三つの闘技場で殴り合い、切り合い、掴み合い、投げ合い、防ぎ合う事を繰り返し、蛮竜を使わずに第一闘技場で優勝した左之助さんは楽しかったのか。
かなり昂っている気がします。
第二闘技場は陸奥天兵。緋村剣心の木刀を破壊しての優勝にちょっとだけ驚きつつ、当の本人は「いやー、歳でござるな。はっはっはっ」と笑っているものの。
四乃森蒼紫や石動雷十太、凍座白也など彼の持つ「最強の称号」を求めていた剣客は凄まじく恐ろしい視線を、のほほんとする緋村剣心に向ける。
まあ、シード枠として出場させますけど。
「緋村さんって煽るの上手ですよね」
「景さんは人の事言えないわ」
「……たぶん、風評被害です」
「普通によく煽ってるわよ?」
そんなことはないと思うんですけど。
関係者用の観客席に座ったまま、そう薫さんと話していると無茶した九能君を叱り付ける恵さんが見えました。歳上女房というヤツです。
昔は、私も歳上扱いでしたけど。
今は左之助さんより年下として、年齢的に真っ当な扱いを受けています。まあ、それでも三十代までもうすぐなので反応に困りますけど。
そして、第三闘技場で勝ったのはしとりです。
男女混同の仕合を制したものの、剣路君と戦うときに加減を間違えてしまった事にショックを受け、顎先を刈られて気絶した剣路君に膝枕をしています。
「ん、ごめんね」
「いいのよ。しとりちゃん、あそこで加減していたら剣路も怒っていたから」
「そうかなあ?」
「私は戦う側の人間ではありませんので、何とも言えませんけど。しとりは本気で剣路君と戦ったのは良いことだと思いますよ」
まあ、流石に一撃必殺は驚きましたけど。
「どこで、あの顎を立つ技を?」
「ん、般若が教えてくれた。顎をこうやって叩くと意識が消えるんだって」
「……景さんの教えた拳闘かしらね」
「あ、あはは…」
私は戦えませんからね?としとりに伝えつつ、また開催しようと話す集団に「次回は四年後にしましょう。休養と研鑽に適しているのは四年ですから」と伝えたら、左之助さんだけが翳る。
分かっているでしょうが、私はその時にはいません。ですから、次の主催者はしとりかひとえのどちらかになるでしょうね。
ちゃんと守ってあげてくださいね。
「景さん、左之助が睨んでるわよ」
「きっと、しとりの膝枕を受けている剣路君に嫉妬しているんです。あんなブツブツと怖いことを言っているのは聞きたくありません」
「読唇術も使えるの?」
「演芸の嗜みだとお父様に聞いたので、これくらいは出来ますね」
「物知りなのに、たまに鈍感よね」
そんなことはありませんよ?
そう言いながら、私は本戦───無事に予選を勝ち残った人達の名簿を眺め、不安に思う。