魔法少女育成計画NoName   作:赤葉忍

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愉快なメンバー紹介前半戦。文字数伸びたので2話に分割することにしました。

キャラが多い!!


愉快なメンバー紹介(前半戦)

♢ああああ

 

 自分が操作するゲームの主人公に、ふざけて『ああああ』などという名前を付けたことはないだろうか? もし、そのような経験があるというならば、今後一切やらない方がいいだろう。世の中には、そのようなユーモアが通じない輩もいるのだから。

 

 白銀の鎧に身を包んだ金髪碧眼の凛々しい容姿。それに加え、『魔法の旗でみんなを勇気づけるよ』という魔法を象徴する、聖十字を印した旗。その姿はまさに、尊敬するジャンヌ・ダルクのようであり、魔法少女名もジャンヌ・ダルクに関連付けたものにするつもりであった。

 

 しかし、その望みは、自分の軽はずみな一言で泡のように弾けて消え去った。今でもはっきりと思い出せる。あの時の、人事部門の魔法少女との会話を。

 

『それでは、希望する魔法少女名を申請してください。基本どのような名前でも問題ありませんが、既に登録されている魔法少女名は許可できませんので、その点はご了承ください』

 

『へぇ~。あ、なら『ああああ』みたいな名前でも前例がないならOKなんだね?』

 

『かしこまりました、『ああああ』ですね。その名前でしたら前例はありませんので登録可能です。それでは、魔法少女『ああああ』様。貴女の今後のご活躍ご検討をお祈り申し上げます』

 

『ふふ、なーんて冗談⋯⋯。え、ちょっと待って!? もう電話切れてるぅ!?』

 

 かくして、魔法少女『ああああ』は誕生した。そして、同時にああああは固く誓った。かの人事部門の魔法少女に必ずや復讐してやると。魔法少女として活動してはや12年。このふざけた名前のせいで名乗るたびにふざけてるのかと怒鳴られ仕事を受けることすら難しかった日々の怒りを、すべてぶつけてやるのだと。

 

 

「⋯⋯とまあ、私の事情はこんなところさ。改名を申請しようにもすぐには対応できないの一点張りでね。だから名前の登録すらできなかった君の気持ちにも共感できるよ」

 

「うわぁ、大変だったんだね『ああああ』さんも。なんであたしだけーって思ってたけれど、そんなことなかったんだ。ほんとクソだね、人事部門」

 

「ああ、人事部門はクソだ。そして、今向かっている場所は、私たちと同じように人事部門に対し怒りを抱いている同士たちのいる場所さ。あと、私に対してさん付けはしなくてもいいが、代わりに『ソイエ・グローリア』と呼んでくれないかい? ソイエでもグローリアでも構わない。これは私が本来名乗りたかった名前でね。私たちは、仲間内では呼んでほしい名前で呼び合うことにしてるんだよ」

 

「うん、わかったよ、ソイエ!!」

 

 目の前でにへらと無邪気に笑うのは、ああああが先日自分たちの仲間になるよう勧誘した魔法少女だ。魔法少女名の登録を忘れられたまま一年間魔法少女活動をしていたという、なかなかに不憫な経歴を持ったこの魔法少女の情報を手に入れたああああは、すぐさま彼女の連絡先を手に入れて接触をはかった。人事部門に協力者が一人いるので、情報は容易く手に入れることができるのだ。

 

 声を聞いたのは先日が初めて、そして会ったのは今日が初めてだが、目の前の名無しの魔法少女は、とても素直で可愛らしい。

 

外見だけなら白ランを模した衣装に白髪白目と、とにかく真っ白な魔法少女で、表情も乏しく、少々不気味な第一印象を抱いたものだが、話してみるとこちらの言うことは素直に聞いてくれるし、リアクションも頻繁にとってくれる。

 

 どこか一癖二癖ある仲間たちにはあまり感じられない、純真無垢さがある。思わず口角が上がるのが自分でもわかった。

 

「ふふふ、素直でいい子だ。早く皆にも紹介したいものだな」

 

「うおー!? え、あたし頭撫でられた!? うわ、なでなでってなんかふわふわして気持ちいいね! もっとやってくれない?」

 

 愛らしさからつい頭を撫でてしまったが、嫌がるどころかもっとやってと頭をすりすりと胸に押し当ててくる。ふむ⋯⋯。

 

「養子縁組、後でやり方調べるか」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 魔法少女の身体能力で30分ほど時間をかけて、たどり着いたのは山の奥。ひと際目立つ大きな桜の木に、ああああはそっと手を当てた。

 

「この桜の木⋯⋯ああ、今は花は咲いてないがな。この木は、私の仲間の魔法でこの山に生やしたものだ。魔法の力がこもったこの桜の木は、魔法のアイテムも併用することで、私たちの拠点と化しているのだ。こうやって、指紋を読み取らせることで、この桜の木は、真の姿を現してくれる」

 

 ああああが手を当てた箇所から、光の筋が幾本も走り、その光が枝の先へと届いたその瞬間、桜の木はたちまちにして満開の花を咲かせた。

 

「うおー!! すっごい!!」

 

 この光景を初めて目の当たりにした名無しの新入りは、目をキラキラと輝かせて魅入っている。しかし、これで驚いているようではまだ早い。この桜のインパクトに負けず劣らずの個性豊かな面子を紹介する必要がある。

 

 光の筋は、規則的に線を描き、やがて、ああああが手を当てていた場所が長方形の形に切り開かれる。そして、その中からどーんと勢いよく桜色の髪をした魔法少女が飛び出してきた。

 

「かいちょーかいちょーかいちょー!! おかえりなっさいませ~~!!」

 

「ああ、ただいま、桜花(おうか)。熱烈なお出迎えは嬉しいが、この後が控えているのでね。手早く新入りに自己紹介をしてくれないかい? あと、『かいちょー』ではなく名前で呼んでくれ」

 

 ああああは、自分の胸に飛び込んできた桜色の魔法少女の頭をささっと撫でた後、そっと引き離して新入りの目の前へと運んだ。

 

「おお、この子が新入りちゃん!? 白くてきれいだね~。私の名前は『松本さくら』! うっかり変身前の名前で登録しちゃったから『散華桜花(さんげおうか)』に改名希望!! よろしくね~!!」

 

「えっと、桜花って呼べばいいかな? あたしは名前がないから、『名無し』か『新入り』って呼んで。よろしく!!」

 

「わーお、元気いいね~! 私も元気が取り柄だから仲良くなれそ~!! さあさあ、ほかの仲間は私の魔法で生やした桜の木の中にいるよ。入った入った!!」

 

 松本さくらは、メンバーの中でも比較的若い魔法少女だ。その場のノリで生きているような明るさが取り柄の魔法少女で、あまり物事を深く考えることはない。それゆえに本名で魔法少女登録をしてしまうというミスをしてしまったのではないかとああああは考えている。

 

 年齢が近いこともあって、さくらはすぐに新入りを気に入ったようだ。その白い手を引っ張って、桜の木の中にあるアジトの中へと入っていく。ああああも、その後を追って中に入る。

 

 アジト内は、外から見ただけでは想像できないほど広い空間が広がっている。これは、さくらの魔法、『きれいな桜をいろんな場所に咲かせるよ』と多数の魔法のアイテムの補助を活かした産物だ。

 

 ああああは、姦しくおしゃべりを続ける魔法少女二人を横目に、ぽっかりと空いた空間に浮かぶドアの一つをノックする。返事はないが、どうせいつものように魔法のアイテムをいじくっているのだろう。ああああは返事を待たずにドアを開けた。

 

「んえ? ⋯⋯ぎゃあああ!? ちょっとキャプテン! 乙女の私室をいきなり開けるなんてデリカシーのかけらもないっすよ!!」

 

「ちゃんとノックはしたぞ。反応しない君が悪いんだ、アイアイ。それと、私のことは『キャプテン』ではなく名前で呼ぶように」

 

 ドアを開けた瞬間目の前に現れたのは、魔法少女には似つかわしくないジャージに身を包み、怪しい笑みを浮かべながら奇妙な物体をいじくる眼鏡をかけた魔法少女だった。もちろん、この格好がコスチュームというわけではなく、本来のコスチュームはもっと派手であることをああああは知っている。

 

 しかし、本人は本当の名前同様コスチュームのことも恥ずかしいと感じているらしく、普段は動きやすいこともあってコスチュームを脱ぎジャージで過ごしていることが多い。だが、自己紹介をするならばこのままでは締まらないだろう。

 

「ほら、先日話した新入りだ。その恰好のままだとだらしないし、コスチュームに着替えて同時に名前も言うんだ。もちろん希望名じゃない方もな」

 

「ぎゃっはあ!? キャプテン、うちにはちょっと厳しいっすよねぇ。ええ、いいですよ。やりますとも。やるんなら精一杯やらせていただきますとも」

 

 ああああが『アイアイ』と呼んだジャージ姿の魔法少女は、新入りが期待のまなざしで見つめる中、くるりとその場で一回転。それと同時にジャージを脱ぎ捨て、一瞬でゴテゴテなゴスロリチックのコスチュームに早着替えした。

 

「桜の木に降り注がれた新たな綺羅星よ、拝聴せよ!! 我が真名は『♰混沌ノ魔眼(ケイオスアイ・ケイオス)♰』!! この混沌を司る魔眼は、あらゆるものを焼き尽くす闇の邪気眼よ!!」

 

「うおおおお!? なんかよく分からないけれどかっこいい!!」

 

 羞恥心を捨て去り、魔法少女として活動し始めた頃に使っていた名乗りを上げるケイオス。純粋な新入りはかっこいいともてはやしているが、ああああはケイオスの耳が捨てきれなかった羞恥心から赤くなっていることに目ざとく気が付いていた。

 

 ケイオスアイ・ケイオス。14歳の時に魔法少女となり、現在ちょうど26歳。過去の黒歴史を消し去りたいがために改名を望んでいる、悲しき魔法少女である。

 

 まあ、改名を望む理由はなんであれ構わない。ああああにとっては、この場所にいる全員が志を同じくするかけがえのない同士である。それに、ケイオスは魔法のアイテム収集家であり、その趣味が高じてアジト建設の際もいろいろな魔法のアイテムを提供してくれたりと、このチームの要となっていることは確かであった。

 

「アイアイ、本当の名前の方がかっこいいのに、なんで改名したいんだろ」

 

「だよね~! 私も正直、改名する必要ないんじゃないかって思ってるの!」

 

 さくらと新入りは、年齢が若いこともあって中二的ネーミングセンスを気に入っているようだ。ケイオスの部屋を出た後もその名前のことで盛り上がっている。しかし、大人なああああにとってはケイオスの辛さはわかるところなので、二人に同意はせず、曖昧な笑みを浮かべながら次のドアへと向かう。

 

 『Re:Name』のメンバーは、ああああも含めて6人。まだ半分も残っている。先は長いが、自由なメンバーが多いので集めるよりは部屋に突撃していった方が効率がよい。

 

「なんか面白い人が多いね。あたし、ここなら楽しくやっていけそうだよ」

 

「そうか、それは何よりだ。残りのメンバーも、君のお眼鏡にかなうだろう愉快な奴らばかりだよ」

 

 ああああは、うきうきとした様子の新入りを優しく見守りながら、いい加減この子に名前を与えなければなと、候補となる名前を頭の中で考え始めたのであった。

 

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