機体が軋む。
この迎撃基地に、突如現れた敵。未登録機体。
錆だらけの旧型AC、それも見るからにジャンク品。
ところどころは改修されているようだが、それに変わりはない、はず…その筈だった。
基地は既に破壊され、出撃したSG、LCは悉くが撃墜されている。
残る兵力はもはや私一人だろう。しかし撤退は許されない。
「この機体、一体…なんだ?!」
崩れるような頭部パーツ、壊れ光を失っているカメラが不気味…初めての感覚、顔が引き攣っているのを感じる。
ただ逃げ、撃ち、それを繰り返す。だが手応えはない。一か八か、轢き殺そうかとは試したが、幽霊のように当たらなかった。しかしそれでいて逃げられない。かたやAC一騎、対するはカタフラクト。彼我の戦力差は明確。だが戦況はまるで逆だ。
少しづつ距離が詰められている。ACS負荷がゆったりと蓄積され、少しづつ、少しづつ。真綿で首を絞められるかのような状況が、機体から放たれる妙なプレッシャーが、焦燥を加速させる。
しかし、幸か不幸かそれは、長く続かなかった。
「ジャンクAC一体如きに、カタフラクトがこんなッ…?!」
息をするのも忘れていたか、或いは恐怖か。不意に緊張の糸は切れてしまった。死神はそれを逃さない。
目の前で破裂する榴弾。鳴り響く、ACS限界を告げる警告音。
気づけば目の前には、異形の破砕機の影があった。
『…ッコード5 戦闘ログを送信 至急、調査をッ…!』
視界がはじけた。
『コアMTの破壊を確認。』
「死んだか。しかしここは…」
死神はポツリと呟く。
いつぶりだったろうか?それほどまでに、彼が言葉を発することは少ない。
しかしそれは、驚きと共に薄く口をついて出た。
この澱んだ空、荒野、私が居たルビコン3ではない。
それにカタフラクトもだ。
こんなものを駆っていて言えることではないが、こんな何世代も前の兵器が運用されている。それも口振りは一戦級兵器だ。
それよりも。
私は死んだ筈だ。
再びコーラルに火を付け、いつかウォルターの言った男のように一人、満足して。
だが私はこうして、未だ生きている。
しかしこの状況、一つだけ、思い当たるものがある。
この景色、この場所、この空気。
だがそれはあり得ない。
『過去に戻った』などと、そんなもの…妄言でしかないだろう?
死神は、今度こそコーラルを抹消し、そうして破綻の芽を摘みきるという目的を果たし、星と共に命を終えた。その筈だった。
しかし未だ死神は死せず。
星全てを集積した純コーラルのエネルギー、それが起こした奇跡か、或いはかつての友人の呪いか。
いずれにせよ、かくして死神は三度、ルビコンを駆ける権利を手にすることとなった。
役者が増えたこの世界には、果たしてどのような未来がもたらされるだろうか?
それは誰も知らない。
続くかは知らない