ある日の昼下がり。
「あ~……だっるぅ……」
とあるバーの机に突っ伏して椎名唯華はそう呟いた。
「なんだかお疲れですねえ」
その向かいでスマホを弄っていた夜見れなは画面から顔を上げて椎名に目を向けた。
「んー……昨日除霊やっててさあ、それでだいぶ疲れたんよ」
「それはとっても偉いですねえ」
「やろぉ?よゆみは分かってんなぁ」
ぐでーとした姿勢のまま夜見に頭を撫でられている椎名は、ふわぁと小さな欠伸を漏らした。
「そんなことよりも」
カウンターの中から声をかけてきたのは花畑チャイカだ。
「いったい何だこれは。気味のわりぃモン持ち込みやがって」
そう言ってチャイカが顎で指し示したのはカウンターの上に置かれた市松人形だった。
椎名は撫でられていた頭を向けるとゆっくり体を起こした。
「ああ、それが昨日除霊した人形やねん」
「それがなんでここにあるんだよ」
椎名はぶすっとした顔になると、
「ていうか聞いてくださいよ。ヒドイんすよ依頼人。とんでもない悪夢を見た!除霊失敗だ!とか言って人形押し付けてきやがって。あてぃしはあんなに頑張ったのに!たかが夢くらいで!」
「頑張ったのにそれは酷いねぇあ」
不貞腐れる椎名を夜見がよしよしと慰める。そんな二人を横目にチャイカは人形を突っつきながら、
「悪夢ってどんなだよ?」
「なんでも市松人形なのに五月人形みたいな鎧と兜着けて、薙刀を振り回しながら追いかけてくる夢やって」
「めちゃくちゃブチギレてるじゃねえか!?」
突っついていた指をチャイカは慌てて引っ込めた。改めてよく見てみれば顔が怒っているようにも見えなくはない。ジリジリとチャイカは人形から距離をとる。一方で夜見はクピリとコーラを一口飲むと、
「それにしても椎名先輩はちゃんと除霊したのになんでそんな怒らせたんだろうねえ」
「んー、いまいち心当たりないんやけど……ひょっとしたら除霊の後に間違って蹴飛ばしてウーバーのカレーに頭から突っ込んだからかなぁ」
心当たりしかないだろ。
カウンターから出てきたチャイカはジロリと椎名を見やる。
「どう考えてもそれが原因じゃねえか」
チャイカのツッコミに椎名は机をバン!と叩くと、
「うっさい、こっちは被害者やぞ!あてぃしのカレー返せ!弁償しろ!」
「いや私に言うなよ!知らないよ、あんたのカレーなんか」
二人が言い争う横で夜見はマイペースにクピクピとコーラの爽やかな美味しさを堪能している。そしてぷはぁと一息つくと、
「それでどうするの、その人形?燃やしちゃう?」
夜見のいきなりな提案にチャイカはぎょっとした顔になる。
「いきなり最終手段持ち出すじゃん。それで祟られたらどうすんのさ」
「んぇあ~……死ぬ?」
それは最終手段すぎる。
「そんな潔く命を諦められないよ、こっちは」
チャイカの言葉にサイコパスマジシャンはケラケラと笑った。その向かいで椎名はふむと腕組みをする。
「燃やすかぁ……それもありかもしれんなぁ」
「だからなんでだよ。ただでさえお前のせいで怒らせてるってのに、それで呪われたり祟られたらどうすんだよ」
「チャイカが死ぬ」
「なんで私だけ!?」
諦めなくても死ぬらしい。
椎名はチャイカを無視して鞄を持つと、億劫そうに立ち上がる。夜見も残りのコーラを飲み干すと続いて立ち上がった。
「んじゃあてぃし達はここらへんで帰るんで。おつかれさんっしたー」
「おつかれ~な~」
そのまま店を出ていこうとする二人にチャイカは慌てて声をかける。
「ちょ、おい、結局この人形どうすんだよ。というか持って帰れよ椎名」
椎名はだるそうにちょっと振り向くと、
「あ?……さっき燃やす言うたやん。適当に燃えるゴミの日にでも出しといてくださいよ」
言うだけ言うと椎名は夜見の手を引いてさっさと行ってしまった。
「おい!」
チャイカも急いで後を追うが、店を出ても椎名も夜見もいない。見れば遠くの方で猛ダッシュしている二人の姿が見えた。
「あ、あいつ……押し付けやがった」
チャイカがそう呟いている間にも二人はどんどん遠ざかり、とうとう見えなくなってしまった。
「おいーす……ってチャイカ、どうしたんだよ」
その日の夜、いつもどおりに社築が仕事終わりにチャイカのバーを尋ねると、カウンターの席でチャイカが膝を抱えて座っていた。なんだか全体的にどんよりしているし、カウンターの上には見慣れない不気味な市松人形がある。というか店全体がいつもより暗い気がする。
チャイカは社に気がつくとこの世の終わりのような顔を向けた。
「おう、いらっしゃい……」
チャイカはゆっくり立ち上がるとよろよろと歩いてきた。
「社……頼む、助けてくれ……」
「いや、助けてくれって……いったい何があったんだよ?」
その縋るようなチャイカの表情に社はただ事ではないと感じ、戸惑いながらもとりあえず話を聞いてみることにした。チャイカは何度か逡巡するように口を開け閉めしたものの、やがて意を決したように話し始めた。
「今日椎名の奴が呪いの人形を持ってきたんだよ。除霊に失敗したとかで」
「人形って……あれのことか?」
カウンターの上の不気味な市松人形を指し示す社にチャイカはこっくりと頷く。
「それであいつ、無理矢理押し付けて帰りやがったんだよ。燃えるゴミの日にでも出しといてとか適当言って。でもよ、本当にそんなことしたら呪われそうだし。悩んだんだよ、どうすればいいのか」
「まあ、たしかに呪われそうだな。それで?」
「それで私なりにネットとかで対処法調べてみたんだよ。そしたら霊的な存在は性的なモノが苦手だって書いてあってさ」
「……ん?」
「だからそいつに私のファ○ザコレクション十連発をお見舞いしてやったんだよ」
呪いの人形もびっくりだ。
「は?おま、バカじゃねえの!?燃やさなくても呪われるだろそれ!」
社のツッコミにチャイカは顔を両手で覆った。
「ああ、お前の言うとおり私は馬鹿だ……どうやら本当に呪われてしまったらしい……」
そのあまりに悲壮な様子に社はそれ以上突っ込めずに勢いを失う。それでも話を進めようと社は慰めるように声を掛けた。
「それで呪いって具体的に何があったんだよ」
「私のチャイカバズーカがダイマックスできなくなった」
効果は抜群のようだ。
「なあ、俺はどうしたらいいんだ!?このまま瀕死状態のままだったら、オレ、俺は……!」
「ん、あー……そうだな。とりあえずなんか適当に酒くれない?つまみも一緒に」
「なんだよ!オレが男として終わるかもしれないんだぞ!?この一大事に酒なんかどうでもいいだろうが!」
「いや知らねえよ、お前の下半身事情なんか」
「畜生どうぞ!ビール一杯八千円だ!」
「高っ!?八つ当たりでぼったくるなよ!」
真っ当なクレームにもチャイカは耳を貸さずに頭を抱えるばかりだ。社はめそめそしているメンドくさいエルフを眺めながらグビリと出されたビールを一口飲むと仕方ないというように口を開いた。
「てかさ、結局呪いなら専門家とかに頼めばいいんじゃねえの?」
「でも椎名のやつはアテになんねえし……」
社はスマホを取り出すとそれを目の前で振ってみせた。
「別に椎名じゃなくてもいいだろ、にじさんじには色んなやつがいるんだから。そいつらに頼めばいいんだよ」
「うぃーす、お疲れーっす」
「どもー」
「よく来てくれた!長尾、甲斐田!」
店の扉をくぐった長尾景と甲斐田晴の二人にチャイカは待ってましたとばかりに駆け寄った。その顔は涙を流さんばかりといった感じで一目で追い詰められていることが見て取れた。
「うわ、ちょっ!?チャイカ先輩!?」
その勢いに驚いた甲斐田が若干引き気味になっているのを見て、長尾がこれはただ事ではないと気を引き締める。
「それで呪いがどうとか聞いたんスけどどんな感じっすか?」
さて鬼が出るか蛇が出るか。長尾は自然と神経が研ぎ澄まされていくのを感じた。エルフが呪われるというのは初めて聞くが果たしてどんな呪いか。
「ああ、なんでもチャイカのチャイカバズーカがダイマックスできなくなったらしい」
「帰っていいすか?」
「なんでだよ!?助けてくれよオレのこと!」
何がなんでも逃がさないとばかりにチャイカは甲斐田を後ろから羽交い締めにする。
「ちょ、チャイカ先輩!苦しいって!」
戒めから抜けようともがく甲斐田だがしっかりしがみついたチャイカはなかなか離してくれない。長尾は全然助けてくれないし。
「ていうか、そういうのは泌尿器科とかに相談したほうがいいんじゃないの?」
ムサ苦しさが背中に取り憑いた甲斐田がそう言うと、
「だから呪いなんだって言ってんだろうが!病気じゃないんだよ!だからお前ら呼んだんだろうがよ!」
なんか楽しくなってきたのか、チャイカは甲斐田を羽交い締めにしたままブンブンと左右に振り回し始めた。社が面倒くさそうに距離をとる。
長尾が頭を悩ますようにうーんと腕組みをする。
「んー……でも○たなくなる呪いなんて聞いたことないんスけど。いったい何やらかしたらそんな呪い受けるんだ?」
「呪いの人形に私のファ〇ザコレクション十連発を見せたらこうなった」
「やっぱ帰っていいか?」
呆れて帰ろうとするも甲斐田をほっぽり出したチャイカが今度は長尾にしがみつく。
「あー……すまん、お前ら。面倒くさいだろうけどなんとかしてやってくれないか?じゃないとコイツ一生このままだし」
申し訳なさそうな社の言葉に二人は顔を見合わせ、揃って仕方ないというように溜息を吐いた。
「それで呪いの人形ってのはあれですか?」
気を取り直したように甲斐田がカウンター上の市松人形に近づく。
「あー、たしかになんか怨念的なもの感じるな」
長尾も近づくと身を屈めて人形を覗き込んだ。
「てゆうか気味悪いなこいつ。よくこんなのにAV見せようなんて思うな」
「だって性的なものに弱いってネットに書いてあったんだもんよ。文句ならネットに言ってくれよ」
ブスくれるチャイカに長尾と甲斐田、ついでに社が呆れた視線を向けた。
「それで晴、どうするよこれ?」
「んー……いっそ怨念ごとぶっ潰しちゃわね?」
「あー、それでいっか。メンドイし」
打てば響くように振り向いた長尾に甲斐田が答える。二人はたったそれだけで特に何を相談するでもなく、自然と何らかの準備を始めた。
「怨念ごとって……具体的に何すんの?」
社の問いに甲斐田が振り向いて答える。
「霊的なものを物理化させる術があって、それ使って物理的にぶっ壊せるようにするんですよ。これが一番手っ取り早いですし」
そう言いながら甲斐田は店の床に奇妙な模様の陣を描く。長尾は邪魔になりそうなテーブルや椅子をどけている。
チャイカと社が見守る中、甲斐田が陣を描き終えると長尾が人形をその真ん中に置いて距離をとった。
さて、と甲斐田が社とチャイカに向き直る。
「じゃあ今から実体化させますけど気をつけてくださいね。邪悪な力が強すぎると、たまにそれが『人を傷つけるもの』として一緒に実体化しちゃうから」
甲斐田の注意にチャイカがはたと何かを思い出す。
「そういえば一番最初の依頼人は薙刀を持った人形に追いかけられる夢を見たらしいぞ」
「薙刀かぁ……長尾―、どう?いけそう?」
「あー、長物相手だとちょいキチぃけど……まあ、なんとかなるっしょ」
準備運動をしながら長尾はあっさり言う。甲斐田もあまり心配はしていないようで了解、と軽く答えた。そしてそのまま陣の目の前まで近づくと、目を閉じて何やらブツブツと唱え始めた。
社とチャイカが固唾を飲んで見守る中、陣がピカーッ!と光ったかと思うと、そこには人と同じぐらいの大きさになった市松人形が立っていた。
……何故かガトリングガンを携えて。
「よし、いけ長尾!居合い斬りだ!」
「無茶言うなや!?」
甲斐田と長尾がギャイギャイやってると、ガチャン!という音が響いた。嫌な予感がして顔を向けると人形がガトリングを構えていた。
「ちょ、ちょちょまっ!?」
そして四人が店を飛び出すと同時に一気に掃射が行われた。地面に伏せる四人の背後で銃声と共に次々と店の中から色んなものが壊れる音が響く。
「私の店がぁー!?」
チャイカの悲痛な叫びもなんのその。人形は元気にお店をぶっ壊し続けている。
「どうしてくれんだ甲斐田ぁ!?弁償しろおい!」
チャイカのクレームに甲斐田は真剣な顔になると、
「なんて恐ろしい呪いなんだ……っ!」
こんな呪いがあってたまるか。
「ってかどうすんだこれ!?このままじゃまずいだろ!?」
社が伏せたまま叫ぶとその途端に銃声が止んだ。
「止まっ、た……?」
四人がおそるおそる体を起こして店を振り向くと何かがコロコロと転がってきた。長尾がよく分からないままにそれを拾ってみる。
「……って手榴弾じゃねえか!?」
慌ててそれを放り投げるとちょうど店の中にスポッと入り、ちゅどーん!と爆発した。
そして止めを刺されたチャイカの店はガラガラと崩れ落ちた。
「わ、私の店が……」
がくり、と膝をつくように崩れ落ちるチャイカ。対して長尾は、
「これが人形の祟りか……!」
無言で襲いかかるチャイカ。避ける長尾。踏まれる甲斐田。
「ってか何か静かになったな。どうなったんだあいつ?」
わちゃわちゃと追いかけっこをするチャイカと長尾(あと空中きりもみ回転する甲斐田)には目もくれずに社が店(だったもの)を注視する。
「あー、多分だけどさっきので陣が壊れて実体化が解けたんじゃね?」
チャイカを避けながら長尾が答える。
「なら人形だけでも回収しとくか。結局呪いは解けてねえんだしよぉ」
チャイカがぶすっとして答えると、とりあえず三人で瓦礫の山に向かうことにした。なんか吹っ飛ばされて強制バク転状態の甲斐田は三人ともほっといた。
「って助けろよ!?」
「いやなんか晴、楽しそうだったし」
「楽しそうに見えんのか!?あの状態がよぉ!」
「でもまあ、ろふまおだしなあ」
長尾の言葉にチャイカと社もうんうんと頷く。これがろふまおクオリティか。
今度は甲斐田が三人に襲いかかるがひょぃっと軽く避けられ、そのまま電信柱に激突する。そのまま鼻を押さえて地面で悶える甲斐田を見てチャイカが一言。
「なんか死にかけの虫みたいな動きだね」
「今度は僕がガトリングぶっぱなしてやろうかな!?」
そんなこんなで甲斐田も加わって再び四人で瓦礫の山へ向かう。ごちゃごちゃと積み重なっているのを見て探すのは骨が折れるかと思ったが、意外にも人形はすぐに見つかった。
チャイカは人形を拾い上げると怪しげなものを見るようにその顔を覗き込んだ。
「……なんかコイツ葉巻咥えてグラサンかけてるんだけど」
呪いの人形(アメリカンの姿)だ。
「というか何であんなことになったんだ?晴、なんかヘマした?」
「別に僕は失敗してないって。何でああなったのかよく分かんないんだよなぁ」
そこでチャイカが考え込むように腕組みをして唸り声を漏らした。
「んー……ひょっとして私がファン〇コレクション十連発の途中で飽きて、横でFPS始めたせいか……?」
「お前が原因じゃねえか!」
社のツッコミにチャイカは素知らぬ顔で目をそらした。
「それで結局どうすんだ?っつーかこれ警察に通報されるだろ」
爆発により瓦礫の山と化した店を見回した社が疲れたように言う。チャイカは人形の葉巻を自分で咥えて咳き込むと、涙目で、
「こうなったら、もうあの方法しかないな」
そう言って葉巻を投げ捨てた。
そして四人は海の近くの神社に来ていた。ちなみに警察はエルフの力で何とかするらしい。鳥居の前でふと思い出したように甲斐田が口を開いた。
「なんか、さっきから長尾焦げ臭くない?」
「そうだな。さっきどこからか飛んできた葉巻で炎上(物理)しかけたからな」
「まあそれも人形の祟りだろうね」
素知らぬ顔でチャイカが言った。
「っていうかおい、チャイカ。ここって……」
鬼海と書かれた鳥居を見上げていた社がチャイカに声を掛けるがチャイカはさっさと神社の中へ入っていく。慌てて三人はその後を追いかける。
「それで結局どうすんすか?こんな夜中じゃお祓いもやってくんないだろうし、普通に神頼みか?」
チャイカが手にした人形を見やりながら長尾が尋ねる。
「んー、まあ神頼みっちゃ神頼みだね」
何か引っかかる言い方をするチャイカに長尾と甲斐田は顔を見合わせる。どういうことかと詳しく聞こうと長尾がした時、
「っ!?」
ゾクリとした悪寒が背中を駆け巡った。すぐ近くに人形とは違う何かがいる。それを察した長尾が警戒するようにそちらに目を向けると、
「……鬼?」
一人の人影がそこにいた。高い身長に長い銀髪。整った顔立ちのその人物は古めかしい和装を見に纏っていた。
だが重要なのはそこではない。
紅い双眸と右だけが折れた二本の角。しかし何よりも人間では出せないようなその雰囲気が彼が人外の者であることを示していた。
長尾はジリ、と無意識にその人物に対して身構える。
(いや、けどなんか神様っぽい力も感じるような……ってかこの神社の神か……?)
見た目は鬼だがどこか神格的存在のような雰囲気も感じ取れる。長尾はふとフミ様のことを思い出した。
甲斐田と社も長尾の様子に気がついたようでそちらに目を向ける。そこでようやく三人が揃ってその存在を視界に入れた。
……なぜかその背後に回って手刀を振りかぶっているチャイカの姿も。
「とうっ!」
「ぐふっ!?」
「海夜叉ぁ―!?」
チャイカの手刀によりバタリと倒れる謎の人物。というか海夜叉神。
チャイカはそっとしゃがみこむと倒れた海夜叉神の手を取り、人形の頭に乗せた。
「よすよす。よすよす」
そしてその手に人形をそっと握らせると、
「よし!これで一件落着だな!」
「「「何が!?」」」
チャイカ以外の三人の心が一つになった。
「だから神頼みって言ったじゃん。こいつに預けとけばなんとかしてくれるだろ、神なんだから」
「普通に後で怒られるだけだろ!」
社の言葉にチャイカは少し考えて、
「じゃあ勝からのプレゼントだとでも言っとけばいいんじゃない?」
「いや、そんなんで騙されるわけねーだろ!?」
社は当然のツッコミを入れるが、当の海夜叉神は、
「ま、さる……君……」
「おい、こいつ意識ないのに勝の名前に反応してるぞ」
これはワンチャン騙されてくれるかもしれない。
しかしそこで、
「うぅ……」
勝君のおかげか海夜叉神は身を捩るようにしながら目を開けようとする。だが、
「とうっ!」
「がふっ!?」
「まさかのもう一回!?」
チャイカの強制睡眠導入方法により海夜叉神の覚醒は無理矢理中断させられた。
「やばい!おい、逃げるぞ!」
「やばいのはお前の頭だろ!」
社のツッコミも無視し、チャイカはすたこらと走り出す。仕方なく三人もその後を追い、あとには呪いの人形となんか可哀想な神様だけが残された。
「う……うぅ、ん‥…」
「あ、起きた」
「え、あ……おはようございます?」
「夜ですけどね。っていうか神様も気絶とかするんですね。わたくせびっくりしましたよ、なんとなく夜の散歩に出てみれば神社の中で神様が倒れているんですもん」
「ご心配をおかけしたようで……というか気絶って?いったい何が……って、そうだ!チャイカさん!」
「もうとっくにいなくなっちゃいましたよ」
「なっ!?くそ、逃げられたか!」
「ってか、その人形は何ですか?なんかすごい不気味な感じだけど」
「ああ、これはなんか呪いの人形らしくて」
「え、マジで?ちょ、頂いていいですかこれ?呪いの人形とかリアルで初めて見たわ」
「え?いやでも、危険ですって。呪いの人形なんか」
「あー……まあ、その時はその時ってことで」
………………………………………………………………
「ヤバいヤバい、完全に遅れたわ」
あれからしばらく経ったあくる日。チャイカはにじさんじの新人歓迎会に遅刻しそうになっていた。バタバタと人ごみを掻き分け、目的の店に向かう。
「たしか今回は委員長の推薦したやつがいるんだっけか」
はたしてどんな新人なのか。委員長の推薦ならばなかなかにすごい奴だろう。
店にたどり着いたチャイカは飛び込むように入ると、そのまま店員と二、三言交わし、すでに皆が集まっているだろう部屋に向かう。
そしてガチャリと部屋の扉を開けると、
『初めまして、呪いの人形改め新人ライバーです。よろしくな、イ〇ポエルフ』
「誰か助けてぇ!?」
終わり