ゴーストミクとノーマルミクが最終的に結ばれる話(仮題) 作:新品のタタリモップ
「…………ク…………きて、ミク……」
「……んぁ」
眠い目を擦って、ベッド兼ソファーから起き上がる。ぼんやりと見えてきたのは、すっかり見慣れた自室同然の控室。眠い頭で周りを見渡すと…………誰もいない……?
あれ、今、たしかに誰かに起こされたような……?
ペラップが起こしたのかと思って見てみると、床に置かれたお皿の中のポケモンフーズにがっついていた。朝早くから、よくそんなにがっついていられるなぁ、と呆れて乾いた笑いしかでない。
「ん……?あれ、なんでポケモンフーズが出てるんだろ?昨日出しっぱにしちゃったっけ……?」
もう一度よく見ると、お皿の中にはオレンのみやモモンのみ、大好物のイアのみまで入っていて、とても豪華になっている。普段はポケモンフーズだけで、きのみなんて入れないのに。
謎の声、誰もいない部屋、おまけに超豪華モーニングまで……。…………もしかして。
「『みやぶる』」
「おはよう、ミク」
そこには、古いエプロンをつけて焦げが目立つフライパンと小綺麗なスプーンを両手に構えたユウレイさんが佇んでいた。なぜか、ソファーベッドの枕元に仁王立ちして、満足気なドヤ顔をしながら。……まぁ、ほとんどいつもの無表情だけど。
「え、いや、おはようだけど、おはようじゃなくて……」
「うん……もうお昼」
「そっちじゃなくて……って、えぇ!?」
いやいやいや、情報量が多い。ただでさえ寝起きの頭なのに、流れてくる情報量が通常時でも処理しきれないレベルで流れてくる。そんなアタシを、ユウレイさんが不思議そうな顔で見つめてくる。いや、原因のほとんどはあなたなんですけど……。
「えっと、その、色々聞きたいことがあるんだけど……」
「質問……ふふっ。初めて会ったとき、いっぺんに聞いてきたのに」
「成長したね」と、したり顔で私をからかうユウレイさん。出逢った時のことを思い出してるのか、懐かしそうな、嬉しそうな感情がにじみ出ていた。
そんな顔がなんだか可愛らしくて。
「……ミク?……寝ぼけてるの?」
「んぇ?!あ、えっと……顔洗ってくるね!!」
「あ……」
逃げるように控室を飛び出して、洗面所に向かった。
あまりの情報量に頭がパンクしたんだろうか。ユウレイさんのしたり顔が頭から離れなかった。
「ふぅ、ただいま。」
「おかえりなさい……ミク」
相変わらずソファーの隣で仁王立ちをするユウレイさん。
……改めて見てみても、聞きたいことというか、ツッコミたいことが多すぎる。
「まず……、その格好はどうしたの?」
「コレは……お母さんの衣装。こうやって、起こしにくるって……テレビで見た」
「お母さんの衣装」
目覚めた脳でも理解を拒んでいて、ペラップのようにオウム返ししてしまった。
たしかに、エプロンにフライパンは、よく漫画やテレビで見る、お母さんが家族を起こす時の格好ではある。……でもスプーンって何?
「それ、どこから持ってきたの?」
「コレ……?エプロンとフライパンは倉庫にあったやつ……でも、お玉も、フライ返しも、無くて……。だから、あの子達に“借りて”きてもらったの」
「あ、だからスプーンなんだ」
……違和感の正体がわかっても、どこか腑に落ちない。だって、エプロンとお玉に比べて、明らかにスプーンがキレイすぎる。それに、持ち手の根本部分が変に歪んでいるし。まるで、曲がっていたスプーンを無理矢理伸ばしたような…………まさか。
「そのスプーン、ちゃんと後で持ち主に返すんだよ?」
「…………ふふっ」
ユウレイさんは、不敵な笑みを浮かべるだけだった。
「そうだ、ペラップのご飯を作ってくれたのもユウレイさん?」
「うん……。お母さんは、子供には優しくて、大好物を作るって見たから。……あの子達と、一緒に作ったの」
そう言って、ペラップのお皿をスプーンで指した。お皿はすっかり空になっており、ペラップは満足したのか、大きなあくびをしていた。
「あの子達って、ゴーストポケモン達と?」
「うん……喜んでくれて良かった」
ふふふ、と優しそうに笑うユウレイさん。
ペラップのご飯を、しかも大好物をわざわざ用意して振る舞うなんて、そう簡単ではないだろうに。
いつものユウレイさんとのギャップに、少しほっこりしてしまった。
きっと、家族のほっこりエピソードを集めた番組でも見てたんだろうな。
「……それで、子供の笑顔をエネルギーに変えて、お父さんを断罪するんだって」
「ゲホッ!ゲホッ!!」
前言撤回、これは多分昼ドラかなにかのドキュメンタリー番組だ。
盛大にむせたアタシの顔を、ユウレイさんは無言で覗き込んだ。心配するでも笑うでもない、黄色い目がしっかりと捉えて離さない。笑顔が消えたその黄色い光は、かなしばりにあったかのような凄みがあった。
「えっと……その、……ユウレイさん?」
ユウレイさんは、瞬き1つせず、平行移動で私ににじり寄ってきた。表情はとても真剣で、少し怒っているのに、格好と移動方法のせいで、とてもシュールな絵面になっている。
「……約束」
「へ?」
ユウレイさんの顔が、アタシの引きつった顔にギリギリ触れないところで止まった。緊張からか、ひんやりとした気配を感じる。
ピンと来ていない様子のアタシを見て、ユウレイさんは口を尖らせた。
「今日……お休みだから、私の家でお茶会するって……約束したのに」
「……あっ」
「あの子達にも友達呼んで貰ったのに」と、頬を膨らませるユウレイさん。
そういえば、そんな約束をしていたっけ……昨日は夜遅くまでマネージャーと会議があって、すっかり忘れてた。
「ほんとにごめん!急いで準備するから!!」
「……40秒で支度しな」
口を尖らせながら、フライパンをスプーンで叩いてアタシを急かす。
……ユウレイさんらしくないそのセリフも、どこかのテレビの受け売りなのかな。
バタバタと荷物を詰めながら、聞いていなかった質問を投げかけた。
「じゃあ、アタシを起こした声も、ユウレイさんの仕業だったんだね」
「……?」
ユウレイさんは、キョトンとした顔でこっちを見ている。
「それ……私じゃないけど」
アタシは初めて、ユウレイさんの前で背筋が凍った。
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イアのみ
大きな 実の 中には
酸味と 水分が ぎっしり つめこまれている。