ルーデウスが発明したものによって現代化の進んだこの世界において旧来の冒険者故としたビジネスモデルはもはや成り立たなくなってきていた。そのため多くの冒険者は廃業を余儀なくされ冒険者ギルドの最盛期の栄光は影を潜め往年の輝きは消えていた

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債権回収業務

マーカス・ハントは冒険者だ。

 

といってもただの冒険者ではない、債権回収業務を生業として生計を立てている。

 

端的に言えば借金取りである。

 

俺だってこんな汚れ仕事はやりたくない、何度も転職を試みたことはあった。しかし俺はもうだいぶ年を取っている。こんな職歴の人間を取りたい会社はあまりないのだ。俺の下の世代の人間はみな大学に通って魔法工学を学ぶことによって工学系の仕事に就いたりしている。ルーデウス・グレイラットの発明したロボットが人間の人口よりも多いため、開発系の職業しか残されていないのだ。

 

俺はいつものように寂れたギルドのカードボード前に足を運ぶ。今では毎日のようにこの掲示板に足を運ぶ人間も少なくなっている。受付の年老いた老婆(かれこれ20年の付き合いだが)に挨拶をして、掲示板の新しい張り紙を重点的にチェックする。

 

冒険者業は今では何でも屋のような職業になりつつある。(重火器が開発されたので剣術や魔法を使えない人間にも簡単に魔物を退治することが出来るようになったのだ)といっても一般的に何でも屋と言って想像する平和な仕事ではない。犯罪一歩手前の危ない仕事の数々。

 

用心棒や運び屋、ポン引きやダフ屋のようなスカした仕事。中でも一番儲かるのが債権回収業である。いまや元冒険者という肩書は憧れから社会のお荷物あるいは迷惑な人という意味の言葉になりつつある。俺だって人の不幸で飯を食べる仕事はつきたくない。しかし、おれにはもうこれしかないのだ。

 

今日新しく増えたのはサラ金からの依頼だ。サラ金はインターネットが普及した現代においては、より身近なものになりつつある。スマホアプリから手軽にお金をやり取りすることが出来るので簡単にお金を借りる人間が増えている、そして払いきれずに破産する人間も。俺はその増えた債務不履行の人間を脅して金を奪い取るのだ。俺は罪の意識からある種の自己正当化を行っている。この容赦のない世界では自分自身を必要悪だととらえることによって自分に対する罪悪感が薄れるのだ。

 

リストの名前欄に載っていたのはイザベラ・ゴールドウェルという名前の30代の女性だった。

 

マーカスは彼女の住んでいる、寂れた、いかにも貧乏そうな、社会的不適合者が住んでいそうな質素なアパートの前に到着した。俺はそこで逃げられないように2日から3日ほどかけて生活パターンを覗き見た。そして最新の注意を払って、あらかじめ家に人がいることを窓から覗き見て、確認してから、ついに決行に移した。

 

錆びた階段をカンカンと鳴らしながらアパートの階段を上り、電球の切れかけた暗い廊下を歩いてついにドアの前にたどり着いた。俺はドアをノックした。

 

イザベラは恐怖で奥歯をガタガタ鳴らしながら扉を開けた。彼女は恐怖と諦めが入り混じった目をしていた。

マーカスは威圧的に言った。

「ゴールドウェルさん。イザベラ・ゴールドウェルさんですね?」

 

「は、はぃ」イザベラは震えた声で言った。

 

「ゴールドウェルさん、私がなぜここに来たのかわかりますね?私はあなたの債権者、ジョイフル消費者金融株式会社さんの代わりにここに来ました。彼らはあなたが借りているお金を要求しています。」

 

イザベラの目には涙があふれ、遂にわんわんと声を上げながら泣き始めてしまった。

 

「私には、私には、理由があるんです!!」彼女はしゃくりあげながら言った。

 

というのも彼女の夫の突然の死以来、夫によって彼女は膨大な借金を代替わりさせられる羽目になったのだ。その為、家計のやりくりに苦労してしまい、その上悲しみのあまりギャンブル依存症になり彼女の借金は返済不可能なほどに膨れ上がってしまったのだという。

彼女は自分の苦労に満ちた人生をまるで政治家のように大げさな身振り手振りで説明した。

 

 

マーカスは岐路に立たれていた。いい加減、この罪悪感に蝕まれる生活には嫌気がさしていた。彼女の借金の返済の手伝いをしてずさんな財務管理を手助けすれば、自身が変わる。良いきっかけになるのではないかと思い始めていた。これを機に彼女をそして自分自身を救う必要があると思い始めた。

 

その時、彼の心の中の何かが変わった。

 

マーカスが借金取りとしてではなく友人として彼女の家を定期的に訪問するようになったのはこの日からだった。彼女は、現在は悩みによって孤立しているが、元は明るい元気な人だったのだという。

そのため、定期的にカウンセラーに通わせ、夫との死別によって傷ついたその心を回復させ、元の彼女に戻した。そして彼女を慈善団体と結び付け、借金返済という暗い迷宮のような世界から彼女を救いの光へと導こうと努力した。

 

債権者とは長年のマーカスとの付き合いによって得ていた信頼によって話をつけさせてもらい債務整理を可能にしてもらった。

 

金利を一時的に0にさせてもらい。返済可能な金額になったらまた金利を戻すという契約を交わした。

 

それからといもの彼女は一生懸命働いた。幸いなことに彼女はとてもかわいい顔をしていたし、大きなおっぱいとおしりをもっていて性的な魅力であふれていたので、枕仕事やぼったくりガールズバーで働くことによって普通の人間よりも大量のお金を手に入れることができた。その過程で2つほど性病が出来てしまい、彼女の性器はきれいなピンク色から黒ずんでしまったが、それは仕方のないことだろう。

 

彼女はマーカスの指導を受けて人生を立て直し始めた。彼女は前向きになり、ついに長年の夢をかなえようとすることまでした。

 

というのも彼女の夫が大量の借金を背負ったのは二人でパン屋を開こうとしたからであり、夫の死という悲しい出来事によりその夢は志半ばにして断たれただけなのである。イザベラは半ば義務になって亡き夫の夢をかなえるためにがむしゃらになって忙しい生活の脇目を縫いながら個人営業の仕方やパンの作り方を勉強した。

 

マーカスは自身のコネを利用して今度はべらぼうに金利の高い消費者金融ではなく、良心的な銀行を通してイザベラのパン屋のアイデアに興味を持つ投資家との面会を手配した。イザベラは来る日の面会の日に備えてできる限り精密な計画を立てて経営ビジョンを説明出来る様に努力した。

 

そしてついに面会の日、彼女は投資家の興味を勝ち取った。

 

投資家はこの事業に資金を提供することに同意し、それから彼女がパン屋をやっている姿を見るのに1か月もかからなかった。イザベラのビジネスは成功し、ついに借金を返済しきることに成功した、それどころか彼女の人生は彼女がずっと夢見てきていたものに確実に近づいていたのである。

 

これを機に、マーカスはこれまでの借金取りとしての人生を償うことを決心した。彼は誰かからお金を搾り取るのではなく、誰かの人生を好転させることに満足感を見出し始めていた。それからというものマーカスは借金取りとしてではなく、債務整理や財政管理の専門家として生きることに決めた。

 

結局、マーカス・ハントはもはや借金取りではなくなった。彼は命の救い人となり、最も暗い場所でも救いと慈悲が行き渡る事を証明した

 


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