彼女の道は、常に茨の道だった。

閃光の如く輝きを放った逃走者。

常識を覆した、型破りの女帝。

大輪の華を咲かせた、緋色の風。

光を半分失った彼女にとって、それは厳しすぎる道だった。

──それでも、彼女は走り続けた。

隻眼の女王が今、ターフを駆け抜ける。

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小説のネタを考えていたらふと思い浮かんできたので供養ついでに投稿します


片眼を失った代わりに前世の記憶が戻ってきたウマ娘

 私が私じゃなかった時の記憶を取り戻したのは、焼けるような左眼の痛みと、いつもより狭くなった視界の中でだった。

 

「────!!!」

 

 痛い、痛い、痛い。あまりの痛みで、声すら出ない程だった。膝を付き、咄嗟に左眼を抑える。何か、棒状のものが突き刺さっているようだった。

 

「待って、触っちゃダメ! 痛いでしょうけどそのまま我慢して! すぐ救急車を──!」

 

 隣にいた私の友達、真っ赤なツインテールのウマ娘がスマートフォンを片手に、左眼に刺さったものを触った私の左手を握ってくる。

 

「私、どう、なって……? 片眼が、見えな……」

 

「っ……大丈夫、大丈夫だから……」

 

 絞りだしたようなか細い私の声。その声に返事した彼女の声は震えていた。震えながら、私が落ち着くように背中をさすってくれている。

 

 とてもありがたい。ありがたいのだが、少し痛みを和らげるくらいはこの激痛には気休めにしかならない。あまりの痛みにだんだん意識が遠退いてきた。

 

「ごめ、後よろ、しく……」

 

「ちょっと!? 寝ちゃダメ! 寝たら死ぬわよ!?」

 

 ここは雪山かどこかか。そんなツッコミを心の中で浮かべながら、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 今私は、知らない部屋にいる。頭には包帯が巻かれていて、相変わらず左眼は見えない。明るい栗毛のロングヘアーを無意識に弄る。

 

 さて、現状を整理しよう。おそらく、ここは病院の個室だろう。こうして目が覚めたということは、友達の言うように死にはしなかったらしい。

 

 この包帯の下がどうなっているのか想像するのは恐ろしいが、命があるだけマシである。

 

 何せ、思い出した記憶も似たような状況が最期だった。今回は友達と買い物している最中余所見をしていたら、おそらく何処かの家から飛び出していた枝が眼に突き刺さった程度だったが、前世の最期の記憶は崩落してきた鉄骨が頭に突き刺さった瞬間だったからだ。

 

 前世も今と同じ中学生だった。友達と遊んだ帰り、家の近くの工事現場を通りがかった時の事故だ。前世も今世も、運は最悪なようだ。

 

「それにしても──」

 

 病室に備え付けられていた鏡を見る。そこには見慣れた、でもある意味では見慣れない私の顔が映っていた。

 

「……こんなウマ娘、いたっけ?」

 

 ウマ娘プリティーダービー。前世中学生だった私もプレイしていた。まだ課金することは許されていなくて、でもそれでも楽しく遊んでいたアプリだった。

 

 そんな私でも見たことがないウマ娘の姿、それが私だった。立ち上がって鏡の前まで行き、全身を映す。立ち上がる時に少しふら付いた。

 

 貧血だとか、そういう理由ではない。平衡感覚と、遠近感がつかめないのだ。ふらつきながら、やっとの思いで鏡までたどり着く。

 

 嫌な想像から目を逸らし、狭い視界の先の鏡の中に写る自分を、もう一度見る。胸のあたりの長さのサラサラストレートの栗毛。整った目鼻立ち。友達ほどではないが、病衣を押し上げるくらいにはある胸。力なく垂れ下がった尻尾。

 

「まあ、ウマ娘ね……見たことないけど」

 

 どれだけ思い返しても、見たことがない。前世の自分が死んでから実装されたウマ娘の可能性は十分にあるけれど。

 

 それに、そろそろ現実逃避もここまでにして、現実に向き合わないといけない時間だ。

 

「一先ず、ナースコール……かな」

 

 前世含めて触ったことすらないボタンだ。少し好奇心を刺激されながら、ボタンを押した。

 

 

 

 ボタンを押してすぐ、看護師さんとお医者さんが私の病室に来て、状況を説明してくれた。

 

 状況は、私の想像している中でも最悪の状態だった。

 

 左眼穿孔外傷。そして、その中でも私の症状は非常に重く、左眼の摘出が必要になる程だった。

 

 つまり、私は永久に左眼の視力を完全に失うことになったのだ。私自身の不注意が原因なので、それに対しては何の文句も出ない。

 

 手術自体は私の両親の同意書が必要なので、実家の北海道から文字通り今飛んできているようだ。重ね重ね申し訳ない。

 

「すみません! うちのウマ娘の病室はここですか!!?」

 

「病院ではお静かに!」

 

「あ、す、すみません!!」

 

 一先ずは、今後の身の振り方を考えないといけない。私の病室に飛び込んできた担当のトレーナー、若い女性──今年トレセンに入ってきたばかりの新人だ──のトレーナーと、今後を話し合うために、一度お医者さんと看護師さんには席を外してもらうことにした。どうせこの後の話は、私の両親が来てから出ないと出来ないわけだし。

 

「だ、大丈夫? その、眼は……」

 

「すでに状態は聞いているんでしょ? どうにもならないみたい」

 

「……」

 

 トレーナーが苦虫を数匹以上噛み潰したような顔をしている。綺麗な顔が台無しだ。

 

「まあ、私はここまでね……ごめんねトレーナー。初めての担当ウマ娘がこんな──」

 

「まだ、終わりじゃない! まだ終わりじゃないよ! 君が望むなら、君はまだ走ることが出来るんだ!」

 

「でも、片眼を失ったウマ娘は確か出走できないって」

 

「競走ウマ娘登録を受けた後に片眼を失ったウマ娘は、当該競走ウマ娘登録を抹消されるまで、平地競走に限って出走できるんだよ! だから、まだ、諦めなくても──」

 

 確かに私は登録を済ませている。それどころか、メイクデビューも済ませて、先日函館ジュニアステークスで1と1/4バ身差、上がり最速で差し切って勝った。2戦2勝、それが今の私の戦績だ。

 

「片眼を失って、まともに走れると思うの? さっき立ち上がった時も、そこの鏡までたどり着くのも苦労したよ。それに、私の同期には、アストンマーチャンが、ウオッカが、そしてダイワスカーレットが居る。このハンデを背負って、勝てると思うの?」

 

 アストンマーチャン、ウオッカ、ダイワスカーレット。これが私の同期だ。ウマ娘をやったことがある相手なら、こう思うだろう。何その無理ゲーと。

アストンマーチャンをよろしくお願いします

「あなたが望むなら、私が全て何とかする! リハビリだって、あなたがちゃんと走れるようになるように、私が必ず何とかする! だから、あなたの想いを聞かせてほしい。あなたの、本当の想いを」

 

「私の、想い……」

 

 ──走りたい。

 

 前世の、ヒトだった時の記憶を取り戻したとしても。私はウマ娘だ。

 

 ウマ娘は、走るために生まれてきた。誰よりも速くなりたいと思うのは、きっと私だけじゃないはずだ。

 

 メイクデビューで、函館ジュニアステークスで勝ったときの高揚が、感動が忘れられない。

 

「走りたい、走りたいよ。どんなに泥臭くても、醜くても構わない。走って、勝ちたい。でも──」

 

「どんな茨の道でも、私が必ずあなたを勝たせて見せる。だから、私を信じてついてきて──ニシノチャーミー」

 

 トレーナーの熱意に押されて、私は差し出された手を握ったのだった。

 

 

 




続かない。



名前:ニシノチャーミー

誕生日:3月8日

身長:150cm

体重:増減なし

スリーサイズ:B84・W54・H79

靴のサイズ:左右とも22.0cm

学年:中等部

所属寮:栗東寮

得意なこと:神経衰弱

苦手なこと:眼の事で同情されること

耳のこと:他のウマ娘より耳が良いらしい

尻尾のこと:感情がすべて尻尾に出る

家族のこと:怪我をしてから過保護気味

ヒミツ:パッチワークの腕はプロ並み

バ場適性:芝A ダートF

距離適性:短距離A マイルA 中距離B 長距離F

脚質適性:逃げG 先行C 差しA 追込A

成長率:根性20 スピード10

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