スラリと黄金に輝く長刀「黄金剣」を刀袋から引き抜いて構える安居院さんに対し、しとりも鳳凰天舞に手を伸ばし、緩やかに鞘に納めていた刀身を抜き放つ。
小さな女の子が向かい合い、剣を構えるという光景の異様さを体感しつつ、一歩目で神速に至るしとりの速さに追随できずとも迎え撃つ安居院さんの勘の鋭さに困惑し、ひとえを見てしまう。
キラキラとした目です。
「ん、返し技に特化した技?」
「オホホホ、私の剣閃は一撃ではないわよ」
幹竹割り。
諸手面打ち。
大上段(頭の上まで剣を構える体勢)の構え。
おそらく示現流の流儀を学んだのでしょうが、まだ小さな女の子でしかない安居院さんにとって、大上段の構えは負担も大きく振りに遅れを伴う。
「示現流の初太刀、躱せます?」
「なら、その上を飛べばいい」
「は?」
軽やかな足捌き。
しかし、剣術や剣道の足捌きではなくボクシングやフルコンタクト空手のように小刻みにステップを踏み、間合いを変えるフットワークに近しい。
「般若さん、こっそりと拳闘を教えましたね」
「ハッ。糸色殿に教えて戴いた流儀はしかとしとり様に御返し致しました」
「はんにゃー、ひーもできる?」
「ひとえ様にも出来ます。是非、爺やに」
貴方も爺やの位置を狙っているんですね。
「しかし、しとり様の構えは?」
普段は正眼に構える太刀筋を崩し、右手だけに構えたしとりはステップを踏み、跳ねた。
「ちえぇりおおぉ!!!」
「ん、見えてるよ」
────当たる瞬間、しとりは左右に割けた。
「ぎゃん?!」
「ん!わたしの勝ち!」
単なる比喩表現ではなく、私の「目」を上回る速さで左右に踏み込んだ。いわゆる、二重操体法です。右脳左脳を切り分けて、同時に行動を起こす。
風林寺隼人の秘技「二重身法」を簡易的に引き起こしている状態です。しとりはバトルセンスの高さは凄まじいとは思っていましたが、まさか自分自身の才覚だけで無敵超人の秘技に辿り着くなんて想像以上─────。
「も、もっかいですわ!!この私が高々二つか三つしか変わらないチャイルドに負けるなどありません!!ちぇりあおっ!」
……ちぇりおなのは、わざと?
いえ、安居院さんの声は確かに「とがめ」にそっくりですけど。まさか、それが分かっていて寄せているの?と首を傾げつつ、しとりに挑み、負ける安居院さんの事を見つめる。
「くぅあん?!」
「さっちゃん、よわい!母様より動けるけど、ナメクジより遅くて見易い!」
「わたしが、クソザコナメクジ……!?」
そこまでは、言ってませんね。