魔法少女育成計画NoName   作:赤葉忍

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会議は踊る

♢アーカー・ペンシル子

 

「よーし、皆揃ったところで、作戦会議といこうやないか」

 

 テーブルを囲むのは、ペンシル子を加えて5人。右から順に、ガリ、キューティー☆E、さらら、奈子、ペンシル子の順で並んでいる。先ほど簡単に自己紹介を済ませたところで、さっそくガリが場を仕切り始めた。

 

 しかし、それに待ったをかける魔法少女が一人。キューティー☆Eはびしっとまっすぐ左腕を掲げ、皆の視線を集めた。

 

「待った。作戦会議を行うことには異論はない。我らの目的は、あいつらに再び戦いを挑み、勝つことだからだ。そのための作戦立案は必須。何故なら、今のまま挑んでも返り討ちにあうだけだろうからな。しかし、会議を仕切るのはリーダーの仕事だ。このチームにおけるリーダーはガリ、貴殿でよいのか?」

 

 ここに来る途中、奈子に粗方事情を聞いたので、ペンシル子にもこの会議を行うことには異論はない。皆、仲間を殺されたことへの怒りで燃えている。ペンシル子だけは唯一死んだ魔法少女の誰ともかかわりはないが、奈子が危ない場所に再び行こうとしているのに、それを黙って見送ることはできない。

 

 キューティー☆Eも、ペンシル子と同様に、奈子が所属しているRe:Nameの一員ではないが、自分の部下のかたき討ちのため、そして自分の命を助けてもらった恩を返すために共に行動することを決めたようだ。

 

「あー、別にうちがリーダーやるつもりやない。うちはリーダーやるには感情的になりすぎる。ただ、こういう場で仕切るくらいはできるからやっとるだけや」

 

「ふむ⋯⋯。その口ぶりだと、この臨時チームにおけるリーダーを務める人物に心当たりがありそうだな。ぜひとも教えてもらいたい。チームにおいて、リーダーというものは必要な存在だ!! 部外者の私としては、全面的に貴殿たちの意見を支持する!!」

 

「おう、それは助かる。じゃあ言わせてもらうけどな。さらら、あんたが臨時のリーダーやってくれや」

 

 ガリは、テーブルの上に出したおつまみのするめの足を一本取り、その足先をさららへ向けた。会議が始まってからずっと下を向いてちまちまと柿の種とピーナッツを分ける作業をしていたさららは、急な指名に驚いて柿の種をぶちまけてしまう。

 

「え、え、え!? 何がどうなってボクがリーダーとかいうおかしな話になっているんですかぁ!?」

 

「あー、ちょっとさらら! 柿の種こっちに飛んできたよ!?」

 

「ご、ごめん奈子ちゃん⋯⋯。え、えと、それで、どういうことですか?」

 

「どういうことも何も、おかしなことやない。最悪を想定して最善の行動を常に取れる判断力、そして純粋な魔法少女としての戦闘力。これらにおいてあんたに勝てる奴はここにはおらん。そのネガティブな性格も、リーダーやるうえでの欠点にはならんしな」

 

「なるほど!! 確かに私も、貴殿がリーダーをやるというなら文句はない。少なくとも一度、私は貴殿相手に戦って負けているわけだからな。敗者は勝者に従う。これもある意味ルールであり、私はそれに従うのみ!!」

 

「ええ⋯⋯? ぼ、ボクなんか推薦するなんて頭どうかしてる⋯⋯。ふ、二人は反対だよね!?」

 

 ガリとキューティー☆Eからのリーダー推薦に困ったさららは、奈子とペンシル子の方に視線を向けてくる。先ほどまで初対面のペンシル子に関しては全く目を合わせてくれなかったのに、今は涙目の顔を見せることにも全く躊躇いを感じない。そんなにリーダーをやりたくないのだろうか。

 

「うーん、まあ、いいんじゃない? さらら、リーダー向いてると思うよ」

 

「ええええ!? そんなぁ!? ボクのこと嫌いって言ってた奈子ちゃんだけは絶対反対してくれると思ったのに!!」

 

「あはは⋯⋯。前はそうだったけれど、今はそんなに嫌ってないよ。だって、さららめっちゃ頑張ってたし。あたしが助かったのもさららのおかげだしね」

 

「そ、そんなぁ。それなら嫌ったままでいてくれた方がよかったかも⋯⋯」

 

「そういうこと言っちゃうとこは、まだちょっと嫌いだけどね~」

 

「うっ、やっぱり嫌われたくはないぃ⋯⋯。じゃ、じゃあ⋯⋯」

 

 ちらりと、最後の希望を込めてさららはペンシル子にがっつり視線を合わせてくる。しかし、ペンシル子に何を期待しているというのか。

 

「いや、私こそ部外者中の部外者だから。そもそもあなたがリーダーになるのを反対できるほど面識ないし」

 

「リーダー、やってくれないですか⋯⋯?」

 

「あ、リーダーの座譲ろうとしてる!? それこそおかしなことになるから!! この人だいぶ変な人だな!?」

 

 最後まで往生際悪くペンシル子にリーダーをさせようとしていたのには若干不安を感じたが、皆の推薦もあって、さららが臨時でリーダーを務めることになった。

 

やんややんやと皆で臨時リーダーの誕生を祝い、ガリが魔法でテーブルの上にトッピングしたケーキを皆で頬張ったところで、ようやく作戦会議は本題に入る。

 

「うう、それでは、不本意ながら臨時リーダーを務めることになったさららです⋯⋯。よろしくお願いします⋯⋯」

 

「いいぞ、さらら!! 可愛いで~~!!」

 

「ネガティブリーダー、頑張れ~! 虹色の目、ホントは結構好きだぞ~!!」

 

「そこのRe:Nameメンバー二人、五月蠅いぞ!! リーダーの言葉は静粛に聞くように!!」

 

「みんな仲いいね~。あ、さららさん、気にせずどうぞ」

 

「うう⋯⋯。ソイエ、今だけ生き返って⋯⋯」

 

涙目になったさららは、今は亡きリーダーのああああの偉大さを改めて実感しつつ、話を戻す。話がまじめな方向になると、その雰囲気に合わせ皆の顔も引き締まってくる。

 

「ボクたちの目的は、あの二人を倒して、皆を弔ってあげること⋯⋯。痛いのは嫌だけれど、皆大切な仲間だったから、だから、ボクたちは戦わないといけない。そうなると、大事なのは、戦力把握です⋯⋯。えっと、アーカー・ペンシル子さんでしたっけ? あ、あなたの魔法、教えてもらっていいですか?」

 

「私の魔法は、『間違えたところを指摘できるよ』だよ。この赤ペンで間違っているものを指摘して、修正することができるんだ」

 

「そういえば、ペンシル子の魔法聞いたことがなかった!! 面白そうな魔法だね~」

 

 へぇと感心する奈子に対して、さららはペンシル子の魔法について聞いた直後、真剣な表情で何やら考え始めた。そして、さらにペンシル子に質問を投げかける。

 

「⋯⋯その、『間違えたところ』って、あなた基準ですか?」

 

「え、どうだろ。思いっきり間違ってるな~って奴にしか魔法使ったことがないからな~? 前使った時は、本の誤字見つけて魔法で修正したよ」

 

「でも、それってやっぱりあなた基準ですよね? その誤字も、もしかしたら誤字ではなく、意図的に間違えたものかもしれない」

 

「うーん、そう言われたら、そうなのかも?」

 

「はい、そうです。あなたの魔法は、あなたの基準で『間違えている』と判断したものを修正できる。魔法少女の魔法は、できると思えばだいたいできます。魔法少女の原動力は、“思い”ですから。だから、あなたは自分の魔法に関して、その認識のままでいてください。それが、きっと役に立ちます」

 

 先ほどまでのおどおどした様子とは打って変わり、魔法について話すさららはどこか反論を許さない風格のようなものすら感じられた。

 

「次は⋯⋯キューティー☆Eさん。あなたの魔法について、その詳細を教えてください。ある程度は戦った際に把握していますが、より詳しく知りたいです。あ、できれば紙に書いてください」

 

「あ、ああ。分かった。だが、その前に一ついいか? おそらく、役に立つ話だ」

 

「あ、どうぞ。ボクにお構いなく⋯⋯」

 

「私と一緒にミルキーウェイが貴殿たちの元に届けたスケジュール帳と魔法の端末⋯⋯。今は私が持っているこれだが、この魔法の端末に関して先ほど少し調べた。その結果、登録されている連絡先はひとつしかなかった。しかし、この連絡先は私の知人でな。もしまだあの場所に残って生きているならば、我々に協力してくれるかもしれない」

 

 キューティー☆Eが取り出したのは、カレンダ・レンダが最期に託した、彼女の魔法を象徴するスケジュール帳と、魔法の端末だ。魔法の端末と一緒にスケジュール帳の中身も確認したキューティー☆Eは、この連絡先の主が生きていることを、半ば確信していた。

 

「そ、その人はなんて名前なんですか?」

 

「お茶たちょ茶田千代といってな。私も親交がある、人事部門の中堅魔法少女だ。戦いが得意なタイプではないが、あの人の人柄ならきっと、協力してくれると思う」

 

「で、では、連絡お願いします。作戦を立てる上でも、こちら側の人数は把握しないとですし⋯⋯」

 

「承知した!! では、さっそく連絡しよう」

 

 さららから許可を貰い、キューティー☆Eは唯一の連絡先である茶田千代へと通話をかける。その返事がかえってきたのは、ほんの一瞬後のことであった。

 

「レンダ、生きていたの!? 新婚旅行はどこに行こっか!?」

 

 端末越しに聞こえてきたその声は確かに茶田千代のものだが、その内容がおかしい。キューティー☆Eは、ホントに端末の向こう側に居るのが茶田千代なのか、確信が抱けなかった。

 

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