ゴーストミクとノーマルミクが最終的に結ばれる話(仮題) 作:新品のタタリモップ
「……ねぇ、ミク」
静かな部屋に凛と響くユウレイさんの声。
見つけたダークボールを大事そうにポケットに戻した彼女は、視線を動かさないままつぶやいた。
「……コレ、何に使うの?」
「……へ?」
思わず、間抜けな声が漏れる。
アタシの反応が意外だったのか、彼女はきょとんとした顔で、こちらを見上げた。
知ってるからこその反応だったんじゃないの?!、と、ツッコみそうになって、やめた。普段こうして楽しく話していると、つい忘れてしまうけれど、彼女は記憶喪失なのだ。知っていても、忘れてしまっているかもしれないし、もしかしたら本当に知らないのかもしれない。
慎重に、言葉を選んで説明する。
「えっと、それはダークボールって言って、ポケモンを捕まえるための道具だよ。他にもいろんな種類があるんだけど……」
「……捕まえる?」
みるからに嫌そうに眉間にしわを寄せるユウレイさん。袖を口に当てて、ボソッと「誘拐……」なんてつぶやいている。いや、幽霊(?)のあなたに言われましても……。
「誘拐なんかじゃないよ!そりゃあ、無理矢理捕まえようとするトレーナーもいるけど……。なんていうのかな、こう、仲間になるというか……」
「……?」
ユウレイさんは、頭にはてなマークをたくさん浮かべている。近くにいたゴーストに「わかる?」なんて聞いて、一緒に首をかしげてる。
うーん、説明が難しいなぁ。なんか、こう、上手い例えでもあれば……例え?
「あ!ほら、アタシとペラップ、ユウレイさんとゴースト達、みたいな!!」
「……この子たちには、こういうモノ、使ってないけど」
くっ……!我ながら良い例えだと思ったのに!……まぁ、私もノーマルタイプのポケモンには、ボールが無くても好かれるから、わかるといえばわかるんだけど……。
例えがダメならやっぱり、どういう関係になるか言った方が伝わりやすいかな。
ゲットしたポケモンとの関係。__アタシと、ペラップの関係。
「特別な存在、かな」
楽しいときも、悲しいときも、辛いときも、ライブの時も。いつでも、すぐそばにいて、心が通じ合ってる存在。
「ペラップ!」と、元気に声をかければ、たとえのんきな性格でも、それに応えて肩に止まってくれる。そう、こんな風に。
「仲間?友達?家族?そんな言葉じゃ全然足りない!私とペラップはもっと特別な関係__」
目配せなんていらない。アタシたちは息ぴったりに手を突き出して、言い放つ。
「__相棒、だよ!!」
「アイボウ!!」
いつもより目を見開いて固まる、目の前の彼女。そしてすぐに、優しく笑って「……うん、輝いてる」と言った。
うんうん!これは完璧に決まったんじゃない?
誇らしげな気持ちになりながら、ペラップとハイタッチを交わす。
ペラップも同じ気持ちなのか、良い笑顔でゴースト達に自慢しに行った。まったく、お調子者だなぁ。誰に似たんだろ。
「特別な関係……相棒……」
視線を移すと、ユウレイさんが何やら難しい顔をして、何やら考え込んでいる。……もしかして、何か思い出したとか!?
詰め寄ろうとしたアタシを手で制し……、いや、何かをおねだりするように手のひらを上に向けている。
「余ってる、ボール……頂戴」
頭にハテナを浮かべているアタシをよそに、凄く真剣な顔で言うユウレイさん。訳が分からないままに空のモンスターボールを手に乗せると、……無言でほっぺにグリグリと押し当ててきた。
「え、!?何!?ちょ、痛いって!」
「……使い方、違うのかな……」
アタシの話が耳に入ってないのか、ボールをアタシの頭にのせたり、顔の前にかざしたり、色々と奇行をしだした。
……でも、どれもうまくいかなかったのか、フワンテみたいに頬を膨らませた。
「イテテ……、急にどうしたの?アタシはポケモンじゃないんだから、捕まえられないよ?」
「……。……先に言って」
「わ、ちょ!イテテテテ!」
更に頬を膨らませて、ボールをグリグリしてくるユウレイさん。
結局、最後まで理由は教えてくれなかった。
「………………」
暗闇と静けさに包まれた『わすれられたそうこ』。その部屋のソファに腰かけて、正面を見る。……もう、そこに彼女はいなかった。
今日のお茶会は、なかなか休めない、休まないミクのために、準備していたものだった。ミクを膝枕したあの日から、少しは休んでくれるようになったし、焦りこそなくなったけれど。それでもミクの顔には、いつも、隠しきれてない疲れと、クマがあった。だから、ポットデス達と相談して、大好きな甘いものを食べたり、生気……に見せかけて疲れを吸い取ったりする今日のお茶会を計画したんだ。……こうでもしないと、彼女の疲れは取れないだろうから。……それと、少しでも、彼女がスランプを抜ける手助けができたら、なんて。
なんとなく、視線を落とす。暗闇に飲まれ、今にも闇に溶け込んでしまいそうなほど、ぼんやりとしたボールが目に留まった。
「……特別、か……」
長机のうえに置かれた、空のモンスターボール。それを見るだけで、彼女の、ミクの、眩しすぎる笑顔とセリフが蘇る。ステージの上よりも、きれいで、輝いていて、良い顔をしていた。
ボールを指で転がしながら、何度も、何度も頭の中で、あの言葉を繰り返す。
「特別……じゃ、なくてもいい。せめて、ずっと……」
静まり返った夜の闇に独り言が溶けていく。
ついさっきまで、あんなに賑やかで、楽しかったのに。お茶会が終わった後も、上からミクの楽しそうな声が聞こえてきたのに。
……今は、何も聞こえない。静かで、冷たくて、耳が痛い。
「独りぼっち……」
呟いた瞬間、鋭い痛みが私を襲った。耳が、頭が、_心が、痛い。
思わず両手で頭を押さえる。いくら頭を掻きむしっても、痛みはなくならない。消えてくれない。
なんで、痛いのか、わからない。どこかにぶつけたわけでもないのに。……どこにも触れられないのに。
寂しくて、苦しくて、痛くてたまらない。理由を考えようとしても、痛みが思考を遮ってしまう。
なんで、こんなに痛いの?なんで、私は寂しいの?なんで私は――
ジジッと、体のノイズが音を立てた。
「あ、れ……?」
ポフッ、と柔らかい音を立てて、頭の上に何かが乗った。これは……手?
混乱する頭を、分厚くて柔らかくて大きな手が撫でる。「大丈夫」と言ってるかのように、優しく、穏やかに。
揺れる手に合わせて、ゆっくりと深呼吸をする。すって、はいて、吸って……、吐いて……。
いつの間にか、体中の痛みは引いていた。
「ありがとう、ヨノワール。……もう、大丈夫」
隣を見ると、「もういいのか?」なんて言いたげなヨノワールがいた。
寝ていた他の子達も起きてきて、心配そうにすり寄ってきた。
「みんなも……心配かけて、ごめん。私は、大丈夫だから」
そういって寝床に戻るように言っても、誰もその場を離れようとしなかった。……けれど、幼いヒトモシには限界だったのか。膝の上ですやすやと寝始めてしまった。それを見た他の子も真似して、私の周りを囲むようにして眠る。
あちこちからみんなの寝息と寝言が聞こえる。みんなの気配がある。それが私には、なんだか暖かい毛布とオルゴールの音色に包まれているように感じた。
「……ふふふ。私、独りぼっちじゃ、なかったね」
私にはこの子たちがいる。だから、独りじゃない。痛みの理由なんか、もうどうでもよかった。今はただ、この暖かさに包まれていたかった。
隣を見上げれば、ヨノワールが「ほらな?」とでも言いたげな顔で、腕を組んでいた。
落ち着きをとり戻した私の顔をみて、嬉しそうに、トレードマークの包帯を撫でる。
この子はヨノワール。トレードマークは頭のアンテナに巻いている包帯。出会った時から、頭のアンテナが折れていて、包帯でなんとか支えている。
「寂しくない、けど……これじゃ、うごけない。……ヨノワール、いつもの、お願い」
眠らなくても良いに私は、長い長い夜は、とても退屈な時間だった。ミクと会ってからは特に。
そんな時は、ロトムに面白いテレビを見せてもらったり、ヨノワールから色んな話を聞いたりするのが定番になっていた。
ヨノワールは、コクリと頷き、いつものように話し始めた。……ほかのみんなを起こさないように、内緒話で。
長机の上のモンスターボールの影が、ヒトモシ達の優しい光に合わせてゆらゆらと揺れる。
退屈で、少し物足りない夜は、もうしばらく続きそうだ。
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モンスターボール
野生のポケモンに 投げて
捕まえるための ボール。
カプセル式に なっている。
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名前 ヨノワール
NN ???
タイプ ゴースト
まじめな 性格。
--年--月--日
------で
Lv.--のときに
出会った。
ちょっぴり 強情。