冥界から戻ってきた歩と黒歌。
「ほんとうに今回はありがとにゃん」
恥ずかしそうに黒歌が言った。
「礼なんていらない、俺がやりたいと思ってやっただけだ」
真顔で歩が返す。
「そういうことをサラっと言うのはずるいにゃん」
顔を真っ赤にさせ黒歌は歩を上目使いで見ていたが、歩に至っては何がずるいのか、なんで真っ赤になっているのかさっぱり分かっていない様子だった。
「さてと、これからどうしようかにゃん」
仕切りなおしたように黒歌が言う。
黒歌は歩に救われた。
そうすると黒歌が歩と共にいる意味はなくなる。
自分がいることでこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないと思った黒歌は今後の身の振り方を考えていた。
しかし
「とりあえず夕食の材料買いに行くか……、そういえば黒歌は嫌いな食べ物とかあるか」
「にゃ!!」
「だから嫌いな食べ物だよ、これから献立考えていくとき知ってないと不便だろ」
あたりまえのように歩の中では黒歌と暮らすことが決まっていた。
しばらく沈黙が続く。
「おいおい、なんだよ」
呆けたような顔でこちらを見て固まっている黒歌に歩が言った。
それからまた少し沈黙が続く。
「ほんと敵わないにゃん」
黒歌が照れながら笑顔で言った。
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その後、買い物中も家に帰る途中も黒歌は歩にべったりくっ付いていた。
多少恥ずかしさもあったが黒歌に好きなようにさせたまま家の前まで着いた。
鍵を開けドアノブを捻ろうとした時。
あれ……なんか忘れているような……
歩はふと大事な事を忘れているような気がした。
そしてドアを開けたとたん。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
強烈な殺気が歩を襲う。
ああ、そうだった……
「あらあら、いつまでたっても家に来ないし携帯も出ない。心配して来てみたら…」
今日は姫島家で晩御飯の予定だったっけ。
「良い御身分ね」
姫島朱乃が笑顔で殺気を放っていた。
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「さて、あなたは一体誰ですか、なんで歩くんの家にあがりこんでいるんですか………………この泥棒猫……」
猫又に泥棒猫とは……うまい!!と内心くだらないことを考える歩。
これだけの殺気を出している朱乃が目の前にいるのに未だに歩にくっ付く黒歌は大物なのかもしれない。
「それはだな「歩くん、正座!!」」
歩の言葉はキャンセルされ正座を命じられる。
なんとなく逆らってはいけないような気がしたため律義に正座をすることにした。
「嫉妬かにゃん」
黒歌はニヤニヤしながら朱乃を挑発する。
「そんなことないもん」
真っ赤になって朱乃が反論する。
焦っているのか中学生らしい素と言える子供っぽい口調。
しばらく女の争いというにはかわいらしい子供っぽい言い争いをしていた。
「「はぁ……はぁ……」」
「いつまでたってもこれじゃあ進まないし……話しを戻しましょう」
2人は言い争いに疲れたのかようやく元の黒歌自身のことに話しが戻った。
「そうにゃんね、私は……」
黒歌はかいつまんで自分のこと、歩に出会って何をしていたかを朱乃に話す。
「なんか怒るに怒れなくなっちゃった……」
話しが進むにつれ怒りが沈下していく朱乃。
「これから黒歌さんは歩くんの家に住むの?」
「まあそうなるにゃん」
黒歌の言葉にしばらく考え込む……
「はぁ~」
盛大にため息をはく朱乃。
「私も……ここに住もっかな」
ちなみに歩は正座したままだった。
歩はわりと鈍感系。
ちなみに姫島家の人には合鍵を渡している。
子どもの一人暮らしを心配していた朱璃を安心させるための苦肉の策。