始祖の末裔が召喚されたようですよ?   作:問題児愛

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5000文字に収まらなかった⋯不覚。
サブタイ通り、いきなり始まりませんが過去話になります。


過去話

「⋯⋯⋯⋯⋯ん」

 

ショートしてから割と早く復活した滅火。

彼女が目を開けると先に飛び込んできたものは、

 

「―――あ、西郷さん!御目覚めになられたようでございますね!」

 

嬉しそうな声と共にウサ耳をピンッと立てた黒ウサギの姿だった。

後頭部にある柔らかい感触は、彼女に〝膝枕〟というものをしてもらっているからである。

それにしても、膝枕をされて分かることが一つ。

黒ウサギさんは立派な果実(モノ)をお持ちだなー、と変態的な意味ではなく純粋に正直な感想を抱く。

次に視線を飛鳥に向ける。

彼女も滅火と同年代の少女とは思えない程、豊かに実っている。

胸のサイズは飛鳥よりも滅火の方が大きいが、背は飛鳥の方が高く滅火は低い方だ。

次に視線を耀に向ける。

彼女の胸は残念ではあるものの、将来に期待したい。

背は耀の方が高く滅火は低い方だ。

春日部さんファイト!の気持ちを込めた瞳を耀に向けると、何故か睨まれた。

何故睨まれたのだろう?と不思議そうに疑問符を頭上に浮かべる滅火。

耀が睨んだ理由は―――余計なお世話だ!という意味なのだが、この鈍いお姫様には伝わらないだろう。

最後に十六夜に視線を向けようとして、自分の体に掛けられているものが視界に入った。

 

「⋯⋯⋯あれ?この上着は逆廻さんのですよね?」

 

滅火がおもむろに体を起こして訊ねると、Tシャツ姿の十六夜が「ああ」と返して、

 

「お姫様の種族は恐らくアルビノなんだろ?なら陽の光に弱いだろうし貴重な一張羅だが、それ貸してやるから頭に被っとけ」

 

「⋯⋯⋯!!あ、ありがとうございます!逆廻さんはお優しいんですね。もしかして、直射日光で痩せ我慢してたの、バレてましたか?」

 

「え?」

 

「ああ。少なくとも俺にはバレバレだな。けどあんたは優しいから言うに言えなかったんだろうよ―――『私なんかの為に皆さんに御迷惑をかけるわけには参りません!』って感じにさ」

 

「うっ、」

 

十六夜の指摘はどうやら図星だったらしい。

胸が大きい女性が好みという意味合いで、滅火を見ていたわけではないようだ。

滅火が面目無さそうに頬を掻いていると、十六夜がしゃがみ込むと彼女の頭に手を乗せて、

 

「痩せ我慢する必要はない。困ったことがあったら俺に相談しな、いつでも力になってやる」

 

「え?」

 

「いいんですか!?」

 

「ああ」

 

「ありがとうございます!本当に逆廻さんはお優しいんですね!」

 

「おう。全米が俺の優しさに涙してもいいんだぜ?」

 

ヤハハと笑う十六夜と、嬉しそうに彼の学ランを被って照れ隠しする滅火。

一方、黒ウサギと飛鳥、耀の三人が何やらひそひそと話していた。

 

「絶ッ対に、下心ありでございますね」

 

「そうね。だって彼は変態君だもの」

 

「うん。万が一の時は私達が西郷さんを守らないと」

 

「おいコラ聞こえてんぞ。ぶっ飛ばされてえのかお前ら」

 

十六夜が拳を掲げながらいい笑顔で言う。

彼が滅火に無条件で手を貸す理由は一つ。

彼女の実力は、十六夜の目から見て足並みか同等と推測している。

だが精神面が脆弱過ぎるから、そこを突かれたら彼並みの実力者だったとしても必ず隙が生まれ簡単に崩されるだろう。

だから彼女の心が壊されないように守ってみせると、彼は思ったのだ。

そんな彼の心情を知ってか知らないでか、滅火が言ってきた。

 

「ですが無償でとは参りません。代わりに私に出来ることでしたら何でも言ってくださいね」

 

「え?」

 

「⋯⋯⋯ほう?なんでも、ねえ?」

 

十六夜は隠す素振りも無く、その視線を滅火の胸元へ向ける。

やっぱりそう来たか、と女性陣三人が彼を睨み付け、滅火を守ろうとするが、その彼女が右手で制して、

 

「性的なことでも全然構いませんよ。私が逆廻さんにお願いする内容は、それに見合うものですからね」

 

「なっ、」

 

「ハハ、マジかよ。やっぱなしは通用しねえからな?」

 

「勿論です。逆廻さんこそ、私に性的なことをしておいて〝お預け〟はなしですからね?」

 

「おうよ。⋯⋯⋯って、〝お預け〟って何のことだ?」

 

「???」

 

滅火の意味深な発言に、四人は首を捻る。

彼女は人間よりも鋭利で長めの犬歯を口元からはみ出させて微笑み、

 

「それはですね、〝御食事〟のことですよ。私が欲しいのは逆廻さんの―――〝生き血〟なんですから」

 

「―――⋯⋯⋯は?」

 

素っ頓狂な声を洩らす四人。

滅火は〝新人類〟であり〝吸血鬼〟ではない。

だというのに、〝生き血〟が〝御食事〟だと?

彼女の言ってることが矛盾している。

十六夜は高速で頭をフル回転させて状況整理する。

 

「(お姫様は吸血鬼ではなく新人類だが、生き血が食事。なら新人類=吸血鬼と考えていいだろうな)」

 

だが滅火は自らを吸血鬼として()()()()()()()

 

「(⋯⋯⋯俺達のような旧人類が、何らかの影響で()()したことにより生まれた人類があの新人類(お姫様)。あくまでも人類が基盤故に吸血鬼とは呼ばずに新人類という別種の存在に定義されているってことか?)」

 

それならば、滅火が吸血鬼ではなく新人類を名乗っていることに説明がつく。

 

「(だとしたらやっぱり、お姫様が言ってた〝何たらかんたら粒子体〟が怪しいな。こいつが旧人類を新人類に進化させる物質なら、俺の体内にもその物質が潜んでいてお姫様と全く同じ、若しくは近しい存在となって人智を超越した力を手にしてるってことになるな)」

 

つまり十六夜の秘められた力は滅火を識ることで解明されるかもしれない。

だったら彼が取る行為は一つ。

 

「―――分かったよ。俺はお姫様にセクハラし放題の特権を得る代わりに、血を吸わせてあげればいいんだな?」

 

「そうなりますね。せ、セクハラし放題の特権ですか⋯⋯⋯うぅ、考えただけでも恥ずかし過ぎますが、〝御食事〟しないで理性を失った化生と成り果てない為にも、精一杯頑張らさせていただきます!」

 

「よしよし。それなら早速お姫様の胸を借りるとするか」

 

「へ?―――ひゃわっ!?」

 

膝立ちになった十六夜は、滅火の胸元に顔を埋めた。

いきなりセクハラされて恥ずかしさのあまり目を回しかけるが、

 

「おお、こいつは中々の寝心地が期待出来そうな胸枕だ」

 

「む、胸枕?」

 

何ですかそれは、と苦笑する滅火。

滅火の柔らかい感触を楽しむ十六夜。

女性陣三人は口を挟みたい気持ちを押さえる。

利害関係が成り立ってしまったのだから、彼女達が十六夜を兎や角言う資格は無い。

とはいえ―――

 

「「「せめて私達が居ないところでやってほしい(わ・のですよ)」」」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「「「なんでもない」」」

 

「⋯⋯⋯?」

 

どうやら十六夜の耳には入ってなかったようだ。

まあ、今の彼は至福の時間を得ているのだから聞こえてなくてもしょうがないことである。

滅火は自分の胸に顔を埋める十六夜の頭を優しく撫でながら微笑していた。

 

「(ふふ、これで私の()()()()にいっぱい御奉仕出来ますね!逆廻さん⋯⋯⋯いいえ、西()()さんはどうして苗字が違うのかは分かりませんが、私の嗅覚は誤魔化せませんよ)」

 

そう、滅火の鼻は誤魔化せない。

彼女の鼻は人間以上で、特に()()の血の匂いには敏感だ。

十六夜にお姫様抱っこされた状態で目が覚めた段階で。

最初、彼を同じ〝新人類〟と誤解してしまったものの、〝西郷家〟という血筋的な意味合いでは同族で間違いない。

それに彼の血中に、滅火と同じ粒子(モノ)が馴染んでいることも知っている。

だから彼の〝生き血〟を〝御食事〟の対象に選んだのだ。

 

「⋯⋯⋯なあ、お姫様」

 

「はい、何ですか?」

 

「あんたはセクハラされて平気なのか?」

 

「へ?」

 

そんなことを胸枕から離れた十六夜が胡座をかきながら聞いてきて、目を丸くする滅火。

彼女は頬を朱色に染めながら答える。

 

「へ、平気なわけないですよ」

 

「そりゃそうだわな。なら〝御食事〟とやらの為か?」

 

「それもありますけど、そうですね。逆廻さんはその、無理矢理襲ってくるようなタイプではないと判断しましたので」

 

「は?」

 

「「「無理矢理襲ってくる!?」」」

 

ギョッと目を剥く女性陣三人。

滅火は苦笑いして、

 

「皆さんは私が〝不老不死〟と知っても怪物扱いしない優しい方々なのでお話しましょう。私の元いた世界では、私が〝不老不死〟に認定された後、私を狙う者が星の数程いました」

 

「⋯⋯⋯?それはどうしてなのかしら?」

 

飛鳥が問うと、滅火の代わりに察した十六夜が、不愉快そうに舌打ちして、

 

「チッ、そういうことかよ。無理矢理襲ってくるっていうのは―――〝不老不死〟のお姫様と()()()()()()()()、その子供も〝不老不死〟になる。その迷信が奴らをそうさせたんだろ?」

 

「なっ!?」

 

「⋯⋯⋯はい。逆廻さんは聡いですね。その通りです。私に子を産ませようとする者達が誘拐を企てたり、街を歩いてる時に急に襲われては犯されそうになったこともありましたね」

 

「―――っ!!?」

 

絶句する。

〝不老不死〟というだけで、そんな目に遭わされかけたのかと。

それに〝不老不死〟に認定されたということは、それ以前にも酷い扱いを受けていたに違いない。

四人は滅火のあまりにも理不尽過ぎた境遇を憐れみ、彼女にそうしてきた者達にたいして激しい怒りが込み上げてきた。

 

「それがきっかけで両親は私に護衛を付けるようになったんですよね」

 

「⋯⋯⋯?〝不老不死〟に認定される前は、護衛は無かったの?」

 

耀が質問すると、滅火は小首を横に振った。

 

「いいえ。寧ろ私の両親は〝不老不死〟に関する実験には協力的でしたからね。だからいつも両親からは『実験はつらくて苦しいけど大丈夫、お前なら耐えられる』とか、『お母さんが傍で見守ってるから安心して』とか言って励ましてくれました」

 

「なんですって!?」

 

「その方達は本当に、西郷さんの御両親でございますか!?」

 

「⋯⋯⋯腐ってる」

 

滅火のその話を聞いて激怒する飛鳥と黒ウサギ、耀の三人。

声には出さなかったものの、十六夜も見るからに不快そうな表情をしていた。

だが彼らがそう思うのは無理もない。

滅火の両親なのに、〝不老不死〟に関する実験に娘を利用し、実験動物(モルモット)同然の扱いを受けさせ続けたのだから。

しかし滅火は小首を横に振って続ける。

 

「仕方ないですよ。〝不老不死〟になることが、〝新人類(私達)〟の夢でしたから。当時の私も、同じ気持ちで両親の想いに応えようと必死に痛いのとか苦しいのとかに耐えて頑張りましたからね」

 

「⋯⋯⋯そう」

 

滅火も同意の上なら、実験に関してはこれ以上言うことは出来ない。

 

「逆に〝不老不死〟の実験に反対する者もいましたね。その実験で子供を失った経験のある者を始め、最初からその実験が成功するとは思っていない者。そんな実験に非協力的な者達の末路はその⋯⋯⋯凄惨なものだったと聞いています」

 

「え?」

 

「おいちょっと待て。お姫様の話を聞いてる限りだと、その実験とやらは()()()に行われていたものだったりするのか?」

 

「はい、そうですよ。最初は希望者のみだったそうですが、失敗ばかり続いたせいで被験体の数が軒並み減少し、〝不老不死〟の実験は頓挫寸前まで追い込まれていきました。ですがある日、国を統治する者が代わったことで、〝不老不死〟の実験は息を吹き返すこととなります」

 

「⋯⋯⋯まさか、ルールの改定による〝不老不死〟の実験の強制化でございますか!?」

 

「〝不老不死〟の力を何がなんでもものにしようとした〝新人類(ヤツ)〟が実権を握った国の末路ってやつか、クソッタレ」

 

「はい。その〝不老不死〟の実験は世界規模にまで発展して、全ての国が強要されましたので、逃げ場なんてものはありません」

 

「―――⋯⋯⋯ッ!!?」

 

絶句する。

逃げ場がないとか最悪過ぎだ。

耀が恐る恐る滅火に訊ねた。

 

「⋯⋯⋯その実験を拒んだらどうなるの?」

 

「⋯⋯⋯そうですね。第一段階は家族全員が強制連行されて、10歳以下の子供以外は牢屋行きです」

 

「ちょっと待って。その言い方だと10歳以下が実験の対象ということなの!?」

 

「あ、いえ。被験体は10歳を迎えた者に限ります。それ以下の子供達はまだ被験体にはなりません」

 

「まだということは、その子達も10歳になったら実験の対象にされてしまうのですね⋯⋯⋯」

 

沈鬱そうな表情をする耀と飛鳥、黒ウサギの三人。

十六夜だけは不快そうな表情のまま話を聞いている。

滅火は続けた。

 

「第一段階後でも拒否したら次は第二段階が執行されます」

 

「⋯⋯⋯その内容は?」

 

「⋯⋯⋯一気に過激になります。まず、牢屋行きの家族は全員磔にされて、民衆の前に晒されます」

 

「⋯⋯⋯え?」

 

「次にその家族の被験体の子供が、銀製の刃を備えた獲物を持って磔にされた家族の前に立たされます」

 

「⋯⋯⋯っ、待って西郷さん!これからやろうとしてることって!?」

 

「⋯⋯⋯はい。久遠さんが想像している通りです。磔にした家族を、その被験体の子供に、民衆の前で公開処刑させるんです。その処刑方法は―――〝心臓串刺しの刑〟です」

 

「ひっ!?」

 

短い悲鳴を上げる飛鳥。

〝不老不死〟ではない〝新人類〟は、弱点の一つである〝銀〟製の武器で心臓を一突きされれば死んでしまうそうだ。

 

「被験体の子供は選択を迫られます。〝同族殺し〟をして生き延びるか、拒絶するかのどちらか二択を選ばなければなりません。前者は、自らの手で磔の家族を皆殺しにして一時の救済を得られますが、後者は―――磔の家族の目の前で、被験体の子供が〝心臓串刺しの刑〟に処されて、続けて磔の家族も執行人の手によって皆殺しにされます」

 

「うっ!?」

 

「ひ、酷い⋯⋯⋯」

 

「慈悲というものはないのですか⋯⋯⋯?」

 

「そんなものはありません。そして前者を選んで一時の救済を得たはずの被験体の子供は、最後の選択を迫られます。実験に協力するか否かを選択させられます」

 

「⋯⋯⋯え?」

 

「それが第三段階です。〝同族殺し〟をしたことで解放される―――ことはありません。最後まで拒絶を続けた者の末路は、10歳以下の子供達以外皆殺しにされる運命なのですから」

 

「ハッ!最初(はな)から非協力者は生かす気ねえとか糞だな。奴らは人の皮を被った怪物か何かか?」

 

「彼らは国が選んだ執行人ですからね。その行為がどれ程残酷なものだろうと、それを行うのが彼らの役目です。その彼らも逆らえば上の者に始末される運命ですので」

 

悲しげな表情で語る滅火。

全ては一番上の者が、彼らの命を生かすか殺すかの選択をする権利があるということだ。

胸糞悪いにも程がある。

ふと黒ウサギがあることに気付き、滅火に訊いた。

 

「ちょっと待つのですよ!皆殺しにされて家族が10歳以下の子供達だけになった場合、彼らはどうやって生活するというのですか?」

 

「⋯⋯⋯その点なら問題ありません。10歳以下の子供達だけとなった家族は、国によって作られた施設に連れていかれて、10歳を迎えるまで面倒を見てくますから」

 

「面倒を見てくれる、だと?〝不老不死〟の実験に()()する歳になるまで()()されるの間違いだろ」

 

「ちょ、十六夜君!?」

 

「はい。逆廻さんの言い方が正しいですね。施設に連れてこられた10歳以下の子供達は、特殊な装置を首に付けられて出荷日まで飼育されることとなります。そこは差異の無い誰もが平等で快適な暮らしを約束されますが、その代わり徹底的に監視、管理される立場にあります」

 

「〝楽園(ユートピア)〟と見せかけて〝鳥籠(ディストピア)〟か。ちなみに〝鳥籠〟育ちの子供に実験を拒絶する権利はなかったりするのか?」

 

「はい、拒絶する権利さえ与えられません。『我々が愛情込めて育てたのだ。我々に従うのは当然であり責務である』という感じに子供達は強制的に被験体にされるのです」

 

どこまでも救いようのない話に、女性陣三人の顔色は悪くなっていく。

十六夜もさっきから不快そうな顔が張り付いてるように変わる様子がない。

滅火は何故か、居た堪れない気持ちで彼らを見返していた。

それに気付いた十六夜が、なんでこのお姫様が申し訳なさそうに思ってるんだ?と不思議そうに彼女を見つめ返す。

 

「そんなヒトとして扱ってもらえない地獄の日々は―――私という〝不老不死(ホンモノ)〟を見つけ出したことで終わりを迎えます。彼らにとって〝不老不死()〟は、この終わらない無限地獄に終止符を打ちに現れた女神様だと思い、信じ崇めました」

 

「⋯⋯⋯そうね。彼らの受けた数々の仕打ちを思うと、滅火さんは女神様に違いないわ」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯、」

 

「⋯⋯⋯?どうかしたの西郷さん?」

 

「い、いえ。なんでもありません」

 

苦笑いで誤魔化す滅火。

だが十六夜だけは、彼女の話から不可解な点を見つけ出していた。

 

「なあ、お姫様」

 

「はい?」

 

「〝不老不死〟を見つけ出したってどういうことだ?俺はてっきり、〝不老不死〟を()()()()為の実験をしてるもんだと思ってたんだが」

 

「え?」

 

「⋯⋯⋯やっぱり逆廻さんは聡いですね。その通りです。彼らの行っていた〝不老不死〟の実験は―――()()()()()()()()()()()不老不死(存在)〟を探し出すという、無茶で無謀な馬鹿げたものだったのです」

 

「―――⋯⋯⋯ッ!!?」

 

女性陣三人は言葉を失った。

〝不老不死〟を生み出すのではなく、見つけ出すという実験。

それはつまり、〝不老不死(西郷滅火)〟すら存在しなかったのならば、あの地獄の日々は永遠に終わりを迎えることなく、産まれてくる子供達にとって10歳が〝世界の果て〟となっていたことだろう。

10歳を迎えるということは、それ即ち死を意味するのだから。

〝不老不死〟として生まれて来なければ、この〝世界の果て〟を越えることは出来ないということだ。

 

「つまり、西郷さんの〝不老不死〟は先天性のものなんですね?」

 

「そうかもしれませんね。若しくは〝不老不死〟の実験より前に使用される()()()()()が、私を〝不老不死〟に至らしめたという可能性も」

 

「とある器械?」

 

「はい。正式名称は忘れましたが略称は〝ビーデーエー〟と呼ばれるモノでして、〝不老不死〟の実験とは別に〝新人類(私達)〟が〝短命種〟から〝長命種〟となる為の儀式に使用されるものですね」

 

「ふうん?そのB.D.Aとやらは〝新人類〟の寿命を引き延ばす画期的な超素敵アイテムってことか?」

 

「そうなりますね。あ、となると〝ビーデーエー〟も〝不老不死〟の実験の一つだったってことになりそうです。でしたら私の〝不老不死〟は先天性のものではなく、〝ビーデーエー〟によって〝不老不死〟に至った可能性が高いかもしれません」

 

納得しました!と手を打つ滅火。

それにしてもディーをデーと言ってしまうあたり、彼女は滑舌が悪い或いは舌っ足らずなのかもしれない。

 

「寿命を引き延ばせるとか凄いわ!もしかして私達もそのB.D.Aというものを利用すれば長生きも可能なのかしら!?」

 

「いえ。久遠さんには無理ですね」

 

滅火に不可能だと即答されて落ち込む飛鳥。

十六夜は「へえ?」と軽薄な笑みを浮かべて、

 

「お嬢様()()、ねえ。その言い方だと、俺か春日部なら可能だったりするのか?」

 

「え?」

 

「そうですね。春日部さんも無理ですが、逆廻さんなら恐らく可能ですよ」

 

「は?」

 

「俺には可能なのか」

 

「はい。逆廻さんの〝生き血〟が私の〝御食事〟に選ばれた理由もそれですから」

 

え?と四人は目を丸くする。

流石の十六夜も、それが選定理由とは思ってなかったらしい。

黒ウサギがハッと我に返り問いただす。

 

「で、ではやはり十六夜さんは西郷さんと同じ〝新人類〟なのですか!?」

 

「いいえ、違いますよ。最初は私もそう思ってしまいましたが、私が〝生き血〟を欲すると言った時に驚いていたので彼は紛れもなく〝新人類〟の前の世代の人類です」

 

「ふうん?なら俺の血の中にはお姫様と同じモノがあるんだな?」

 

「そうですね。どうして逆廻さんの血の中に私と同じ〝何たらかんたら粒子体〟があるのかは不明ですが―――〝御食事〟の手立てが出来たのは幸運でした」

 

「⋯⋯⋯?その〝御食事〟を欠くとどうなるの?」

 

耀が気になって訊くと、滅火は途端に表情を暗くして、

 

「⋯⋯⋯そうですね。〝御食事〟を求めて手当り次第襲っては〝生き血〟を啜る化生と成り果てるでしょう」

 

「―――ッ!!?」

 

「お姫様に襲われるのか。それはそれで俺はありだな」

 

「へ?」

 

「ん?理性を失った野郎ではなく、お姫様みたいな美少女に襲われるんだぜ?男ならむしろ嬉々として襲われに行くだろ」

 

十六夜が世の男達の気持ちを代表して言うと、滅火はみるみるうちに顔を真っ赤にさせた。

そんな彼女の恥ずかしそうな表情を見た飛鳥と耀、黒ウサギは揃って頷き、

 

「「「確かにそう(ね・だね・ですね)」」」

 

「だろ?」

 

四人はうんと頷く。

彼女に襲われるとかむしろご褒美でしかないと、彼らは思うのだった。




ふと焔についてラスブリ見直したら〝原典に限りなく近いレプリカ〟とのことなので、適合率は99%ですかね。

十六夜は主人公が太陽光に弱いことを見抜いていますが、彼女がとても〝お腹すいている〟ことには気付いてないようです。箱庭に来る前に結構な量の血を失ってますからね。これは彼と二人きりになった時に、我慢出来ずに襲いかかってしまいそうです。

漸く次回から原作でいうと〝チュートリアル〟という名の黒ウサギによる箱庭の説明会に入れそうです。その前にウサ耳が狙われるやもしれませんが。
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