なかなか書く時間が見つからない。
「ねぇ……」
黒歌が信じられないような顔で言う。
「なんだ」
たんたんと歩が答えた。
「聞き間違えかな…」
「いや」
黒歌の問いに否定で返した。
「冥界に行くぞ」
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あの後黒歌を家に招いた歩はお互いの紹介をすませ、今彼女が置かれている状況を聞いていた。
要点だけまとめると、黒歌には大事な妹がいた。
とある上級悪魔の貴族が身寄りのない姉妹であった黒歌たちにある提案をもちかける。
妹を保護してやるからこれから眷属として自分の元で働け……
黒歌に選択肢は無かった。
その後、黒歌はいつ死ぬかわからない過酷な日々を眷属として過ごし、目覚ましい活躍を見せる。
最初はその成果に満足していた貴族であったが、欲というものは膨らむものだ。
欲望にまみれた貴族は妹、白音に目をつけた。
黒歌にはあれだけの功績を上げる実力がある。
それなら妹の白音には同じような功績を上げるポテンシャルがあるのではないか。
黒歌は抗議した。
まず白音は黒歌と比べて圧倒的に未熟である。
そんな白音が黒歌と同様の仙術を身につけられる保証もなく、危険な任務を行ったら命を落とす可能性があった。
なにより白音を保護する約束で今まで過酷な日々に耐えたのにこの仕打ち。
意見を変えない貴族……黒歌はついに行動を起こす。
貴族を殺し、2人で逃亡を図った。
事情を伝えず白音は困惑していたが、妹を守るために必死に逃げた。
しかし度重なる悪魔の襲撃に2人ははぐれる。
そうして歩と出会うに至ったのだった。
「随分長く話してしまったにゃん」
「まあ後先考えずに行動するとこうなるにゃんね」
にゃははと黒歌は笑っていた。
その後も黒歌の語りは一向に終わらない。
歩は静かに聞いている。
しばらくして歩はゆっくりと黒歌に近づき手を伸ばす。
「ほえっ」
黒歌の呆けた声
突然頭をなでられて思わず声が出てしまった。
「がんばったな……」
歩が言った。
数秒の沈黙の後少しずつ黒歌の顔が歪んでいく。
黒歌はがんばった……妹のために……
身をすり切らせ……眷属のときよりも過酷な日々をすごし……
それだけやっても妹とはぐれ……生死は不明……
自分がやったことが正しかったのか……不安に思いながらも妹ともう一度会いたいと願い、生きるためにあがき続けた……
黒歌はしゃべり続けることでつらい自分の感情を誤魔化していたのだった。
歩になでられ、自分を肯定してくれる言葉に安心し、限界が来た。
「私は……不安だった……、白音のためなんて言って結局白音とはぐれちゃって………一人で逃げ続けて………何のためにこんなことしたのか……意味あったのかって自問して………白音にまた会うまで弱いところを見せるわけにはいかないって思って……それでもいつもつらくって………」
そうして先ほどとは違う、自分の本心をさらけだし、黒歌は長い時間泣き続ける……
そんな中、歩はずっと黒歌の頭をなで続けた。
しばらくして
黒歌は真っ赤になって部屋の隅で丸まっていた。
「恥ずかしい…にゃん…」
今まで強く生き続けた黒歌が、ありのままの自分をさらけだし泣き続ける中、ずっと頭をなでられ慰められる……思い出すだけで羞恥心がいっぱいだった。
「かわいかったぞ」
歩が真顔でそんなことを言う。
「にゃ」
驚いた後、黒歌はキッとさらに真っ赤な顔で歩を睨んだ。
「さてと」
そんな反応を気づかないふりをしてたんたんと話す。
「行くか……」
「どこへにゃん」
その問いに当たり前のよう答えた。
「冥界だよ」
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こうして冒頭に戻る。
これが結果として剣の王として冥界に知られる出来事の始まりだった。
次回は歩、初冥界
約1週間1話ペースがんばります。