死神少女は空を見た   作:呂釘

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初めましての方が多いでしょうか
初投稿ですので優しい目で見てくださると助かります


訪問客はどなたで?

 

「死神様 いらっしゃいますか」

 

 人気のない森の奥。整備されていない山道を歩いて人はやってくる。

 そこには蔓が巻きついた小さな祠と大きな注連縄の巻かれた木があった。神社のように赤い鳥居はないし、なにか名前があるわけでもない。しかしここにはとある話があった。

 丑三時の四時間前。祠の前に一円玉四枚と、四つなにかお供え物を供える。そして胸元で右腕を上にし左手とクロスさせ、「死神様 いらっしゃいますか」というと死神がやってくる。その時に現れれば吉、現れなければ凶。仮に現れた時にはその者たちの願いを叶える代償に、何か一つ捧げることとなる。それは願いの大きさによって変わるが道理。そして願いを叶えて貰って生きているならば、もう一度そこに行って最初と同じように一円玉四枚と、四つ最初と違うお供物を供える。そして「死神様 空は青いです」と言う。これを最後まで行わないと、自分の魂も持っていかれる。

 それを面白半分でするガキもいるそうだが、そんな者には死神は現れないとも言う。

 でも中には本気で願っている者もいる。そんな者に死神は現れ、願いを叶える。

 

「死神様 いらっしゃいますか」

 

 黒髪を肩まで伸ばして、綺麗に前髪を整えた女性は儀式を行なった。スーツ姿でどうやら早めの仕事帰りのようだ。

 女性は暫く目を瞑って、腕を交差させたまま動かなかった。

「やっぱり嘘かな...」

 目を開きそう呟やいた。

「嘘ではないぞ」

「ひっ」

「何を驚いている。儂を呼んだのはお主じゃろ」

 姿は一見短い銀髪と赤い目を輝かせた可愛らしい少女だが、言動は叔父さんらしく、右手には死神の象徴ともいえる大鎌を掴んでおり、体を覆い隠すように黒いマントを羽織っていた。

 突如現れた少女に驚いたのか、女性は素っ頓狂な声をあげた。

「遊びじゃったのか?」

「いっいえ、違います!断じて違いますっ!」

「そうか。なら良かった。最近は面白半分でやる餓鬼が多くてな。本当に願っている人間を見つけれないのじゃ」

「は、はぁ...」

 少女はふわりと宙に浮き、祠の上で胡座を書いた。

 見た目とは違いかなり古い言い回しをする少女。それがこの祠に住む死神である。

「えっと...」

「願いはなんじゃ?」

「え?」

「じゃから、願いじゃ願い!お主は儂に願いを叶えて欲しいから呼んだのじゃろ!」

 大鎌をビシッと女性に向けた。女性は少し会話の調子が掴めず困惑しているようだった。

「あ、はい。えっと実はパワハラしてくる上司がいて...その、埃が窓の桟に残っているとか些細なことで喚き散らして...1秒でも遅くなるとすぐ怒って...上層部もそんな上司を見て見ぬ振りで。こんな事で良いのか分からないんですけど、上司に痛い目を合わせていただけないでしょうかっ!」

「...一つ質問良いか?」

 死神は左手を少し上げて尋ねた。

「は、はい。何でしょう」

 女性は少し戸惑いながらも応答した。

「ぱわはらとはなんじゃ?」

「え?」

「最近の若者が使う言葉はどれも複雑じゃ。なぜこんな言い回しになるのか、分からず言葉を使いよる」

 死神は若者言葉に疎いらしく、話の最初に出てきたパワハラの意味を理解できなかったらしい。

「パワーハラスメントの略しで、立場が上の人が下の人にする嫌がらせ...ですかね」

「要するにいじめじゃな」

「そう言う事です」

 それに律儀に返事をするのは女性の癖といったところだろうか。

 死神は「よし」と言って又もや浮いて、大鎌を女性に向けた。

「お主の願い引き受けよう」

「ほ、ほんとですか?!」

「じゃが代償はある。それは知っておるな?」

「はい。願いの大きさに応じてそれに見合った代償を支払う、でしたよね」

「そうじゃ。今回の場合...小さな事じゃ。なにか大切な物を貰おう。人ではないぞ。物じゃ」

 死神はニッコリ笑って言った。

「え、そんなので良いんですか?!」

「なんじゃ?もっと大きい方が良いのか?」

 女性は物で済んだことに目を大きく見開いた。

「いっいえいえ!いや、その、死神ですからもうちょっと強欲なのかと...」

「偏見を言うでない。そんな偏見があるから儂の話が捻れるんじゃ...」

 少女はこめかみを抑えてため息を吐いた。

「まぁ良い。そうじゃ。お主の名は何という?」

「名前は黒鷺(くろさぎ)玲香(れいか)です」

「玲香じゃな。わしはは...そうだな。ショウとでも呼んでくれ」

「はい」

「改めて、よろしく頼むぞ。玲香」

「こちらこそよろしくお願いします。ショウ、さん」

 ショウはそう言うと、マントの中から鍵の形をした金色に輝く物を取り出し黒鷺に渡した。

「コレで儂を呼びたい時に強く握れ。そうすればすぐ向かう」

「はい。有り難う御座います」

 黒鷺がそれを受け取ると、ショウは大きく背伸びをしてこう言った。

「これで終わりじゃ。帰れ帰れ。儂は現世に長居し過ぎるとしんどいのじゃ!」

「は、はぁ...」

「もう直ぐ夜じゃ。女子(おなご)が夜遅くで出歩くのは良くない。はよう帰れ」

「えっと、失礼します」

 黒鷺が一礼してきた道を戻って、ふと振り返ると、そこには先ほどと同じく古い祠と大きな神木があった。




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