ゾフィスです…もう嫌です……   作:悲しいなぁ@silvie

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人は皆、臆病だから夢をみるのかな?

フランスの片田舎に建つ屋敷、その屋敷から数キロは離れた草原にて黒と白の影が人間の眼では追いきれない速度で飛び交っていた。

2つの影は、そのあまりの速度に尾を引くように白と黒の線となり見る者が見れば芸術だと評するに余りある美しささえあった。

白い線が弧を描けば、黒い線が追い掛けるように弧を描き、白い線が大きく旋回すれば、黒い線もまたそれを追う…正に、白と黒の追唱である。

 

「イヤァァァァ!!!!死にたくない!!!!」

「いい加減にしろ、いつまで逃げ回る気だキサマ……」

 

その悲嘆の声にさえ耳を傾けなければ。

 

「確かにやるとは言いましたけども!!

言いましたけども!!ゲーム中にまで襲い掛かって来る事はないじゃないですか!!!!」

 

「ほう…オレの知らん内に悠長に遊んでられる程強くなったのか?」

 

うるさい口をキス…ならぬ頭突きで黙らせながらブラゴはついにゾフィスを捕らえる。

 

「だって…だって!!遂にファン待望の9が発売したんですよ!?

だったらこれを期に歴代ナンバリングのナイフ縛りを通しでやるしかないじゃないですか!!!!」

 

ゾフィスの涙ながらの訴え…並々ならぬ情熱を感じさせるそのセリフは、この場にゼオンが居たとすれば熱く抱き合いそのまま二人でメモ帳片手にルート開拓を始めていだろう。

だが、この場に居るのはゼオンではなくブラゴであり…ゾフィスのセリフはブラゴの眉間のシワとこめかみに浮き出た血管を増やす効果しか無かった。

 

「ゾフィス…」

 

スッとブラゴの顔から一切の表情が消え去る。

そう、彼ももう大人…いくら肉体年齢が若返ろうともその内面は成熟した魔物である。

多少の苛つきや意味不明な言い訳にも頭ごなしに怒鳴るほど子供ではないのだ。

 

「てめぇ…そんなにもオレから逃げ隠れする生活を送りたいか?」

 

「ひえぇ…っ!」

 

違った。

怒りが一周して逆に冷静になっただけだった。

ブラゴはメロンを思わせる程に顔中に血管を浮き上がらせながらゾフィスの顔面を掴み持ち上げる。

俗に言うアイアンクローである。

だが、ゾフィスの頭蓋骨がミシミシと音を立てもう少しでフェイタリティする寸前にブラゴの腕に抱き着くようにココが飛び込んできた。

 

「や、やめて!修行だって言ってもこれ以上はゾフィスが死んでしまうわ!!」

 

「ふん、魔物は人間よりずっと頑丈に出来ている…この程度で死ぬものか」

 

指が頭蓋骨にめり込み、ゾフィスの頭が若干ひょうたん型に変形しているがブラゴはそう断言する。

しっかりとゾフィスの口を塞ぎ、反論を物理で完封する手際の良さ…長年の経験と鍛錬による成長が悪い方向で発揮されていた。

 

「でも!もっと他にいい方法がきっとあるはずよ!!」

 

抱き着くどころかブラゴの腕にぶら下がるココ。

今もミシミシと人体(この場合は魔体か?)から鳴ってはいけない音が響いているので必死である。

 

「邪魔だ…」

 

ぶらぶらと鉄棒かなにかのようにブラゴの腕にぶら下がるココに、ゆっくりと鍛え抜かれたブラゴの左手が近付く。

スッとブラゴの眼が鋭くなったのと、パチンと軽い破裂音にも似た音が響いたのは同時だった。

 

「ココ、私は大丈夫です

向こうでシェリーさんとお茶でも楽しんでいてください

昨日も久しぶりに会えると楽しみにしていたではないですか」

 

手元に有った筈のゾフィスと目の前に居た筈のココは何時の間にか、ブラゴの背後に居た。

なぜ?何時の間に??

そんな疑問が浮かぶ事はない。

むしろ、ブラゴはここ最近懸念していた事が疑惑から確信へと変わり大きく…それはそれは大きくため息をついた。

 

やはり、この馬鹿(ゾフィス)は自分の命を勘定に入れていない。

仲間のピンチに真の実力を発揮する、と言えば聞こえは良いがその実態は先程のように自分の頭が潰れる寸前でも大した抵抗も出来ない始末。

そのくせ特に殺気も出さず、掴んでゆっくり降ろそうとしただけだというのにパートナー(ココ)へのアクションには過敏とも言える程に反応する。

 

まず間違いなく、ゾフィスはこの先生き残る事は出来ないだろう。

実力は十分にある、魔界で記憶が戻ってから真っ先に鍛えてやったのだ…術無しでもそこらの魔物に遅れを取る事はないだろう。

実戦経験だって豊富にある、竜族の神童二人にゼオン…それに王城の近衛兵達との戦闘経験を持つ魔物などコイツぐらいなものだ。

術だって悪くない、()()()()()使()()()()()とやらがあるのはいただけないが…それを差し引いてもクリアと初めて会った時の自分と同じか、それ以上のものは持っているのだ。

だからこそ、惜しい。

勝ち残り王となれ、とまで言う気は無いが…ここまでの実力を持つ魔物がそれを一切発揮しないままに脱落するのはどうにも釈然としない。

…………一応、生き残った十人の魔物の子(テン・サバイバー)に含まれない事は利点でもある。

魔界の未来を思えば、今のゾフィスが早期に脱落し奴らの目を掻い潜る可能性が増す事は明確に利点だ。

魔界の大将軍、ブラゴとしてはその方が良い事ぐらい分かっている。

 

だが、同時に───ゾフィスの友、ブラゴとしてそれを良しとしたくないのだ。

 

この男が…どれだけ馬鹿で、怖がりの癖に変に強情で、人の為に泣ける男かをブラゴは知っている。

努力した者が報われるべきだ、等と甘ったれた事を言う気は無い。

だが、それでも……この男は向き合うべきなのだ。

自分自身と、自分自身が成した事と。

 

柄にもなく思考にふけっていたブラゴの意識が、こちらに駆け寄ってくる足音で急速に戻ってくる。

見ればゾフィスは既にココを背に庇い、こちらに目配せしている。

自分に何かがあれば頼む…とでも言いたげなその視線にも、しかしブラゴは眉間にシワを寄せた。

お前はそうだからダメなんだ、という怒り…勿論それもあるがそれ以上に──駆け寄ってくる足音とその気配があまりにも覚えのあるソレであった事に他ならない。

そう、この気配は忘れもしない────

 

「高嶺…清麿……?」

 

なぜ、その答えが横に立つ男の口から聞こえたのか?

知っているとして、いつ知ったのか?

そして、知っているのならなぜそんな顔をするのか?

ブラゴは幾つもの疑問を無視し、駆け寄ってきた清麿に声を掛ける。

 

「清麿…お前はどこまで覚えている?」

 

ボロボロで、息が上がって言葉も出ないであろう様子だったがそれでも清麿は無理やりに呼吸を整えてブラゴに向き直る。

その目には、驚きと…それ以上の希望を目にしたように輝いていた。

 

「ど…どうして、オレが覚えていると…?」

 

「オレがそうだからだ…、それにオレが此処に居る事を知っているヤツは今人間界に居ない」

 

ブラゴの返事を清麿は噛み締めるように深く目を閉じ、ぐっと拳を握って屈み込む。

肩を震わせ、目には涙も滲んでいた。

 

「ブラゴ!頼みたい事がある…!

シェリーにもだ!今すぐ連れて行って…」

 

それでも、今は一刻を争うと立ち上がり歩き出そうとした清麿は…誰かにぶつかった。

 

「あっ、スマン…急いでいて前を見てなか……」

「いえ、こちらこそ……」

 

瞬間、清麿は固まってしまった。

一分一秒すらも惜しいという状況で、たっぷりと十数秒程固まった後に…目の前に居る魔物の名前を呼んだ。

 

「ゾフィ…ス……なぜ、此処に……?」

 

無数の疑問、思考の停止と驚愕。

『答え』を出す事に掛けては右に出る者なしのアンサートーカーですら、目の前の魔物の事をよく知る高嶺清麿ですら──否、目の前の魔物をよく知る高嶺清麿だからこそ理解出来ず立ち呆けてしまう。

 

「……………わ、私は…」

 

沈黙に耐えかねたように口を開くゾフィスを手で制し、ブラゴは清磨の周囲を見渡す。

 

「コイツの話は後だ…心配するな、お前の知ってるようなヤツじゃない

それよりも……清磨、()()()()()()()()?」

 

誰も居ない、清磨の周囲を。

 

 

 

 


 

 

シェリーの持つ屋敷の一室で、清磨は背負っていた大きなトレッキングバックから一つの大きな塊を取り出した。

それは、ゾフィスにとってひどく見覚えのあるものであり───本当に、悪趣味な…冗談のようなものだった。

 

「オレとガッシュはレインという魔物から相談を受け、ファウードと呼ばれる巨大な魔物の元へ向かった」

 

全身に、傷のない所など一つも無い程ボロボロで今にも倒れそうな程に深い隈を目に刻みながら…それでも清磨は気力だけで立ち、ゾフィスとブラゴ…そしてそのパートナー達へ言葉を届ける。

 

「本来、ファウードを操る筈だったリオウという魔物が脱落したせいで封印を解かれる事なく…

主導権が宙吊りになっていたファウードを()()()()()()()()()という手紙を受けてな」

 

「ちょ、ちょっと待って頂戴!え、えーと…」

 

「高嶺清麿だ」

 

「そう、高嶺君!

貴方の言うファウードというのはブラゴやゾフィスのような魔物なのよね…?

それなのに、貴方の言い方だと…まるで、その……」

 

突然ブラゴに連れて来られ、理由もわからないままに話を聞いていたシェリーが困惑気味に問う。

しかし、清磨は屋敷に向かう道中でブラゴからシェリーが記憶を持ち越していない事を聞かされていた為に慌てずゆっくりと説明していく。

 

「兵器か何かのように聞こえる…か?」

 

「え、ええ…」

 

「そうだな…ファウードは便宜上魔物として扱われるらしいがオレ達の知る魔物とは根本的に違う存在のようだ

さっき巨大な魔物と言ったが、実際には周囲の山脈が膝ほどまでしか届かないサイズだ…兵器というよりも城や要塞に近い存在だと思ってくれれば良い」

 

「城や要塞……」

 

その途方も無い規模感に呆気にとられるシェリー。

 

「で?そのファウードの平和的な利用法とやらはなんだ」

 

鋭い眼光と共にブラゴが話を戻すと清磨も頷き再び語り始める。

 

「とある魔物が、ファウードの持つ【力】を利用し──パートナー無しで、魔物だけで呪文を使えるようにすると喧伝していたんだ」

 

「魔物だけで……?」

 

ココが自身の持つ薄紫色の魔本に視線を落とし、呟くように言う。

しかし、()()()()()を知るブラゴだけは清磨の言葉に眉を(ひそ)めた。

 

「まさか…呪文の抽出か?」

 

「イヤ、()()とは全く別の手段だった…

それに、結論から言えばパートナー無しで呪文が使えるというのはその魔物の嘘だったんだ……一部を除いてな」

 

清磨は堪え兼ねたように強く拳を握ると、奥歯を食い縛り肩を震わせた。

 

「アイツは…ッ!パートナーを戦いに巻き込みたくないと思う魔物達の想いに浸け込みやがった…!!」

 

悔しさと、怒りと…何よりも、現状の自身への情けなさに清磨は目に涙を浮かべバックから取り出したとあるものへ視線を落とす。

 

「アイツは…!人や魔物の心を操る力と───戦った魔物の術を奪い取る()()()()を持っている!」

 

清磨の言葉に、それまで呆然としていたゾフィスが驚きと共に肩を跳ねさせ…呟く。

 

「白い…魔本……?そんな、まさか……」

 

「敵の名は───ワイズマン!!

オレとガッシュは、アイツと戦って…ガッシュは、()()()()()()()()……ッ!!!」

 

 

 

この作品に曇らせ要素は……

  • あっても良いんじゃないかな
  • 無い方が嬉しいかな
  • 少年漫画の範囲ならまぁ…
  • 原作で辛いのに二次創作で必要無くない?
  • 度合いによる
  • こんなもんあればあるだけええですからね
  • 最終的にハッピーエンドになるなら良いよ
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