ゴーストミクとノーマルミクが最終的に結ばれる話(仮題)   作:新品のタタリモップ

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七月の願い事

 

「ユウレイさん!あーけーて!」

「アケテー!」

 

 今日も『わすれられたそうこ』にやってきたアタシは、ペラップと一緒にドアの前でユウレイさんに呼びかける。時間は夕暮れ。色んな時間に隙を見つけてはユウレイさんと会っていたけど、最近ようやくこの時間帯に落ち着きつつある。普段は遠慮なくドアを開けて入るのだけれど、今日は両手が塞がっているからユウレイさんに開けてもらわないといけない。手を少し動かせば、手に持って……というより引きずっているものがガサガサ言う。ユウレイさんはどんな反応をするんだろう。いつものイタズラに対するちょっとした意趣返しになるかもな、なんて考えながら待っていると、ガチャ、という音をたててドアが開いた。

 視線をそちらに向けると、無表情ながら嬉しそうな顔のユウレイさんが「いらっしゃ……」と言いかけて……ゆっくりアタシの後ろを見てから、そっとドアを閉じた。パタン、という音が廊下に虚しく響く。

 

「ちょ、ユウレイさん!?なんで閉めるの!?」

「人違い……です。お引き取り、ください……」

「敬語!?」

 

 初対面でも使わなかったのに!?と驚きながら、持ってきたものから手を放してドアを開ける。倉庫の中にはユウレイさんが眉間に深い皺を刻んで浮いていた。閉めるなんてひどいよ~とブーたれるアタシを華麗に無視したユウレイさんは、溜息をひとつ吐いてから未だドアの外でガサガサと音を立てるものに視線を向けた。

 

「ミク……あれ、なに」

「見て分かるでしょ、笹だよ、笹!」

「ササ!」

 

 ササダヨ!と追従するペラップを撫でながら、理解不能という顔をするユウレイさん。

 

「なんで……笹?」

「まぁまぁ、慌てないで。その理由を説明する前にアタシとこの笹の笑いあり涙ありの苦労譚をだね……」

 

 そう、ここまでこの笹を持ってくるのに色々とあったのだ。そこにあったいくつもの出会いと別れを聞かせる。一時間もこの話を聞けばユウレイさんもこの笹を快く『わすれられたそうこ』に置いてくれるはずだ。一言二言話したところで、目の前にいたはずのユウレイさんが居なくなっていることに気付く。

 ちょっとユウレイさん聞いてる?と言いながら辺りを見れば、ユウレイさんはアタシの話に興味なんて無いみたいで、倉庫のなかのゴーストポケモンになにやら聞いてまわっている様子だった。今はヒトモシからなにか聞いているらしい様子だ。よく見るとペラップはいつのまにかゴースと遊び始めている。二人とも、ちゃんとアタシの話を聞いてほしい。

 

「モッシ!」

「……そっか、できるんだね」

 

 ヒトモシにそう言うと、ユウレイさんはその子を伴って笹の近くまでふわふわと移動していく。あれ、運んでくれるのかな、と思いつつ見ていると。ユウレイさんはビシっと笹を指さしてヒトモシに指示を出した。

 

「ヒトモシ、『おにび』……!」

「ちょっと待って!?」

 

 慌てて叫ぶと、ユウレイさんはふわりと身体ごとこちらを振り向く。その目にあるのは怒りというより呆れの感情だ。

 

「ちゃんと……説明する?」

「説明する!説明するから!だからヒトモシちゃんの『おにび』をやめさせてぇ!」

 

 必死に懇願すると「ありがとう、ヒトモシ。もういいよ」、と言ってユウレイさんはヒトモシを下がらせてくれた。もしかすると本当に燃やすつもりはなかったのかもしれない。

 

「じゃ、じゃあまずはアタシの苦労譚から……」

「ヒトモシ……」

「簡潔に!簡潔に説明します!」

 

 

 

「たなばた……?」

 

 長机の向こう側で首を傾げるユウレイさんへと頷きを返して紅茶を飲む。落ち着いて説明したいからと言って中に入れてもらったアタシは、初めて会った日のように応接室っぽいソファへと腰かけてユウレイさんに説明をしていた。笹はまだ入室許可が降りていないので廊下でお留守番だ。ペラップは昼寝……夕寝?を始めている。

 

「なんか東の方でやってるお祭りらしいんだけど、短冊っていうのに願い事を書いて笹に飾ると星が願いを叶えてくれるんだって!7月7日にやるお祭りらしいから、もうやるっきゃないと思って!」

 

 ふ~ん、と相槌を打つユウレイさん。昨日ペラップから聞いた噂話だから、アタシも詳しいことはわからない。でも、願いが叶うっていうのはとても魅力的だ。それに、いつもユウレイさんとはここでお話するくらいで、なにかイベント事を一緒にやるっていうことはなかった。だからこの機会にやってみたいのだけれど……ダメだろうか。じっとユウレイさんを見て返事を待つ。少しして、ユウレイさんが口を開いた。

 

「……わかった。じゃあ、やろっか……七夕」

「っ、ホント!?」

 

 思わず確認をとると「うん、私も……少し、興味ある」、と返すユウレイさん。早速廊下に放置されている笹を取りに行こうとすると、「でも、結局七夕ってなにするの?」と聞いてきた。

 なにするって、そりゃあ、短冊に願い事を書いて、笹に飾って、それから……あれ、それからどうするんだろう。お祭りっていうくらいだからそれで終わりってことはないと思うけど。

 

「……とりあえず、笹に飾り付けする?」

「ミク、無計画……」

 

 うぐっ、と言葉に詰まる。ユウレイさんのジト目が痛いけど、仕方ないじゃないか。アタシだって昨日知ったイベントなのだ、計画性がないと言われたらその通りなので、どうかそれは言わないでほしい。はぁ、とため息を吐くユウレイさん。なんだか今日は呆れられてばかりかも知れない。

 

「じゃあ……段ボールの中、探してみる」

「うん、お願い!アタシは笹持ってくるね」

 

 

 

「ユウレイさん、その飾りもうちょっと左でお願い」

「ん、わかった」

 

 高いところの飾り付けをユウレイさんにお願いしたアタシは、現在最終的なバランスチェックに手を出していた。改めて見上げるとすごく大きな笹だ。『わすれられたそうこ』の天井に付きそうなくらい、というか一番上は天井に付いている。そりゃユウレイさんが嫌がるのも頷けるなぁ、と先程より冷静になった頭で考えていると、ユウレイさんがふわりと降りてきた。

 

「ミク、どう……?」

 

 ちょっとわくわくしたような表情でそう聞いてくるユウレイさん。なんだかんだ楽しそうだ。最初は仕方ないなってオーラ全開だったけど、やってるうちに楽しくなってきたのか飾り付けをしている最中はこっちの目が回りそうになるくらい忙しなく飛び回っていた。

 炎のように揺らめく髪飾りをいっそう強く光らせるユウレイさんを見て、やっぱり無計画でもやってよかったと思う。ここ数か月ユウレイさんと話していてわかったことだけど、彼女はなにも気にしていないようで意外に寂しがりで、そしてお祭り好きな一面があるのだ。アタシが初めての友達だって言ってたけど……いったいどれだけ一人でいたのか、アタシは知らない。これは、なかなか返事を返さないアタシを怒るでもなく、ただ不思議そうな顔で見つめる彼女と楽しい思い出をたくさん作りたいと思って誘った七夕だから。楽しんでくれているようでよかった。

 人の顔を見たまま物思いへと耽るアタシに、「どうかしたの?」と聞いてくるユウレイさん。「ごめん、考え事しちゃってた」、と一言謝って再び笹を見上げる。

 改めて確認しても、飾り付けは全体的にいい感じだと思う。過密な場所もないし、いいバランスだ。だけど、う~ん。

 

「なんか足りないような……」

 

 そう、なにか足りないような気がする。「そう……?」と首を傾げるユウレイさんはよくわからない様子だけど、アタシはライブ会場の飾りつけにも手を出した女だ、こういう飾り付けには一家言ある。

 

「なんか、こう、丸い球みたいなのがあるといいんだけど……」

「もっかい……探してみる?」

 

 ユレイさんが呟くように提案したのを聞いて、少し考える。この飾り付け達は部屋の隅に積まれていた段ボールの中にあったものだ。全ての段ボールを開けたわけじゃないから、もしかすると求めているような飾りが眠っているかもしれない。「うん、そうしよっか」と返事をして、二人で段ボールの山を漁りにいく。

 だいぶ古い流行のステージ衣装とか、年季の入った工具なんかを押しのけながら段ボールを開けていくと、ある段ボールの中に赤い玉のようなものが見えた。手に取ってみるとそこそこ大きいサイズで、周りに同じ色の綿のようなものが付いている。玉というより、珠って感じの綺麗さ。ホコリを被ってはいるけど、それさえ払えばほとんど理想に近いものだ。

 

「ユウレイさーん!いいのあったよー!」

 

 上の方の段ボールを見ていたユウレイさんに声をかけて降りてきてもらう。あとはこれを笹のテッペンに飾り付ければ完璧な笹の完成だ!見つかった珠の完璧さに満足していると、ユウレイさんが怪訝な顔で声をかけてきた。

 

「いいのって……その子の、こと?」

「え?うん、そうだよ。綺麗でいい感じじゃない?」

 

 そう言うと、ユウレイさんは首を傾げて不思議そうな顔をする。どうしたのだろうと言葉を待っていると、ユウレイさんは少し言いにくそうにしながらも口を開いた。

 

「その子……ポケモン、だけど」

「……え?」

 

 言われて、改めて手に持っているものを見てみると、アタシから見て裏側にあたる位置に虫ポケモンっぽいポケモンがくっついていた。えっ、もしかしてこの球ってこの子のやつ?なんとかして交渉すればもらえないかな、なんて考えていると、ユウレイさんがアタシからポケモンを取り上げた。

 

「この珠は……この子にとって、大事なものみたいだから」

 

 不満げに彼女を見上げると、諭すような声でそう言われてしま……なんかその子めっちゃ逃げようとしてない!?庇ってもらったのになんで!?さっきまで全然動かなかったのに、ウゴウゴと藻掻いてユウレイさんの手から逃げようとしてる……。

 ユウレイさんも少しショックを受けた様子で、「……返す」と言ってアタシに渡してきた。さすがに居た堪れなくて、「ユウレイさんは怖くないよ~」と言って彼女の方に差し出してみたけど、謎のポケモンはひっしとアタシの腕に捕まって離れようとしない。あ、ユウレイさんが部屋の隅っこに行ってしまった。相当ショックだったのか体育座りをしている。

 

「……図鑑、向けてみて……」

「あ、うん」

 

 なんと声をかけていいかわからなくて腕に謎のポケモンを抱えたままオロオロしていると、ユウレイさんが背中越しにぽつりとそう言った。返事をしてスマホの図鑑アプリを開き、謎のポケモンを画角に収める。

 

『ベラカス ころがしポケモン タイプ むし エスパー 玉の中に 赤ん坊が 眠る。 心地よく 眠れるように 脚で 玉を まわして あやしているのだ。玉を 支える 体は ほとんど 動かない。』

 

 図鑑の無機質な声が静まり返った部屋に響く。このポケモンはベラカスというらしい。手元に目を落としてみても、ほとんど動かないって説明の通りぴくりとも動いていない。いや、さっきユウレイさんに抱っこされたときには結構動いてたけど。でも、そっかぁ、赤ちゃんが入ってるんだったら飾りに使うわけにはいかないよなぁ……。

 ベラカスちゃんをじっと見ていると、ユウレイさんが復活したらしくふわふわと浮いてこちらに戻って来る。そして少し寂しげに、「その子……連れて行ってあげて」と言った。どうして?と聞けば、無表情なのに悲壮感を漂わせるという器用なことをしながら教えてくれた。

 

「私……エスパータイプの子に、怖がられるから」

「あ、そうなんだ」

 

 アタシにとってのゴーストタイプみたいなものなんだろう、たぶん。ユウレイさんもゴーストタイプには好かれてるみたいだしそういうものなんだろうと、特に深く考えることもなく返事をする。どうしようか少し考えてから、まだ短冊に願い事を書けてないのでちょっとボールに入っていてもらうことにした。ゴーストポケモンだらけのこの空間の居心地があまりよくなかったのか、すんなりとボールに入ってくれたのはありがたい。そんなにボール持ってなかったからね。

 なんか色々あったし、もう飾り付けはこれでいいような気がしてきた。ベラカスちゃんを吊し上げるわけにもいかないし。

 

「……私、庇ったのに」

「あ、あはは……」

 

 短冊を書く前に、ユウレイさんを慰めないといけないようだし。

 

 

 

 ユウレイさんのことを慰めること30分。なんとかユウレイさんを復活させることができた。ベラカスちゃんのとくせいが『テレパシー』じゃなかったらもっと時間がかかったと思う。『テレパシー』といっても自分の感情を相手に伝える程度のものではあったけど、それでなんとかなった。まずアタシがベラカスちゃんを説得して、ユウレイさんと話をしてもらったのだ。テレパシーで話してたから内容は分からないけど、話を聴けばお互いに謝って仲直りしたとのこと。

 ベラカスちゃんの処遇だけれど、苦手なゴーストタイプの巣窟とも言えるここに置いていくわけにもいかないしどうしようかと悩んでいたら、本人からアタシに付いてきたいと意思表示してきた。吊り橋効果でゲットした感は否めないけど、まあ仕方がない。晴れてアタシのポケモンになったので、あとで忘れないようにマネちゃんに言っておこう。

 で、今なにをしているかというと。ひとまずドタバタが落ち着いたので、ユウレイさんと短冊を書くことにした。今度は長机を挟んで座るのではなく同じソファに並んで座っている。アタシは願い事が決まっているのでさらさらとペンを走らせる。

 

『スランプから抜け出して、胸を張って歌を歌うこと!』

 

 書き終えて「よし」、と呟く。やっぱり今のアタシが願うことといえばこれだろう。四月のあの日、ユウレイさんに話を聞いてもらってからは少しだけマシになっているけれど、それでも未だ満足がいくような歌い方をできているとは言えない。だから願い事はこれに決めていたのだ。

 でも、もしかすると願い事にするまでもなかったかもな、なんてちょっと思う。少し気持ちが後ろ向きになったときには、ユウレイさんが居てくれるから。『みやぶる』を使っているわけでもないのに、ユウレイさんはアタシのそういうところを見抜いて寄り添ってくれる。この数ヶ月の間でも、何度かそれに助けられてしまった。まあ、すでに書き終えたし、今のところ他の願い事もないからこれでいいのだけれど。

 そんなことを考えて、少し暖かい気持ちになって。そういえばユウレイさんはどんな願い事をするのだろうと気になった。やっぱり記憶が戻りますように、とかだろうか。それとも、エスパータイプのポケモンと仲良くなれるように、とかだろうか。気になり出すと止まらなくて、こっそりユウレイさんの書いている短冊を盗み見てしまった。そこに書いてあったのは……。

 

『ミクがへんなメガネを外しますように』

 

 ……。

 

「そんなに似合ってないのコレ!?!?」

「わっ……びっくり、した」

 

 一瞬フリーズして急に叫んだアタシを驚いた顔で見るユウレイさん。いや、驚かせたのはごめんなんだけど……ごめんなんだけど!ユウレイさんが持つこのメガネへの執着はなんなんだろうか。イタズラでも頻繁に外されるし……これでも一応トレードマークなんだけど。

 

「ゆ、ユウレイさん。もうちょっと別な願い事ないの……?」

「別……?」

 

 そう言って、う~んと難しい顔をするユウレイさん。その隙にサッとユウレイさんの短冊を回収して、新しい短冊を置いておく。すごい悩んでる。

 記憶を取り戻せますように、とかでいいんじゃないんだろうか。そう伝えてみると、またう~ん、と唸ってから言葉を返してくれた。

 

「今は……そこまで、記憶を取り戻したいとは……思ってないから」

「えっ、なんで!?」

 

 すごく驚いた。びっくりして二の句が継げない私に、ユウレイさんはぽつりぽつりと理由を呟く。アタシも聞く姿勢に入った。

 

「昔は……ミクと会う前は……記憶を取り戻したいと、思ってた」

 

 きっと、不安だったから、寂しかったから。そう言って、ユウレイさんはアタシと目を合せた。急に真っ直ぐな目で見つめられて、アタシの心臓は強く鼓動した。

 

「でも、今は……ミクがいるから。だから、これまでよりも……これからのことを。書きたいと、思った」

 

 恥ずかしいのだろう、頬をほんのり桜色に上気させてユウレイさんはそう言った。言われた言葉がすごく嬉しくて、嬉しいだけのはずなのに、なぜだかうるさくなる心臓に困惑していると。ユウレイさんは、「それに」、と言葉を続けた。

 

「ミクが、思い出させてくれる……でしょ?」

「……ぁ」

 

 ニヤリ、と。微笑みをイタズラが成功した子どものような笑顔に変えて、ユウレイさんが言った。その目は、覚えていた。そして、信じていた。アタシが言った、アタシの歌で思い出せるって言葉を。

 それが嬉しくて、そして少しだけ申し訳なかった。記憶を取り戻すなんて一大事を、あんなに軽く口にしてしまったことが……アタシには申し訳なく感じられた。だから。

 ぎゅっと拳を握って、アタシは確かな意思をもってユウレイさんの黄色い瞳を見つめ返す。そうだ、約束しよう。宣言しよう。今度はちゃんと。今度はもっと。自分に刻みこむように。

 

「ねぇ、ユウレイさん。アタシ、今度はちゃんと宣言するよ。ユウレイさんの記憶を、アタシの歌で取り戻して見せる」

 

 それを聞いたユウレイさんは、一瞬だけきょとんとしてから、イタズラを思いついたように笑みを深めた。

 

「ふふ、それは……ぜったい?」

「うん、絶対」

 

 即答したアタシに、ユウレイさんは、また花が綻んだかのような笑みを浮かべた。それから、あのときと同じ返事をした。

 

「じゃあ……楽しみに、してるね」

 

 そう言って、ユウレイさんはふわりと浮かび上がった。どうしたのだろう、と思っているとユウレイさんが短冊になにか書いて、それを笹の一番上に結んでしまった。

 

「えっ?ちょ、ユウレイさんなんて書いたの!?」

「……ヒミツ」

 

 そう言ってユウレイさんはイタズラっぽく笑った。アタシはなんとか短冊を見ようとするけれど、結ばれてる場所が高い上に上手い事隠れていて読めない。

 

「も~!見せてくれてもいいじゃん!」

「ダメ。見たかったら……飛ぶといい」

「できるわけないでしょ!!」

 

 本当に見せる気がないらしいので、諦めてアタシも短冊を結ぶ。できるだけユウレイさんに見えない位置で結ぼうかとも思ったけれど、あんなに自在に浮いてるからたぶん無理だ。諦めて、手の届く範囲に結ぶ。ふわふわと浮いていたユウレイさんが降りてきて、アタシの後ろに着地する。

 

「うん……いい、願い事」

「……アタシのやつ見たんだし、ユウレイさんのも見せてくれていいんじゃない?」

「じゃあ……メガネ、もう着けない?」

「これそんなダメかな!?」

 

 トレードマークなんだってば!

 

 

 七夕の日から2ヵ月ほど経った日、今日もアタシは『わすれられたそうこ』で紅茶を啜りながら、ユウレイさんとお話ししていた。

 あのあと、結局ユウレイさんは何を願ったのか教えてくれなかった。ペラップにベラカスちゃんを笹の上まで運んでもらって『テレパシー』で伝えてもらおうという作戦は、二人がきのみでさらっと買収されてしまったので実行できなかった。ベラカスちゃんは怯え半分で言うことを聞いてて、ユウレイさんが微妙な反応をしてたっけ。でも1か月間ほぼ毎日会ってれば流石に慣れたみたいで、今はそこそこ親密な関係になっていると思う。

 まあ、解決した問題はさておいて。七夕イベントが残した一番の問題は……

 

「ユウレイさん、やっぱりそろそろ捨てた方が……」

「やだ」

 

 とりつく島もない返事を聞いて、アタシは途方に暮れて笹を見上げる。ユウレイさんが背後に庇っているそれはもうだいぶ枯れてきていて、そろそろ撤去しないと不味そうな雰囲気だ。仕方なく、アタシはモンスターボールを取り出す。

 

「ごめん、ベラカスちゃん。またおねがい」

 

 またっすか?みたいな『テレパシー』が飛んでくる。本当に申し訳ない、アタシもユウレイさんがここまで笹の撤去に抵抗を示すとは思っていなかったのだ。なんなら最初は燃やそうとしてなかったっけ。とはいえ、思い出を大事にしてくれていると思えば無碍にすることもできない。溜息をひとつ吐いて、ベラカスちゃんに指示を出した。

 

「ベラカスちゃん、『さいきのいのり』」

 

 アタシがそう言うとベラカスちゃんの身体が光に包まれて、その光が弾けたかと思うと枯れかけていた笹がみるみる青々しくなっていく。この2ヵ月で見慣れた光景だ。ユウレイさんはご満悦な様子で笹の周りを飛び回っている。なんというか、ちょっと不健全なような気がする。こういうのって枯れていく儚さまで含めてワンセットみたいな話を聞いたことがあるような、と懊悩していると、いつのまに飛んできたのかユウレイさんが隣に浮いていた。

 

「ミク……ありがとう」

「……どういたしまして」

 

 その笑顔を見て、考えていたことがどうでもよくなる。ま、いっか。ユウレイさんがこんなにも笑顔なんだし。……ベラカスちゃんには、ちょっと申し訳ないけどね。

 

 

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名前  ベラカス ♀

タイプ むし エスパー

 

おくびょうな 性格。

--年7月7日

わすれられたそうこ で

Lv.27のときに

出会った。

 

物音に 敏感。

 

 

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ふるびたたんざく

 

誰かの願いが 込められている。

持たせると ゴーストタイプの

技の威力が あがる。

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