それにしても話が進まないデス
いきなりサブタイに躓きました、一話二話とかにすれば良かったと後悔してます。
〝
〝何たらかんたら粒子体〟。
〝適合率100%〟。
そして―――〝新人類〟。
少女の正体はそれだと言う。
どこから突っ込んでいくべきかと十六夜が悩んでいると、
「ちょっと貴女!私達と同じ人間だというのに〝新人類〟ですって!?」
「へ?」
いきなりお嬢様に両肩を掴まれては叫ばれ、
「何それ超カッコイイ。羨ましいなこの野郎」
「え?⋯⋯⋯え?」
少女の背後に春日部が回り込み、妬みを吐露しながら少女の頭を両の拳で挟んで蟀谷をグリグリやる。
痛くはないが、思わぬスキンシップと予想外の反応を見せる二人に困惑する少女。
「あ、あの!」
「⋯⋯⋯何かしら?」
「貴女方は私のことを、気味悪がらないんですか?」
「⋯⋯⋯どうして?」
「どうしてって、それは私が〝不老不死〟の怪物だからですよ!そこの殿方が杭を抜いたのですから、傷が一瞬で塞がる様は見たはずです!アレを見ても、私を化け物だと思わないのですか!?それに普通の人なら心臓を刺されたら死ぬのに、それでも復活するんですよ!?そんな私を化け物と呼ばずなんと言うんですかっ!!」
泣きそうな顔で、私は怪物なんです!と必死な声で伝えようとする少女。
そんな彼女に目を丸くしたお嬢様と春日部は、優しく微笑んで、
「それがどうしたのかしら。確かに貴女は私達と違ってどんな怪我を負ってもすぐに治るし、死ぬことはないのでしょうね。けれどそれは肉体的なものに過ぎないわ」
「⋯⋯⋯え?」
「うん。けれどそんな貴女は自らを危険な存在だと、化け物だと自嘲して私達を守ろうとしてくれてる。そんな貴女を私は〝怪物〟とは思えない。だからね」
「「そんな心優しい貴女は〝怪物〟なんかじゃない。私達と同じ〝人間〟(よ)」」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぁ、」
二人の優しく温かい言葉が、少女の深く傷付いた心を包み込む。
〝
少女に対して特殊な感情を抱く者達の中にも優しさはあったような気がするが。
それ以外の〝新人類〟達からは腫れ物のような扱いをされたり、
如何に〝不老不死〟であっても、それは老いないことと死なないことだけで、傷付いた精神は、細胞が瞬時に再生するように、簡単に癒えるものではない。
彼女が精神をズタボロにされても心が死ぬことがなかったのは、両親と慕う者達が支え続けてくれたからだ。
〝不老不死〟と確定されたあの日も、〝新人類〟達から神のように崇められたことがあったものの、あの中に優しさというものはありはしなかった。
けれどこの異世界で。
初めて顔を合わせただけの同年代と思しき同姓二人に。
貴女は〝怪物〟なんかじゃないと。
私達と同じ〝人間〟だと言われて。
少女の深く傷付いた心が瞬く間に癒えていく、そんな気がした。
「―――うわぁああああああああああんッ!!!」
「え!?ちょ、貴女!?」
「急にどうしたの!?」
子供のように泣きじゃくる少女に、ギョッと目を剥くお嬢様と春日部。
あたふたする二人は、泣き虫お姫様が泣き止む方法を模索し―――前からお嬢様が、後ろから春日部が、少女を挟み込むようにして優しく抱きしめた。
それから彼女のプラチナブロンドの頭髪を優しく撫でてやる。
「今まで辛い思いをしてきたのね」
「もう大丈夫だから。全部出し切って」
「うぅ、ひっぐ、うわぁああああああああああんッ!!!」
二人の優しい言葉に、温もりに、少女は更に泣きじゃくり滝のような涙を紅い瞳から溢れ出させる。
今まで溜め込んできたものを全部、出し切るように止めどなく涙を流し続けるのだった。
数分間泣き続けて、漸く泣き止んだ少女は、恥ずかしそうに頬を赤らめている。
こうして見ると、〝不老不死〟の彼女も中身は普通の女の子なのだと理解した。
肉体的には〝不老不死〟でも、精神的には弱い彼女は誰かが支え守ってあげなければならない。
お嬢様と春日部は顔を見合せて、決意したように頷く。
この子は私達が守ってみせると。
そんな光景を黒ウサギは温かい眼差しで見つめていた。
頬が濡れているのはもらい泣きしたせいだろう。
目尻にも微かに光るものがあった。
誰にも気付かれることなくもらい泣きしていた―――わけもなく、ばっちり十六夜に見られていたのだが、どうやら気付いてないらしい。
その彼はふと、お嬢様の胸元を見つめて、一人頷いた。
「⋯⋯⋯なるほど。お嬢様の
「は?」
「ッ!!?く、久遠さん!下見て!下ッ!」
「え?」
久遠と呼ばれたお嬢様は、春日部に言われるがまま視線を下に向けると、服が透けて赤い下着が見えていた。
「~~~っ!!?」
みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げた久遠は、勢いよくその場にしゃがみ込んで透けた下着をこれ以上見られないようにする。
湖に落ちても透けなかったのにどうしてと恥ずかしさで目をグルグル回しながら考えていると、胸元がびしょ濡れになっていることに気が付く。
では何故胸元がびしょ濡れなのか、その答えに辿り着くのは簡単だった。
泣き虫お姫様に、胸を貸していたせいでこうなったのだと瞬時に理解する。
けれどそのことであの子を責められるわけない。
ならばと、キッと十六夜を睨め上げ叫ぶ。
「十六夜君!先程見た物は忘れなさいッ!」
「嫌だね」
「
強制的に忘れさせようと力を行使する久遠。
肝心の十六夜はニヤリと笑って、
「だが断る!」
「なっ!?」
久遠は驚愕し目を見開いた。
彼に力が通用しなかったことに驚いたのだ。
元いた世界では何でも思い通りになっていたのに。
異世界来て早々、通用しない相手と出逢えるなんて幸先―――良くない。
この状況でなければ喜んでいたのだが、今は逆に通用しなかったことに苛立つ。
すると久遠を庇うように立ち塞がった春日部が、十六夜を睨み付けて、
「大丈夫だよ久遠さん。私があの変態を殴ってその記憶を忘れさせるから」
「か、春日部さん!」
ここに救世主現る。
久遠の表情がパアッと明るくなる。
十六夜は「へえ?」と軽薄な笑みを浮かべて、
「やれるもんならやってみな、春日部」
「言われなくても―――そのつもりだッ!」
右手の人差し指でクイクイとやって挑発し、それに乗った春日部が地を蹴って彼に突っ込む。
豹の如き速さで駆けた彼女は、瞬く間に十六夜に肉薄し飛び掛った。
彼は呵ッと笑って―――人差し指を春日部の額に押し当てるだけで受け止める。
「「「―――⋯⋯⋯は?」」」
素っ頓狂な声を洩らす黒ウサギと久遠、春日部の三人。
豹に変幻した彼女の突進は、豹の突進と同等だ。
それを指一つで受け止めるとか、なんというデタラメ加減か。
いや、第三宇宙速度で小石ぶん投げられるのだから寧ろこれは可愛い方だろう。
「ふんぬー!」
春日部は両手をブンブン振り回すが、十六夜には一発も掠りもしない。
その様は、さながら飼い主に飛び掛った猫が当たらない猫パンチをかましているようだった。
彼はというと、彼女の胸元を見つめて溜め息を吐いた。
「ちゃんと栄養摂らないと駄目じゃねえか」
その一言で、春日部は蟀谷に青筋を立てて、
「ちゃんと栄養摂ってるもんッ!胸に行き渡らないだけだもんッ!!」
ムキィィィと高速猫パンチを繰り出すが不発に終わる。
十六夜は「てい」と言って春日部の額を軽く押して後方に吹っ飛ばした。
「きゃっ!」
吹っ飛んできた彼女を、プラチナブロンド髪の少女が受け止める。
春日部は彼女にお礼を言うと、
「あ、ありがとう」
「ぷっ、」
「「え?」」
「あはははははははははは!!」
唐突に笑い出した。
久遠と春日部はセクハラを受けてるのに笑うとか失礼である。
「笑うなんて酷いわ!ええと、」
「
「え?」
「私の名前は西郷
「「「「え!?」」」」
さらりと重い話をする少女改め滅火に、思わず目を剥く四人。
心の底から笑ったことがなかったとか、一体どんな人生を歩んできたというのか。
そう、彼女は産まれてから14年間、偽りの笑顔を浮かべて今日まで過ごして来たのだ。
先程、彼女が笑えるようになったのは、溜め込んできたものを全て涙に変えて流し切ったからである。
その切っ掛けを作ってくれた久遠と春日部には、感謝してもし足りないくらいだ。
重い空気にしてしまったことを察した滅火は、頬を掻きながら苦笑して、
「あ、ごめんなさい!空気を重くしてしまって!ええと、よろしければ皆さんのお名前を聞いてもいいですか?」
「え?あ、そうね。貴女が降ってくる前に一度自己紹介してはいるのだけれどもう一度名乗るべきよね。私は
「今、貴女の腕の中にいる私は
「はい!よろしくお願いしますね、久遠さん、春日部さん」
「ええ、よろしく」
「うん、よろしく」
滅火は飛鳥と名乗る久遠と、耀と名乗る春日部に挨拶し、二人も彼女に倣って挨拶する。
「そして私達三人に遠慮無用にセクハラするそこの変態君が」
「
「⋯⋯⋯どこ見て言ってるのかしらこの変態君は」
「あ、あははは⋯⋯⋯」
「今に見てろ!未来の私は凄いんだから!」
逆廻と名乗った十六夜に、胸のサイズを目測されて飛鳥が冷ややかな目で睨み返す。
苦笑いの滅火。
約一名、耀だけは謎に燃えていた。
一方、黒ウサギがムッとした顔で彼を睨み付けて、
「誰がウサ耳ですか!黒ウサギは黒ウサギなのですよ!それとセクハラする殿方はお断りでございます!」
フン、とそっぽを向く黒ウサギ。
十六夜は彼女達の中で最も上玉な黒ウサギに誘いを蹴られて舌打ちする。
彼の変態ぶりは一周回って面白いのか、クスクスと滅火は楽しそうに笑うが、ふと飛鳥の発言が気になって訊いた。
「ところで久遠さん。三人も逆廻さんにセクハラを受けたのですか?」
「ええ、そうよ。最初は西郷さんで、次は私。最後が春日部さんね」
「⋯⋯⋯え?最初は私なんですか?」
「そうよ。ああ、その時は眠り姫状態だったから彼にどんなセクハラされたか知る由もないものね?」
「⋯⋯⋯杭を抜く際に、私の胸に触れてしまった程度なら、問題ありませんよ?」
滅火は少し恥ずかしそうに言う。
その反応に、飛鳥は悪戯っぽく微笑んで、
「触れた程度ではないわよ西郷さん」
「へ?」
「不可抗力とはいえ貴女の左胸を鷲掴み」
「ひゃ!?」
「その不可抗力をいいことに、二回も揉んでたわ」
「~~~っ!!?」
ボンッ!!
恥ずかしさのあまり頭から湯気が出ている。
顔だけでなく全身真っ赤にさせるとあわあわして、
「ささささ逆廻しゃんに!?むむむむ胸を鷲掴みにしゃれて!?にににに二回も、もももも揉まれらッ!?」
グルグル目を回して呂律も回っていない。
〝不老不死〟の怪物と呼ばれていた存在とは到底思えない、可愛らしい反応の滅火に目を丸くする女性陣三人。
十六夜はニヤリと笑って一言。
「中々の揉み心地だったぜ!」
「ひゃわぁああああああああああっ!!?」
謎の悲鳴を上げた滅火は、更にボボンッ!!!と頭のてっぺんから凄まじい音を立てると、バタンッ!!と物凄い音を立てて倒れてしまった。
「「「西郷さん!?」」」
ギョッと目を剥いた女性陣三人が慌てて駆け付けるも、頭から蒸気機関車の如く白い煙を出して気を失っていた。
彼女達が目をグルグル回しながら気絶した滅火を介抱している中、十六夜は真剣な表情で滅火の苗字に疑問を抱く。
「(西郷、だと?なんであのお姫様が、俺や焔と同じ苗字を名乗ってやがるんだ?)」
そう、十六夜の本当の苗字は逆廻ではなく、西郷だ。
彼の言う〝焔〟という人物は、彼の実弟にあたる。
「(西郷、滅火⋯⋯⋯〝新人類〟、ねえ。俺達を〝旧人類〟と喩えるなら、このお姫様は俺達の―――未来の子孫だったりするのか?)」
だが彼女の体毛はプラチナブロンドで、虹彩も紅。
たいして十六夜と焔の体毛はブロンドで、虹彩は紫。
共に色合いが一致しない。
一致するとしたらそれは―――
「(―――〝先天性白皮症〟。アルビノに見られる体毛と虹彩、か)」
滅火が十六夜を同族と見たのは、恐らく彼をアルビノだと思ったからだろう。
とはいえ十六夜は陽の光に、紫外線に弱いわけでもない。
彼もこの体毛と虹彩を不思議に思っていた。
子供の頃、調べたことがあったのだが、両親は日本人であるはずなのに、その子供の十六夜と焔はアルビノのような見た目を持って産まれたこと。
「(人間の俺が持つ異常な体質、身体能力。もし〝新人類〟のお姫様と同じでその〝何たらかんたら粒子体〟とやらが俺の体内、或いは血液に潜んでいるとしたら―――)」
そこまで考えたが、目を回して気絶している滅火を見て苦笑し、首を横に振った。
「⋯⋯⋯⋯⋯まさか、な」
十六夜のラッキースケベ運が止まらないようです。
これはそのうちとんでもない水難に襲われるのやもしれぬ()
〝不老不死〟でも心は脆弱な主人公。
つまりこれは大抵悲惨な目に遭う某ルイルイが頑張っちゃう展開になるかもしれませんね。