三日後のお昼時、向こう側の私と折り合いを付けて描いていた「烈火の炎」の最終話を書き終え、ほうっと安堵の吐息をこぼす。
何とか死ぬ前に書き終えることは出来ました。ここまで長い道のりでしたが、みんなにも楽しんで読んで貰えるはずです。
「かーさま、ひーも戦えるのー?」
間延びした問いかけに手を止め、ひとえを見るとキラキラとした目が私を見据えていた。「ひとえも戦えるの?」という質問に、どう返すべきでしょうか。
「……ひとえは戦えます。ですが、まだしとりも貴女も子供なので戦うことはオススメしません。いえ、戦えるんですよ?でもお母さんはあなたが心配なんです」
「んー、わかった。じゃあ、かーさま、ひーにもシュパパッ!するの教えて!」
「しゃぱぱ?」
「これ!!」
そう言ってひとえの差し出してきたのは「ぬらりひょんの孫」に地獄に登場するお札を利用した陰陽師達の戦い方。糸色家はどちらかと言えばお父様の世代まで、真面目な祈祷系統に属していると思うのですが。
ひとえは、期待していますね。
「……分かりました。ひとえ、お母さんの書く文字を真似て書いて貰えますか?」
「あい!」
元気溌剌に答えるひとえは私の真似をして長方形のお札に文字を書いていき、ひとえは「出来た!」と笑ってお札を差し出して来ます。
「では長方形を縦に折り畳み、唇で挟みます。力んだり力を込めるのはダメですからね?」
「んい!」
「妖掴みの陣の呪符です。止縛法や身固めの法に類する技法で、呪符を噛んでいる間は三、四本目の手を生み出し、妖怪や幽霊を捕まえる事が出来ます」
「夏目友人帳」の陣による方術ですが、原理は「ぬらりひょんの孫」や「地獄先生ぬ~べ~」に登場する技法を加えた三種混合の方術です。
「……消えちゃったよ?」
「フフ、霊視の出来るひとえは直ぐに使えるようになりますよ。お母さんはそういうのは苦手ですから、倒したり捕まえたりするより護法ばかりでしたね」
「ほんと!?」
「はい。本当です。……ところで、いつになったらお母さんの事を離してくれるんですか?」
「もーちょっとだけ」
「んッ、触り方が」
着物の上を這う手がもどかしさを感じるほどに変で、ひとえを見ると両手をワキワキと動かして、イメージを固めているようにも見えます。
「ん!ひーちゃん、なにしてるの?」
「かーさまで練習!」
「あ、私ってサンドバッグ扱いなんですね」
娘からもそういう扱いなのかと悲しみを覚えつつ、ひとえとしとりのやり取りを眺めます。いつ、助けて貰えるのでしょうか?