ゴーストミクとノーマルミクが最終的に結ばれる話(仮題)   作:新品のタタリモップ

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十一月の流星群

「むむむ……」

 

 そんな声で唸りながら、アタシはカレンダーを睨みつける。今日やることを粗方終えたアタシは、もう完全に自室と化した控室でカレンダーとにらめっこしていた。もう十一月も半ば、室内とはいえ冷えるのでストーブが稼働している。ペラップなんて自分のベッドをストーブの真ん前に移動して昼寝を決め込んでいるくらいだ。そういえばベラカスちゃんはあまりボールから出たがらないけど、あの中って寒かったりしないんだろうか。

 と、それはともかく。アタシがカレンダーと向き合っているのはカレンダーが大好きだからとかではなく、次のライブまでの日数を数えているからだ。1か月前のハロウィンの日、アタシはスランプを抜け出した。今まで感じていた自分が歌っていないかのような違和感はもう感じないし、なにより歌うのが楽しくて堪らない。レコーディングなんかでも明らかに良くなっているとスタッフさんやマネちゃんに驚かれたし、最近はスランプ中に得た技術を盛り込む練習もしている。どう考えても絶好調だ。しかし、いや、だからこそ。

 

「次のライブまで3か月半、かぁ」

 

 ライブが待ち遠しくて仕方がない。何度数えなおしても変わらないその数字に溜息を吐く。今日の練習はもう終わってしまったし、これ以上はオーバーワークだ。ユウレイさんのところへ行くのにもまだちょっと早いし、なにをしようか。

 

「ペラぁ~」

 

 そんなことを考えていると、ペラップがあくびをして起きてきた。そういえば今日はまだおやつをあげてなかったな、と思いきのみを用意する。ベラカスちゃんも『テレパシー』でほしい旨を伝えてきたので、そちらの分も。きのみをガツガツ食べるペラップとちょっとずつ大事に食べるベラカスちゃんを見て、そういえば最近はペラップから噂話を聞いてなかったな、と思い立つ。

 

「ねね、ペラップ。なんか最近の噂話ない?」

「ナイ」

 

 どうせ昼寝するだけなのだからと、早くも食べ終えて寝床に戻ろうとするペラップを捕まえる。面倒くさそうなペラップに追加のきのみを渡せば、ようやく話してくれる姿勢になった。

 

「──コンドノ週末……」

 

 その話を聞いて、アタシはいつもよりだいぶ早くユウレイさんのところへ向かった。

 

 

 

〇

 

「ユウレイさーん!来たよー!」

 

 バン!と勢いよくドアを開け放つと、ソファに座って目を丸くしているユウレイさんが目に入った。しまった、びっくりさせちゃったか。ユウレイさんは驚いた顔をいつもの無表情に戻すと口を開いた。

 

「いらっしゃい。いつもより……早いね」

「えへへ、ユウレイさんに話したいことがあってさ~」

 

 話したいこと?と首を傾げるユウレイさんに、待ってましたとばかりに用意していたスマホの画面を見せる。急に目の前に出されたそれを、ユウレイさんは特に驚くでもなく口に出して読んだ。

 

「千年、流星群……?」

「そう!今週末にこのへんで見られるみたいだから、二人で一緒に見ようよ!」

 

 上がったテンションのままにユウレイさんを誘う。千年流星群は、千年彗星から飛んできた『すいせいのかけら』が降ってくることで見られる流星群。千年に一度しか見られない千年彗星とは違って毎年見られるけど、今年は百年に一度の当たり年だとホクラニ天文台のホームページに書いてあったのだ。そう、七夕のときとは違ってしっかりどういうものか調べてきた。これでもうユウレイさんに無計画と言われることもない!

 

「いいよ……いこっか」

 

 ユウレイさんからも了承を得ることができた。これであとは星座早見表とか持っていって、ユウレイさんにちょっとイイトコ見せてやるのだ。そう息巻いているアタシに、ユウレイさんが声をかけてくる。

 

「それで……場所は、どこでみるの?」

 

 その言葉を聞いたアタシはピタッ、と固まった。そういえばどこで見るのか全く考えていなかった。アタシは『そらをとぶ』を使えるポケモンを持ってないからあんまり遠くには行けないし、人が多いところにアタシが行ったら騒ぎになっちゃうし……どうしよう。

 

「……ユウレイさん、いい場所知ってたりしない?」

 

 アタシが固まった時点で既にジト目になっていたユウレイさんは、それを聞いてため息を吐いた。

 

「ミク、無計画……」

「うぐ……」

 

 言われてしまった。

 

「だ、だって……」

「……だって?」

「あっ、なんでもない!」

「?」

 

 続く言葉を口にしかけて、慌てて止める。ユウレイさんと一緒に星を見られるのが嬉しくて舞い上がっていた、なんて。恥ずかしくって言えるわけない。不思議そうな顔でこちらを見るユウレイさんに、でもどうしよっか、と言って頭を掻いた。

 

「とりあえず……座ればいいと、思う」

「あ、うん」

 

 『わすれられたそうこ』に入ってから座りもせずに話していたアタシにそう言って席を勧めるユウレイさん。アタシも素直に座って、ポットデスが淹れてくれた紅茶を飲む。ユウレイさんも紅茶を一口飲んで、口を開いた。

 

「場所なら……心当たりが、ある」

「ホント!?」

 

 驚くアタシに「うん」、と返してユウレイさんは部屋の端にあるテレビへ視線を向けた。たぶん、ハロウィンと同じ方法で遠くまで行くってことなのだろう。確かにそれなら誰もアタシのことを知らない地方に行ったり、そもそも人がいないような場所に行けるはずだ。とはいえ誘っておきながら場所を丸投げというのも……。少し申し訳なくなって、アタシはユウレイさんに謝る。

 

「なんかごめん。アタシから誘ったのに」

「ううん、気にしないで。私も……楽しみだから」

 

 そう言ってくれると少し救われる。場所は任せちゃったわけだし、アタシは当日までにしっかり星の知識をつけておかないと。……流石にマネちゃんに手伝ってって言ったら断られるかな?いや、ここは当たって砕けろの精神で……などと考えていると、ユウレイさんが微笑みながらこちらを見ていることに気が付いた。顔になにかついているだろうかと見返すと、ユウレイさんがいつもの呟くような口調に楽しさを滲ませて言った。

 

「ミク……楽しみ、だね」

 

 その言葉からは、ユウレイさんも楽しみにしているという感情が伝わってきた。なんだか同じことを考えているというのがくすぐったくて、でも嬉しくて。気の利かない、けれど素直な本音で返した。

 

「うん、とっても!」

 

 

〇

 タマムシ大学の出してる星に関する本を読もうとして難しすぎるからと子供向けの本に変えたり、そこで学んだことをその日のうちにユウレイさんへ話してしまうものだからほとんど知識に差がなくなってしまっていることに気が付いて愕然としたりしていると、あっという間に週末がやってきた。

 今は『わすれられたそうこ』で行く前の最終準備を行っている。今回はそこまで遠い場所に行くわけじゃなくて、程よく近いところにある、もう使われていない山小屋へ飛ぶのだとか。山に行くなら防寒装備は必須だろうと、アタシはいつもよりモコモコした服を着て、バッグには毛布を忍ばせている。一方、テレビの前でなにやら難しい顔をしているユウレイさんは年中同じ格好だ。なんでも、暑さ寒さを感じないのだとか。アタシがバッグの中身を確認し終わって顔を上げると、ユウレイさんも作業が終わったらしくこちらへふわふわと飛んできた。

 

「じゃあ……いこっか」

 

 そう言って手を差し出してくるユウレイさんの手を迷いなく取る。ユウレイさんは薄く笑ってから口を開いた。

 

「『ハロウィン』」

 

 また楽し気なオバケたちが出てきてアタシたち二人を取り巻く。今度は前回のように驚いたりはせず、リラックスして周りを見た。このわざもすごく綺麗だよな、なんて考えていると、オバケたちは次々薄くなって消えてしまう。もう終わったみたいだ。久しぶりのゴーストタイプの身体を確認して……あれ?寒くない?温度の感覚が消えたことに驚いていると、ユウレイさんがアタシの手を引いてふわりと浮かび上がった。

 

「んわっ!……うう、まだ慣れないなぁ」

「ふふ……私も、最初はそうだった」

 

 「本当?」と聞くアタシに「たぶん?」と言うユウレイさん。なにか思い出したわけじゃないんだ、なんて考えていると、視界が青白い光に包まれた。もう移動するみたいだ。

 パッと一瞬光が強くなってすぐに収まる。目を開けると、そこはもう『わすれられたそうこ』ではなくどこかの廃墟だった。木造の小屋は長らく使われていないのかどこもかしこもボロボロで、思わずうへぇ、と声が出る。屋根は壊れていないみたいだから雨風を凌ぐくらいは出来るかもだけど、これじゃ誰も来ないのにも納得だ。とはいえここに泊まるわけでもないし、今日の目的は星だから関係ないか。

 

「ユウレイさん、早く行こ!星がアタシたちを待ってるよ!」

「わっ……ミク、ちょっと落ち着いて……」

 

 ユウレイさんの手を取ってタタっと走り出す。もう一週間待ったのだから、これ以上待てるわけもない。流星群にはピークタイムみたいなのもあるみたいだし、なにより早く星が見たい!

 ゴーストタイプの身体で穴だらけの廊下を音もなく軽やかに駆け抜けて、外に続いているだろう扉を勢いよく開ける。そしてアタシは、言葉を失った。隣でユウレイさんが息を呑む音が聞こえる。

 扉の向こうはまるで、いや、まるっきり別の世界だった。三日月の光が降り注ぐ野原は枯れているのか銀色になり、風を受けてさらさらと静謐な波音を立てている。どれだけ遠くを見ても、町灯りのひとつさえ見えない山間の景色。漆を塗りたくったように黒々と佇む山々は何もかも呑み込んでしまいそうな恐ろしさを湛えているのに、どこか安心する雰囲気だ。そしてなによりも、その全てを見下ろすように、包み込むように広がる満点の夜空が。真っ黒な天鵞絨に銀砂をぶちまけたような夜空が、どこまでも、どこまでも。

 

「──綺麗」

 

 その言葉を発したのが、アタシだったのかユウレイさんだったのかはわからない。もしかしたら二人ともそう言ったのかもしれない。それくらい、アタシたちはその景色に圧倒されていた。しばらく二人、手を繋いだまま並んでぼうっとしていたアタシたちは、どちらからともなく山小屋から歩み出た。野原の真ん中で、二人夜空を見上げる。

 

「……綺麗だね」

 

 今度はちゃんと意思を持って口にする。うん、というユウレイさんの声を聞いて、アタシは顔を下ろした。手を繋いでいる先に、ユウレイさんの方になんとなく視線を向けて、そこでアタシは固まってしまう。星を見上げるユウレイさんが、あんまり綺麗だったから。

 暗い浅葱色の髪は優しい月光を受けて輝いているようで、宝石を細く細く削って作ったんじゃないかとさえ思わされる。いつもは前髪に隠れてよく見えないその顔も、月の光に照らされて人間離れした美しさを放っていた。そんな人間らしくない美しさなのに、星を見て感動に揺れるその瞳があんまり無邪気だったから。

 

「本当に、綺麗」

 

 つい、口にしてしまった。その言葉に彼女は視線を下げてこちらを見る。その瞳にアタシが映っているのを見てドキリと心臓が跳ね上がった。ユウレさんが口を開く。いつもの呟くような語調で、隠す気もないだろう純粋な好意と感動を言葉に込めて。

 

「ミクと、二人で見てるから……こんなに綺麗なんだと思う」

 

 だから、ミクとここに来られてよかった。そう言って、ユウレイさんは頬を林檎のように赤く染めた。温度の感覚がなくなったはずなのに、頬が熱くてたまらない。気恥ずかしくなったアタシたちは綺麗な夜空をみる余裕もなくしてお互いに顔を逸らす。

 

「れ、レジャーシート敷こっか!立ってると首痛くなっちゃうし!」

「う、うん……そうしよ」

 

 ちょっと早口になりながらそう言って、二人で足元にレジャーシートを敷く。ユウレイさんと一緒に腰を下ろして……そのときバッグの中にある毛布が目に入った。ユウレイさんは寒さを感じないと言っていたから、二人で使うには少し小さい大きさのそれ。

 

「ね、ねぇ。ユウレイさん、寒くない?」

「わ、私は……」

 

 大丈夫、と言いかけた口を開いたまま、ユウレイさんはアタシが手に持っている毛布に視線を向けた。まだ赤い顔をほころばせて、恥ずかしさを抑えるような声色で言った。

 

「そうだね……寒い、かも」

「だよね、こっちおいでよ」

 

 断られなかった安心で胸を暖かくしながら、ユウレイさんを手招きする。隙間なくぴったりとくっついて、毛布を二人で羽織った。ぜんぜん寒くないのにこんなにくっついて、毛布まで被っているのがどこかおかしくて、二人でくすくすと笑い合った。ふと、ユウレイさんがアタシの後ろの方の空を指さす。

 

「あ、流れ星」

「え、ホント!?」

 

 慌てて振り返るけれど、そこにはもう流れ星はなかった。流れ切ってしまったみたいだ。ガックシと頭を下げたアタシの頭をユウレイさんが撫でようとして……すり抜けてしまう。ユウレイさんが、寂しそうな顔をする。それが嫌で、アタシは抱き着くようにしてユウレイさんの胸のあたりにぐりぐりと頭を押し付けた。

 

「わわっ!?み、ミク?」

 

 ユウレイさんが驚いたような声をあげる。正直かなり恥ずかしいけど、ユウレイさんが寂しいよりずっと良い。そっとユウレイさんを見上げれば、もう寂しそうな顔はしていなかった。これで良し。頭を離してイタズラっぽく笑ってやる。揶揄われたと思ったのか、ユウレイさんはぷくっと頬を膨らませた。

 

「……『ポルターガイスト』」

「わっ、ちょ、またメガネ!?」

 

 ユウレイさんが仕返しとばかりにアタシのメガネを浮かばせる。ふわりと浮いたメガネはユウレイさんの手の中に納まった。両手でそれを持って「没収」、とドヤ顔で口にするユウレイさん。アタシは苦笑いをして、また空を見上げた。ユウレイさんも、空を見上げる。なんとなく、アタシたちは会話をそこでやめた。月光が映し出すアタシたちの影は、確かにひとつに見えた。

 百年に一度の当たり年というのは本当らしく、ぼーっと見上げているだけでも幾つもの星が尾を引いて流れていく。すぅっと流れる小さなものもあれば、ザァっという音が聞こえそうな、驚くほど大きな火球もある。いくつもの星が流れていくのを、アタシたちはただ静かに見ていた。その静寂を破ったのは、珍しくユウレイさんからだった。

 

「ミクは……」

 

 夜空を見上げたままのユウレイさんは、そこで言いよどんでから、決心したように再び口を開いた。

 

「ミクには、思い出せない記憶って……ある?」

 

 意図がよくわからない質問ではあったけど、なんとなく聞き返しちゃいけない気がして、アタシは思ったまま、飾らないままを口に出した。

 

「あるよ。アタシね、五歳のときの記憶がないんだ」

 

 三日月が山の裏に隠れて、アタシたちのいる野原が山の影に呑まれた。あたりが一気に暗くなる。ユウレイさんの表情は見えなかったけれど、聞いてると判断して言葉を続けた。

 

「五歳のときだけで、四歳の頃とか、それより後の事はちゃんと覚えてるんだけどね」

 

 まるで時間が巻き戻ったみたいだったって、お父さんが言ってたっけな。なんとなく話を聞いたときのことを思い出して……そういえば、とアタシはポケットに手を入れた。

 

「なんとなく大事にしてるお守りがあるんだけど、それをどこで貰ったのかも覚えてないんだよね」

 

 これなんだけど、と言ってユウレイさんに手渡す。だいぶ古いお守りで、巾着袋のような形をしている。ユウレイさんがしげしげと眺めているのが気配でわかった。ちょっと微笑ましくなって、くすりと笑う。ユウレイさんはそれには気づかなかったようで、しばらく眺めたあとに「ありがとう」と言ってお守りを返してくれた。三日月が山の裏から姿を出して、また辺りが明るくなる。ユウレイさんは一瞬目を細めてから、夜空に視線を戻した。

 

「変なこと聞いて……ごめん」

「別に大丈夫だけど……」

 

 再び見えたユウレイさんの表情に陰りがあるように見えて、心配になる。その視線に気づいたのか、ユウレイさんは少し俯いてぽつぽつと口を開いた。

 

「少し……不安になった」

「不安?」

 

 そう聞き返すと、ユウレイさんはこくりと頷いて続きを話し始める。三日月の光は山野に影を作りながら、ひどく平等に降り注いでいた。

 

「記憶を取り戻したとき……アタシは、今までと同じでいられるのか。それが……不安」

 

 そう言って遠くを見る彼女の視線の先で、またひとつ星が流れていく。ユウレイさんは、アタシがこんなに近くにいるのに、独りぼっちの子どものような目をしていた。アタシはそれが嫌で、半ば衝動的に口を開いた。

 

「ユウレイさんが記憶を取り戻した後も、アタシはそばにいるよ」

 

 驚いたように顔を上げてこちらを見るユウレイさん。静かに目を合せて、心を決める。いや、違うな。もうとっくに決まってる心を、言葉に変える。

 

「ユウレイさんが記憶を取り戻してどうなるのかはわからないけどさ、それでもユウレイさんは、ユウレイさんだと思うから。……嫌だって言われたら、ちょっと傷ついちゃうけど。それでも、独りになんてさせないよ」

 

 改めて考えれば、なんの解決にもなっていない。でもユウレイさんには十分だったみたいで、もう寂し気な顔はしていなかった。代わりに不思議そうな顔をしたユウレイさんが、アタシに聞いてくる。

 

「どうして……そこまでしてくれるの?」

 

 その言葉にアタシは考えようとして……考える前に口が動いていた。

 

「それは、アタシがユウレイさんのことを……」

 

 瞬間、ポン!という弾けるような音と共にバッグから何かが飛び出してきた。びっくりしてそちらを見ると、ペラップがパタパタと羽ばたいている。そういえば晩御飯あげてなかったような……じゃなくて!今アタシなに言おうとしてた!?

 

「アタシガユウレ……」

「ちょっ、黙ってペラップ!!」

 

 カタコトでアタシの言った言葉を反復しようとするペラップに立ち上がってスマホを投げつける。遠慮なしの全力投球だ。ペラップはそれを回避するとバサバサと飛んでいった。アイツのことだからいい感じにほとぼりが冷めたタイミングで帰ってくるんだろう、そういうところのセンスは天性のものがある。肩で息をしながら振り返ると、ポカンとした様子のユウレイさん。

 

「あ、あ~っと……そ、そういうわけだから……」

「……ふふっ」

 

 しどろもどろな状態のアタシを見て笑ったユウレイさんは「うん、わかった」と言ってほほ笑む。その笑顔にドキリとしていると、ユウレイさんが左手をこちらに差し出してきた。小指だけを伸ばした状態だ。ユウレイさんがなにを求めているのか理解して、アタシも同じように右手を伸ばす。

 

「じゃあ……約束」

「うん、約束!」

 

 お互いの小指を繋いだとき、ユウレイさんが小さい声でなにか歌ったような気がした。なにか、懐かしい感じがするような。それを聞こうと口を開きかけたそのとき──頭上からザアァァっという音が聞こえた。何事かと思って上を見上げれば、そこにはもう流れ星とは呼べないほどに大きな、光の帯が走っていた。

 その光は何色とも言えない複雑な色で、しかもそれが瞬きするたびに違う色へと変化している。夜空を切り裂くように、飛行機雲のようにどんどん長くなっていき、最後は山の裏に隠れて見えなくなってしまった。

 

「わぁ……!!」

「すごい……!」

 

 ユウレイさんと共に感嘆の声をあげる。一瞬の出来事だった。もう夜空にはあの光の帯は少しも残っていなくて、もとの満点の星だけが広がっていた。ユウレイさんと口々に感想を言い合っているうちに、夜は更けていった。

 

────バッグのなかでお守りが光っていることに、アタシは最後まで気が付かなかった。

 

 

 

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ふるびたおまもり

 

持っていると ポケモンが ねむり状態から

回復しやすく なる

不思議で ふるびた おまもり。

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