次の仕合はしとりと剣路君です。
「ん、楽しみ」
そう言ってしとりは刀を選んでいます。電光丸は当然のように置かれ、竹刀と木刀、妖刀が吟味されて、相手に相応しいものを選んでいます。
正直に言うと不安です。
真剣を選んだ場合、しとりはトラウマを抱えるかも知れませんし。もしかしら、もっと酷いことになるかも知れないと私は包帯を巻いた自分の顔を触り、右目を押さえて、少し考えてしまう。
「しとりは楽しみなんですね」
「ん、楽しみ!けんちゃん、わたしに勝つって言ってたからワクワクする。……父様、けんちゃんが負けても許してくれるかな?」
「それは、難しいですねえ」
左之助さんはしとりに勝つことを条件にしていました。ですが、この大会で一番成長しているのは間違いなくしとりであり、既に左之助さんより強いかも知れないのが、今のしとりです。
そもそも手傷を負うイメージがしとりには浮かばないんですよね。切れば問題ないというスタンスですが、しとりは努力する女の子です。
料理の腕前はまだ私が勝っていますが、いずれ来年か半年後には抜かれていますね。お洗濯やお裁縫も覚えて、しとりは花嫁修業は終えています。
「母様はわたしに負けてほしい?」
「貴女の勝敗と未来です。───が、私も心を鬼にして言いましょう。しとり、勝ちなさい。手心を加えられ、わざと負けたと知った剣路君がどう思うのか。あなたにも分かりますね」
「ん、ごめんなさい」
しょんぼりとするひとえの頭を優しく撫でてあげ、しっかりと分かっていることに安心します。しかし、左之助さんだったら絶対にボコボコにしろって言いますね。
「母様、わたしね。
キラキラと光る瞳と裏腹に、しとりの抑えていたものが少しずつ溢れてきていますね。相楽しとりではなく、糸色しとりとして────。
戦骨の闘争本能が垣間見えています。
それは、まあ、いいんですけれど。
「しとり、膝枕をしてあげます」
「ん!」
私の太ももに頭を乗せるしとりの頭を優しく撫でてあげ、見稽古の更に先に進んでしまいそうに見える。新しい何かを身に付けそうになっている、しとりに一抹の不安と、それ以上の期待をしてしまいます。
いったい、どこまで行けるのか。
限界を知らない子の強さが限界を迎えるのか、それを越えてしまうのか。戦えない身体でも気になってしまうものですね。