某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

1540 / 1540
花と散る 序

「糸色殿」

 

「はい、なんですか。緋村さん」

 

「お主、窶れていないでござるか?」

 

「そんなことありませんよ?」 

 

いきなり、そんなことを言われたことに少しだけ驚きつつ、私は緋村剣心を見据えます。本来は緋村剣心も幕末の時代に浴び続けた血によって死んでいたんですが、普通に健康なんですよね。

 

良いことですが、不満です。

 

「左之、そうでござろう?」

 

「景はいつも綺麗だろ?」

 

「左之?」

 

左之助さんの返しに困惑する緋村剣心に「私は健康ですから大丈夫ですよ」と言うと左之助さんにも緋村剣心にも「健康なら血は吐かない」と言われました。

 

ぐうの音も出ません。

 

いえ、わかっていますよ?

 

確かに私は病弱で、生きているのも奇跡にちかしいですが、しとりと剣路君の子供を見るまでは、まだ時間は残っています。

 

大丈夫です、私は大丈夫です。

 

ちゃんと見届けますから、しとりの幸せを見届けますから、心配しなくて大丈夫です。私はちゃんと左之助さんの奥さんとして、しとりとひとえの母親として生きたと胸を張りたいです。

 

まあ、それ以前に孫を抱っこしてみたいという気持ちもあります。左之助さんは、それをちゃんと分かってくれています。

 

「私は大丈夫ですよ」

 

「妖しいでござる」

 

「まだ、それ言うのかよ」

 

「私は妖しくないですよ」

 

そう言って緋村剣心に注意するものの、あまり信じてもらえませんでした。やはり、むずかしいですし、とてもとても怖いですね。

 

「ん、母様を苛めちゃだめ!」 

 

「苛めてねえぞ、しとり?」

 

「ほんとう?」

 

「父ちゃんがウソついたことあるか」

 

「けんちゃんと夫婦になったのに、まだ怒ってる。認めたのに、怒るのはウソ」

 

「左之ぉ......」

 

「なんだ...」

 

左之助さんに呆れる緋村剣心。しとりはフンスと胸を張り、自信満々にしています。やっぱり、そういうところは左之助さんにそっくりです。

 

─────ですが、身重ではだめです。

 

「? どうしたの?」

 

「いいえ、しとりは良い母親になりそうです」

 

「ん、母様のおかげ。......なんで、私のお腹を撫でるの?」

 

「フフ、なぜでしょうねえ?」

 

「ヴッ」

 

「左之!?」

 

左之助さんはショックが大きすぎて気絶してしまい、緋村剣心は必死に呼び掛けています。親友のそういう姿を見るたびに焦っていますけど。 

 

孫が女の子だったら、左之助さんと同じようになりますし。きっと、左之助さんよりも大変なことになります。そうならないように頑張らないとです。

 

けど、本当に大丈夫でしょうか?

 

 

 

 

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