「歩くん!!今日は何して遊ぶ?」
長い黒髪の少女が元気な声で言う。
「何でもいいよ」
そっけない口調で答える歩に少女が不満気な顔をして言った。
「また何でもいいって……。ちゃんと考えてよね」
少女が可愛い顔ながらふくれっ面で歩を見ている。
どうしてこうなった………
歩は2週間前を思い出す。
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人間そう簡単には変われない……誰が言った言葉か知らないがまさしくその通りだと歩は思う。
第2の人生が始まって1ケ月……
相変わらずのぼっちである………
第1の人生は自分のために生きた……だからこそ第2の人生は人のために生きよう……そう考えていた。
神は几帳面だったのか歩の戸籍は存在し、両親は7歳の子供を一人置いて海外で仕事をしているという不自然な経歴でも周りは誰もおかしいと思わなかった。
何でもありだな、神……
金も通帳に異常な量入っていたし……なんというVIP待遇だろうか。
これならこれからの生活、うまくいきそうだ………そう思っていた時期が歩にもあった。
結果このざまだ。
小学校に通い始めたはいいものの元々対人スキルの乏しい歩。
精神年齢は17歳であるのに7歳の子供たちの無邪気な輪に入れるはずがなかった。
結局のところ昔と何も変わっていない自分にむなしさを感じ、家に帰ってもやることが無いことから暇つぶしに近所の公園を訪れた。
いつもは子供が溢れ栄えている公園であったが今日は珍しいことに誰もいない。
静かな公園は夕日に彩られ、どこか神秘的な風景を作っていた。
そんな風景に目を奪われていると、春めいた心地よい風に乗せられどこかから声が聞こえる。
「ひっく……母様……ひっく……」
あたりを見回すと黒髪の少女が俯き泣いていた。
ひとりで泣いている少女の姿に境遇は違っていても、孤独であった自分と重ねて、心配になり声をかける。
「お母さんとはぐれてしまったのかい?」
歩の言葉に泣き顔で真っ赤になった少女がこちらを向いた。
「母様が……どこにもいないの……」
力の無い声に、ここでこの子を笑顔にできずどの口が人のために生きたいなんて言えようか……そう思った。
「俺が君のお母さんを見つけてみせるよ。だから泣かないで。」
初めは中々泣きやまなかったが歩が少女の話しを聞いているうちに落ち着いたのか、時間が経つと涙は引いていた。
少女の母親の名前や特徴、住んでる地域も大体わかり、いざ探しに行こうと思うと、歩は一緒に行動していく中で肝心なことに気づいた。
「そういえば聞いて無かったね……君の名前、教えてくれないかな?」
「朱乃。姫島朱乃だよ」
これが姫島朱乃との出会い。
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結論から言うと、朱乃の母親である朱璃はすぐに見つかった。
問題はその後。
初めて人のために生きたことで若干達成感に浸っていた歩に朱璃が言った。
「朱乃を助けてくれたお礼がしたいの、ご飯でも食べていかない?」
朱乃にも袖をひっぱられ断れない空気にしかたなく頷いた。
朱璃は歩にとって不思議な人だった。
対人スキルの低い歩にとって基本話すことが苦手である。
そんな歩でも朱璃と話しているときは自然と口が開き話していた。
昔から剣以外で多くの会話を交わらせたのは母であったように、母性溢れる人物に対しての会話は案外歩は苦にしないのかもしれない。
つい口が開きすぎ、7歳で一人暮らしをしていることをポロっと話してしまうと、「これから毎日ご飯食べに来てね、作っておくから」
と言われてしまった。
面倒見がよく本当に優しい人である。
神の力で一人暮らしはおかしいと思われていなくても、食事や健康に関して心配してくれたのだ。
作っておくからと言われてしまっては行かないわけにもいかない。
こうして姫島家に通う日々が始まったのだった。
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~現在~
そんな訳で冒頭に至る。
「ねぇ歩くん、聞いてる?」
歩の思考は現在へと引き戻された。
「すまない、朱乃と出会った時のことを思い出して聞いて無かった」
そう言うと朱乃の顔色が真っ赤に変わる。
「お願い、忘れて。私の方がお姉さんなんだからあんな姿、恥ずかしいよ……」
出会った当初は小学生ならぬ落ち着いた態度から年上と思われていたようだが、実際は歩より朱乃は1歳年上だった。
年下に対して泣いていた所を見られたこと、また母親を探す時も歩に頼りっぱなしだったことが恥ずかしかったようで、何度も忘れるように言ってくるのであった。
しかし
「わかった、頑張って忘れるよ」
歩がそう言うと
「……やっぱりまだ覚えてていいよ……」
小声でそう答えるのがお決まりだった。
朱乃にとって歩との出会いは大切に思い出である。
恥ずかしさから毎回忘れるよう言ってしまうが本心では歩にとっても2人の出会いを大切な思い出にして欲しかった。
歩が姫島家に通って2週間。
朱乃にとって歩の存在がどんどん大きくなっていく。
最初は迷子の自分を救ってくれたヒーローのような優しいお兄さん。
そこから実は年下だとわかり、頼れる男の子に変わった。
普段無表情な歩であるが、深く関わっていくとわかる。
微妙な表情の変化、強い意志を眼差しは独特な魅力を放っているのだと。
こうして今、朱乃にとって歩は異性として気になる相手に変わっていた。
実はこの2週間、歩にとっても朱乃の存在は大きくなっていた。
初めは人のために生きるという使命感。
しかし関わっていくうちに普段あまり会話をしない自分の口数が少しずつ増えていくことに気づいた。
朱璃のように元から話せたわけではない、これからもっと知っていきたいと思ったからこそ増えた口数。
さすがに小学生を恋愛対象には見ていないが、家族的に近い意味で大切な存在へと変わっていたのだった。
そんな2人の心情の変化などお構いなしに事件は起こる。
2人は遊んだ後いつものように姫島家で夕食を食べていた。
朱乃の父親は相変わらず忙しいようでいつものように一つの空席が目立つ。
未だに会えたことのない朱乃父はどんな人なのだろうか……そんなことを考えていると突然辺りの空気が重苦しいものへと変わった。
「見つけたぞ」
突然部屋の中に3人の男が現れた。
全員腰に刀を携えている。
「久しぶりだな朱璃、お前が憎き堕天使と共に姫島家から逃げて以来か」
3人の内中心に居る男が話す。
「お久しぶりです、お父様。今更私に何か用でしょうか」
朱璃の言葉に棘があると同時に周りに緊張感が伝わった。
「今更お前なぞどうでもよい……、私の目的は」
男の目が朱乃に向かう。
「その憎き堕天使と姫島の血が混じった娘だ」
「え………」
当の本人である朱乃は状況が全く理解できていないようだった。
「娘を……どうするつもり……」
朱璃がお父様と呼んだ男性をにらみつけている。
「無論……殺すのだよ。そのような娘を生かしておけば姫島家一生の恥となる。朱璃、父としての情けだ。お前のことは見逃してやる。おとなしくそこの娘が死ぬところを見ていろ。」
そう言うと横に居た側近の男が刀を抜いた。
それを見た朱乃がやっと状況を理解し体を恐怖で震わした。
「娘は絶対に死なせない……」
朱璃がかばうように朱乃の前に出る。
「そうか………ならば2人まとめて死ぬがいい」
刀が振り下ろされるのを見て、朱乃、朱璃は目を閉じた。
どのくらいの時間が経ったであろうか……時間にしては数秒だがいっこうに痛みが来ない。
2人ともゆっくりと目を開ける。
そこで見たものは目の前には驚愕した顔でこちらを見る3人組……そして刀を受け止める歩の姿だった・
「おいおい、俺を無視するんじゃねーよ」
歩が言った。
実はこの3人は刀を受け止めたことだけで驚愕したわけではない。
歩は先ほどまで食事で使っていたお箸で刀を受け止めているのだ。
「お前……いったいなんなんだよ……意味分からねぇよ」
刀を受け止められた男が言う。
いくら強く刀を押してもビクともしない、この男にはすでに驚愕と共に恐怖が浮かんでいた。
「何故俺がお前の攻撃が防げたかわからない様なら、まだお前は刀を使っていない。刀に使われているだけってことだよ。」
全員が混乱した。
朱乃たちは普通の男の子だと思っていた子が今戦闘している状況に。そして他の3人はこの得体のしれない人間は一体何なのかわからない状況に。
「それでさ、一個聞きたい。」
全員がびくりと反応する。
「お前らは朱乃を殺すまで諦めないの?」
沈黙が続く。
「ぐ…愚問だ……」
このプレッシャーの中でなんとか発せられた答えを聞いて
「そうか………それなら」
歩の右腕が銀色に輝く。
「お別れだ……」
一人の男が一瞬で真っ二つに別れた。
「斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー」
歩がつぶやいた。
死因 お箸
主人公は敵に対してほんと容赦がありません。
書きながら朱璃さんもハーレム入りしそうな流れだったから必死にあらがいました……
遅筆だけどよろしく