「よぉ、歩」
後ろから声が聞こえる。
「おはよう、一誠」
その声に振りかえり、歩が答えた。
「数学の宿題やったか?」
「当然だ、一誠はやってないんだろ」
いつもの慣れ親しんだ会話
「はははー、わりーけどみせてくれ、歩さまー」
「はいはい、わかったよ」
歩があきれたような声で言った。
これが今の日常。
神崎歩、現在中学生
========================================
一誠との出会いの後、ありのままの自分で学校生活を送るようになった。
初めは突然雰囲気、態度の変わった姿に周りも困惑したようだったがムードメーカーであった一誠と一緒にいたこともあり、案外早くクラスに馴染むことができた。
ストレスが溜まることもなくなり充実した学生生活を送っている。
ちなみに姫島家との関係も良好である。
昔のように毎日というわけではないが、よく夕食をごちそうになっていた。
女の子は早く成長するというように朱璃さん譲りの美貌を着々と受け継いできた朱乃は、家では年相応の女の子って感じだが学校では大和撫子の仮面をかぶっているようだ。
そして朱璃さんは昔のまま、変わらずの美人である……
朱乃と並んで歩いていたら100%お姉さんと間違えられるだろう。
一度
「朱璃さんは相変わらず綺麗ですよね」
と言ったら朱璃さんは真っ赤になって照れていた。
見た目だけでなくそういう仕草が1児の母には見えない要因の1つなんですよ。
ちなみにこのときの朱乃はほっぺたを軽く膨らませジト目でこちらを見ていた。
早く大人になりたい……、そんな風につぶやいていたがなんだったのだろうか……
こんな感じで歩は平和的な生活を送っている。
ここからは和服少女との出会い、そして悪魔と深く関わっていく話。
========================================
いつものように学校が終わり、一人帰り道を歩く歩。
今日の夜は姫島家で夕食を食べに行く日である。
「あ~、腹減った。今日のご飯は何かね」
朱璃の料理の腕はかなりのもので今日の献立を想像し、楽しみにしていた。
そんなことを呑気に考えているとき、何の前触れもなく変化は起こった。
ゾワッ
少し遠くから感じるの力の気配。
「これは……」
今まで感じたことの無い力の種類。
悪魔か、天使か、はたまた竜か。
ニヤッ
好敵手を求める本能か……歩は思わず口角を上げた。
========================================
私は咎人だ。
だから私は多くの悪魔に追われている。
倒しても倒しても、新たな刺客を送り込まれる。
休む暇もなく体力の限界が近づいた。
苦肉の策で人間界に隠れてみたがこれも無駄だったようだ。
そうしてどこにでもありそうな公園で、ついに私は追いつめられた。
「手こずらせやがって」
十数人はいるであろう悪魔のうち、リーダー核の男が言った。
「これは……まずいにゃん……」
体力の限界からか息も絶え絶え、声量はほとんどでていなかった。
弱くても中級、上級悪魔も混じっている集団に包囲されている。
全快の状態ならまだしも、疲れ切った今の気力、体力ではほとんどなす術が無い状態であった。
「終わりだ」
男の手に力が集まる。
年貢の納め時か……
追いつめられた少女は思った。
もう……疲れたよ……
少女の心はついに生きることを諦めようとしていた。
しかし走馬灯だろうか………少女の頭の中に妹との思い出が何度もリフレインされる。
そうして頬に一筋の涙が伝った。
もう1度でいいから妹に会いたい。
折れかけた心が持ち直す
だから
死ぬわけにはいかない。
そう思ったときである。
「お前ら、何してんの?」
この場に似つかわしくない少年の声が辺りに響いた。
=========================================
「お前ら、何してんの?」
そう問うと答えにならない返答がきた。
「人払いの結界は貼っていたはずだが……小僧、どうやってここまできた」
その言葉に歩はため息をついた。
そして
「だからさ……お前ら、何してんのって聞いてるんだよ」
悪魔たち全員に悪寒が走る。
歩は怒っていた。
理由は1つ。
それは自分と似た境遇の少女が殺されようとしていたからだ。
実は歩は声をかける少し前から公園にいた。
状況を確認するため様子を見ていたのだ。
そのとき
少女が孤独であること。
少女の態度が1度は死ぬことを受け入れたこと。
少女の涙、眼差しから生きたいと願ったこと。
立場、性格、状況は違えど、第一の人生、歩の最後にそっくりだった。
もともと助けるつもりでいたが少女を見て、人のために生きるという志し以上に救いたいという気持ちが高ぶってしまっていた。
そして
「まあ、いいや。どの道やることは決まってる」
この先は理不尽な殺戮だった……
========================================
これは…何なのだろうか……
少女は思った。
この場に似つかわしくないと思われた少年が右腕を銀色に輝かせると小枝一本で私以外の悪魔を皆殺しにしていた。
正直言って少女には絶対に敵わないと思うほど圧倒的な強さ。
得物は枝であるのに美しいと思えるほどの剣舞。
自分を助けてくれたという確証はない、これから殺されるかもしれない。
そうだというのに少女は少年に見惚れていた。
全てを殺し、少年はゆっくりとこちらに歩いてくる。
不思議と恐怖は無かった。
手を差し伸べられ少年は言う。
「俺が君を救おう」
自然と私は手を取っていた。
この出会いが私こと黒歌の運命を幸せへと変えていくことを
私はまだ知らない。
今回は歩サイド、黒歌サイドみたいな感じで書いてみた。
お酒入っているんで変だったら後日修正します。