「話ってなんだ?」
神谷道場に集まった剣心と薫、弥彦、燕、恵の奴らを見ると神妙な顔を作って、オレを見上げる。しとりと剣路の話かと思ったが、違うみたいだな。
景を呼んでいないって事は景に関わることだ。
「左之、座るでござるよ」
「ああ、景は呼ばねえのか?」
「えぇ、ちょっと景さんに関わることで左之助に聞きたいことがあるのよ」
薫の声は重く緊張感を持っている。
オレに話さねえといない大事な事をアイツが隠しているとは思えねえが、薫は冗談でこんなことをするヤツじゃないのは知っている。
「景さんの余命って、どれくらいなの?」
「……それを聞いてどうする気だ」
「薫さんに怒るんじゃないわよ。医者として言わせて貰うけどね、景さんの身体はもうボロボロでああして笑っているのも不思議な状態なの。景さんはいつも無理するから、本当は入院してほしいの」
「左之助、オレ達にも教えてくれ」
全員がオレの事を見つめる。
景のことを心配して、オレに聞いている。
「……景の余命は、一年だ」
そう言葉を吐き出すように告げ、自分でもアイツが死ぬことを認めてしまった現実に吐き気がする。アイツのいないこれからに身体が朽ちる想いが溢れる。
「そう、蝶野さんがカルテを見せてこないから怪しいとは思っていたけど。そんなに進行していたのね、景さんちゃんと薬を飲んでいるわよね?」
「ああ、飲んでるよ」
飲む度に苦しそうに顔を歪めて、咳き込んで血を吐いているのも知っている。バレていないと、知られたくないと、必死に隠すアイツを問い詰めるなんてオレには絶対に出来ない。
「景は死ぬんだな……」
「早計はいかんでござるよ。糸色殿を助ける術をドクトル殿が見つけると」
「アイツはオレに十年も病気の事を隠していた。二十九年文の半分も一緒に生きていないアイツが隠していたのに、オレは気付きもしなかった」
「化け物にはなりたくないね」
ボソリと呟く恵に視線が向く。
「景さんが言っていたのよ。もう生きるには、人を止めるか自分を捨てる以外に余地はないって。アレが本当なら治す方法は本当にないのね」
「……おれもそれは聞いた。だが、景は絶対に人間をやめようとはしない。矜持ってほどじゃねえけど、アイツは人であることを変えたくないんだろうな」
オレの言葉に何人かは聞いたことがあると反応した。景はよく口にしていたから、みんなも覚えている。ちゃんと景の事を覚えている。
アイツが忘れられるのを怖がるのは分かっている。だから、みんなでばあさんじいさんになるまで生きたいと願っている。