恵さんに目の包帯を変えて貰う。
「……目に異常はないわね」
「それは良かったです。お風呂のときも、その……大変でしたから」
そうっと自分の身体を抱き締める。他意はありませんけど、左之助さんがちょっと怖かったと言いますか。しとりとひとえの料理は美味しかったですけど。
まだ目を覆うのは少し不安になります。
「あんた、景さんになにしたの?」
「何もしてねえよ。風呂に連れていっただけで、嫌がることはなにもしてねえよ」
「……怪しいのよね、普段が普段だから」
「それは、まあ」
サッと私は見えないながらも身体を守ります。まだ三日目ですけど、左之助さんはやっぱり破廉恥です。左之助さんは破廉恥大魔王です。
「嫌だったならやめたぞ?」
「景さんが断れるわけないでしょうが」
バシバシと叩く音が聞こえます。
一応、左目は安全ということで包帯を外すように巻いています。志々雄真実みたいで、ちょっとだけワクワクします。
「風呂はどうする?」
「自分でもういけますよ?」
「そうか」
残念そうに私を見つめる左之助さんの手を握り、私は「まだ右目は包帯を巻いていますから支えてもらえますか?」とお願いしました。
「景さんに聞きたいことがあったのよ」
「なんですか?」
「独り言が増えたそうね」
「独り言ではありませんね。妖怪で私の話なら私が話そうす。誤魔化すの苦手なりに頑張っていたのに、ひどいです」
「また取り憑かれたのね」
「いえ、どちらかと言えば赤ちゃんのときから一緒に居てくれたらしいです。出てこれるようになったのは、ごく最近ですね」
そう言って眼鏡を掛ける。
ようやく顔が見れますと安心していると、しとりとひとえが部屋に入ってきました。しとりはちょっとだけムッとしながら、怪我した剣路君を引きずってきました。どうやら今日も追われていたようです。
「一先ず、難しい話は終わりましょうか。恵さん、剣路君をお願いできますか?」
「えぇ、構わないわよ。何したらこんなにしとりちゃんを怒らせるのかしら」
「そのまま嫌われちまえ」
左之助さんの言葉に苦笑を浮かべつつ、珍しいほどに少し怒った表情のしとりの頭を優しく撫でてあげ、しとりの事を心配します。男の子のイタズラは時として、女の子を怖がらせてしまいますからね。
「ん、母様も見たら怒る」
「景が怒るのか」
左之助さんも少しだけ興味を引かれたのか。私の事を見つめているのが見えましたけど。なんだかイヤな予感もするので悲鳴しておきました。
怖いものは、怖いのです。