しとりは白無垢を着て、笑った。
あの笑顔はとても綺麗で、左之助さんも認めるしかないと諦めました。安心と喜びでしとりの頭を優しく撫でて、いっぱい褒めました。
「ん、負けたのに褒められた」
「フフ、良い負けもあるんです」
そう言って笑えば「でも、もう負けない」としとりは言いきった。当然ですが、そこで言いきると剣路君がかわいそうに思えるんですよね。
「剣路、がんばるでござるよ」
「...おう」
「泣かせちゃだめよ?」
「.........はい」
「ん、チューする?」
「ダメだ」
左之助さん?と見ると絶対に許さないという視線をしとりに向けていますが、しとりは普通に剣路君のほっぺたに唇を押し付けました。
我が娘なのに大胆です。
「ん、父様は嫌々する母様をいつもギューする」
「しとりさん?」
左之助さんから、しとりに視線を向ける。
そっちでも最強なのでしょうかと思うもしとりの頭を優しく撫でてあげ、深く考えないようにします。こういうのは、当人の決める問題ですし。
私達は見守りましょう。
「ねーさま、きれい!」
「ん、ひーちゃんも着ようね」
「あい!」
姉妹の会話に巣立つ姿を想像した左之助さんはまた脳が拒絶したようです。しかし、さっきから、ずっとそれですねとも思わなくもありません。
ニコニコと笑っているしとりに安心しながら、思い残すこともないと安心する反面、左之助さんが暴走して、ひどいことをしないかと考えてしまいます。
信頼していますし、信用もしています。
しかし、良くないことをするひとです。
「ねーさま、にーさま、夫婦!」
「ん、大黒柱」
「うっ」
.........そこは、まあ、おいおいですね。
孫が産まれたら糸色家を継いでほしいですし、できれば仲良く生きてほしいんですけど。どの時代にも悪い人はいますから、心配です。
「とーさま、ひーも夫婦になっていい?」
「ぐふっ」
バタリと倒れた左之助さんに私はクスクスと笑いながら、膝枕をします。こうしておけば、しばらくは起きませんからね。
「ん、けんちゃんは養う」
「いや、働くから」
「んーん」
なんとも言えない会話に苦笑を浮かべつつ、左之助さんもこんな感じだったと思い出します。きっと、これからも大丈夫です。
だって、しとりは強いですからね。
「ん、母様も聞いて。私も働く」
「何するんですか?」
「世界を歩く!」
それは、左之助さんがするはずだったことだと思いながらも「わかりました。応援します」と私はしとりに言います。
大丈夫です。