遠縁の親戚とも上手くいっていない。

 

「どうして、私だけ……」

 

 今まで敢えて考えないようにしていたことが、涙と一緒に口を衝いて出た。

私が望んで止まない人並みの幸福が世の中には有り触れている。

なんの苦労もせずに食事にありつける人生の方が幸せに決まってる、でも私はそうじゃなかった。

私だけがずっと不幸に曝されている。

 

 この意味のない苦痛はいつまで続くのだろう。

これからもずっと、惨めな人生を歩んでいくことを強いられている。

耐え難い苦難だった、最早何かしらの意味を見出すこともできず、ここで終わりにしたいと思うほど。

 

 手首には、二筋の醜い切り傷。

この太い血管を裂いてしまえば、今すぐ全てを終わらせることができる。

在りし日の母と同じように。

 

 この段になってやっと理解した。

なるほど、生まれてからここまでの道は全てこの遺伝子によって決められていたのか。

そう思えば全部が有機的に繋がった。

どのような過程を辿ったとして結局私も母の後を追って、同じ顛末を迎えようとしていた。

血は争えないとはこういうことを言うのかもしれない。

なんて無意味で無価値な人生。

ほら、ついにX染色体でさえ役に立たなかった。

せめて、私はあなたの胎内から生まれてきたことを呪いながらこの命を終わらせましょう。

 

 そうして私は常備菜を確認しに冷蔵庫へ向かうような軽率な足取りで、包丁を取りにキッチンへ向かった。

果たしてそこには、先輩が居た。

訊けば、私の遠縁とグルになって私のサプライズパーティーを計画していたのがたった今バレてしまった、と。

 

 私は動けなくなってしまって、その場で蹲った。

奇遇にも、死のうとした今日は私が生まれた日だったらしい。

勿論誰かに祝われたことなんてないし、生まれてきたことを嬉しく思うこともなかったからそれで良かった。

でも、今日、全部翻ってしまった。

あなたにそんなことを言われてしまったら、無邪気に喜ばれてしまったら、私はきっと大切にしてしまいたくなる。

あなたに大事にされていると思えるから、この日のことを後生抱えて生きていたくなる。

まだ命を続けたくなってしまう。

 

 私は蹲ったまま、咄嗟に袖を捲って左腕の傷を露出させた。

きっと、心のバランスが保てなくなってしまった。

命を閉じようとした所で望外の幸福に巡り会ってしまって、ただ訳もなく傷付きたかった。

露悪的な行為だった、私そのもののような醜い傷を晒すことで、いっそ悪し様に罵ってもらえれば幾らか安心できたのかもしれない。

幸福に怯えていた。

こんなに素敵な人、醜い私には釣り合わない。

人には身の丈があって、過分な欲望は身を滅ぼすと知っていたから。

 

「おれ、みどりさんの傷痕が好きになってきたよ。 みどりさんが必死にもがいて、戦ってきた証だから、勲章。 そう思うと、なんか愛しくて」

 

 この傷は私の罪の象徴だった。

唾棄すべき醜いもの。

それなのに言葉一つで、卑しくも今までの私の人生全てを肯定してもらえたような気がした。

ただ自分はずっと目の前のことに必死で、誰に誹られても一生懸命必死に戦ってきたから、その歩みを誰かに肯定してもらいたかっただけなのかもしれない。

たったそれだけのことも叶わない人生を送ってきたから、ふらつく足で倒れ込むように先輩を抱き締めた。

生まれて初めて、心の底から涙が溢れ出て嗚咽が止まらなかった。

15年間抱えてきた負債を、心に巣食う呪いの全てを吐き出せたような気がした。

 

 

 

 

 

 先輩が記憶喪失になったと聞いて、目の前が真っ暗になった。

カラスみたいに、私が先輩に不幸を持ち込んでしまったのかもしれない。

どうしてこんな時ばかり平等に災厄が降りかかるのか、神を恨んだ。

代われるものなら代わってあげたい、空虚で伽藍洞な私の記憶全てと引き換えに先輩の記憶が戻るならいくらでも捧げられるのに。

 

 何より嫌なのは、それをほんの少しでも嬉しいと思ってしまったこと。

だって、精神にも身体にも致命的な瑕疵ばかりを抱える不良物件もいい所の私をそれでも良いと笑って抱き締めてくれる先輩があまりにも可哀相で。

わたしは先輩みたいに素敵な人の隣を歩くのに相応しくなくて。

だから、薄汚い傷を抱えた私と記憶を失った先輩で、欠落を抱えた者同士どうにかお似合いな形で、これでやっと対等になれたって、そんな醜いことを少しでも考えてしまった。

 

『先輩のこと、ずっと大好きです』

 

 私は先輩に想ってもらう資格があるような人間じゃない。

あまりにも浅ましくて低俗で、どうしようもなく惨めだ。

本当にごめんなさい、こんな女あなたの隣に相応しくないのに、それでもあなたのことを愛していて、あなたの前から消えることができない。

 

 やっぱり、身に余る過分な幸福には代償があるのかもしれない。

私が先輩と出会って、恋をしたこと。

それが愛情に変わったこと。

全てが私なんかには過ぎた幸福だった、泡沫の夢と疑うほど。

その幸の代償が先輩の記憶だとしたら、身勝手な自責の念で命を投げ出す前に私は相応の責任を果たす義務がある。

 

 私は短い人生で遭遇してきた困難の全てに場当たり的なその場しのぎでしか対処できなかったから、いつだって今日明日のことで手一杯で未来を考える余裕なんてなかった。

だから、今がその時だと思った。

順番待ちの時は終わった、次に盤上の駒を動かすのは私ということなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スマートフォンから過去の自分の断片を拾っていく作業にも、限界が見えてきた。

水気を含んだ食べ物が好きだがきゅうりは例外、友人関係は太く短くというタイプで連絡先を交換している人数こそ少ないがその連中とは割とまめに連絡を取り合っているらしい、時々送られてきていたっぽいみどりさんの自撮りがかわいすぎて行き場のない愛おしさに襲われ無性に声を聞きたくなって困る、など。

連絡を取るようなチャットアプリ以外にSNSアカウントを作っていた形跡がないから、あまり自己顕示欲はなかった方なんだと思う。

 

 手作りのお弁当(とても美味しそうな出来栄え)、帰りしなに見つけた野良猫、友だちとふざけて撮られた写真、夕焼け。

写真には必ず一言なにかコメントを添えて、みどりさんは日常のよしなしことをつぶさに教えてくれる。

それにおれもなにか簡単な反応を返して、時にはこちらから何か写真を送ったりもする。

こっちはベッドとたまに廊下や別のフロアを散歩するぐらいで行動圏が狭いから、みどりさんから送られてくる写真ほどバラエティ豊かなものではないけど。

特に代わり映えのない、穏やかで小さな日常を共有している日々だ。

そこには終わらせたくないと願ってしまうような倖せがあった。

 

 精密検査の結果、脳にも身体にも異常はなし。

退院の日は、選択の時はすぐそこまで迫っていた。

読書するか寝ること以外何もできない病室の中で、日毎に申し訳なさ、後ろめたさが募っていく日々だった。

 

 全てを失った抜け殻みたいな、そんな人間にいつまでもみどりさんを付き合わせてしまっていいのだろうか。

みどりさんはちゃんと今を生きてる、時を止めてしまったおれとは違う。

 

 気付けば今日も日が暮れてきて、いつも通りみどりさんが病室まで足を運んできてくれた。

ありがとうって伝えれば、先輩はいつもいつも律儀ですねえ、なんて微笑を浮かべてくれるみどりさんが何より大切だから、言うことがある。

そのうちきっとじゃきりがない、今声を上げなければ意味がない。

だから言い出さなければいけない、大切な人を手放してから訪れる喪失感に怯える身体に喝を入れて。

震えた声しか出せなくとも、どれだけ情けない醜態を晒すことになるとしても、切り出さなければ。

 

 そう強く思うほど、声が出せない。

要約してしまえば、さよなら、なんて簡単な言葉にいつまでも詰まっていて、この期に及んでみどりさんの目を見つめたり少し逸らしたりして戸惑わせてしまっている。

みどりさんの吸い込まれてしまいそうな大きな瞳はいつ見ても神秘的で、おれの醜い意地とか虚勢なんてものは全て見透かされているんじゃないかと思わせるような知性を宿していた。

 

 みどりさんはいつまでも言い淀んでいるおれの手を取って指を絡ませて、何を言うでもなく、ただ目を細めて花のようにふんわり笑った。

そういえば怒ったり悲しんだり、みどりさんのそういうマイナスな感情を見たことがない。

いつもニコニコ朗らかで楽しそうに振舞っていて、それが人前、あるいは恋人の前だからと意識的に振舞っているのか元来の穏やかな性質が滲み出た無意識的なものなのかは判断しかねるけれど、おれにとっては救いになっていた。

穏やかなみどりさんと居ると、自分も穏やかでいられる。

 

 どうしてみどりさんがボディタッチを好きなのか、少し分かった気がした。

手を繋ぐ、ただそれだけのことで安らぐこともある。

伝う人肌の温もり、同じ温度を二人で分け合うことで見える景色。

それだけでさっきまでの躊躇いは嘘みたいに消えて、本心がスッと口を衝いて出た。

 

「おれ、みどりさんのことが好きだよ。 だから、足枷になりたくない」

 

「……??」

 

 取り留めのないことを言いたくなくていきなり本題から入ってしまったから、何のことか全く分からずにみどりさんは首をかしげて疑問符を浮かべている。

美人なのに所作がかわいいのって反則だと思う。

だからここ数日ずっと悩んでいたことを、極力簡潔に、端的に心掛けてその要旨を説明した。

 

 

 

 

 

「順番なんですよ、先輩」

 

「大袈裟な話じゃなくて、先輩は私の命を救ってくれたんです。 ほんとですよ?」

 

「だから、今度は私が先輩のお役に立つ時。 それだけの話です」

 

 そうしてみどりさんは、要点をかいつまんで俺達の出会いからこれまでの経緯を語って訊かせてくれた。

これは……過去のおれ、中々やるじゃんその3だな。

それでも実際同じ場面に立ち会えば同じようなことをしたと思うし、おれは単純に昔からみどりさんに好意を寄せていたんだなあ。

 

 そんな話を聞いてしまえばこそ、やっぱり記憶の有無は意識せざるを得ない所だった。

だっておれたちは、同じ記憶を同じ熱量では共有できない。

みどりさんにとってそれは掛け替えのない大切な記憶で経験なんだろう、それでもおれには仄聞で、自分は何もしてあげられないのにただ捧げられるだけの生活を送るような理由にはならなかった。

 

「ふふっ、納得できませんか? 先輩、不安って顔してます」

 

 やっぱり杞憂なんかじゃなくて、みどりさんはその両の眼でおれの内心を見透かしていた。

先輩はご自身で思うよりずっと分かりやすい人です、かわいいからそのままでいて下さい、って優しい声音で笑うから、誰よりも愛しい。

 

 そのまま、みどりさんは端正なかんばせを寄せてきて、鼻が触れ合うほどの至近距離で見つめあう。

みどりさんの瞳の天球の中、そこには動揺を露わにした情けないおれの姿があった。

おれの姿、だけがあった。

なんだ、最初から迷うことなんてなかった。

この人の瞳はおれしか映していない。

意識しなければ足元になんて注視できない、だからずっと気付けなかった。

焦がれたその場所には、既に立っていたのだった。

おれは鏡写しの自分にずっと嫉妬していたのか、なんとも恥ずかしい話だった。

そのまま、触れ合うだけのキスをした。

慈しみを帯びた瞳がおれをずっと優しく見つめていた。

 

「例え先輩が記憶を持ち得たとしても、私には関係ないんです。 これからも、お傍にいさせてくれませんか」

 

 間近で見つめ合っているから、瞳が揺れたのが分かった。

おれにとってみどりさんは柳に風で、物腰穏やかながら常に泰然として動揺したりしてるのを見たことがなかった。

そんなみどりさんが、こんな答えの分かり切った問いに少しでも不安を覚えて、それでも勇気を出してくれたことがどうしようもなく愛おしくて、想いを込めて再び唇を寄せた。

なんだか、みどりさんと初めて会った時の気持ちを思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら見慣れない天井だった。

無機質なトラバーチン模様……役所?

いや、消毒液か薬品か分からないけど独特の匂いがする、多分病院だ。

清潔なベッドで寝かせられていたみたいで、身体には見たことのないような医療機器が沢山くっ付いていた。

腕に刺さっている点滴の感覚が酷く不快だった。

どうにかならないだろうかと、誰かを呼び込むつもりで声を出そうとしてみた。

口腔から空気が漏れたような掠れた音しか出なかった。

声帯が上手く機能していないようで、何度試みても声未満の掠れた吐息しか出てこない。

もしかして自分は結構長い期間寝たきりだったんだろうか。

 

 首元を触ったり喉元をぽんぽん叩いてみたり試行錯誤しながら周囲を軽く見渡してみると、手元に『呼出』と書かれたボタンを発見した。

押してみる。

1分程待っていると、すぐさま血相を変えた看護師さんとお医者さんが複数人で訪れてきて結構な騒ぎになってしまった。

 

 

 

 

 

 医師から病状についての説明を一通り受けた後、おれは病院の入口脇に生けてある生花を眺めて和んでいた。

ある種の現実逃避である。

何せ、実感が湧かない。

まるきり何も覚えていない状態でいきなり知らない世界に放り込まれたみたいで、何もかもが敵に見える、なんてことは実際にはないけれど、全てが床材のリノリウムのように温度のない硬くて無機質なものに見えた。

 

 生花はいい。

花を植える、水をあげて育てる。

そんな簡単なことなのに、素朴な愛がなければ続けられない。

誰かが毎日慈しんでいるんだ。

プリザーブドフラワーなんて花の美しさを閉じ込めた便利なものや造花だってあるのに、それでも病院から生花は無くならないことが、なんだか嬉しかった。

この世に生花より美しい花なんて、人が育てた自然より美しいものなんてないのだと思える。

 

 

 ややあって、やっと病室まで戻ってこれた。

大きな大学病院は構造が複雑で迷ってしまう。

病室のベッド脇には場違いなくらい華やかな雰囲気を纏う綺麗な女性が立っていて、まさか自分の知り合いだなんて思わないから、病室を間違えてませんか、と声を掛けた。

 

「えっと……こんにちは! わたし、鷲見 翠 って言います」

 

「実はあなたの彼女なんですよ、『らぶゆー』ってことです……えへへ」

 

 瀟洒で怜悧な女性は、その浮世離れした美しい容姿からは想像も付かないような茶目っ気を見せながら名乗ってくれた。

みどりさんと言うらしい、声に出したくなるような綺麗な名前をしている。

元々おれに近しい人だったらしいのに、記憶のないおれに特に動じることなく対応してくれている様子から、多分担当医にでもおれの病状を先に訊いていたのだろう。

今丁度見にいった、この病院に生けてある生花のような落ち着く香りがして、その場で調べた花言葉を思い出した。

 

『清潔』『優美』『あなたを待っています』

 

まさにこの女性そのもののような言葉ばかりで、花みたいに人に歓びを運んでくれる人なんだと思った。

そんな様子のおれにみどりさんは首をかしげて、それから、目を細めて花のようにふんわり笑った。




世の中に蔓延する闇のヤンデレ(刃物を出して脅してきたり血液を浴びるような描写ばかりされる愚にもつかない偽物のことです)の対立概念である光のヤンデレを描こうと頑張ったのですが、上手くいかず14,000文字で空中分解しました 無念

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