始祖の末裔が召喚されたようですよ?   作:問題児愛

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前半はガルドを揶揄う飛鳥達とガルドの説明。

後半は黒ウサギ合流と蛇神戦決着の二本。

5000文字に収められなくなりつつあります。


似非虎紳士と蛇神戦決着

―――箱庭・〝六本傷〟カフェテラス。

時は少し遡り、許可を取ることすらせずに飛鳥達三人が座るテーブルの空席に腰を下ろしたガルド。

飛鳥と耀に愛想笑いを向けてくるガルドに対し、彼の失礼な態度に冷ややかな態度で返す二人。

 

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗った後に一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

 

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ〝六百六十六の獣〟の傘下である」

 

「烏合の衆の」

 

「コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!!」

 

ジンに横槍を入れられたガルドの顔は怒鳴り声と共に激変する。

口は耳元まで大きく裂け、肉食獣のような牙とギョロリと剥かれた瞳が激しい怒りと共にジンに向けられる。

 

「口慎めや小僧ォ⋯⋯⋯紳士で通っている俺にも」

 

「紳士?飛鳥や私に不快な思いをさせておいて?貴方は似非紳士の方がお似合いだと思うな」

 

「は?」

 

「そうね。春日部さんの言う通りだわ。紳士を名乗るのならば最初の印象が大事だということを覚えておいた方がいいわよ、似非紳士さん?」

 

「グッ、」

 

耀と飛鳥にその点を責められて言い返せないガルド。

全くもってその通りな為、ガルドは冷静になって慎重に言葉を選んだ。

 

「も、申し訳ありません。以後気をつけます」

 

「ええ、そうして頂戴。それとジン君も、相手が名乗っているのだから横槍を入れるのは失礼でしてよ?」

 

「す、すみません。ですが今の彼はこの辺を荒らす獣と変わらないので、森の守護者だった頃のように、相応に礼儀で返す必要はありません」

 

「そうなの?」

 

「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解出来てんのかい?」

 

「⋯⋯⋯紳士としての口調が全くなってない。これは減点」

 

ハッとして口元を隠すガルド。

耀と飛鳥に半眼で睨まれて滝汗を掻くガルド。

紳士チェックしてくる彼女達を侮ってはいけないと、ガルドは思った。

さて、と飛鳥がジンとガルドを見比べて溜め息を吐き、

 

「事情はよく分からないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえた上で質問したいのだけど―――」

 

ジンを鋭く睨んで、

 

「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘している、私達のコミュニティが置かれている状況⋯⋯⋯というものを説明して頂ける?」

 

「そ、それは」

 

ジンは言葉に詰まり、大きな失敗を犯したことに気付く。

それは黒ウサギと口裏を合わせて隠していたことだった。

飛鳥はその動揺を逃さず畳み掛ける。

 

「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼び出した私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

 

追及する飛鳥の声は静か、されどナイフの様な切れ味でジンを責める。

それを見ていたガルドは獣の顔を人に戻し、含みのある笑顔と上品ぶった声音で、

 

「レディ、貴女の言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし彼はそれをしたがらないでしょう。宜しければ〝フォレス・ガロ〟のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧―――ではなく、ジン=ラッセル率いる〝ノーネーム〟のコミュニティを客観的に説明させて頂きますが」

 

飛鳥は訝しげな顔でジンを見る。

ジンは俯いて黙り込んだままだ。

 

「⋯⋯⋯そうね。お願いするわ」

 

飛鳥がそう言うと、ガルドは了承し説明を始めた。

 

コミュニティとは読んで字の如く複数名で作られる組織の総称で、人間はその大小で家族とも組織とも国とも言い換え、幻獣は〝群れ〟と言い換えられる。

コミュニティは活動する上で箱庭に〝名〟と〝旗印〟を申告しなければならなく、特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。

自分のコミュニティを大きくするには両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければよい。

〝六本傷〟の旗印が刻まれたコミュニティの本拠は南区画の為手出し出来ないが、2105380外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て自分の支配下であることを自慢し、残すは本拠が他区か上層にあるコミュニティと奪うに値し無い名も無きコミュニティぐらいのようだ。

ここからが本題で、ジンのコミュニティは数年前まではこの東区画最大手で彼とは比べようも無い優秀な男がリーダーを務めていたそうで、ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた東区画最強。

東西南北に分かれたこの箱庭で、東の他に南北の主軸コミュニティとも親交が深かったらしく、南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込む程。

〝人間〟の立ち上げたコミュニティではまさに快挙とも言える数々の栄華を築いたコミュニティだったが、敵に回してはいけないモノに目をつけられ、ギフトゲームに参加させられた挙句、たった一夜で滅ぼされた。

これは比喩に非ず、箱庭で唯一最大にして最悪の天災―――俗に〝魔王〟と呼ばれる者達によってジンのコミュニティは玩具にされて潰されたのだと。

〝名〟も〝旗印〟も主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけで、この時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたのだろうが、今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかない。

ではそんなコミュニティに出来ることとは?商売や主催者(ホスト)は信用されないが、ギフトゲームへの参加は可能だが、優秀なギフトを持つ人材が集まるわけないと、出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないとジンとコミュニティを笑う。

更にジンは名ばかりのリーダーでしかなく、コミュニティの再建を掲げているものの、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫と罵る。

そしてガルドは言う、黒ウサギは不憫だと。

ウサギと言えば〝箱庭の貴族〟と呼ばれる程強力なギフトの数々を持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられる。

コミュニティにとってウサギを所持しているだけで大きな〝箔〟が付く。

それなのに彼女は毎日毎日糞ガキ共の為に身を粉にして走り回り、僅かな路銀で弱小コミュニティをやり繰りしているのだと。

 

ガルドの話を聞いて、飛鳥は含みのある声で問う。

 

「⋯⋯⋯そう。事情は分かったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」

 

ガルドは笑って提案した。

 

「単刀直入に言います。もし宜しければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 

 

箱庭の外・トリトニスの大滝付近。

淡い緋色の髪を戦慄かせて全身から怒りのオーラを放ちながら十六夜と滅火を睨んでくる黒ウサギ。

滅火は目を瞬かせて黒ウサギを見つめ返し、

 

「く、黒⋯⋯⋯じゃなくて桃ウサギさん?」

 

「何故言い直したのですか滅火さん!?桃ウサギではなく黒ウサギなのですよ!」

 

ウサ耳を逆立てて怒る桃ウサギではなく黒ウサギ。

十六夜も不思議そうに黒ウサギの頭髪とウサ耳を見つめて、

 

「く、黒ウサじゃなくて桃ウサギって言うのか?ならオマエは黒ウサギの」

 

「親戚ではあ・り・ま・せ・ん!というか黒ウサギって言いかけましたよね!?二人して黒ウサギを揶揄わないでください!」

 

「はーい」

 

「桃ウサギさんではなくて黒ウサギさんだったんですね。申し訳ありません、貴女の名前を間違えてしまうなんて」

 

十六夜は悪乗りだったが、滅火は本当に間違えたらしい。

言い直していたわけではないのですね、と苦笑する黒ウサギはハッとして思い出したように叫ぶ。

 

「もう、二人して一体どこまで来てるんですか!?」

 

「〝世界の果て〟までお姫様とデートしに来てるんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ。それとも妬いてるのか?」

 

「な、なんでそうなるんですか!?」

 

妬いてるのか、と勘違いも甚だしい十六夜の発言に怒る黒ウサギ。

いや、その可能性も無くはないが、それを知られては絶対揶揄われるに決まってるので誤魔化すことにした。

 

「そ、そういう十六夜さんは西郷さんとデートしてるのですよね?見た所、彼女は逃げようとしているように見受けられましたが、どうかしましたか?」

 

「いや何、お姫様の弱点を知ったからソコを攻め続けたら嫌がられて隠れんぼからの鬼ごっこに移行しつつあっただけだよ」

 

「~~~~~っ!!?」

 

十六夜がニヤニヤと笑いながら状況説明し、滅火はみるみるうちに顔を真っ赤にさせてスカートの裾を押さえる。

滅火の反応を見てピクリと片眉を上げて黒ウサギが言った。

 

「一体彼女に何をしていたのか、詳しく聞かせてもらって宜しいですかね?」

 

「別に変なことはしてないけどな。お姫様が俺の〝生き血〟を求めてきたからセクハラし放題の特権発動させてもらっただけだ。〝御食事〟中に胸を揉んだり、スカートの中に手を突っ込んで脚を撫でたくらいさ」

 

「何がくらいさ、ですか何が!ガッツリ変態行為に耽ってるじゃないですか!?じょ、女性の胸を揉む行為は許容範囲だったとしても、スカートの中に手を突っ込んだら駄目なのですよ!?」

 

ウガー!と顔を真っ赤にして激怒する黒ウサギ。

胸を揉む行為を許容範囲と言っていいのかも怪しいが、お互いの利害関係上では問題ないはずだ。

問題があるとすれば〝スカートの中に手を突っ込んで脚を撫でた行為〟だろう。

素足を晒さない格好の滅火が嫌がる行為100%で間違いない。

とどのつまり逆廻十六夜は有罪(ギルティ)である。

十六夜はわざとらしく肩を落として、

 

「つかお姫様は酷いよな。何でもしていいって言ってたのに弱点を攻めるのは駄目とかガッカリだぜ」

 

「⋯⋯⋯お、〝御食事〟中はやめてください!し、集中出来ませんのでっ!!」

 

「へえ?〝御食事〟中以外なら、弱点攻めても構わねえんだな?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あうぅ、」

 

顔を真っ赤にした滅火は、その顔を学ランで隠しながらコクリと頷いた。

どうやら弱点を攻める点に関しても問題ないらしい。

というより〝なんでもしていい〟と言ってしまったからにはNOとは言えないだけだろう。

言質を取った十六夜はしてやったりな顔をする。

尤も、〝弱点を攻める行為は御食事中禁止〟というのも守るつもりは更々ないが。

〝なんでもしていい〟と最初に言ってしまってる以上、後からルールを決めようがそれを犯したとてルール違反とはならない。

つまり、お姫様は〝なんでもしていい〟がどういう意味を示していたのかよく分かっていなかったようだ。

〝あなたの好きにしてください〟ということは、〝全てあなたに委ねます〟ということなのだから。

利害関係が成り立ってる以上、黒ウサギはこれ以上何も言う権利はない為、深い溜め息を吐いた。

だがふと、乾きかけていたはずの十六夜の体がずぶ濡れになっていることに気が付き小首を傾げて、

 

「と、ところで十六夜さん。どうしてまたずぶ濡れなのですか?」

 

「あん?⋯⋯⋯ああ、こうなったのは全部ソコでのびてるクソヘビのせいだ」

 

「く、クソヘビ?」

 

黒ウサギがキョトンとした表情で固まっていると、そのクソヘビもとい蛇神が鎌首を起こして、

 

『まだ⋯⋯⋯まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!』

 

怒りの咆哮を上げた。

黒ウサギはギョッと目を剥いて叫ぶ。

 

「蛇神⋯⋯⋯!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」

 

「お姫様とのお楽しみの最中にいきなりブチ切れて現れては俺に水ぶっかけてきてな。それだけでもイラついてたんだが更に『試練を受ける権利を与える』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。俺を試せるのかどうか試させてもらったのさ。結果はまあ、残念な奴だったが」

 

『貴様⋯⋯⋯付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』

 

「⋯⋯⋯さっきまで蛇さん、倒れてませんでしたっけ?」

 

『何か言ったか、小娘ェ?』

 

「ご、ごめんなさい!」

 

蛇神に睨まれて慌てて謝る滅火。

別段蛇神にたいして怖がってるわけではないのだが、失礼な事を言ってしまったことを申し訳なく思っているのだろう。

元の世界で〝新人類(同族)〟からありとあらゆる感情を込められた瞳を向けられてきたのだから。

十六夜はケラケラと笑う。

鈍いゆえに知らず知らずのうちに喧嘩を売ってしまっているお姫様に対して。

蛇神は咆哮を上げて竜巻く水柱を幾本も作り上げる。

黒ウサギはそれを見てハッとして周囲を見回し、戦いの傷跡らしき惨状に目を止めた。

捻じ切れた木々が散乱しており、あの竜巻く水柱によって起きたモノだとすぐ理解して叫ぶ。

 

「十六夜さん、下がって!」

 

黒ウサギは庇おうとするが、

 

「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が()()()、奴が()()()喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」

 

十六夜の鋭い視線と本気の殺気が籠った声音が阻む。

黒ウサギも始まってしまったゲームには手出し出来ないと気付いて歯噛みする。

十六夜の言葉に蛇神は息を荒くして応える。

 

『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』

 

「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。()()()()()()()()()()()()

 

傲慢極まりない台詞を吐く十六夜に、黒ウサギも蛇神も呆れて閉口した。

 

「フン―――その戯言が貴様の最期だ!」

 

蛇神は今までの非ではない巨大な竜巻く水柱を作り上げる。

竜巻く水柱三本を融合させて作り上げたソレとは別にもう二本程竜巻く水柱を作り上げた。

まず巨大な竜巻く水柱を十六夜に向けて放つ。

 

「十六夜さん!」

 

黒ウサギが叫ぶが時既に遅し。

巨大な竜巻く水柱は容赦無く牙を剥く蛇の如く十六夜に襲いかかり―――

 

「―――ハッ―――しゃらくせえ!!」

 

それを十六夜は腕の一振りで薙ぎ払った。

 

「嘘!?」

 

『馬鹿な!?』

 

驚愕する二つの声。

既に彼のデタラメ加減を見てきた滅火は今更驚くこともなく―――

 

「⋯⋯⋯蛇さん?なんか残りの二本の水柱が私に向かってるような気がするんですが⋯⋯⋯?」

 

しかし蛇神は全霊の一撃を弾かれた為放心状態であり、それどころではない。

十六夜は一瞬それらの竜巻く水柱を薙ぎ払ってやろうかと思い―――やめた。

これは丁度いい機会だと、十六夜は笑って、

 

「お姫様の力も是非見せてほしいな」

 

「へ?」

 

「俺の力は散々見せてやっただろ?な?少しくらいいいじゃねえか」

 

軽薄な笑みを浮かべて言うこの男は、助ける気ゼロのようだ。

滅火は苦笑いした後、透き通るような白い右腕に、己の牙のような犬歯を突き立てた。

 

「「『―――⋯⋯⋯は?』」」

 

素っ頓狂な声を洩らす三人。

そりゃそうだ、いきなり自傷行為に走ったお姫様を見たのだから。

ボタボタと犬歯が突き破った右腕の傷口から血液が溢れ出して地面に零れ落ちる。

そうこうしている間に二本の竜巻く水柱が滅火を呑み込もうと襲ってきていた。

 

「滅火さん!―――ッ!!?」

 

黒ウサギが叫び声を上げると共に、ゾッと背筋が凍る感覚に襲われる。

()()()()()()()()()()()()()を妖しく光らせながら、二本の竜巻く水柱を見つめて犬歯を剥いて笑い、

 

「―――〝裂きなさい〟」

 

滅火はそう命じながら、指をパチンと鳴らした。

その刹那、地面に出来た血溜まりはまるで意思を持つ生き物のように蠢き―――無数の刃となって二本の竜巻く水柱を八つ裂きにして雲散霧消させる。

 

「『なっ!?』」

 

「へえ⋯⋯⋯!」

 

驚愕する二つの声と、楽しげに笑う十六夜。

一方、コレをやってのけた滅火はというと、

 

「⋯⋯⋯へ?」

 

一番驚いていたりする。

血流操作にではなく、問題はそれを行った際に生じた速度の方にだ。

何せ―――()()()()()()という馬鹿げた速度を叩き出していたのだから。

滅火の最高速度は、第一宇宙速度を優に超えた程度でしかないはずなのに、まるで十六夜みたいに―――

 

「(⋯⋯⋯ッ!!そ、そういうことですか!私の力が逆廻さん()()になったのは、逆廻さんの血中粒子を()()()()()からなんですね!)」

 

つまり、取り込んだ十六夜の血中粒子を使()()()()()まで、彼と同等の力を手にしたということだ。

滅火はなるほど、と納得して手を打つ。

ちなみに、彼女は決して馬鹿ではない。

両親があまり屋敷から出してくれない為、世間知らずで知らないことが沢山あるだけで賢かったりする。

天然気質とか鈍いのはまあ置いとくとして。

呆けている蛇神に紅く妖しい光りを放つ瞳を向けて、滅火が悪戯っぽく笑い、

 

「さっきはよくもやってくれましたね、蛇さん?」

 

『ヌッ!?』

 

「これは仕返しです。文句は受け付けません」

 

『何が―――グッ!?な、これは!?体が、動かんだと!?』

 

「え!?」

 

黒ウサギは驚き蛇神を見る。

さっきの血流操作といい、まさかと思い滅火に視線を向けると、彼女はニッコリと笑って、

 

「蛇さんの血液の流れを鈍くしました。これで貴女は思うように動けませんね。というわけで、後はお願いします―――逆廻さん」

 

「あいよ」

 

十六夜はヤハハと笑って地面を踏み抜き蛇神の懐に跳び込んだ。

本当は滅火の力で蛇神が拘束されているこの状況に異を唱えたいところだが、彼女のまるで()()()みたいな能力が見られたことに免じて、許してやることにした。

蛇神は身動きが取れない状況に加え、己の全霊の一撃を容易く凌いだデタラメ人間の接近に悲鳴を上げそうになる。

 

『ちょ、待っ―――』

 

「待てと言われて、待つ奴はいねえ―――よッ!」

 

メスだと分かっていながらも遠慮無用に蛇神の腹を蹴り抜く十六夜。

まあ、手加減はしてはいるが女の子(?)の腹を蹴るとか容赦ない男である。

 

『グワァアアアアアアアアアア―――ッ!!?』

 

十六夜に蹴り上げられた蛇神は、断末魔のような声を上げながら湖に落下していった。




次回で飛鳥達と滅火達が分かれて行動してる話を終わらせたいですね。

それにしても黒ウサギは一体何を見て背筋を凍らせたんでしょうね?滅火らしからぬ笑み?それとも彼女の既視感ある瞳?
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