「ひーちゃんはかわいい」
「ねーさま、きれい!」
嬉しそうに笑っている。
勝負のために着替えたしとりはゆっくりと目の前に立つ。剣路君の事を見据えています。左之助さんならきっとボコボコにしろと言うでしょうね。
しかし、ようやくです。
しとりも激情を秘めた顔で笑っています。しとりのほうが強いと分かっていますが、自分に追い付こうとする男の子にしとりは期待しています。
「負けちまえ」
「左之助さん、ダメですよ」
私がそう言うも左之助さんは笑顔で誤魔化しました。そういうところはダメです。左之助さんの悪いところですし、やっちゃダメです。
私の言葉に不満そうな左之助さんに苦笑を浮かべつつ、私の言葉を信用してほしいんですけど。左之助さんはそのことにあまり気付いていないです。
いえ、気付いてはいるんですよね。
ただ、ちょっとだけ間が悪いと言いますか。
「(なんと言えばいいんでしょう)」
「母様、わたしの技を見てね」
「……えぇ、楽しみにしています」
しとりだけの技という言葉に緋村剣心も興味を持ったようです。しとりはすごいですからね、きっとビックリするような必殺技です。
「オレは聞いてないぞ?」
「ん、言ってない!」
素直なしとりの言葉にがっくりとする左之助さんに苦笑を浮かべつつ、私は抱っこしてもらい、主催者席に向かい、しとりは闘技者の場所に向かいます。
向こうには剣路君が立っています。
しとりと違って、緊張と焦りを感じます。望むなら両目でしっかりと見たかったと思いつつ、操さんの紹介を聞きます。
しとりと剣路君の関係にヤジを飛ばす人はいません。むしろ、剣路君のことを応援する声も多く、しとりの強さに勝つところを見たいと思うのは当然です。
「ねーさま……」
「フフ、しとりなら大丈夫ですよ」
「景はどっちに勝ってほしいんだ?」
「どっちもです。悔いが残るのは一番の悲しいことですから。それだけは止めたいです」
私の言葉に左之助さんは怪訝そうにしますが、辛いものなんですよ。届きそうで届かない、あともうすこしだったのにと思うのは何よりも辛いです。
「しとりは勝つんだな」
「あい!」
「......勝つ目は剣路君にもあります。ただ、そこにたどり着けるのか。問題なのはそこです」
明神君は気付いているでしょうけど。
しとりは確かに強いです。でも、身体の耐久性は私より少し上、普通の女の子です。ひとえは硬くて力強いですが、女の子の柔肌です。
ハッキリと言えば、剣術特化です。