暖房は生ぬるいため息をつく。それでもアタシの放つこの息の湿度には到底勝てないのだろう。
「先程から虚ろ向いてため息を吐くキミは儚げで美しいが、どうにも思い悩む節があるらしい。聞かせてくれないだろうか。」
嗚呼、トレーナー。アタシの悩み、或いは、うちに秘めた儚げな年頃の思いを、アンタはどのように交わすのか、想像するだけで胸がジクジクと痛むのよ。
「...心配かけてごめんなさい。それでも、まだ言えないわ。けれど、けれども、アンタの瞳がアタシを捉えてくれている間は、まだ元気でいられるわ。」
悩みがあることは隠さない、だってそうした方が、より長い間アンタの頭の中に入れるから。
「......このように、ボクはキミの少しの変化にも感ずけるほど君の理解者であると自負している。話せる時が来た時、或いは、話さなければいけない時は、安心してボクの所においで。」
トレーニング終わりの空のオレンジは、頬を染めるアタシのカモフラージュをになってくれた。
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「今日もアタシのトレーナーは優しかったわ。ええ、もちろん誰にでもないの。アタシだけに甘い声を出してくれるのよ。」
同室のウオッカに、先のトレーナーとのやり取りを事細かに伝えれば、居心地悪そうに身をよじらせる。
「甘い、とても甘い吐瀉物が溢れ出そうだぜ。この頃、お前は浮かれすぎではないだろうかと思う。なぜっつうかと言うと、彼は常、言動で多くの女性をたぶらかしたと聞く。そのうち足元を掬われても文句は言えないぜ?」
嗚呼、なぜあえて聞かないようにしていたことを口に出してしまうのか、こういう時、何も言わずに優しく返してくれるだけでアタシは満足だと言うのに。
「バカね、ウオッカ。そんなことでいちいちう狼狽えていれば、担当バとしての余裕が無いも同然なのよ。隙をみせれば、きっとあれよあれよとかれに人は集まってくる。アタシはこれをよく思わないので、このように彼との思い出を歩いては聞かせているのよ。」
「オレ以外にも聞かせて回る辺り、さすがオマエだと言いたいが、あらぬ噂が経てばきっと彼も困るだろうな。」
「...?経てばいいじゃない。その方がアタシはやりやすいわ。無策で本丸を攻めるのであれば、それは実に阿呆の所業よ。外堀というのは常に期待した戦果をあげるものなの。」
布団に被さるウオッカは怯えていた。恋する乙女のどこに恐怖するというのか。まだまだ子供で居てわ、アンタこそ足を掬われるわよ。
言葉を飲み込み布団に入る。目を閉じればあれよあれよとか布団の温もりはトレーナーの抱擁へと変わる。
嗚呼、いつか現実にしてみせる。アンタはもう詰みなのよ。