乙女ゲーの人類の敵予定の最凶サイコパス『氷の貴公子』が、悪役令嬢の為に主人公達の敵となったらどうするんですか? 作:麺抜きうどん
「雪月花」
絶世の美青年が振るった大鎌が大気に溶けると共に、弧を描く冷気は通り過ぎた全てを白く染めた。
一切の染みを許さない、何処までも無慈悲な純白の園。
霜で作られた真白の花畑はその下に、貴族へと反乱を起こした憐れで愚かな貧困層を苗床としている。
其処には一瞬前まで確かに存在した、生命の熱量は何処にも確認出来ない。
下賤を唾棄する高貴なる血族へと叛乱を起こした暴動者の群れは、一瞬にして、そして永遠に眠りへとついたのだ。
王国の秩序の守護者、精霊の寵児、エルフを継ぐ者、戦争の英雄、無慈悲なる正義、そして────氷の貴公子。
後数秒あれば青年へと届き得た剣を突き付けているのは、先程まで暴動のリーダーとして先頭に立っていた少年。
彼はこの王国における少数民族の特徴を持っていた。
とはいえ、その身体が動くことはもう二度となく、青年が自ら刺さりにいかない限りは、刃が氷の貴公子を貫くことはない。
「これはアルデヒド族…。エイセットの知り合いだったか?」
青年は左側に立った従者たる黒髪の女、エイセットに問う。
「いえ…。アルデヒドの恥晒しです。アルデヒドの喜びは
「そうだろうな」
少年と同じ少数民族の特徴を持つエイセットは明らかに動揺し、絶命して尚、
「身の程を知らないからこうなる」
エイセットの主君である青年、ユイ・グランセーシュは眼の前の氷像を蹴り倒した。
嘗てエイセットを姉と呼び慕っていた少年であった氷像は────砕け散った。
自身の足元に転がって来た少年の頭部と目があったエイセットだったが、貴族達の大歓声の中自宅へと帰ろうとする主人の背を追って、笑顔を貼り付けて小走りで駆け寄った。
「不満か?」
「いえ…。私は裏切りませんから、どうぞ御側に」
青年と従者の会話はそこで終わった。
事は数十分前に遡る。
突如発生した想定外の暴動に、絢爛豪華なパーティに参加していた貴族達は浮き足立ち、各々に口を開く。
「難民達が!! 難民達が暴動を起こしたぞ!!」
「別に生きてくれと私達が頼んだ訳では無い。勝手に生きているのを黙認までしてやった。その恩を返す能力がないのは知っていたが、恩を返そうとする心さえ無いとは。
生かして頂いているという事実への理解があれば、暴動など起こせないだろうがっ!!」
「難民だけ…にしては数が多過ぎる。どうやら、スラムのゴミ共も混じっているようだ。少しは見逃して
「焼畑のカシュ家ともあろうものが、焼き遺しですかな? この後
「イドロミール侯爵、とう見る?」
「ところでアウスレーゼ公爵閣下。我が領では久し振りに良い茶葉が出来ましてな…おお閣下、失礼致しました。確かにそんな場合では無いかも知れませんね。────どうやら、このイドロミール。この程度の有象無象など御茶の話をしながらでも対処出来ると思い上がっていたようです。」
「火薬筒で武装しているようですね。…テキラ共和国の支援でしょう。アガブエ人共が…いや、今はそんな事は考えている場合じゃあありませんね」
「軍はどうなっているんです!!」
「外国人から国を護るのが軍人の役目でしょうに」
「一部離反!?
「女を早く後ろに逃がせ!! こういった手合いに捕まったらどうなるかわかるだろう」
「高貴なる血を穢させる訳にはいかぬ」
王国最大の舞踏会場に集まった貴族達の視線の先には、貴族の生活と自身の生活の格差を許せない難民達の群衆───否、軍衆があった。
此処に来るまでに、裕福な商家や官史の家が幾つも襲われている事は想像に難くない。
国の宝である優秀な人々を傷付け、汚し、命を奪う脅威が目の前にあった。
前提として、この国では全ての国民が無条件で宝ではない。
優秀な国民は宝であるが、そうでない国民は廃棄物でしかない。
優秀な人間を見捨てる愚は犯さないが、優秀で無い人間を助ける程には愚かでもない。
優れた者だけの集団の中にも新たな優劣は残るが、それでも他の集団との優劣には勝利出来る。
そうやって、他国を優越する優秀な人材を選別して培養し続けることが、この国ゴールドグレイルの国風であった。
チート染みた前国務尚書によって、この王国は急速に高度化・複雑化・高速化・並列進行化が進められており、四割の国民が救う価値もない無能の烙印を捺されているが、その四割がいなくても国家は残りの六割で十分に回せている。
いや、回せてしまっているのだ。
底辺層から搾り取らなくても、底辺層の力がなくてもそれらを無視して…、いや廃棄物と見做して、中流と上流の層だけで利益を生み出せる社会が完成していた。
地球においてはPCや機械により、優秀な人が時間当たりに一人でやれる事が多くなった結果、個人の能力差による成果の差が明確に大きくなった。
その結果、求められる基礎能力も技能も高水準となり、それについていけない人々が乖離して沈殿した。
そして乖離して沈殿した人々が、再び水溶しようとするも、水溶液の量も温度も低下した中では、溶け込もうにも溶け込めない現実があった。
挙げ句に、
この世界には魔法が存在しており、その力の差によって個人に出来る事に大きな差が存在するため、人力をカバーする重機やスマートフォンの様な携帯高速情報網が存在しない世界にも関わらず、優れた人々だけで回せる社会が構築されつつある。
底辺層の労働力が無くても社会が発展出来る根本的な原因は、魔法と精霊の助力にあった。
上級貴族による魔法や精霊魔法によって成り立つ事があまりに大きい故に、「国は俺達労働者が支えている」と底辺層が主張することは許されない。
上流層が大きな仕事をして、中流層が維持して、下流層はそれらに引っ張って貰い、底辺層は無視か排除されるという流れは、人と物と情報の移動が高速化して、機械力とソフトウェアが発達した現代日本と似ている。
個人の先天的な能力によって、国家に与える影響力に差がありすぎるのだ。
日本であれば、法務省の矯正統計という資料において、低学歴や犯罪率が高いのは建築業界だが、建築業界そのものはなくてはならないし、建築業界でもゼネコン大手本社の正規社員であれば、高学歴な上に、本人だけでなく両親に遡っても逮捕歴が無いのが普通だ。
そして何より、労働力として人の数が集まらないと仕事にならない現実は無視できない。
よって社会インフラで現場の末端労働者として働く者達は、学歴や前科が問題があったとしても、その働く環境は保全される。
しかし、この世界では魔法によって、大規模なインフラこそ、僅かな人間によって支えられてしまうのだ。
魔法を持たない平民百人が一日かけても終わらない仕事を、貴族の少年が寝起きから朝食までの間に終わらせてしまえる。
一人の意思によって、大人数で作業する際の認識のズレも起こさず遂行されてしまう。
低学歴や前科持ちの受け皿となるはずの、多くの社会インフラ職から、問題ありとされる人々を排除する理由は出来てしまっていた。
切り捨てられる下位四割には、ほんの僅かではあったが、現代日本から転生した底辺前世持ちも含まれていた。
現代日本で底辺であっても、この世界では賢い方になれる…訳ではないというあたりに、かなりのスペックが要求される社会であるのは間違いない。
そういった日本人の中では底辺付近であった彼らは、この世界でも駄目なやつと蔑まれて、嘲笑されて軽んじられた結果、他の民衆と共に暴徒の波へと加わっている。
即ち、廃棄物の一部として暴走しているのだ。
廃棄物が宝を壊し穢している今を、貴族達は許すつもりは到底なかった。
一度暴徒となった者は、最早既存の秩序では『悪』となった自分を肯定するためには、『この社会の秩序の方が悪』と思うしかなく、そしてその思い込みが更に凶行を持続させることになる。
要は、“開き直り”である。
犯罪者の烙印を捺された者はその後、正常な人々も多くいる社会の中から、わざわざ選ばれる事はなくなる。
それは当たり前のことではある。
前科のある者とない者からどちらか一人、従業員を選ぶのなら当然答えは決まっている。
そして、それによって前科者は更生の機会を諦めてしまう。
本来は赦される赦されないに関わらず、罪を反省して償うのが罰の目的ではあるが、モラルの低い人々はどうせ赦されないのなら反省するメリットがないと考えてしまうのだ。
尤も────そのようなモラルの人々だからこそ、そもそも犯罪者となるのだが。
これが所謂社会復帰の困難によるドロップアウト問題だが、単純にして明確な解決方法がある。
彼等を処分して、
消してしまえば、更生するかしないかを考えなくてよくなる。
死体なら再犯率は“ゼロ”だ。
「我が精霊よ!! 来たりて、俯瞰し、勝利せよ」
「私の契約精霊にも、お願いしましょう」
暴動に対して最初に動いたのは、上級貴族達だった。
柔らかな雰囲気ながらも鋭い目付きの長髪の男性と、正装をしていても何処か研究者としての雰囲気が漏れている男性が、己と契約した精霊を喚び出した。
貴族は全員魔法を使えるが、その中には精霊と契約している者も少なからずいる。
そして、その精霊の中には戦闘に有意な種類や個体が存在し、こういった場面で契約のもとに助けに来てくれる。
上級貴族達は冷静に、自身と契約した精霊を現界させる。
顕れるは、幾つもの刃を組み合わせた様な蜘蛛と、樹皮の無い琥珀の樹木。
「シャァ」
高さ三メートルの蜘蛛の脚から、前方へと拡がる糸が、有
民衆達は触れると同時に切断されていく。
痛みによって止まろうとしても、後ろから押し寄せる仲間達によって有刃鉄線の餌食となっている。
そして、蜘蛛から糸が切り離されると、次は樹液を滲ませた木の枝が静かに伸びて、糸の端へと触れた。
突如、糸と触れた者達からバチバチと弾ける音がして、焦げた臭いが漂う。
「押すなぁっっ!! あ”あ”ぁ” 腕がぁ、俺の腕がぁぁ!!」
「止まれ!! 止まるんだ!! 音と臭いが分からないのかっ!!」
「何でだよ…。どうして俺には魔法も使えないのに、こんなファンタジーが許されるんだよっっ!!」
鋭利なワイヤーによる被害者の悲鳴、感電音と臭いによって民衆の足は一瞬止まった。
それを貴族達は見逃さなかった。
戦闘に特化した契約精霊を持たない貴族達も、今回の暴動に与した者が再び叛乱を起こす可能性を徹底的に“ゼロ”にすべく、治安と平和と安定の為に、誇りをもって殺傷性の高い魔法を放った。
足止めされた民衆を魔法が襲う。
「死ね、愚民共!! 喰らえスラッシュバーン!!」
「アシッドデュフューザー。劣った者として生まれてきた自覚があるのなら、大人しくしておくべきでしたなぁ」
群衆が区画単位で焼き焦げたり、硫酸で溶けたりしている。
僅か百名にも満たないパーティに参加していた貴族達は、スーツを汚す事さえなく、万に届きかねない難民達を退治している。
魔法というあまりにも強力な武器と、あまりにも効率的に敵を排除し得る頭脳は、圧倒的な人数比に抵抗し得た。
魔法具の一振りで、一度の精霊への嘆願で、容易に難民達の命は潰える。
それは暴徒である難民を倒すのは貴族達にとっての正義であり、貴族達の表情には欠片も罪悪感は存在しない。
それでも群衆は徐々に前進へと移りつつある。
…このまま止まっていれば、進んで来た全てが無駄になってしまうと。
前にいる者を有刃鉄線に押し付けて、火への盾として、喉と肺を酸性ガスで傷めながらも、前へと進んで行く。
人々の暴走は止まらない。
その理由は明白だ。
何故なら、魔法を受ける群衆よりも、仲間を乗り越えて押し寄せる群衆の方が明らかに多かったから。
眼の前の誰かが犠牲になっても、自分が刃や炎や硫酸の盾とならない限り、もう後がない民衆達は前へと進む足を止めなかった。
普段は魔法を持たない故に貴族の下位互換とされる民、その民よりも更にカーストの低い難民は、富裕層にとっては見付けたら憲兵に報告して対処してもらう程度の存在でしか無かった。
野犬を見付けたら保健所に報告するのと同じ感覚で、それは行われてきた。
しかし今、貴族達は暴動を起こした難民や貧困層達に対して、秩序を乱した者に対する大いなる怒りと、それに匹敵する恐怖をも感じていた。
多くの女性や年少者が逃げる中、難民達を見据えて冷たい蔑視と怒りを讃えた瞳を向ける女性がいる。
その美しい容姿に、彼女を視認した難民達は逃がしてなるものかと、隠しもしない獣慾を向けていた。
その彼女の前を遮るように、人間離れした美しさを持つ青年が一人立っていた。
「雪月花」
人外の美を持つ青年──ユイ・グランセーシュ公爵は、見るものを凍て付かせるような冷酷なる視線を難民に向けると、そこに最初からあったが如く顕れた、鋸刃の大鎌を振り抜いた。
水面を拡がる波紋の様に、振り抜いた大鎌の延長上にあった全てが、白く、白く、白く氷原へと染め上げられていく。
区画ではなく一面を。
一面でなく全面を。
床も壁も草木も、蜂起した群衆達も区別無く、白く白く染め上げられていく。
永遠の眠りを与える、冷気の帳を静かに下ろす。
──何処までも、何処までも残酷に。
そんな彼へと、先程の美しい令嬢が声をかけた。
「ありがとう。人間達を護ってくれて」
「そのつもりは……、いや、好きに解釈するといい」
ごく自然に
彼女は女性向け恋愛シミュレーションゲーム(通称:乙女ゲー)メルティネクターの悪役令嬢。
そしてユイ・グランセーシュは、この乙女ゲー世界の人類滅ぼそうとする一人目の魔王である。
「それにしても…、防衛戦も御出来になるのですね」
「これを見てそれを……、…いや、分かって言っているのだろう」
声というよりは音色の様な、聴く者を深層から魅力するソプラノボイスで青年は答える。
ユイ・グランセーシュは侵略戦争の名手として有名だった。
始祖たるのポンシュ・グランセーシュの代から、グランセーシュ公爵家は侵略戦争といえば名前が挙がる程の家系だ。
ただ、防衛戦成功に必要な力の本質は、侵略戦争を達成するための力と何一つ変わらない。
即ち、死と恐怖と痛みと絶望を敵対者に与える暴力だと、聡明な令嬢も理解していた事を青年もまた理解していた。
氷の貴公子ユイ・グランセーシュ。
幾度と王国の為に侵略戦争を成功させた英雄として名高い、原作主人公達の敵となる、人としては作中最強のキャラクター。
今まさに、敵の完全殲滅という最も完璧な手段で防衛戦を成功させた青年である。
失踪した父親から引き継いだ地位・権力・財産、人間の域を超えた美。
人々の格差の原因は、親から引き継げる財産ではなく、親から引き継げる才能であることを、存在そのもので証明している天才一族の生まれである。
ゲームの中の女性達は勿論、プレイヤーにも人気がある彼は、精霊達の安寧の為に人類を滅ぼそうとするサイコパスだ。
彼は南方の国を完全鏖殺してゴールドグレイル王国の領土を拡げた英雄でもあり、彼の父親であるジークフリート前公爵はゴールドグレイルの近代化の立役者でもある。
優れた能力と明確な実績は、確かに王国に益を出し続けた。
故に、ユイが内心で人間という種そのものを見下していたとしても、そしてそれが発覚したとしても、彼が本格的に人類の敵となるまでは、王国貴族達は主人公達よりもグランセーシュ側の肩を持っていた。
それに、そもそもとして、平等と弱者救済を掲げる原作主人公達は、『優れた者を基準とせよ。劣った者は選べ。優れた者を目指すか脱落を』を是とする王国貴族とは相容れない存在であり、王国貴族が主人公達を邪険にするのも間違ってはいないのだ。
高速で複雑な社会では脱落者が多く発生するが、王国貴族の多くは、社会の発展の犠牲としてそれが必要と考えるだけでなく、着いて来られない人々を切り捨てる事そのものに、洗練の喜びを感じている。
収穫の効率化の為の間引きを喜びながら、間引かれる良質ではない芽が排除されることにこそ、更なる喜びを感じているのだ。
王国貴族が優勝劣敗を掲げ、平民には貴族に逆らう能力がない。
逆らったとしても、今回のように潰される。
当然、原作主人公達の発想は、力ある者達の中では主流派足り得ない。
貴族には弱者を切り捨てない理由がない。
貴族達にとって、淘汰は目的としても手段としても正しいのだ。
『馬しか通らない道は短い』という諺がこの世界にはある。
誰もが馬に乗れるのなら、道路は馬の速度で進めるが、そこに馬に乗れない人がいると、歩く人の速度で道が詰まってしまうという意味だ。
馬に乗れない人を自分の馬に一緒に乗せるとしても、それは精々家族までの話で、他人まで乗せる余裕は馬にはない。
馬に乗れず、馬に乗れる身内もいない者は、道路の閉塞物となってしまう。
この言葉は、遅い人間に合わせるとそこがボトルネックとなり、全てが停滞するという使い方をされている。
遅い人を待っていては、全体が遅れてしまう。
王国には待つ余裕はあるが、待たなければ更に他国を引き離して先へと進める。
一方的にして圧倒的な優越が経済・安全保障等、様々な利益を確定させる以上、それ以上のメリットが示されなければ遅れる者を置き去りにしない理由がない。
自分より圧倒的に強い国は忖度はされるだろうが、対等や格下の国家相手には謙る必要性さえ無くなる。
他国との平行は相手に付け入らせる理由にしかならないが、他国に対する優越は、他国の優秀な人材を流入させる理由にもなり、格差を更に拡げられる基盤にもなり得る。
この王国はそういった社会であり、難民や貧困層や無能を含めた平等な社会を主張する原作主人公達の発言を聴き入れる者はいない。
そんな原作主人公達の発言権を高めるのが、ユイ・グランセーシュという
原作主人公達に倒された、ユイ率いるグランセーシュ騎士団の評価は一変した。
最強の精鋭集団から、最悪の虐殺集団へと。
グランセーシュ公爵家の騎士団は、元々はその強さと異民族を
そして異民族を鏖殺することに関しては、騎士団にとっては経験値を徹底的に稼ぐ事が主目的ではあったが、貴族達からは別の理由で異民族の鏖殺が受け容れられていた。
その理由は大きく二つだ。
一つ目は短期的な問題で、奴隷として異民族がゴールドグレイルに定住することで発生する問題だ。
主人の下から逃げた奴隷は、もう日の当たる場所では生活出来ない。
そうなると、自分達を此処まで追い込んだ『この社会の秩序の方が悪』と考え始め、正義面をして犯罪を犯す者となる。
結果犯罪者となった彼等は、その地域の治安を落とすことになるのだ。
二つ目はゴールドグレイル国民の殆どを占めるスペリア人と、異民族の混血が拡がることにある。
流れとしてはこうなる。
先ず最初に奴隷として、国内に異民族が存在するようになる。
ここまでは異民族は奴隷というカーストにあるため、問題を起こした際や不都合があれば、本気で駆除するつもりなら
しかし…混血が発生してくると、そこに変化がうまれる。
混血が一般化するまでに広まると、混血達は自分達のルーツのもう半分である異民族の血にも、スペリア人同様に価値があると認められるべきと主張し始める。
自分の半分は劣等種の血が流れる半人前ではなく、どちらの民族の血も立派であるから一人前だと主張するのだ。
そうなると、異民族はもはや奴隷ではなくスペリア人と対等に扱わなければならなくなる。
そうなった時に、民族単位でスペリア人より異民族の頭が良いか悪いかで、それぞれ別の問題が発生する。
異民族が遺伝的にスペリア人より優れた知能を持っていた場合、公正に勝負をした結果、異民族の人間が競争に勝ち、ゴールドグレイルの上層を握ってしまうことになる。
こちらはまだ良い。
スペリア人は己より優れた人々に、時間や気を使う事に抵抗感がないからだ。
人類の上位種としてユイが君臨しようとした時、ユイの特別に高い能力を知る者はそれを受け容れた。
ユイが精霊として人間を見下しても、ユイがその他全ての人間よりも優れているという理由で、貴族達はそれを受け容れた。
ユイが己以外の人類を滅ぼし始めるまで、貴族の多くが、ユイが他の人類を下位存在と見做す事を当然だと感じていたのだ。
異民族が遺伝的にスペリア人より劣った知能を持っていた場合は、公正に勝負をすれば異民族は負け続け、法的には対等であるにも関わらず、現実には能力差から競争に負け続けた結果、異民族は公正な競争の中からドロップアウトする。
優れたステータスとスキルを持つ者だけで構築された多様性で充分だと考えるゴールドグレイルにおいては、彼等が認められる場所もない。
結果、正規の手段で正々堂々と勝負をしたら勝てないから、違法な手段を選ぶ────即ち犯罪者になる者が増えるのだ。
そして混血が発生する事で起きる問題は更にある。
精霊魔法を使えるのはゴールドグレイルの貴族だけであり、即ち精霊魔法とは、スペリア人の上層部の特権であり、象徴であり、アイデンティティであった。
精霊魔法とスペリア人の容姿的特徴は、他国にも極めて関連深く認識されており、魔法を使えるのはスペリア人だけという印象を持たれている。
しかし、混血の者も精霊魔法が使えるとなると、精霊魔法をスペリア人が独占している認識が擦り減ってしまう。
それはゴールドグレイル王国の貴族の権威と誇りを、大きく傷付けるものであった。
そして権威と誇りというものは、形が無い故に持たざる者にはその価値を実感出来ないが、持った事がある者は人脈の生成と、相手との対人パワーバランスにどれだけ影響があるかを知っている。
異民族を受け容れて、混血が発生すれば、その権威を失う事となる。
────だから最初から異民族を鏖殺しておけば、そんな問題は起きない。
要は再犯予防と同じ考え方である。
要るのか要らないのか分からない
不要
犯罪者が出れば消して、犯罪者になりそうな者も予め消す。
即ち、
そして、それが可能な者がいたのだ。
秩序の上でもスペリア人を勝利させて、秩序の外から来る暴力の上でもスペリアを勝利させる英雄、ユイ・グランセーシュが。
少なくとも王国貴族の中ではこの理屈が、主人公達がユイ・グランセーシュを打倒するまでは正しかった。
それは、優秀かつスペリア人である者が成功する為の、ある種の残酷なまでに緻密な想定された合理性によるものだった。
ゴールドグレイルでは、優秀でなくても、スペリア人でなくても成功は出来ない環境が作られている。
それによって優秀でないスペリア人を徹底的に淘汰することにより、残ったスペリア人は基本的に優秀となった。
確かにスペリア人の中にも優劣のピラミッドは存在する。
スペリア人で構築されたピラミッドは、定礎の標高自体が、他民族のピラミッドより高い。
そしてその事が明確な事実として存在するが故に、スペリア人はスペリア人以外を対等な人間とは認めない。
知能も魔力も容姿も運動能力も上ならば、秩序の上での勝負で勝ちやすい。
そして、新たな秩序の為に、既存の秩序を破壊する暴力は完全に防がれている。
ならば、完全下位互換となる他民族に、敬意など持つ必要性が生まれないのだ。
構成員全員が有能なら、指導者が有能でも無能でも成果は出るが、指導者までもが有能なのがゴールドグレイル王国という国家だ。
古代の
エルフは選ばれた者だけでの多様性で成功した。
花屋には様々な種類の花があるが、どれも鑑賞用として評価されている種を、人工的に丁寧に管理して育てたものだ。
花屋に置かれている時点で、その全てはエリートであり、エリートだけでの多様性が完成している。
ホトケノザやアワダチソウ等の野草や、奇形や虫食いのある花では商品になり得ない。
カードゲームにも下級モンスターは存在するが、トッププレイヤーのデッキに入った下級モンスターは、ステータスか効果が優れたものばかりであり、ステータスも効果も冴えない下級モンスターは、下級モンスターとしてデッキに含まれる事さえないが、それで何か問題がある訳ではない。
エルフ文明は、先天的に明確に劣る人間達だけを隔離して繁殖させた結果、今に残るゴブリンというモンスターを生み出してしまった上、純粋なエルフは途絶え、御伽噺として残るのみだが、北部の第二首都と呼ばれる都市では、エルフの血の名残を持つ者が多く、その全てが上級貴族として生きている。
スペリア人は異民族と、劣ったスペリア人に冷たい。
スペリア人であること以外に、優れた点を持たない者は、スペリア人の恥晒しとして扱われ、迫害されてきた。
その結果、生き延びて現存するスペリア人の多くが、異民族よりも優秀である。
優秀でなければ、人として扱われ育まれる事も無かった歴史の結果だ。
その民族である事以外に自分達に誇れる者がない劣等感からなる民族主義的差別ではなく、事実として競争すればほぼ毎回勝つという事実による統計的差別が蔓延しているのが、ゴールドグレイルの貴族社会である。
感情論ではなく統計的事実により肯定される差別は、感情論によってしか反論することが出来ないため、理論で打ち崩すことは極めて難しい。
原作主人公が幾ら真剣に平等を叫んだとしても、事実として証明出来る能力差は、汎ゆる記録から根拠と出来てしまい、「少なくとも能力と成果においては平等ではないのに、その対価だけを平等にするのは、それこそ不平等ではないか?」とどの貴族であっても即座に反論が可能だ。
ゴールドグレイルにおける差別や軋轢の最大の困難とは、平等を求める者に対して、「でも君が僕に勝てる事なんて、何一つないでしょ? 違う?」と
前国務尚書によって、国内の移動や就職が自由化・高速化された事により、優れた者は自らの所属する地域や業界の貧困や苦痛を解決するよりも、貧困や苦痛の無い地域や業界に移る方が合理的となった。
かつてなら反乱のリーダーとなれる能力があった者は、官僚の試験を受ける事に力を傾けるようになった。
優れた者ならば体制側に回れる手段が示されたからこそ、体制に立ち向かえる程に優れた者達は、体制の側に付く事を決めたのだ。
必然的に、国家に反発する者は、国家で成功する見込みのない無能が揃うこととなる。
親や先祖がどうといった、自分ではどうにもならない仕方がない事によって、優秀であるにも関わらずチャンスが与えられない社会ではなく、国務尚書の地位にいたユイの父親であるジークフリートによって、機会が与えられた上で能力によって区分されるシステムが導入されている。
故に、「自分ではどうにもならない」という、言い訳が封殺されている。
貴族は魔法が使えて、非貴族は魔法が使えないという特性はあれど、貴族は貴族の枠組み内で、能力と実績によって階級が変化し得る。
だからこそ、婚姻相手として望まれる条件は、伝手を作る事よりも能力重視となる。
身長や知能や運動神経や顔など、努力や気持ちでどうにもならない先天的な要素こそ、子供への遺伝子提供者として重要視して求められる。
故に、上級貴族である者は、基本的に優秀な人間の血を重ね続けた遺伝子エリートなのだ。
女性であっても職を得られ、自由恋愛が認められつつあるゴールドグレイルでは、出生率は低下しつつあるが、代わりに質は上がり続けている。
現代日本の少子化の明確な原因は未婚者の増加であることは疑いないのだが、未婚化の原因は収入とはほぼ全く関係がない事が分かっている。
結論から言えば、「お前が結婚できないのは、貧困ではなく非モテだから」ということだ。
年収が600万円を超える男性は結婚相談所にゴロゴロ登録されているが、多くが余ったまま終わってしまう。
結婚相談所だけでなく、マッチングアプリにおいても堅実な仕事で十分な収入もある男性が余り続けている。
逆に年収が低くても爽やかなイケメンであれば、女性達の方から申し込みが舞い込んでくるし、会話も女性側から積極的に振られる。
ここまでいえば分かるだろうが、少子化の最大の原因は男性の収入が問題ではなく、不細工な男性と無理に結婚しなくても女性が生きていける事に起因する。
「無能な政治家のせいで貧困だから結婚出来ない」と主張する者が結婚出来ない理由は恋愛出来ないことにあり、恋愛出来ない理由は非モテであることに由来する。
結婚しない者の多くは、結婚出来ないだけなのだが、その原因は貧困ではなく分不相応な高望みにある。
それは、仕事がないという話と根本は同じである。
本当に言葉通りに仕事がない訳では無い。
本当は仕事そのものはある。
キツく汚く給料が安く軽んじられる、所謂底辺職は幾らでも働き手を求めている。
選ばなければ仕事はある。
ただ、『条件が良くて、それでいて己を採用してくれる仕事』が無いだけだ。
誰だって、高い学歴を手にするだけの能力を持っていれば、態々底辺職等選びたくない。
結婚も同じようなもので、『スペックが高くて、それでいて己を選んでくれる異性』との結婚が出来ないだけで、底辺の相手でも誰でも良いので結婚をしたいのなら、それは何一つ難しいことてはない。
そして、恋愛におけるスペックというのは、
また、無職は増えないのに未婚者が増える原因は、働かなくては生きていけないが、結婚しなくても生きてはいけることにある。
これは生活保護やベーシックインカムなど、働かなくても生きてはいけるようになると、無職が増えることになるし、逆に結婚しなくては生きてはいけない社会になれば未婚者は減る事を示している。
自分の性能が低いのに、性能の高い相手を求める事で結婚出来なくなるのが、未婚者増加の最大の理由であり、未婚のままでも生きていける事が、未婚者増加への根本的な対処が出来ない理由となる。
簡単に纏めると、自分は非モテなのに美しい容姿の相手と付き合いたい。
でも不可能だからそれなら一人で生きていく。
別に結婚しなければ生きていけない訳では無いのだし。
といった理由が未婚の根本的にして大体的な理由だ。
結婚出来ない者が存在する理由は、実は政治のせいでも貧困のせいでもないという事実は、あまりに残酷に過ぎるため、一般的には黙殺される。
しかし、デメリットだけではなく、魅力のない男性の遺伝子が淘汰されていくことで、若い世代になる毎に更に賢く強く美しい者達が生まれてくる。
少子化の本質は“選べる者か選ばれる者しか結婚出来ない”ことにあり、それは生まれてくる子供達が、余り者でない両親から遺伝子を受け継いだ遺伝的エリートとなるメリットでもある。
そうして生まれた新しい優秀な世代は、古い世代から魅力的に思われるが、新しい世代は古い世代に魅力を感じない。
その為に古い世代は新しい世代の人々の多くに魅力を感じるが、その新しい世代には相手にされないので、必然的に余っていく。
そうやって古い世代の切り捨てる事は一見未婚者の増加に繋がるように見えるが、実はその古い世代は若い時に同世代を捕まえられなかった余り者なので、自由恋愛市場では元から参加権のない人々であり、数理的には考慮しなくても良い。
ではどうすれば少子化は解決されるのかという一つの解答は、一夫多妻制である。
イケメン達が女を独占して、非モテ勢から税金を巻き上げて、イケメンと結婚した女の子供達に割り振るのである。
こうすれば少子化の問題も、不倫の問題も起きない。
大勢が価値があると認める人が、唯一人に独占されるからこそ、それ以外は不倫とされてしまう。
不倫をする女性は、妻子を持つ男性が好きなのではなく、好きになる男性は元から魅力的で、そういった男性は当然売約済みの可能性が高いというのが事実なのだから。
ゴールドグレイルは合理主義故に、自由恋愛が認められつつあるのならば、当然一夫多妻制をも全面に打ち出すべきだったのだろう。
それが何故一般的でないかといえば、その答えは身も蓋もない。
…それはこの世界が『恋愛シミュレーションゲーム』の世界だからである。
『運命の相手』にとって、原作ヒロインが唯一無二の特別でなければならない以上、一夫多妻制が当たり前であっては困るという都合である。
それ故に恋愛競争は激化した。
ユイは男性の中でもトップクラスの倍率である。
貴族だけではない。
国家が制度として、歴史として、文化として、風習として、低スペックを切り捨てて、民衆達も意識的に低スペックを切り捨ててきた。
これは『メルティネクター』ではモブキャラでもビジュアルが良かった設定のこじつけになっている。
ゲームとしては敢えて不細工を描き込む必要がないから、モブキャラも美形にしていただけだったが、この世界では不細工が急速に人為淘汰されていく事で、モブキャラのビジュアルも良くなっているのだ。
容姿だけでなく、能力面においても淘汰圧は高い。
貴族制でありながら極めて強力な
多様性という言葉は、環境に合わせるしかない野生動物に使われる言葉であって、環境を自ら作る人類社会においては、多様性よりも優劣こそが求められる。
それぞれの分野のNo.1はOnly.1と認められても、何もかもが人並み以下な存在にはOnly.1価値が認められる事はない。
ただ、この国では能力さえあれば、貧困から抜け出す事は容易い。
にも関わらず、能力を高めず成果を生み出す事なく、口だけで「平等、平等」と叫ぶ者は、平民の中層からすら、怠惰なのか、努力しても無駄なほど能力がないかと見做され、話を聴く価値も感じて貰えない。
いや、能力さえあれば容易に貧困から抜け出せるからこそ、何時までも貧困でしか在れない者は、能力不足により見下されるのだ。
アリには働きアリと、休みアリがいて、働きアリが減ると休みアリは何時でも働きアリに変われるが、これは働きアリも休みアリも全て同じ遺伝子だからこそいえる話だ。
働こうとしなかっただけで、働けば何時でも今一線級にいる連中に並べるのはアリの話であり、遺伝的に能力差が大きい人間という種には当て嵌まらない。
「世界でも突出して発展した王国なのに、苦しい生活を国民に強いるのか」と主張する底辺層がいたとしても、下流層や中流層からも「あなたに苦しい生活を強いてるのはあなた自身。努力してこなかった過去のあなたが、今のあなたを苦しめている。努力してきてもその程度なら、あなたには未来にも成長の見込みがないから、助けても無意味」と切り捨てられる。
強者によって発展して余裕がある上で、苦しむ弱者を切り捨てれば更に先へと進み、他国へのリードを大きく出来る。
それがゴールドグレイルの、人類社会としては
長年の優生思想により、
高度な規格適合品が大多数を占める故に、わざわざ不良品を選んて使う必要性が生まれてこなかった。
寧ろその方が、
古代文明に存在した
平民でさえ、劣った者や異民族を見下している。
劣った者や異民族を汚物として認識し、それらが一掃されることに爽快感を感じている。
在来種であるアユを外来種であるブラックバスが捕食するように、在来人に外来人が害を為さない保証はない。
元から外来人であったが、スペック不足により内側に入れて貰えない者が害を為さない保証はない。
嘗て在来人であったがスペック不足により内側から弾かれて外来側になった者が害を為さない保証はない。
故に、池の水を抜いて外来種を駆除する爽快感と全く同じ感覚を、劣った者や異民族を一掃することで感じる国民性なのである。
野生動物の外来種なら持ち込んだ者が一番悪いのは当然としても、その外来種が生きている事そのものも悪であり、例え持ち込んだ人間が悪だと断じられても、外来種の存在が許される訳では無いし、許されてはいけない。
持ち込んだ人間が悪いからといって、外来種の生存を放置してはいけないのだ。
その理屈を自発的にゴールドグレイルに入り込んだ人間や、ゴールドグレイルに追い出されているのに居座る人間に対しても向けるのが、一般的なスペリア人の感性である。
憲兵の指揮の下、年に一度、殆ど全ての平民達が国内を洗うように探して、咎人を清掃するのだ。
『
故に、原作主人公達の望む新たな社会を表面だって望むのは、スペリア人の中でも特に劣った者や、難民達しかいない。
彼等だけは明確に、原作主人公達によって利益だけを受けられるからだ。
そして、社会の最下層が何かを変えるには、正当な手段では極めて難しい。
上層部は優秀で、中層部は上層部に従っている。
下層部でも半分から上は中層部になろうとしている。
残されるのは下層部の半分から下だけ。
…ならば数も質も劣る最下層部はどうすれば良いのか?
答えは問うまでもない。
───必然的に平和に話し合っても勝てないなら、やはり暴力で勝つしかないと革命を始めるのだ。
弱者の弱者による弱者の為だけの暴力革命を────。
それを凍て付かせ、文字通り無情に打ち砕く、最凶の秩序の守護者がいると知りながら。
◆グランセーシュ家
侵略戦争で国を潤わせ続けて来た名家。現在の王国の優勝劣敗姿勢の殆どが、この一族の影響である。
グランセーシュの一族やその周辺には、ゴールドグレイル貴族の中でも圧倒的にエルフの血が濃い。
原作においては、ユイの母親は行方不明、父親は妻を探して失踪としか語られない。
◆カシュ家
憲兵総監の一族。
全ての平民を巻き込んで一年に一度、不法入国者や犯罪者を王都の端から端まで虱潰しに探すカイヴォーリの実行責任者である。
直接的に国民の治安に貢献している事から、貴族の中ではかなり平民から人気が高い。
◆イドロミール家
アウスレーゼ公爵家の腰巾着な小者…といった印象しか原作ゲームではないが、実はそれなりに有能だし武闘派だったりする。
但し、原作ゲームにおいて、それが示された場面はない。
◆アウスレーゼ家
悪役令嬢リースリインの実家。
グランセーシュ家とそれなりには付き合いがある。
当主はユイの事を、あれだけ優秀だから両親の愛がなくても勝手に育ったのか、両親の愛がないから勝手に育たなければならなかったのか…と考える程度には心配している。
「人間如きが…!!」とか言ってしまう幼き日のユイを心配して、愛娘のリースリインに友達になってあげなさいと言ってしまう位には優しいが、善人ともいえない。
成人しても「人間如きが…!!」と言っているユイには、もうどうにもならないと感じている。
◆エルフ
嘗て古代文明に存在した、徹底的な能力主義による選民により、全てが完璧となった人類。
現在は、混血により純粋なエルフが絶滅すると共に、古代文明が消滅して久しい。
濃い血は、遺伝子の異常部分が一致して顕在化することで問題となるが、そもそも遺伝子に異常部分が無いエルフは、例え同一受精卵からなる双子同士から生まれた子供であっても、遺伝的な障害を持つ可能性は零であった。
◆ゴブリン
エルフが存在していた古代文明において、先天的に異常がある人類の個体群を棄民した結果誕生したモンスター。
顕性陰性共に、かなりの異常奇形の遺伝子を持っており、必ず奇形が発現する特性を持っている為に、自力生存が不可な個体が多いが、それ以上の繁殖欲求により存続している。
現在のゴールドグレイルでは、ゴブリンも猿もモンスターとされながら人類扱いもされている。
これは、ゴブリンや猿をスペリア人と同一に扱うという意味ではなく、異民族をゴブリンや猿と同一に扱うという意味である。
人類というだけで、その存在が対等に肯定されると思ってはいけない。何故ならゴブリンや猿だって人類だが、それと同等に扱われたく無いだろう?という考え方である。
現代日本に照らし合わせれば、人間と遺伝子が近いチンパンジーを人間として扱う代わりに、特定の人種をチンパンジーとして扱うといった暴挙だが、この世界では浸透している考え方である。
◆精霊
この世界の上位存在
『この世界』を愛している