ゴーストミクとノーマルミクが最終的に結ばれる話(仮題) 作:新品のタタリモップ
「ペラッ!」
ゴス、という頭に響く音で目を覚ます。慣れた感触、ペラップに突かれる感触だ。目を開ければ、ペラップがもう一撃叩き込んでやろうと嘴を振りかぶっているところだった。
「ちょちょ、ペラップすとっぷ!」
「……ふふ」
手を振りながら慌ててストップをかけると、頭上から笑い声が降ってくる。見上げると、ハツネが笑顔でこちらを見下ろしているのが目に入った。……どうやらアタシの方が遅く起きたようで、彼女に膝枕されている状態だ。少し照れくさくて……でも、頭に感じる彼女の体温に、上手く行ったんだなと実感する。もう少しだけこうしていたいけれど、いつまでもこの森に居られないし、なによりハツネとムウマージをちゃんと診てもらわないといけない。アタシは気合を入れて立ち上がった。それから振り向いて、座っているハツネに手を差し伸べる。
「ね?助けるって言ったでしょ?」
「……うん、本当に、助けてもらった」
しかし、ハツネは躊躇したような素振りを見せるだけでその手を取ろうとしない。照れているのだろうかと首を傾げるアタシに、ハツネは口を開いた。
「じゅうぶん……たすけて、もらったから。だから、もう、大丈夫」
「なに言ってんの、帰るまでが冒険、だよ!」
昔言われたでしょ、なんて冗談めかして笑う。ハツネもくすりと笑って……その笑顔に、なんとなく、ほんの少しだけ。違和感を覚えた。なにか諦めているような、そんな違和感を。けれどアタシは……それに気付きたくなかった。伸ばしたままの手を、ハツネの前にずいと差し出した。
「さ、帰ろ!」
「うん」
ハツネを立ち上がらせて、アタシは森の出口を向いた。歩き出そうとして、「ミク」とこちらを呼ぶハツネの声に立ち止まる。どうしたの、なんて振り返ろうとしたアタシの耳に……ドサリとなにかが倒れる音が、いやにはっきりと響いた。同時に、消え入りそうなハツネの声も、アタシの耳に飛び込んでくる。
「ごめんね」
嫌な予感がした。振り返るまでのほんの数舜、アタシは希った。倒れた音はなにか枝が落ちた音だ、謝ったのはまだハツネが自分を許せていないからだ、いや、もしかしたら全部ただの空耳かもしれない。そんな都合のいい妄想は……振り返ったアタシの目に飛び込んできた光景によって、須臾のうちに打ち砕かれた。
「……ハツネ?」
理解できなかった。どうしてハツネが倒れているのか。どうして、あんなにも彼女から生気が感じられないのか。どうして、彼女が最後に謝ったのか。どうして、どうして、どうして。埋め尽くす疑問によって止まった思考とは裏腹に、アタシの身体は弾かれたように動いていた。うつぶせに倒れたハツネへと駆け寄る。
「ハツネっ!ハツネ!」
彼女の名前を呼びながら、仰向けにして揺さぶる。反応が返ってこない。触れた肌から伝わるだんだんと冷たくなる体温と、動いていない胸元が、最悪を示唆し続けている。
「なんでっ、悪夢は、もう……!!」
そこまで言って、脳裏にムウマージの姿が浮かんだ。ボロボロになって倒れ伏していた、ムウマージの姿が。気付いた、気付いて、しまった。誰かを回復させるわざを覚えないムウマージが、ハツネを今日まで生かしてきたカラクリに。『いたみわけ』だ。なら、ムウマージが倒れていたということは。ハツネの体力は、もう。その先の思考が言葉になる前に、アタシは叫んだ。
「『さいきのいのり』っ!……『さいきのいのり』!『さいきのいのり』!『さいきのいのり』!……なんで!?」
わかっている。『さいきのいのり』は、一度しか使えない。すでにムウマージに使った今、アタシにも、ベラカスちゃんにも、もう『さいきのいのり』を使うことはできない。チカラをどう動かしても霧散するばかりで、わざは発動しない。視界を塞ぐメガネが邪魔で、投げ捨てた。
「『さいきのいのり』っ!『さいきの』……!!」
リン、という澄んだ音がした。すっと頭が冷静になって、音のした方を見る。そこにはムウマージが居て、静かな悲しい目で首を振っていた。冷静になった頭へ、現実が重くのしかかる。
「そんなっ……なんで、どうして……」
首を振る。その勢いで零れ落ちた涙が、ぽたりと落ちてハツネの頬を濡らした。どうして彼女が最後に謝ったのか……アタシが気に病むと思ったからだ。最後までずっと、彼女はアタシのことを考えていた。どうしてハツネが倒れているのか。もう体力がないからだ。どうして、あんなにも彼女から生気が感じられないのか。それは、彼女が、もう……。
「そんなわけないっ!」
自分の考えが恐ろしくて、叫んでしまう。その絶叫も、森に消えていくだけ。
「そんな、わけ……」
ゆっくりと、しかし確実に。アタシの身体に毒が回る。諦めが、現実が、身体を巡って心を蝕む。信じたくない。認めたくない。助けるって、決めたのに。三日月が雲に隠れて、あたりが暗くなる。暗い、暗い闇が、アタシの心までも浸食しているように感じた。
アタシの悲しみが、諦観が。『テレパシー』でみんなに伝わってしまったのだろう。ペラップも、ベラカスちゃんも、ムウマージも、一様に悲痛な表情を浮かべている。暗闇が、そんなみんなの表情さえ覆い隠していく。どんどん冷たくなるミクの身体だけが、アタシに現実感を与えて……ぼやっと、なにか光った気がした。なんとなく、そちらを見る。
まただ。今度はもっと強く……暗闇のなかで、チカリ、と。視界の端で、なにかが光った。青白い光だ。目を凝らしてみれば、アタシのメガネがもう充電もないはずなのに青白く光っている。なぜ、と思っているうちに、光はどんどん強くなる。メガネがひとりでに浮き上がって、あたりを強い光が包んだ。目を開けていられなくて、真っ白になった視界。
「ロトトトト!!」
──耳に、ロトムの鳴き声が響いた。瞬間、光がいっそう強くなって……目を開けるとそこには、たくさんのゴーストポケモンたちが居た。ポットデス、ヒトモシ、ゴース、ゴースト、ヨノワール……『わすれられたそうこ』で出会ったポケモンが、ほとんど全員。ああ、本当に来てくれたんだ。ピンチだと思ったから。
「みんな、ごめ……」
謝罪を口にして……言い終わる前に、ヨノワール以外の全員がハツネに群がった。驚いて呆然としているアタシと、ヨノワールの目が合う。こちらを責めているわけじゃない、それでいいのかと問いかけるような……『くろいまなざし』。アタシを逃げられなくする……逃げられなく?アタシは、何から逃げていた?ヒトモシたちのお陰で明るくなった広場の中央、アタシはハツネに目を落とす。
ああ、そうだ。アタシはなにを逃げていたんだ。逃げられないし、逃げるわけにはいかない……もう、逃げない。とうの昔に、そう決めていたのに。そうだ、これはピンチだ。ただの、ピンチ。まだ終わっていない。終わらせたりしない!
再び顔を上げたアタシの目を見て満足したのか、ヨノワールもふわりと飛んでこちらにやってきた。なぜかムウマージを一発どついてから。すっと息を吸って気合を溜める。ハツネをちゃんと助けるために。みんなが笑える大団円まで、あと一歩なんだ。吸った息を、声に変える。
「みんな。力を貸して……!」
ゴーストポケモンたちは一瞬だけこちらを見て、当然とばかり、思い思いの声を上げた。私はその声を聞いて、すぐに思考の海へ沈む。ゴーストポケモンたちは『いたみわけ』で回復しようとしたり、きのみを食べさせようとしている。けれど、そのどれもが意味を為していない。ひんしの相手に、ポケモンのわざは意味を為さない。やっぱり『さいきのいのり』をなんとかして使うしかない。でも、どうやって……?
思考の海に沈んだまま、アタシは周囲を観察する。なにか、打開策になるものがないか必死に探す。それぞれが必死にハツネのために動いているのを見て……ふと、ポットデスが奇妙な動きをしているのに気が付いた。『いたみわけ』とも、『アロマセラピー』とも違う動き。何をやっているのだろうと、疑問に思った。思った瞬間、周辺一帯のきのみが浮かび上がる。それはアタシのポケットに入っていた、ユウちゃんにもらったあのきのみも同様で……そのきのみを見たアタシは、一も二もなく飛びついた。
「ポットデス、ありがとう!」
一口きのみを齧って、ポットデスにお礼を言う。このきのみは『ヒメリのみ』。ポケモンのPP、つまりわざを使える回数を回復してくれるきのみ。つまり、つまり。これがあれば、もしかしたら。アタシはハツネの手を両手で包んだ。心を決めて、思いを込める。すっと、歌う直前のように息を吸って、ただ祈る。アタシの様子に気付いたゴーストポケモンたちも、祈るような構えをとった。
「おねがい。……『さいきのいのり』」
瞬間、雫が水に落ちるような音がして、アタシの身体から光が溢れた。発動したと確信して、それでも決して油断しない。力を、握った手を通じてハツネに送るイメージ。アタシたちの祈りを、心を籠めるイメージ。アタシたちの周りを、白く優しい光が囲む。その光はゆっくりと消えていき……しかし、なにも起こらなかった。どうして、という不安が胸を満たしそうになって……逃げないという覚悟がそれを押しのける。
ぎゅっとミクの手を強く握って、ただ彼女に呼びかける。『テレパシー』に乗せて、もっとハツネの、奥の奥まで。どこまでも届くように、祈りを乗せて。ヨノワールが、頭のアンテナに巻いていた包帯を外すのが見えた。
「『起きて、ハツネ!!』」
アタシの声が響いて、しんと辺りが静まり返る。もう一度呼びかけようと息を吸って……アタシの手の中にあるハツネの手が、ぴくりと動いた。視線をハツネの顔に向ける。ハツネの頬に、血の気が戻ってきている。泣きそうになりながら、彼女の名前を呼んだ。
「ハツネっ!」
「……ミ、ク?」
薄く目を開けたハツネが、つかえながらもアタシの名前を呼んでくれた。目から、熱い雫が零れ落ちる。よかった、本当によかった。ああ、でも、違う。違うと思って、アタシはごしごしと乱暴に涙を拭う。こういうときに似合うのは、きっとこの顔だ。
「おはようっ、ハツネ!」
アタシは満面の笑みを浮かべて、ハツネにそう言った。ハツネも、目を丸くしてから、それを柔らかい笑みに変えて。
「おはよう……ミク。いま、何時?」
なんでもない朝のように、言葉を交わした。
〇
あれからしばらくして。アタシたちは『しんげつのもり』を歩いていた。人数が人数だから、ゆっくりと。あのあと、ハツネはヨノワールから『いたみわけ』をしてもらったことでほとんど回復したらしく、今はアタシの隣をてくてくと歩いている。時折こちらを見て話しかけようとする素振りを見せては、なにか言いにくそうにしていた。気付いてはいたけれど、その様子が可愛くて止めるのがちょっと惜しい。こちらも話しかけようか少し悩んで、やめる。そんなことを繰り返していたら、とうとうハツネから話しかけてきてくれた。
「み、ミク。えっと、その……わ、私……」
「?」
珍しく歯切れの悪いハツネを不思議に思いつつ、続く言葉を待った。
「……あの、め、メガネ。どうしたの?」
「……」
目を逸らしながらそう言うハツネ。なにを言いたかったのかはわからないけれど誤魔化したということだけは伝わった。けれど、アタシの頭にメガネが装備されていないことも事実だ。どうやらあのまま置いてきてしまったらしい。メガネと言えば、アタシのメガネから飛び出てきたゴーストポケモンたちだけど……どうやらロトムがアタシのメガネに細工をしていたらしく、あのメガネの液晶から出てこれるようになっていたのだとか。ハツネ曰く、本当はイタズラに使おうと思っていたとのことだ。細工をしたのはハロウィンのときだろう。文句のひとつも言いたいけれど、それで助けられたのだから文句も言いづらい。しかも一方通行だから、あれを使って帰ることはできないとのこと。
考え事をしているアタシを呆れていると捉えたのか、ハツネが少しむくれながら袖をくいと引く。さみしんぼめ、なんて思いながら言葉を返してやる。こんなやりとりを出来るのが、嬉しくてたまらない。
「あ~、うん、どうも忘れちゃったみたいで……」
「え?じゃあ……あれは?」
そう言ってアタシの後ろを指さすハツネ。指さす先を見てみると、そこには切り株の上に載せられたアタシのメガネがあった。あれ?と思いつつ、それを拾う。充電が切れてはいるけれど、たしかにアタシのメガネだ。誰かが持ってきてくれたのだろうかと周りを見ても、全員がわからないという顔をするばかり。不思議に思っていると、アタシの手からメガネがふわりと浮いた。というか、抜き取られた。メガネはふわふわと浮いて……予想通り、ハツネの手に納まった。やはりというか、彼女の仕業らしい。
「ハツネが持ってきてくれたんだ」
「それは、知らない……」
「え?」
持ってきてくれたのも彼女だろうと思ったのだけれど、アテが外れてしまった。でも、ハツネでもないなら、本当に誰が……なんて、思考の海に沈もうとしたところでハツネに溜息を吐かれた。そちらを見ると、メガネを持ったままジト目でこちらを見るハツネの姿。
「ミクは……本当に、忘れん坊」
「う。で、でもメガネはハツネが起きて嬉しかったからで……」
言い訳無用とばかりに手でアタシの言葉を制するハツネ。彼女は手を戻すと、そのまま言葉を継いだ。
「歌の楽しさも……わすれてた」
「うっ……」
今度こそ返す言葉もないアタシに、ハツネは「それに」と言って言葉を続ける。ま、まだなにかあったっけ……?
「私とミクが仲良くなったのは……同じ名前だからじゃ、ない」
「えっ、嘘!?」
「一緒に歌を歌って……それで、仲良くなった。……ミクは、本当に忘れん坊」
やっぱり忘れてた、と呆れながら、ハツネは項垂れるアタシの方へと近づいてくる。自分に影が差すくらいの距離でようやく気付いたアタシは、顔をあげてハツネを見た。そこには、イタズラっぽい顔で笑うハツネがいて。一瞬見惚れた隙に、彼女は耳元で囁いた。
「だから……私が、そばにいてあげる」
「……へ?」
囁かれたその言葉を脳が処理する前に、ハツネはパッと離れてアタシにメガネをかけた。フリーズするアタシをまじまじと見たハツネは「うん、似合ってる」、なんて言うと、アタシの手をとって歩き出す。
「はぐれないように……しないとだから」
なにも聞いていないのに、誰かに言い訳するようにそう言うハツネの耳は赤くて……かわいいな、なんて思ってしまった。これだから、ハツネはちょっとずるい。昔、釣りで競争したときも『ポルターガイスト』でアタシの釣り針にゴミをたくさんくっつけてきてたし。……ふと、仕返しを思いついた。ちょっと時間が掛かるけど、いつもイタズラしてくるハツネへの、ささやかな仕返し。
「ね、ハツネ。次のライブ、絶対見に来てよ」
「いいけど……どうして、急に?」
「伝えたいこと、あるからさっ!」
アタシの言葉になにか感じ取ったのか、ハツネはわかった、とだけ微笑んで、それ以上深く追求してこなかった。なぜかムウマージとヨノワールが微笑ましそうにこちらを見ているけれど、それは気にしない。手を繋いだまま、ゆっくり、ゆっくり帰路につく。もうすぐ『しんげつのもり』からも出られるだろう。そんなことを思った瞬間、一気に木が少なくなって、空が開けた。十一月のあの日のような、満点の星空だった。なんとなく立ち止まって、みんなで星を見上げる。ふと、ハツネが「そういえば」と言って静寂を破った。
「『みかづきのはね』は、一枚だけなのに。なんで、私の悪夢……祓えたんだろ……」
その言葉を聞いて、たしかにと考える。言われてみればたしかに不思議だ。十年前のあの日、この『みかづきのはね』は二人分の悪夢を祓うことができなかった。だからこそ、ハツネはアタシだけを帰す選択をしたのだから。
不思議に思って……でも、考えるのをやめた。今はただ、ハツネと、みんなと帰れることを喜ぼう。そう伝えようと口を開きかけて……夜空を閃光が切り裂いた。慌てて頭上を見れば、月のような美しさを持つポケモンが森の奥に飛んでいくのが見えた。でも、この輝きは、光の帯は。
「これ、あのときと同じ……!」
「……クレ、セリア」
ぽつりと、ハツネがそのポケモンの名前を呼んだ。ということは、十一月に見たあの光の帯はクレセリアによるものだったのだろう。もしかすると、クレセリアが助けてくれたのかもしれないな、なんて思いながら隣のハツネを見て……ハツネの肩にとまっているペラップの喉あたりが、淡い光を放っていることに気が付いた。目をこすってもう一度見ても、やっぱり光っている。
「ね、ハツネ。なんかさ、ペラップの喉……光ってない?」
「えっ……うん」
アタシに言われて気が付いたハツネも、ペラップの光る喉に驚いた様子だ。アタシはペラップをむんずと掴んで、逆さにして振る。ペラップはゲホゲホとせきこんだ後、光るなにかを吐き出した。
それは、べちゃべちゃになり、ところどころに消耗したあとがあるけれど……たしかに『みかづきのはね』だった。あの山はきっとクレセリアの住処で、『みかづきのはね』が落ちていたのだろう。つまり、それをコイツは……。
「喰ったなオメー!」
「クッタ!クッタ!」
はぁとため息を吐いて、バタバタと暴れるペラップを手から解放する。色々と……いろいろと言いたいことはある。なんで喰ったのかとか、せっかくいい話になりかけてたのにとか、この子の特性『くいしんぼう』じゃないよね、とか。それはもう色々とあるけれど。
「ふふっ、ふふふ……『みかづきのはね』、べちゃべちゃ」
変なツボに入ったのか珍しく爆笑しているハツネの笑顔を見て、どうでもよくなってしまった。周りのゴーストポケモンたちもハツネの笑顔に満足した様子で、もはや『みかづきのはね』は視界にも入れていなかった。愛されてるな、なんて思いながら、彼女と手を繋いでるのが自分だけという事実に、ちょっとだけ誇らしくなる。
「ね、ハツネ。歌いながら帰らない?」
「ふふっ、ふふふ……いいよ」
そう提案すれば、ハツネは息を整えながら了承してくれた。ハツネが落ち着くのを待って、二人同時に息を吸う。最初に歌う歌は、わかりきっていたから。
「「────♪」」
三日月の光が照らす夜道を、みんなで帰る。ムウマージはその特徴的な鳴き声で、ヨノワールは楽し気に手を叩いて歌に参加する。ペラップは物真似でミュージックをつけて、ベラカスちゃんは『テレパシー』で指揮をとっているようだ。ポットデスが、ヒトモシが、ゴースが、ゴーストが。みんなが歌を歌い、音を奏でている。最高に楽しい帰り道を、アタシたちは、ゆっくりゆっくり歩いて行った。
〇
楽し気な声が遠く聞こえる森の中。少女は嘆息した。応援はすれど手助けはしないと決めていた彼女は、ハラハラしながら一部始終を眺めていた。後ろに立つ老爺の目が、心なしか温かい。しかしそれには気づかずに、少女はもうひとつ溜息を吐き……目の前の影に目を向けた。
「ほら、あの子たちは帰ったわよ。いつまでそこに隠れているつもり?」
その声に、少女の目の前にあった影が揺らぐ。濃い、濃い影だ。それが揺らいで、少しずつ形を持っていく。少女はそれを片目で見ながら、呆れたように言葉を続けた。
「メガネを持って行ったり、わざわざあの子に近づかないように気をつけたり。あなたも難儀よね。……ねぇ、ダークライ?」
少女がそれを言い終わると同時、影が完全に形を持った。人に悪夢を見せてしまう、まぼろしのポケモン。あんこくポケモンのダークライが、そこにはいた。ただ静かに、感情の読めない青い瞳で少女をじっと見ている。それを見た少女は、呆れたような調子を崩さないままに言葉を継いだ。
「あら?もしかしてあの子たちが羨ましいのかしら?そういえばあなたにもお友達がいたものね。たしか……」
「──!!」
瞬間、ダークライがその先は許さないとばかりに威嚇する。少女は馬鹿にしたように肩をすくめて、すっと後ろを指さした。それでも振り返らないダークライに、仕方ないとばかりに言葉を口にする。
「後ろ。お客様がお待ちよ」
「……」
それを聞いて渋々と後ろを振り向いたダークライの耳に、鳴き声が飛び込んできた。懐かしい、月のように澄んだ声が。目を見開き、ふらふらとそちらへ飛ぶダークライ。少女はやっぱり呆れたような調子で口にした。
「久々の再会なのだから、少しは嬉しそうにしたらどうなのかしら」
その言葉とは裏腹に、少女の顔は微笑みを湛えている。少女の背後に立つ老爺が、揶揄うような語調で口を開いた。
「ずいぶんとお人よしになったじゃないか」
少女が「そうかもね」、と返す。老爺は意外な反応に少し驚いて、それから目を細めてほほ笑んだ。とぼけたように、「なにかきっかけでもあったのかい?」なんて言いながら。
「今日の夕方は……ちょっとだけ、心が震えたものだから」
そのせいかも知れないわね、と。少女は誰にともなく言って……消えた。
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名前 ハツネミク
NN ユウレイさん
タイプ ゴースト
ずぶとい 性格。
--年--月--日
まちはずれのはしで
Lv.--のときに
運命的な
出会いをした ようだ。
イタズラが 好き。
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名前 ハツネミク
タイプ ノーマル
ようきな 性格。
--年--月--日
わすれられたそうこで
Lv.--のときに
運命的な
出会いをした ようだ。
すこしお調子者。