プロヒーロー御用達の町工場   作:エドモンド橋本

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友の行方

 

 

 気勝天成、ヒーロー名《ウェザーカーニバル》。影山蒼華、ヒーロー名《影狼》。銃央寺弾炎、ヒーロー名《トリックバレット》。雄英にて、オールマイトを超える可能性を秘めたヒーローの卵として、注目されていた彼らは、卒業して直ぐに3人で事務所を設立した。派手な個性、高い実力、迅速な対応、直ぐに3人は有名になり、デビューした年のヒーロービルボードチャートJPでは41位という上位にラインクインした。そんな彼らの、突然の死。現場に残された、3人の致死量の血。ボロボロのサポートアイテムやコスチューム。その状況から3人は死んだと判断された。しかし、遺体は見つかっていない。3人は何と戦い、何処へ消えたのか。未だにそんな考察系動画が出回っている。

 

 俺にとって3人は、家族や社員、黒瀬さんに並ぶ程大きな存在だ。彼らがどうなったのか、気にならないはずがない。故に、探る事にした。信頼出来る、彼らの後輩と共に。

 

 「平日のお昼にお時間頂き申し訳ありません」

 

 保須市内にあるレトロな雰囲気の喫茶店。テーブルを挟んだ向かい側の席にて頭を下げる中性的な女性と長身の男性。

 

 「いや、構わないよ。今日は午後から休みを貰えたから」

 

 目の前の2人から話をしたいと言われた為、俺は仕事先のエンデヴァーに頼んで今日は半休を貰った。

 

 「エンデヴァーって意外と融通利くんですね。チョー意外ッ!」

 

 最初の固い挨拶とは違い、砕けた様子の女性。ミリタリーヒーロー《ボマー大佐》。普段は軍服に身を包み、口元だけガスマスク(俺特製)を付けている謎めいたヒーロー。彼女が女性だと知っている者は少ないだろう。個性《爆弾》は、自身が触れたものを爆弾に変えるというもの。威力は触れている時間が長ければ長いほど高くなり、その辺のものを直ぐに投げるくらいでも、目眩しにはなる。さらに爆発するタイミングは彼女次第の為、敵からしたら恐怖でしかない。

 

 「ボマー」

 

 「あ、失礼しました」

 

 ボマー大佐の名を低い声で呼ぶ男性は、アサシンヒーロー《シモン》。ヒーロー活動の際の、全身白のロングコートに身を包み、黒い髑髏の仮面を付けたコスチュームはもはやヒーローとはかけ離れている。そんな彼の個性《サイレント》は自身が発する音を全て消すことが可能。更に、触れた対象の発する音も消すことが出来る。建造物に触れれば内部にいる人間の音も遮断し、地面に触れれば、半径50メートル内にいるもの全ての音を消す事が出来る。因みに、シモン自身は消した音を聞くことが出来る為、相手の位置を把握することが可能。この個性を活かし、シモンはライフルで離れた位置から敵を撃ち抜いたり、敵のアジト内に侵入して、静かに制圧するなど、市民からは見えない裏での敵組織制圧の仕事を請け負っている。潜入の際はサポートアイテム、インビジブルベルト(俺特製)を装着している為、敵からは見えない。故に屋内での戦闘において、彼は無敵である。裏社会では純白の死神なんて呼ばれていたりする。

 

 「では話を始めますね。浮世のみなさんについて」

 

 店内の空気が重くなる。2人の目も自然と鋭くなった。2年前の事件の後、俺の前に現れた時の2人と、同じ目をしていた。

 

 「まずはじめに謝罪させて下さい。申し訳ありませんが、御三方の行方は未だ掴めておりません」

 

 「力不足で申し訳ございません」

 

 「そっか、うん、しょうがない。頭を上げてくれ」

 

 期待していた為、中々心に来る報告。だが2人もヒーロー活動をしながらの私的調査だ。仕方ない。

 

 「ただ、御三方が戦った敵、もしくはその裏にいる存在の目的について1つ仮説を立てました」

 

 「仮説?」

 

 「はい。過去に似たような事件がありました。被害者はヒーローから一般人、敵に至るまで様々」

 

 「今回のように、致死量の血やコスチュームの破片など、その存在を確認出来るものを現場に残している被害者は僅かですが、突如行方不明になっている人達がいます」

 

 「いや、でもそれって誘拐とかなんじゃ」

 

 正直、あまり絞り込めているようには思えない。行方不明の事件と一纏めにしてるだけな気がする。

 

 「もちろんその可能性もあります。ただ、我々が調べた”似た事件”とは、被害者の多くが強力な個性を持っている、という事です」

 

 強力な個性?やはりまだ話が見えて来ない。

 

 「吐いた嘘が現実になるもの、空間の創造や切り捨てが可能なもの、更には超再生と言った傷を負っても直ぐに回復すると言ったものまで」

 

 「ん?いや、待って。何となく言いたいことは分かる。浮世の3人も確かに強個性だよ。でもさ、それとこれと何の」

 

 「彼らは発見されましたが、個性を失っていました」

 

 「え?」

 

 個性を、失う?そんな事が。個性発動条件が触れる、見るなどの場合、両手を失ったり、失明した場合に、実質無個性になると言う事故はある。しかし、個性自体を失うなんて聞いた事が。

 

 「ツ!」

 

 一瞬、脳内で描かれた最悪のシナリオ。個性を奪う個性。もしそんな者が存在するのなら。まさか。

 

 「超常黎明期から今日に至るまで、救世主と呼ばれる存在が居るのをご存知ですか?」

 

 「聞いた事はある」

 

 救世主とは、超常黎明期に現れた1人の男。自身に発現した個性を嫌う者達から、個性を消して回った。自身の個性を嫌う者は多く居る。それこそ、未だに差別が残る異形型の個性、自身でも制御出来ない個性など。そんな彼らを救う者として、男は救世主と呼ばれた。

 

 「最近、救世主の名は、別の形で聞く事があります」

 

 「別の形?」

 

 シモンの言葉に首を傾げる。動画やSNSで最近は聞くとかそういう事じゃないのは分かっているが、どういう事だ?

 

 「はい、かつては個性を消す者としてでしたが、今は、個性を与える者としてです」

 

 「個性を、与える?」

 

 「ええ、個性は本来、4歳までに発現するとされますが、その年齢までに確認されなかった人達。いわゆる無個性の人の中に、突如個性を発現する人達がいます。成長してから個性が発現・発覚する可能性もあるにはありますが、その多くは、個性の発動条件を満たしていなかったから、気付かなかったというものです」

 

 それは分かる。酒を飲む事による身体強化という個性を持つ人が、成人して飲酒するまでは気付かなかった。海水を操れるという個性を持った男性が、山奥で生活していて気付かなかった。そのほかにも色々な話がある。故に無個性だと思って生きてはいるが、実は個性の使い方を分かっていないだけなんてことは多々ある。だが、シモンが言いたいのはそういうことじゃないのだろう。

 

 「しかし、突如個性を発現させた者の中には、全身岩を纏った身体になった者、手からビームが出る者、光を吸収する者。そして皆口を揃えて、救世主に与えられたと話しました」

 

 「更に行方不明者の中に、彼らの個性と類似、もしくはほぼ同じ個性を持った方もいました」

 

 「事件性があると判断して警察が動きましたが、科学的に個性の強奪・付与はどう考えても不可能。それが個性として可能なのかは不明。救世主に関しても大きなヒントは得られずに終わりました」

 

 偶然な訳、ないよな。個性を奪う。そんなの、まさに。

 

 「今もなお、救世主の噂は裏社会にも響いています。都市伝説にしては情報がハッキリし過ぎている。もし救世主が、個性を奪い、与える事が可能だったなら。敵の目的は、強い個性の強奪」

 

 「個性の、強奪」

 

 そうだ、ずっと忘れてしまっていた。俺の身近に居た、無個性の存在。

 

 『お父様が無個性として再登録されたのは鋼星君が生まれる2年前です。当時は私も、個性を失った経緯を聞きましたが、お父様は《奪われる前に除去した》と言われました。意味は分かりませんでしたが、鋼星君には知る義務があると思いましたのでお伝えします』

 

 『お父様の個性は、《破壊》。触れた対象を一瞬にして跡形もなく破壊する個性です』

 

 親父が死ぬ3日前に医者が突然伝えて来た内容。意味が分からないのと、会社を継ぐプレッシャーで当時は深く考えていなかった。しかし今思えば、親父は知っていた。個性を奪う存在を。でも、奪われる前に除去したというのはどういう事なのか。科学的に無理だと警察が匙を投げた程の事を、可能にした存在がいたのか。今はもう分からない。

 

 「何が、救世主だ」

 

 救世主は確かに居る。でも、俺はそんな救世主を受け入れない。

 

 『なあ鋼星は、好きなヒーローいるか?』

 

 『リューキュウ』

 

 『そうか!じゃあ今日から俺は君のヒーローになるよ!』

 

 『はあ?急にどうした??』

 

 『好きなヒーローと、君にとってのヒーローは違う。だから俺が君のヒーローになる。そうすれば君の人生傘要らずじゃん!』

 

 その個性は、冷たい雨に泣く人を笑顔に出来た。

 

 

 『あ、やっぱりここにいた!』

 

 『うわ、出た』

 

 『体育祭始まるから行くよ』

 

 『うげっ!!締めすぎだよ!てか何でここにいるって分かったんだよ』

 

 『影が教えてくれるんだよね〜。貴女の彼氏がここにいますって♡』

 

 『だから彼氏じゃねえって言ってんだろ!離せトリプルA!!』

 

 『んなっ!!?Bだもん!!CよりのBだもん!!』

 

 『ぼげぇ!!死ぬ死ぬ死ぬ!!!』

 

 その個性は、助けを求める多くの人を救い出す事が出来た。

 

 

 『ん〜』

 

 『お、どうした鋼星?俺様に見惚れちまったか?』

 

 『相変わらず痛いキャラだね。でもまあコスチュームは結構イカしてる。俺がカスタムした籠手も良い感じだ』

 

 『分かるか?そうだぜこのコスチュームは最大限俺様をカッコ良くする為のものだ』

 

 『カッコよくって、人を救う為じゃねえの?』

 

 『救う為さ。襲われていたり、怪我をしている人は勿論の事。でもな、自分の個性で苦しんでいる人だっているはずだ。俺の個性はそのまま死と結びつく個性。そんな人が他にもたくさんいるだろ?何もしていないのに、個性のせいで、敵だ、人殺しだ、って蔑まれてる人にとって、俺様の姿を見て、下を向かずに生きて欲しい』

 

 『……いるんじゃねえの?お前のおかげで救われる人が。オールマイトにはなれなくてもさ、そういう人達にとって、お前の存在は正に象徴なんじゃないのかな?俺もヒーローになれるって感じの』

 

 『んだよ!嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!よし!飯奢ってやる!!』

 

 その個性は、自分の個性に悩む人を救う事が出来た。

 

 

 

 

 『御三方は、先輩は、私の道標でした』

 

 『地味な個性と言われた俺の、背中を押してくれました』

 

 3人の死後、俺の元に来た2人は、3人を殺した敵を見つけ出したい。手伝ってくれと頭を下げて来た。2人は雄英時代の後輩。3人に懐いていた2人の思いも理解出来た。だからこそ、こうして手を貸す事にした。

 

 「俺は、嫌なんだよ。世間の人間が、3人の事を忘れていくのが」

 

 敵は知らないのだろう。葬儀で天成の母が、こんな事なら、ヒーローになんてなって欲しくなかったと泣きながら空の棺に縋りついていた事を。恩師の涙も、友人の思いも。知らぬまま今も笑っているのだろう。

 

 「あいつらは、救う為に個性を使ったんだよ。なのに、なのに」

 

 

 『あ、鋼星またそんな顰めっ面して。ほらスマイルスマイル!笑ってる人間が1番強いんだぜ!』

 

 『軽く聞こえるかも知れないけどさ、失敗も乗り越えていこうよ!ほら!更に向こうへ!Puls Ultra!!』

 

 『おい鋼星、飯行くぞ。どうせお前また何も食ってねえんだろ?……あ?余計なお世話?上等上等!俺様はヒーローだぜ?』

 

 

 「許せねえよなあ」

 

 「ッ、はい」

 

 「勿論です」

 

 俯き涙を流す大佐。強い眼差しを向けるシモン。2人も俺と同じ思いを抱いている。多分、俺達は敵と対峙した時、例え自身がどうなろうと殺しに掛かるだろう。だが、3人はそれを望まない。分かってはいても、身体が嘘をつけない。

 

 「大佐、シモン、ありがとう。引き続き可能な限りの調査を頼む。個性を奪う個性については、俺の方で調べてみる」

 

 「わ、かりました」

 

 「最善を尽くします」

 

 2人が先に店を出た後、俺は何も考えられないまま、店で1時間過ごした。そろそろ出ようとすると、店の外で大きな音が響いた。急ぎ外に出ると、謎の大型敵が暴れていた。

 

 「誰か!!ヒーローを呼べ!!」

 

 「に、逃げろ!!」

 

 「ちょ!押すなよ!!」

 

 「な、何だあいつ、気味悪いよ」

 

 ヒーローを呼ぼうとするもの、逃げるもの、逃げようとするが押されて転ぶもの、撮影するもの。もはや大混乱だ。直ぐにエンデヴァーに連絡しようとすると、ちょうど同時刻、アリサさんから位置情報と同時に、メッセージが届いた。

 

 Aiut

 

 俺は急ぎ送られて来た場所まで走り出した。

 

 

 

 





 爆島リナ(ばくしま りな)
 個性《爆弾》
 趣味 ゲーセン通い
 特技 UFOキャッチャー
 好きなもの 大きいぬいぐるみ
 嫌いなもの たまに家に出てくるあの黒い虫
 推しヒーロー 浮世(3人の中なら影狼)
 

 遠坂静雄(とおさか しずお)
 個性《サイレント》
 趣味 飼犬(土佐犬)の散歩
 特技 スコープ無しのライフルで100メートル先の缶を撃ち抜ける
 好きなもの カフェオレ
 嫌いなもの 孤独
 推しヒーロー 浮世(3人の中ならトリックバレット)

 

閑話アンケート2
1位は序盤リューキュウと13号が競っていましたが、昨日辺りから冬美が逆転しました。
因みに男性キャラ1位はエンデヴァーとなっております。轟家が強いです。

絡みが見たいのは?(アンケート使いたいから聞いてるだけ)

  • A組
  • B組
  • メリッサ
  • 島乃姉弟
  • ロディ
  • 一般女性
  • BIG3
  • Mt.レディ
  • レディ・ナガン
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