86―近未来日本国防軍戦記― 作:RIM-156 SM-2ER
原作:86-エイティシックス-
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作者がちまちま読み・見ていた「86」のアニメをようやくすべて見終えたことでどうしても書きたくなって書いてしまった遅咲き作品。
星暦21XX年6月21日
<共和制ギアーテ連邦 西部戦線>
「・・・・ッ!右発砲炎!」
戦車小隊の右側面に展開したレギオンが、
しかし、レーヴェが放った120㎜APFSDSが31式戦車の側面装甲に着弾することはなかった。その前に、戦車の側面に設置されたレーダーと上面に設置された複合光学センサーがAPFSDSの発射を探知。即座に弾道を予測し、砲塔の四隅に設置されたアクティブ防護システムが、APFSDSを迎撃したからである。
この優秀なアクティブ防護システムは、レーダーと複合センサーが攻撃を探知するとコンマ001秒で弾道を予測、砲塔四隅に設置された発射機から発射された迎撃体が対戦車ミサイルや対戦車ロケット、APFSDSの側面で爆発することで、弾頭を起爆させるか、弾芯を破断することで迎撃を行えるシステムであった。
むろん再装填装置に搭載されている迎撃体の分しか攻撃を回避できないが、それでも1個の発射機当たり5発、計20発が搭載されているなど十分な防御性能を有していた。これがヴァナルガンドを上回る防護力の一端であった。
「右200!弾種徹甲!」
攻撃を探知したことでAI戦闘補助システムが、敵の攻撃を分析して、位置と目標、そして最適弾種を車長用の
今回攻撃を仕掛けてきたのは、レーヴェ。その正面装甲は、31式戦車の有する劣化ウラン製の130㎜APFSDSならば十分に貫徹可能であった。すでに砲手は砲塔を旋回して照準とつけており、自動装填装置が砲塔後部弾薬庫から130㎜APFSDSを装填する。
「てぇ!」
51口径130㎜滑腔砲の砲尾が大きく後退して、燃焼薬莢の弾底部だけが排出される。
FLIR越しに、レーヴェに130㎜APFSDSが着弾して、貫通部から炎が吹き上がるのを確認する。同時にレーヴェの周辺には、高周波ブレードと対戦車ロケットランチャーを装備した
「ちっ!20㎜機関砲を・・・・!」
装甲薄いグラウヴォルフを撃破するために、砲塔上部の
しかし、少しばかり飛翔したところで戦車への直撃コースに乗っていたロケット弾が空中で爆発する。
31式戦車4型より砲塔後部に搭載されているレーザー迎撃システムが、戦車への直撃コースを取っていたロケッド弾を迎撃したのである。
これもアクティブ防護システムと同じであり、複合光学システムとレーダーが探知した目標を、コンピューターが即座に分析して弾道を予測。直撃軌道上にある砲弾やロケット弾、ミサイル、自爆UAVに対して高出力レーザーを照射することで起爆させて迎撃するシステムである。こちらはAPFSDSなどこそ迎撃不可能なものの、発電機がついているために回数制限がないという代物であった。
「・・・・ッ!」
しかし、それでも元々は大型トラックに積載する大掛かりなシステムを小型化したものなので、飽和攻撃には対処しきれず、隣にいた31式戦車の上部装甲に2発が着弾する。
「3号車!無事か!」
グラウヴォルフに20㎜機関砲をばらまきつつも、最近配備され始めたばかりのパラレイドシステムを使って、車長は3号車と通信を執る。
『・・・こちら3号車。1発目は防げたが、2発目が貫通。C4Iシステムに異常、砲手が負傷した!離脱する』
「了解した・・・・ッ!?」
3号車が後退を始めて、車長がほっとした瞬間であった。ガァーンという耳障りな音ともに戦車がものすごい衝撃に襲われる。レーヴェに向けた正面装甲に、120㎜APFSDSが着弾。ERAが作動して、弾芯を破断あるいは軌道をそらして、正面装甲がはじき返したのである。
「やろう・・・・!うてっ!」
すぐさま反撃の130㎜滑腔砲を放つ。ERAなどつけていないレーヴェのRHA換算650㎜相当の正面装甲を、RHA換算950㎜の貫徹力を誇るM1231 130㎜APFSDSがいともたやすく貫く。内部で削れた劣化ウランの金属粉が発火して、内部を燃焼させる。
「
車長の命令に装填手兼無人機管制手が頷いて、タッチパネルを操作する。31式戦車の後ろをついていた、少しばかり小型の装甲車両が、速度を上げてレギオン部隊の側面に回り込む。
国防軍が誇る49式無人戦闘車であった。正面装甲は120㎜戦車砲に耐えられるだけの装甲しかなく、アクティブ防護システムなどは非搭載、武装だけは130㎜戦車砲を有しているという31式戦車の下位互換であるが、遠隔操作かAIによる自律戦闘モードを選択可能であり、国防軍では戦車隊を掩護する補助兵器として導入されていた。
このAIシステムはレギオンの搭載する人工知能に大きく劣る性能であり、単純な戦術しか選択できないなど単独で運用するには難があるが、それでも脅威度判定や攻撃などは自動で可能であるなど、補助兵器としては非常に優秀であった。
「ッ!2号車!側面にレーヴェ3体!」
『しまっ・・・・!』
車長は、回り込んで2号車の無防備な側面装甲を狙うレーヴェを見つけるとすぐさま警告を出した。自車も2号車も砲塔を回してレーヴェを撃破することで対応しようとするが、その前にレーヴェが立て続けに120㎜APFSDSを放った。
1発目、2発目はアクティブ防護システムによって迎撃されたものの、発射機の再装填が間に合わずに3発目が側面装甲に着弾。2号車は炎を吹き上げた。
「ちくしょう!弾種、徹甲!撃て!」
かたき討ちといわんばかりにAPFSDSを打ち込み、レーヴェを一体撃破するが、残る2体のレーヴェはすでにこちらに照準を合わせている。車体の旋回は間に合いそうにない。
車長が死を覚悟したとき、上空から急降下してきた何かが2体のレーヴェに突っ込んで爆発する。
後方で無人機大隊があげた、自立徘徊型の対戦車自爆ドローンである。
エリアを設定すれば、24時間その周辺で飛行を続け、AIが
自爆ドローンに搭載されたタンデムHEAT弾頭が、レーヴェの脆弱な上面装甲を貫通し、内部にメタルジェットをまき散らす。
そうしてレーヴェの動きが止まった時、次は地上から1体のフェルドレスが現れてレーヴェに接近する。それに気が付いたレーヴェは、先ほどまで31式戦車に向けていたその主砲をフェルドレスに向けようとするが、その前にレーヴェの背後に回りこんだフェルドレスは、背中に背負っている88㎜滑腔砲を叩き込む。
至近距離から放たれた88㎜APFSDSによって、内部の流体金属性の中枢系を焼き尽くされたレギオンはその場に頽れて活動を停止する。しかし、フェルドレスはそんなレーヴェに目を向けることすらなく、もう一体の懐にもぐりこんで、高周波ブレードでレーヴェの正面装甲を叩ききった。
「・・・・すげぇ」
あまりにすさまじい戦いぶりに茫然と照準器越しにそれを見ていた砲手が、ぽつりと感嘆の声をつぶやいた。
ヴァナルガンドとは違う、軽量さが目立つフェルドレスとその胴体に描かれた首のない骸骨の騎士のエンブレムを見た車長は、連邦に派遣されている国防軍人ならば知らないものはいない、
「あれが、レギンレイヴと86、か・・・・」
周りで燃えるレギオンと無人戦闘車と戦車の残骸、その中心で佇むレギンレイブの姿を見た車長は、ごくりとつばを飲み込んだ。
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星暦21XX年7月08日
<共和制ギアーテ連邦 西部戦線上空>
近代の戦争に必要不可欠であった航空機であったが、対レギオン戦争勃発直後より空はレギオンによって奪われていた。
これはレギオン戦争直後にばらまかれた
「・・・・スティラー03、ラジャー」
しかし、その奪われたはずの戦場の空を、4機のF/A-3A戦闘攻撃機とそれを改造した1機のEA-3A 電子攻撃機が飛ぶ。
レギオンに奪われた制空権を、国防軍はほぼ力業で取り返していた。
いかなアインタークスフリーゲといえども、一度に拡散できる電磁波には限度がある。国防軍は、これを利用したのだ。
敵のロケット弾、迫撃砲弾、榴弾砲弾、ミサイル、ドローンから友軍を守る戦域レーザー迎撃システムを前線に配置し、後方に設置された発電プラントから送られてくる膨大な電力をもとに、半径50㎞以内のアインタークスフリーゲを焼き尽くしたのである。低空にいるものに関しては、味方歩兵や兵器の電子機器への影響を考慮して攻撃していないものの、上空1,000m以上にいるものさえ殲滅できれば、航空機の運用に大した影響は出なかった。
これは雨や霧の日に関してはレーザーが使い物にならないために運用できないものの、悪天候時に航空機を運用したい場合は、サーモバリック弾頭ロケット弾の大量投入で、範囲内のアインタークスフリーゲを片っ端から吹き飛ばすことで解決した。
『スティラー03、今日も頼んだぞ?』
前を飛ぶF/A-3Aのパイロットから、そんな無線が入る。
コックピット前面に設置された大画面の1枚ディスプレイに、レーダー、
スティラー03こと、EA-3のパイロットは自身に搭載されている武装の情報を確認する。胴体のウェポンベイには、計4発の対レーダーミサイル。両翼の計4つのステルス武装ポッドには合計24発の防御用空対空ミサイルこと、AIM-226 MSDAⅡが、最も胴体に近い2つにSHiELDレーザー迎撃ポッドが搭載されている。
これがレギオンから空を奪い返すことのできた理由の一つであった。
アインタークスフリーゲを排除した空域で、ステルス無人電子戦機や徘徊型ドローンがシュタッヘルシュバインからの探知を逃れつつ、対レーダーミサイルや小型爆弾、あるいは自爆によって、シュタッヘルシュバインを撃破するという
それでも生き残ってしまったシュタッヘルシュバインに関しては、前線航空部隊に電子戦機が随伴し、
―ピピピピピ
ミサイル発射を知らせるRWRの不愉快な電子音が鼓膜を叩いた。すぐさまパイロットはチャフを射出して機体を旋回させる。
すぐさま後ろにいる電子戦管制士官がGに耐えながらも発射されたミサイルを選択して、MSDAの発射ボタンを押し込んだ。
両翼のステルスポッドが開いて、そこから放たれる16発のMSDA。探知されている8発のSAMから放たれるレーダー波を頼りに、1発あたり2発のMSDAが突っ込んだ。6発が撃墜できたものの2発が攻撃機に近づく。
「レーザーON!」
両主翼下に搭載されたSHiELDレーザー迎撃ポッドが起動し、そのレーダーと光学センサーが探知したミサイルに高出力レーザーを照射する。数秒レーザーを照射された地対空ミサイルは、そのシーカーが破壊されたのか、あるいは弾頭が誘爆したのか、1発は爆発し、もう一発はそのままあらぬ方向へと飛んでいった。
その間に電子戦管制士官は、そのミサイルを発射してきた不埒なシュタッヘルシュバインが放つレーダー波を見つけると、対レーダーミサイルを選択し、レーダー波をロック。
「・・・・」
パイロットも攻撃のためにシュタッヘルシュバインに機首を向け、そしてそのタイミングで電子戦管制士官がミサイル発射ボタンを押し込んで、ウェポンベイから1発の対レーダーミサイルが放たれた。
数秒滑空した後にロケットモーターに点火、そのままレーダー波に向かって一直線に飛んでいく。どうやらミサイルを探知したらしいシュタッヘルシュバインが、レーダーを止めたようだがすでに遅い。
そのまま対レーダーミサイルは、最終探知地点の付近まで飛んでいくと、赤外線画像シーカーが自動で目標を探索する。急いでその場を離れようとするシュタッヘルシュバインをシーカーが補足。その側面に突入した。
「敵アンチエア撃破。周辺空域に脅威なし・・・・」
チャフをばらまいて回避行動をとっていた攻撃機隊も再び編隊を組んで、目標とされた空域に向かう。
少しばかり飛ぶと、地上に白銀のきらめきが広がっていた。密集したレギオンの白いボディが太陽光を反射して、まるでさざ波のようになっている。
所々で爆発が起こっており、どうやら地上では激しい戦闘が行われているようだ。
『メイス14、後方にディザノウリア。羊飼いと思われる・・・・』
『こちらも確認した、攻撃針路に入る』
4機編隊を崩し、2機のF/A-3が針路を変える。
『メイス13、ドロップレディ・・・・ナウ!』
前方のF/A-3がレーザー誘導爆弾を投下する。おそらくは指揮官型―損傷の少ない人間の脳を取り込んだ
レギオンは圧倒的な物量を誇っている。しかし、当初そんなレギオンにも弱点があった。それが中枢処理系の寿命である。暴走に備えたものであろう寿命は6年であり、これを過ぎると処理系がダウンしてレギオンは行動できなくなる。
しかし、レギオンはこれの問題を死者の脳を取り込むという手段で解決した。特に損傷の少ない人間の脳を取り込んだと思わしき、通称「羊飼い」は人間同様の高い知性を有しており、これらに指揮されたレギオンは通常のものよりも厄介さを増す。
航空攻撃では圧倒的物量に対して、焼け石に水であると判断した国防空軍は、この羊飼いと思わしきタイプがよく搭載されているディザノウリアを破壊することで、地上部隊の支援を行う戦法にチェンジした。
『・・・・ヒット。ターゲットデストロイ』
FLIR越しに誘導爆弾がディザノウリアに着弾し、爆発したのを確認したのであろう武器管制士官の報告がヘルメットに内蔵されたヘッドセットから聞こえてくる。
『周辺戦域の全ディザノウリアを撃破。おそらく羊飼いと思われる奴は始末したが、爆弾が余っている。こいつを屑鉄どもにプレゼントしてくるから、スティラー03はもう少し援護を求む』
「スティラー03、了解。何なら機銃掃射するくらいの余裕は保証してあげるわ。そいつの25㎜ならレーヴェの上っ面を貫通できるでしょう?」
『屑鉄に飛び込まれてエンジンをぶっ壊されるんじゃかなわん。遠慮しておこう』
そういうと前を飛ぶ4機のF/A-3は、2機編隊ずつに分かれると高度を落とす。味方のレーザーがアインタークスフリーゲを焼き尽くすぎりぎりの高度である2000mまで降下すると、横並びになってポトリぽとりと爆弾を落とした。1機あたり4発、計16発落とされた爆弾は、搭載されたレーダーが地表まで1,000mほどであることを探知すると、側面のパネルが外れて、中から大量の子爆弾がばらまかれる。
CBU-97 SFW-かつての同盟国である米空軍が運用していた対戦車クラスター弾を参考に作られた対戦車クラスター爆弾は、子爆弾の赤外線とレーザーセンサーによってレギオンを探知するとその脆弱な上面装甲に自己鍛造弾が放たれる。広範囲の戦車を一気に攻撃することができるこの兵器は、3重の不活性化機能を有しており、分離から8秒ないし地上から15m以下まで落下すると起動する自爆システム、地面に衝突すると数秒で爆発するように搭載されたバックアップタイマーに、特殊な爆薬を使用することで投下後数日で内部の爆薬が不活性化するようにしてあるなど、不発弾対策も万全にしてあった。
それでもどうしても不発弾が出てしまう場合があるが、その場合は工兵戦闘車などによって処理してしまえばいいという割り切った考えで運用されていた。
「・・・・ふゅー」
後ろにいた電子戦管制士官が、密集していたところを対戦車クラスター爆弾で攻撃され、次々と爆発するレギオンたちを見て口笛を吹く。
装甲が脆弱なアーマイゼやグラウヴォルフはもちろん、レーヴェの上面装甲ですら貫徹できる可能性がある対戦車クラスター爆弾は、こういった密集したレギオンに非常に有効だ。唯一、ティザノウリアだけは貫徹ができないものの、それらはすでに1000ポンド誘導爆弾の直撃を食らって文字通りの屑鉄と化している。
『メイス13、ミッションコンプリート。RTB』
攻撃機編隊の編隊長の宣言で、再びF/A-3は上空で集合する。きれいな編隊を組んだ4機と、その後ろを飛ぶEA-3電子攻撃機は、基地へと進路を変えた。