魔法少女育成計画NoName   作:赤葉忍

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なんか一瞬だけランキング乗ってました。ありがたし。
完結までガッツ満々、頑張ります。


運命の日~Restart~

♢六奈子

 

「あ、はい⋯⋯。ああ、なるほど⋯⋯。あ、連絡、あの、感謝します。こちらの作戦には問題ないです、たぶん⋯⋯。あ、ボクが何とかするので⋯⋯。それでは、そちらもお気をつけて。あ、失礼します⋯⋯」

 

 暫定チームの皆が見守る前で、さららが茶田千代からの連絡を受けている。既にアジトからは出発し、ここは人事部のある施設から1kmほど離れた地点。突入前の最後の確認をしていた時に、急に連絡が入り、こうして奈子たちはしばし待ちぼうけを食らっている。

 

 しかしながら、茶田千代からのこの連絡は、いいニュースなのだろうか。それとも悪いニュースなのだろうか。さららのこのおどおどした感じは通常運転なので、判断が難しい。通話が終わったタイミングを見計らって、奈子はさららに尋ねてみることにした。

 

「ねえ、さらら。茶田千代さんからの連絡はいったい何だったの?」

 

「えっと⋯⋯なんか、人事部の様子を見に来た魔法少女10数名ほどを洗脳して仲間に従えたみたいです⋯⋯」

 

「え!? それってやばくない!? だって、作戦だってあいつらが四人しかいない想定で立ててたじゃん!!」

 

「そうですね、だいぶやばいです⋯⋯。でも、最悪ではありません。その、新たに洗脳された魔法少女たちに関しては、ボクが何とかします。その代わり、奈子ちゃん達への直接的な加勢ができないから、負担が大きくなってしまいますが⋯⋯大丈夫ですか?」

 

 さららはそう言うと、奈子とペンシル子へと心配そうな視線を向ける。事前の作戦会議では、奈子とペンシル子、さららがマーブルフェイスと戦い、キューティー☆Eとガリがギャシュリーと応戦、そしてそこにケイオスと茶田千代が加勢してくれる手筈になっていた。ラブリーバブリーとTierドロップに関しては、手が空いたものが何とかするというふわっとした作戦だが、要注意人物がギャシュリーとマーブルフェイスの二人だということは全員の共通認識だったのでこういう作戦に落ち着いた。

 

 しかし、さららが他の魔法少女たちの相手を一身に引き受けるとすると、奈子とペンシル子が二人だけでマーブルフェイスを何とかしなくてはならなくなってしまう。ここに来るまでに決意は固めてきたつもりだが、そう認識すると急に不安になってきた。

 

「⋯⋯案ずるな。ギャシュリーは、私が何とかしよう。私と茶田千代さん、そしてケイオス殿がいれば、何とかなるはずだ。ガリ殿、貴殿は奈子殿たちのチームに加わってくれ」

 

 奈子が不安がっているのが伝わってしまったのだろうか。キューティー☆Eがそんな提案をしてくれた。その申し出は正直ありがたいけれど、本当にキューティー☆Eはそれでいいのだろうか。

 

「お、その口ぶりだとガリちゃんがいらん子みたいやないか?」

 

「ああ、貴殿の助けは必要ない。他に必要とするものがいるからな。⋯⋯勝手に編成をいじってしまったが、問題ないか? リーダー」

 

「あ、はい。大丈夫です⋯⋯。その代わり、今度はキューティー☆Eさんの負担が馬鹿でかくなりますけれども⋯⋯」

 

「問題ない。私は命を懸けて、奴の相手を努めてみせる」

 

 しかし、奈子が何か言う前に、ガリとキューティー☆E、そしてさららの間で話がまとまってしまった。既にその視線は前へと向けられており、もう話は終わったと言わんばかりだ。そんな3人の様子を隣で見ていたペンシル子が、こそっと奈子に耳打ちする。

 

「⋯⋯素敵な先輩たちだね。私たちも、期待に応えられるよう頑張らないと」

 

「うん、そうだね⋯⋯! 早く、皆の洗脳を解いてあげないと!!」

 

 奈子とペンシル子がマーブルフェイスとの対決メンバーへと割り当てられた理由。それは、二人の魔法がマーブルフェイスの仮面に対し有効だとさららが判断したからだ。

 

 ペンシル子の魔法で、ニセモノと指摘し、修正を行う。もしくは、奈子の消しゴムで仮面そのものを消してしまう。このどちらかさえ決まれば、洗脳状態にある魔法少女は一気にこちらの味方につけることができるはず。

 

「洗脳さえ解ければ、ラブリー先輩は必ず我らの味方になってくれるはずだ!! ドロップは正直接点があまりなかったから何とも言いにくいが⋯⋯まともな魔法少女なら、こちらの味方になってくれるだろう!!」

 

「増えたその他の魔法少女たちに関しても、洗脳さえ解けばまあたぶん仲間になってくれるやろ。そうなれば、数の面では圧倒的にこちらが有利や。勝機は見えてくる」

 

「話を聞く限り、戦闘力ではマーブルフェイスよりもギャシュリーの方が上のように思いますが、作戦の重要度はお二人の方が上です⋯⋯。ボクも精一杯サポートするので、よろしく頼みます」

 

「うん、任せて!! これ以上、ソイエの顔を好きにはさせないんだから!!」

 

「私も、奈子ちゃんのために頑張る。私の赤ペンで、間違いを正してみせるよ!!」

 

 皆、気合は十分だ。顔を見合わせ、目的地へ向かい走り出す。

 

「突入の合図は、ボクが出します⋯⋯。手筈通りにいけば、アイアイさんがギャシュリーを正面入り口の近くまで連れてきてくれるはず。あとは、すべて、作戦通りに⋯⋯」

 

 こんな時でも普段通りのぼそぼそとした喋り方のさらら。しかし、いつもは地面を向いているその瞳は、静かな闘志で燃えていた。

 

「⋯⋯奴らを、ぶっ潰してやりましょう」

 

「「「「おう!!!!!!!!」」」」

 

 さららの音頭に応えながら、奈子はあの時のことを思い出していた。ああああが皆に声をかけ、それに応え突入した、あの時のことを。

 

 あの時のメンバーと、顔ぶれは変わった。しかし、あの時一人だけ声が揃っていなかったさららの掛け声で、今度は皆の声が揃った。

 

(だいじょうぶだよ、ソイエ。今、皆の仇を討つからね!!!!)

 

 今は亡きソイエへと、心の中で呼び掛ける。奈子の覚悟は今、完全に決まったのであった。

 

 

♢♰混沌ノ魔眼♰

 

 ⋯⋯まずいことになった。

 

「はーい、皆こっちに集まってくだサーイ!! ワタシたちと一緒に、魔法の国を滅茶苦茶にしちゃいまショーね!!」

 

「さあ、この旗のもとに集うのです。あなたたちはこの”ああああ”が導きます。余計な記憶はすべて捨ててしまいましょう。今から、私があなたの唯一の師であり、親であり、上司です。⋯⋯こんな感じでいいんですかね」

 

 あれから、何人かの魔法少女が、連絡の途絶えた人事部の様子を見に訪れてきていた。しかし、その多くが殺され、生き残った魔法少女も、マーブルフェイスがああああの魔法を利用して洗脳し、急激に仲間の数を増やしている。

 

 この状況を何とか突入しようとしているさららたちにも伝えなければならないが⋯⋯いや、そもそもケイオスが生きていることを知っていたさららたちならば、この状況もどうにかして事前に知り、対策を練っているかもしれない。今は、そう信じるしかない。

 

 ぷるる、と胸元が揺れる。連絡がきた。一定の振動、モールス信号で伝えられた指示は、『ギャシュリーを正面入り口に』。この指示は、事前に突入前に伝えると言われていた指示だ。作戦決行の時が来た。

 

「⋯⋯ギャシュリー、ちょっといい?」

 

「んん~~? どうしました? ケイオスが自分からワタシに話しかけるなんて、珍しいデスね~」

 

「⋯⋯正面入り口に、私の仲間の死体がまだあるはずでしょ? せめて回収してあげたいの。でも、どうせ私一人では行かせてくれないでしょ? だから、あなたもついてきてよ」

 

「ふんふん、なるほどなるほど。確かに、腐っちゃう前に回収したいデスよね~。いいデスよ、ついて行ってあげマス」

 

 あっさりと許可を取れたことに、ケイオスは心の中でガッツポーズを決める。同時に、さくらへの感謝の気持ちも忘れない。さくらの存在がなければ、ギャシュリーを連れ出す理由は思いつかなかった。

 

 ギャシュリーは、何がおかしいのか、ニコニコと笑みを浮かべたままだ。妙に気味が悪く見えるその笑顔のまま、ギャシュリーはケイオスの耳元でそっと囁いた。

 

「⋯⋯さっきから、胸元ぴくぴく震えてマスね。誰からのデートのお誘いデスか? ワタシ、妬いちゃいマス」

 

時が止まったかと思った。慌ててギャシュリーの顔を見ると、その笑みは全く崩れていない。ちらりとマーブルフェイスの方を見ると、どうやらこちらには全く興味がない様子で、ラブリーバブリーやドロップたちと遊んでいる。

 

 ⋯⋯マーブルフェイスには、ケイオスが連絡を取っていることを知らせていない? ギャシュリーが何故そのことを黙っているのかの理由は分からないが、それならば、作戦自体には支障はない。

 

 覚悟を決めろ、♰混沌ノ魔眼(ケイオスアイ・ケイオス)♰。ここまでくれば、もう後には引けない。

 

「⋯⋯じゃあ、さっさと行くわよ。これ以上さくらを待たせるのはかわいそうだわ」

 

「おー、そうデスね! じゃあ、マーブル、ちょっとケイオスとデートに行ってきますネ!!」

 

「早く帰ってきてくださいよ。こいつらと遊んでいるのもいい加減飽きてきました」

 

 マーブルフェイスから手を振って見送られながら、ケイオスとギャシュリーは二人で正面入り口へと向かう。

 

 道中の会話は、まったくない。今までなら意味もなく話しかけてきたギャシュリーも、一切喋らずにじっとケイオスの顔を見てくる。視線だけで穴が空きそうなほど恐ろしい。だが、その恐怖を、胸の奥で燃える怒りが打ち消してくれる。

 

「さあ、着きましたよ。ケイオス、いったい何を企んでいるんデスか? ワタシにだけ、教えてくださいヨ」

 

 やはり、ギャシュリーはケイオスがさららたちと連絡を取り合っていることに気づいていた。しかし、だからなんだ。もう、今さら作戦決行は止まらない。賽は投げられた。

 

「⋯⋯あんたたちを、ぶっ殺してやるんだよ!!」

 

 ケイオスが、今まで秘めていた敵意を露わに、ギャシュリーに啖呵を切る。その直後、施設のあらゆる方向から伸ばされた青色の髪の毛が、ギャシュリーの四肢を拘束した。

 

「おー、ちょこざいデスね~。こんなの、ワタシには通用しませんヨ?」

 

 しかし、その拘束は一瞬で引きちぎられてしまう。ただ、これでいい。これは、あくまで突入の合図だ。事前にそう知らされている。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 雄たけびと共に入り口から走ってやってきた魔法少女が、拘束をちぎったばかりのギャシュリーに、思いっきりドロップキックをぶちかます。その突撃を、ギャシュリーは腕を交差させ、余裕の笑みで受け止めた。

 

「来ましたね! クレイジーガール!! ワタシのお気に入り二人と一緒に()りあえるなんて、ワタシ、すっごく嬉しいデス!!」

 

「待たせたな、同士ケイオス!! そして憎き仇、ギャシュリーよ!! この私、キューティー☆Eが貴様に天誅を下してやる!!」

 

──再戦の火蓋が今、切って落とされた。

 

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