魔法少女育成計画NoName   作:赤葉忍

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二人のチームワークをみせてやる!

♢アーカー・ペンシル子

 

 奈子と一緒に、飛び込むようにして広い空間に出た瞬間、ペンシル子は想像以上の光景に一瞬固まった。事前に作戦は聞いていたとはいえ、この空間中にさららの髪の毛が展開され、多くの魔法少女を縛り上げている様子は、あまりにも現実味がない。それに、あの青い髪の毛を見ると、さららに精神を乗っ取られた時のことを思い出してつい身震いしてしまう。

 

 そして、動けない魔法少女たちの中で一人だけ、拘束されずに動いている魔法少女がいる。特徴的な大きな旗に、銀色の甲冑。聞いていた通りのああああの姿だ。つまり、あれがああああの仮面を被り変装しているマーブルフェイスということになる。

 

 なるのだが⋯⋯あれはいったい、何をしているのだろうか?

 

「⋯⋯ねえ、ペンシル子。あいつ、何をしているの?」

 

「えーっと、なんだろうね。いや、やってることは分かるんだよ。でも、なんで今ここでやってるんだろって疑問の方が大きいかな」

 

 奈子はそもそもマーブルフェイスがやっていることが何かに関する知識がない様子だったが、ペンシル子はあれが何かの理解はできる。マーブルフェイスが床に置いて見つめているのは、日本人が正月にやる伝統的な遊びの代表、福笑いだった。

 

「⋯⋯ああ、やっぱり来ちゃいましたか。あの子、使えませんね。少し、待っていてください。ギャシュリーから渡されたこれ、今のうちに完成させちゃいますから」

 

 視線は福笑いに落としたまま、マーブルフェイスがこちらに話しかけてくる。その手が、鼻のパーツを目が置かれるべき場所に置き、目のパーツをちぎって耳に付け、口を頭の上に乗せたところで、ようやくマーブルフェイスはその顔を上げ、ペンシル子たちの方を見た。

 

「これ、意外に面白いですね。こんな変な顔の人が居たら、ぜひ仮面にしてみたいです」

 

「⋯⋯それ、遊び方違うよ。福笑いって目隠ししてやるものだから」

 

「なるほど。だからギャシュリーはアイマスクも渡してきたのですね。ありがとうございます。あなたのことも、仮面にしてあげますね」

 

 そう言うと、マーブルフェイスは横に置いていた旗を握り、一閃。近くで拘束されていた魔法少女二人を解放した。

 

「さあ、あの二人を殺してください。顔は傷つけないよう、気を付けてくださいよ」

 

「ひゃっはー!! ようやく解放されたぜぇ!! ああああ様のために、わたしちゃん、頑張っちゃうもんね~!!」

 

「神は言いました。迷える子羊に、救済をと。私の手で、あなた達の魂に、永遠の安らぎを与えます」

 

 どうやら、マーブルフェイスは直接自分が戦うつもりはないらしい。本当ならば、関係ない魔法少女は傷つけたくはないのだが、洗脳されている以上仕方ない。ペンシル子は、奈子と顔を見合わせ、襲い来る魔法少女たちをそれぞれ一人ずつ担当することをアイコンタクトで決めた。

 

「ひゃっはー!! 血祭り夏祭り、わっしょいわっしょいてやんでーい!!」

 

 ペンシル子の前に立つのは、やたらひゃっはーした口調の魔法少女だ。羽織った法被をめくり、その内側から大量にロケット花火を発射してくる。あれがこの魔法少女の魔法だろうか。

 

 魔法の力の込められたロケット花火は、無駄に大きい音と派手な光を上げながら飛んでくる。ペンシル子は、飛んでくるロケット花火を赤ペンを振り回して撃ち落とすと、そのまま一気に駆け寄り、すれ違いざまに魔法少女に赤ペンで×マークを付けた。

 

「ひゃっはー!! 祭りだ祭りだ~~!! ⋯⋯あれ、わたしちゃんはいったいなんでこんなことを?」

 

 ペンシル子の魔法の力で、ロケット花火魔法少女の洗脳は解けた。さららに無理やりやらされたあの時とは違い、洗脳状態とかいう明らかに正常ではない状態ならば、修正も簡単だ。

 

「神のご加護を、アンド紙のご加護を!! うおおおお、カミのご加護をパンチ!!」

 

「うわわ、ちょっと、この人見た目によらず脳筋なんだけど!?」

 

 ペンシル子の担当した魔法少女は無事洗脳解除ができたので、奈子の様子を見てみると、トイレットペーパーを拳に巻き付け、地面にクレーターを作りながら殴りかかってくるシスター風の魔法少女に若干押され気味だった。⋯⋯雰囲気的にこっちの魔法少女の方が強そうだと思っていたが、あちらの方がなんだかヤバそうだ。さすが魔法少女。見た目によらないものである。

 

「そいやっ!!」

 

 しかし、奈子も負けてはいない。拳を回避し、消しゴムを前に突き出す。その消しゴムは、シスター風の魔法少女が拳に巻き付けていたトイレットペーパーを、一擦りで消し去った。

 

「嗚呼、カミは死んだ!?」

 

 トイレットペーパーを消されたことでショックを受けたシスター風の魔法少女は、ずいぶんと隙だらけになった。その隙に、背後からペンシル子がちょちょいと赤ペンで×マークを描いてあげると、こちらもはっと我に返った様子で洗脳から目覚めた。

 

「はっ!? 私はいったい何を?」

 

「詳しい話はあと!! あなたたちは洗脳されていたの。それをやったのはあいつ!! あたしたちの敵はあの魔法少女だよ。ほら、これ食べて!!」

 

 奈子が差し出すのは、酸っぱい成分がたんまりこもった特製のキャンディだ。ああああの洗脳対策として、さららが作っていたというこのキャンディは、舐めれば確かに酸っぱすぎて頭が酸っぱいでいっぱいになるから、洗脳効果を和らげることができる。勿論、ペンシル子たちも洗脳対策で口に含んでいるから、口の中は梅干しとレモンを足して2をかけたような味で満たされていた。

 

「⋯⋯なるほど。そのペンで洗脳を解けるのですね。そうなると、私の仮面の変装も解除できるのでしょうか。その消しゴムも、怖いですね。仮面を消されれば、私の変装は維持できない。あなた達二人が私の元にやって来た理由が、何となく分かりました」

 

 ⋯⋯洗脳された魔法少女を二人仲間に引き込めはしたものの、その代償にペンシル子たちの魔法をマーブルフェイスに知られてしまった。しかし、魔法少女相手に魔法を出し渋っては最悪負けてしまう。必要な対処ではあったとはいえ、状況はなかなかに悪い。

 

「ひゃはっ!! ようするに、あいつが悪者で、あいつをぶっ飛ばせばハッピーエンドってことだろぉ~? それなら、ド派手に花火をぶちかましてやろうぜ、ひゃっはー!!」

 

「ああ、どうやら私はあなた方に救われたようですね。そして、あの魔法少女への対抗策を、あなたたちは持っている様子。ならば、恩返しとして、私はあなた達の進む道を切り開きましょう」

 

 助け出した魔法少女二人は、ずいぶんと好戦的で、状況を把握するなりマーブルフェイスに突撃していく。その二人の後に続いて、ペンシル子と奈子はそれぞれ赤ペンと消しゴムを抱え、マーブルフェイスの隙を伺う。

 

「⋯⋯『フェイスチェンジ』」

 

 対するマーブルフェイスは、まったく動じることなく、顔に手を当てて小声でそう唱える。すると、かしゃりと音を立ててマーブルフェイスの顔が切り替わり、ペンシル子は見覚えのない桜色の髪の毛の魔法少女の顔へと変わった。

 

「あいつ、まだ桜花ちゃんの顔を持ってたの!?」

 

 怒りの表情を浮かべる奈子の様子から察するに、あの顔も奈子の仲間だった魔法少女の顔なのだろう。Re:Nameのメンバーの一員、松本さくらの仮面を被ったマーブルフェイスは、その魔法で桜を無数に生やし、突撃してきた魔法少女二人を宙に打ち上げる。

 

「食らいなさい、旗ぐるぐるアタック」

 

 そして、一瞬のうちに再びああああの仮面に戻ったマーブルフェイスは、旗をぐるりと一回転。その回転の一撃で、あっという間に二人の魔法少女の首を切り落としてしまう。

 

「あいつ、あんな適当な技名でせっかく仲間になってくれた二人を⋯⋯!!」

 

「やっぱり、一筋縄じゃいかないみたいだね⋯⋯」

 

 生やした桜の木の上で、マーブルフェイスは、切り落としたばかりの魔法少女の生首でジャグリングしながら、ペンシル子たちを見下ろす。たった今人を殺したばかりだというのに、その表情は先ほどからまったく変わらずに無のままだ。

 

「さあ、ギャシュリーが帰ってくる前に、早めに終わらせてしまいましょう。ギャシュリーは、私が作るシフォンケーキが好きですから。もうすぐでおやつ時ですし、作って待っててあげないと」

 

 マーブルフェイスは、そう言ってジャグリングしていた生首をペンシル子たち目掛け投げつける。慌てて回避したそのすぐ横で、ぐしゃりと嫌な音を立てて床に真っ赤な花が2つ咲き乱れる。

 

「あいつ、あたしたちのこと完全に舐めてるよね。思い知らせてやろうよペンシル子。あたしたち最強コンビのチームワークを!」

 

「一緒に戦うのこれが初めてだけれどね!! でも、私も同じ気持ちだよ。皆のためにも、私たちで頑張らないと!!」

 

 ぐっとお互いに手を握り合い、マーブルフェイスを見上げ、闘志を込めて思いっきりにらみつける。そんなペンシル子たちを、マーブルフェイスは木の上から無表情でじっと見つめ返すのであった。

 

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