匿名でコソコソ書いて投稿してたりしますがお久しぶりです。
吸血鬼モノのアニメ観てたら書きたくなってこうなりました。
正直この設定行けるか怪しいですがよろしくお願いします。
とある冬の日の夜。
プラチナブロンドの長髪を靡かせながら全速力で。
黒のロリータを着た見た目少女な彼女は、人間とは思えぬ速度で地を駆る。
それを追うは、刃が銀製の槍、剣、斧などを携えて、同じく人間とは思えぬ速度で地を駆る複数の人影。
「いい加減、逃げるのはお辞めになってください姫様!」
「あなた方が、そんな恐ろしい獲物を持って、追うからでしょう!?」
泣きそうな紅い瞳で少女が追っ手に向かって叫ぶ。
執事のような男だけなら兎も角、他にも屈強な男達に追われるという構図は、何とも言えない光景である。
姫様を追っていた執事の男は溜め息を吐くと、遠方に向かって何やら合図を送った。
その直後、銃声のような音が響き渡り、
「―――うっ!?」
滅火の右肩を凶弾が、銀の弾丸が撃ち抜いた。
バランスを崩して地を駆る勢いそのまま前方に倒れては数回転ほど転がって塀にぶつかって停止する。
背中を強打したのか一瞬だけ息が出来なくなる。
スカートの裾に付いた砂埃を払って立ち上がるのとほぼ同時に銃声が響き渡った。
「―――あぐっ!!?」
滅火の左胸を銀の弾丸が撃ち抜き、胸元に紅い花を咲かす。
正確に心の臓を撃ち抜かれた彼女は、塀に背中を凭れかからせ、血の跡を残しながら崩れ落ちる。
姫様に追い付いた執事の男と屈強な男達は、彼女を包囲して各々が持つ武器を突き付けた。
「追いかけっこはここまでですよ、姫様」
「⋯⋯⋯酷いです」
「む?」
「幾ら、私が⋯⋯⋯〝不老不死〟だからと、いって、あなた方は、容赦が、なさ過ぎ、ます!」
紅い瞳で執事達を睨め上げる滅火。
執事の男は再び溜め息を吐き、
「それは今回ばかりは、姫様の行為を許す事が出来ないからです、よっ!」
銀剣が奔り、姫様の左胸に突き刺す。
「か、はっ⋯⋯⋯!」
喀血する滅火。
再生したばかりの心の臓を、銀剣が串刺しにして銀によって灼かれる。
「あなた、様は、ご自分が、何を、したか、ご理解、して、おりますか!?」
左胸を貫いていた銀剣を抜いては突き刺し、抜いては突き刺しを数回繰り返す執事の男。
声にならない悲鳴を上げる滅火。
屈強な男達が彼女を挟むような形で立つと、両腕を掴み無理矢理立たせた。
そして執事の男は、己の右手で姫様の左胸を貫く。
そのままの状態で、左手で彼女の顎を持ち上げ顔を覗き込む。
滅火は、震える声で、問いただした。
「あなた、がたは⋯⋯⋯いのです、か?」
「何?」
「あなた、がたは⋯⋯⋯わたしの、ような、かいぶつに⋯⋯⋯なりたいの、ですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「ふろう、ふしは、つらい⋯⋯⋯ですよ。いたく、ても⋯⋯⋯くるし、くても⋯⋯⋯しねな、いんです、よ⋯⋯⋯?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「それに、〝とう〟は、せんそうの、ひだねを、うみました。⋯⋯⋯いまでも、せんそうが、たえません。そんな、かなしい、せかいは、おわらせ、ないと、いけません。ですから、わたしが、すべての、げんきょう、である、〝とう〟を、ほろぼ、します⋯⋯⋯!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
激痛に苛まれながらも、必死に言葉を紡いで訴える滅火。
無言だった執事の男は、困ったように笑う。
「⋯⋯⋯やはり、姫様はお優しい。御自分のことよりも我々の事を想ってくださり、行動に移していらっしゃる」
「とうぜん、ですよ。わたしは、あなた、がたの⋯⋯⋯しゅじん、なのですから」
弱々しくも微笑んでみせる姫様。
そんな彼女の左胸を貫いていた右手を抜き取ると、執事の男は悲しげな表情で言う。
「ですが、我々は⋯⋯⋯そんな姫様の提案を蹴ります。如何に戦争を引き起こした原因であれど、〝塔〟は世界を支え維持する為には不可欠な物なのですから」
「⋯⋯⋯⋯⋯そう、ですか」
「なので姫様。あなた様がこれ以上〝塔〟を滅ぼすおつもりならば―――〝世界の敵〟として、封印させていただきます」
世界に平穏を齎せるのならば、我々は化け物になっても構わない。
それが彼の、彼らの答えだった。
ならば主人として、彼らの意思を尊重しようではないか。
再生を終えた滅火は、その場で仰向けに倒れ込んで告げた。
「ならば今ここで、私にその杭を打ちつけなさい。そうでもしないと、私はあなた方を皆殺しにしてでも、全ての〝塔〟を破壊し尽くしてしまいますからね」
姫様の精一杯の微笑みに、執事の男は無言で頷くと、ポケットから銀製の杭を取り出す。
屈強な男達の中の一人が、その杭を打ち付ける為のハンマーを取り出し、執事の男に手渡す。
執事の男はハンマーを手に取ると、仰向けの少女の左胸に杭を押し付けると―――ハンマーを振り下ろして力一杯叩き付けた。
少女の肉を破り、骨を砕き、心の臓を穿つ。
少女の笑みは崩れない。
けれど少女の閉じた目からは涙が溢れ出して、彼女の頬を濡らす。
やがて少女の体は動かなくなり、完全に停止した。
もうこれで彼女が目覚めることは無いだろう。
滅火の左胸に突き刺さっている杭は特殊製なもので、彼女の同類には決して抜くことが出来ない。
何故ならば、対象に打ちつけた杭は特殊な力を発揮し、何人も触れることが出来なくなるからだ。
そしてこの杭は抜けない限り、対象を永眠させることが出来る代物である。
この杭は滅火のような、滅ぼす事の出来ない存在を永久に封印する為に造られたモノなのだから。
少女の涙を拭い取った執事の男は、涙を流しながら彼女をお姫様抱っこして、屈強な男達を伴って屋敷に連れ帰る。
滅火の先祖が〝塔〟の発案者であり、その子孫達を筆頭に完成された。
その〝塔〟は崩壊寸前まで追い込まれた世界を建て直し、平穏の日々を齎した。
〝塔〟は様々な環境問題を解決し、人類の未来を救ったのだ。
滅火の先祖達は世界を救った英雄と称えられ、人類の未来は明るく照らされる―――はずだった。
〝塔〟から散布されるとある粒子は、環境に影響を及ぼすだけでなく、人類の体にも様々な影響を及ぼした。
初めは、〝寿命〟の〝延命〟程度のものだった。
短命だった人類は、優に100歳を超えられるようになり、〝長寿〟の恩恵を与えられた。
次に、怪我を負ってもすぐに傷が癒える細胞の〝再生能力〟。
これにより、軽傷だけでなく重症を負っても、死傷でなければ死ぬことがなくなった。
次に、病による死亡が著しく減っていった。
そも、〝塔〟を完成し計画を実行されてから人類は、病に犯されること自体が減少していった。
次に、これまでの人類を超越した力を得た。
身体能力を初めとした様々な能力向上により、音速を超える速度で移動する術や、拳一つで丘陵を粉砕する膂力を得るなど並外れた存在へと昇華していった。
いい事づくめに思える影響だが、デメリットもある。
一つ目は―――喉の〝渇き〟。
どうしようもない強烈な〝渇き〟は彼らの理性を奪い、手当り次第目に付くものを襲い、血を啜る化生と成り果てる。
〝吸血能力〟は、この〝渇き〟を潤す為に彼らに与えられた恩恵なのだ。
だが好き勝手暴れては死人が絶えなくなり、彼らの種族以外が絶滅してしまう。
それを阻止するべく決まりを作った。
『〝渇き〟の現象が起きぬよう、定期的に血液を喰らうこと。ただし両者合意の下でそれを行うこと』
この決まりにより、〝渇き〟による暴走の抑制となり、他種族の絶滅は回避された。
二つ目は―――〝
この現象は恐らくとある粒子が遺伝子に何らかの影響を及ぼしたことによるものだろう。
彼らの祖先は黒髪や茶髪などだったが、その色素は時代と共に薄くなっていき現在ではシルバーやブロンド、滅火のようなプラチナブロンドの者がほとんど占めている。
そして彼らの肌は透き通るように白く、見目麗しい。
だが〝白皮症〟化はある深刻な問題を抱えている。
それは―――太陽光が苦手ということである。
陽の光は、〝塔〟によって環境を整えていてもなお、彼らを苦しめている。
陽の光を直接浴びて死ぬということはないものの、日中は日陰や家の中にいることがほとんどで、外出する際は日傘は必須といっても過言ではない。
この二点がなければ、そのとある粒子は偉大な革命品であったに違いない。
陽の光を浴びれず、夜に活動する長寿生命体。
これではまるでとある文献に記された伝説の怪物―――〝吸血鬼〟ではないか。
その〝吸血鬼〟と呼ぶに相応しい〝不死性〟を色濃く受け継いできた者達がいた。
その者達は〝塔〟を管理し、守護する人類達のことだ。
西郷家を筆頭に、建てられた〝塔〟を管理し、守護する役目を担った家系は全部で24。
そんな彼らはとある粒子を最も多く浴び続け、〝吸血鬼〟と呼ぶに相応しい〝不死性〟を持つものへと変異していった。
そうして続けられ長い年月が流れ―――遂に、本物の〝不老不死〟の怪物が生まれてしまった。
その者こそが、西郷滅火。
西郷家の姫君にして末裔である。
彼女の誕生を、〝不老不死〟の誕生を歓喜し憧憬する者もいた。
逆に、悲しみ嘆く者もいた。
〝不老不死〟―――読んで字のごとく、〝老い
そんな彼女は、首を落とされても。
心の臓を破壊されても。
全身を火炙りにしても。
瞬く間に再生して死ぬ事が出来なかった。
彼女は〝不老不死〟という事で、様々な
致死性の高い毒物を体内に流し込まれたり。
火山に連れてこられては、火山口からマグマに落とされ全身を溶かされては瞬時に再生を繰り返す無限地獄を味わわされたり。
精神をズタボロにされながらも何とか堪え切った彼女は、紛うことなき本物の〝不老不死〟とされ、人類達から神として崇められることとなる。
そして何れは自分達もそうなるのだと喜ぶ者や興奮する者。
逆に悲しみ憤慨する者がいた。
彼女の両親は選りすぐりの部隊を編成し、守るように命じた。
〝不老不死〟である彼女を守る必要はないが、こうした理由は別にある。
それは、彼女の血や肉を喰らえば、〝不老不死〟になれるという迷信で動こうとしている〝組織〟から守る為だった。
彼女を巡る戦争が勃発。
〝塔〟により平和を築いたはずが、〝不老不死〟の出現により世界は再び戦禍に呑まれていくこととなる。
この騒動に乗じて、〝不老不死〟を望まぬ者達が〝塔〟を襲撃した。
だが〝塔〟の守護者達は滅火の次に強く、全く歯が立たなくて失敗に終わる。
今度は〝不老不死〟を望む者達が〝塔〟を襲撃してきた。
経緯は、〝不老不死〟の彼女の血や肉を喰らえば成れるという迷信と同様に、とある粒子を直接体内に取り込めば成れると信じているからだろう。
そんな彼らも、〝塔〟の守護者達に蹴散らされて失敗に終わる。
終わりのない戦争。
これを終結させる為に単身で彼女は動いた。
その方法が―――〝塔〟を滅ぼし尽くすことだった。
〝塔〟の守護者達は彼女と対峙し、最初の方は単身の姫君を数で圧倒していたが、〝不老不死〟は疲れを知らないのか、疲弊していく守護者達を押し退けて〝塔〟の一つを破壊した。
このような無茶苦茶なやり方で〝塔〟の破壊行為を続けた彼女だったが、彼女の両親が遣わせた部隊達によって鎮圧された。
執事の男は、微笑みながら永眠する滅火を見つめてハッとして気が付いた。
彼女の真の目的は〝塔〟を滅ぼし尽くすことではなく。
その行為を以て〝世界の敵〟となった己を討たせることによって、戦争を終結させようとしたのではないかと。
彼女の両親はそれを理解したからこそ、動いたのではないかと。
屋敷に連れ帰ると、彼女の両親は泣いていた。
執事の男が抱きかかえていた滅火を両親に渡すと、両親は彼女を強く抱きしめて泣き叫んだ。
「どうしてこの
「神は全てのものに平等ではなかったのか!?」
「世界の平和の為に、これまで頑張ってきたというのに!あんまりではないか!!」
「この娘を幸せに出来ない世界なんて要らないわッ!!」
「「こんな世界―――滅んでしまえッ!!!」」
呪詛を叫び、この世の全てを呪った。
呪わずには、いられなかった。
それから両親は、彼女に仕える者達は、彼女に最後の別れを告げる。
微笑みながら永眠する滅火を、棺の中に入れて地下へ運び込む。
その後、彼女が永眠した訃報は光の速さで全世界の者に届き震撼して、戦争は終結した。
その翌日の事だった。
太陽の異常活動が観測されたのは。
逃げ惑う彼らに容赦無く降り注いだ放射線。
彼らの全身は瞬く間に燃え上がり、再生能力を上回る速度で焼き尽くし滅ぼしていく。
〝塔〟によって環境問題は解決されていたはずなのにどうして。
その疑問はすぐに消え失せる。
〝塔〟の幾つかは壊されているからだ。
西郷滅火の手によって。
西郷家は世界を救った英雄から一転、世界を滅ぼす魔王に失墜していった。
だが彼女の両親は、寧ろ清々しい気持ちだった。
願いが、成就したからだ。
ざまあみろと。
それと同時に、彼らは勝手な生き物だと卑下する。
そも、お前らが、貴様らが、私達の娘を巡って戦争を起こすような真似をしなければ、こうはならなかったのだと吐き捨てる。
本当にいい気味だ。
一方で、〝塔〟が使い物にならなくなった時を想定して、兼ねてより計画していた〝人工衛星〟への移住を決行することにした。
我先にへと、放射線から逃げるように〝人工衛星〟へと向かっていく彼ら。
西郷家はというと、滅火が眠っている地下へ行き、彼女と共に最期を迎えることにした。
〝人工衛星〟などに行ったところで、何れは太陽光に焼かれて死ぬ運命なのだから行かないし、そも、行ったところで非難されるのは必至。
それに愛する娘を置いて逃げるなど、彼らには出来る由もなかった。
愛する娘が眠る棺に寄り添う形で眠りにつく両親。
執事の男や屈強な男達も放射線から彼女の両親を庇うように立っていた。
しかしそんな事をしても無意味だと嘲笑うかのように、異常活動する太陽光は彼らを焼き尽くし、彼女の両親をも焼き尽くす。
〝人工衛星〟に逃げていった同類を除けば、この地にいるのはもう滅火のみとなった。
〝不老不死〟の彼女をも焼き尽くさんとする太陽光は、彼女を包み込んで―――笑った。
―――そう。
―――貴女はあの子達の『 』にあたる娘なのね。
―――なら、こんな寂しい世界なんて捨てて。
―――私達の〝
彼女の知らない声は、全てを優しく包み込むように、そう告げた。
こうして眠り姫は、〝異世界〟へ招かれることとなる。
知らない声とは一体誰ノコトデショウネ
次回は問題児達との邂逅デス