超戦艦  Großer Kurfürst   作:U・K・Owen

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第五十三話

――楽な戦だと、誰もがそう思っていた。

 

 

 

「クソッ!第四も損耗率がやばい!増援はまだ来ねぇのか!?」

 

 

 

「無茶言うな!突っ込んだ瞬間弾け飛ぶ戦域にポンポン戦力投入できるわけないだろ!」

 

 

 

――残り一つとなった北アメリカの反乱勢力を叩き潰して帰るのだと。

 

 

 

「こんな化け物がいるなんて聞いてねぇぞ!?」

 

 

 

「司令部の奴ら、今度見たらその目に7.62mmぶち込んでやる!!」

 

 

 

「そいつぁいい!まず降ってくる1000ポンドを俺達の頭にぶち込まれないように逃げないといかんがな!!」

 

 

 

――クリスマスまでに終わると、先日発刊したらしい広報誌は言っていた。

 

 

 

「ジャック!今日って何日だ!?」

 

 

 

「知るかよ!!」

 

 

 

――だがどうだ。現実は苛烈で、残酷だ。

 

 

 

「いくら遠隔操縦の無人兵器っつっても、ここまでやられると頭おかしくなりそうだぜ」

 

 

 

「スコアいくつだ?」

 

 

 

「23だ!!マイナスな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!急降下爆撃なんて古風な真似しやがるぜ!!」

 

 

 

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2054年 横須賀 旧第四施設跡

 

 

 

 私が第四施設最深部に存在する……そういえばなんて名前なんだここ。銀砂にまみれすぎて元々どんな部屋だったのかもわからないし、何なら中央に聳えるナノマテリアルの巨木が天井を突き破ったのか天井が崩れて上の部屋と繋がってるから地面の美しさに比べて上を見上げるとその……結構汚い。

 

 まぁ便宜上ラストダンジョンとでも呼んでおこう。ほら、なんか都合よく差し込む光とか意味ありげに佇むモニュメントとか、結構ありがちじゃない? こういうところに限って割と回収されなかったりするんだよ、後はプレイヤーが考えてね!みたいな。

 

 モニュメントは3つ、それぞれにクレストが刻まれていてほんのり光を放っている。

 霧の艦隊に所属するヤマト型に対応しているのはわかるんだけど、なんか意味深にムサシのそれだけ欠けてるのはどういうことなんですかね。直接の交友はないにしても友人の姉妹って関係だから心配になってくるなぁ……。

 

 ま、シナノがついてるらしいからよっぽどなんとかなるでしょ。翔像さんだって流石に命あっての物種って言葉ぐらい知ってるはず。

 

 

 いや、記憶の限りあの人結構な覚悟ガンギマリピーポーだからチャンスがあったらウキウキで突っ込みそうだ。やっぱ血は争えないってことかな。血どころか肉もない身で言うのも何だけど。

 

 

 え?

 

 なんでここまで長々と独り言をしゃべってるのかだって?

 

 それはね……

 

 

 

「おぉー、よくやるね。やっぱり姉妹は相性いいなぁ、アタゴ盗られちゃったけどこれが見れたから差し引きゼロかな〜」

 

 先述の友人が私そっちのけでライブ映像に見入ってるからですね!

 ちなみに内容はここの上で繰り広げられている重巡二隻と大戦艦二隻による攻防戦となっております。さっき私にも見せてって言ったら「エレちゃんは自分の所応援してあげないとかわいそうだよ!」って画面を隠された。親密度が足りてませんってか畜生。

 

 ぶっちゃけイブキたちって下手な大戦艦級より強いし経験値も段違いだから正直見ててつまらないというか、相手もスィノプとか言う大戦艦一隻だから順当に順当な戦闘経過だから……ね?

 もちろん遅滞戦闘に徹してって伝えたのは私だからただでさえ慣れない陸上の閉鎖空間で戦ってくれてる彼女達には頭が上がらないんだけど、一観戦者としては逆境の方が見てて燃えるといいますか、久しぶりにJKになった(物理)キリシマのドタバタが見たいっていうか……

 

 ていうか横須賀に来る前に見かけた海底の大戦艦って間違いなくスィノプのことでしょ。なるほどなるほど、欧州方面艦隊からも来てるってわけ。原作でもレキシントンツアー御一行様が来てたしコトノが色んなところに招待状を送ったっていうのもちょっと前に聞いた気がする。

 

 

 

 え、じゃあこれビスマルクも見てるの?

 ただでさえ目の敵にされてるんだからあんまり煽るようなことしないでほしいなぁ…

 

 

 

 

 

 

 あ、スィノプが落とし穴に落ちた。

 

 ……落下地点に鉄骨って殺意高すぎない? ギャグ漫画みたいに手足を壁に突っ張って耐えてるけどなんかクラマが見たことない目つきで舌打ちしてるし、さては仕掛けたの君だな? さっきスィノプの射撃がイブキの頬に掠ったことが根だったりする?怖……

 

 

 

 

 

「うん? あぁ、分かったそろそろ準備しておくね」

 

 そんな感じで一人寂しく観戦を続けていると何やらコトノの方で動きがあったようだ。

 

 あのー、原作でもそうだったけどこういう黒幕系御用達の自分だけは分かってますからムーブ止めてくれません? 信頼してるからならいいんだけど、コトノは急に無茶振り言い出す時があるから困る。私は原作知識でブーストしてるだけで元は凡夫だぞ。

 

「402から、もうすぐタカオたちが抜かれそうだから準備しておいてって」

 

 思ったよりも早いね、もう少しは保つと思っていたんだけど。

 

 あぁ、イブキたちがいたからその分遅滞戦に使える空間が減ってるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく、私が入ってきたときと同じように扉が開き、402がやってきた。

 表から見ると歯車が何十にも噛み合った複雑な開き方をする扉だったが、裏から見る分には結構地味だ。ふつーに壁がずずずって上下に格納されてく感じ。

 

 

 

 

 いや普通はこんなロマン全振りの扉なんて作らないんだけど。

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、そっちはどうなの?」

 

 ラスダン部屋を出てしばらく、コトノ麾下の球体ドローンがちらほら見え始めたあたりで彼女から声がかかった。

 

 また出たよ。私は勝手に父にされてた人(群像)じゃないんだからそんな代名詞八割の文から正確に答えられるわけないんだよね。ティルピッツとかもやってくるけどアレは訳知り顔でうんうん言っとけば大概のことは都合よく解釈してくれるからとっても楽。

 

 あと、コトノがそういう気軽い感じでこっちに話しかけるたびに402が居心地悪そうにしてるのが前をゆく彼女の背中からひしひしと伝わってくる。そうだよね、社長が提携他社のトップとタメで話してる場とかさっさと逃げたいよね、分かる。代わってくれない?

 

「こっち?」

 

 だから私はオウムのように聞き返すしかない訳で。

 

 コアの有り余る演算能力を贅沢に使って「オウムとかの熱帯生物って生き残ってるのかな……」とか脇道にそれまくった思考を回していた。こういうくだらないことを考えるときに使われるとは推定霧の上位存在の魔女某も考えていなかっただろうなー

 

「そうそう、タカオちゃんみたいに恋多い乙女はいないのかなーって」

 

 なるほど、乙女プラグイン(笑)のことね。

 てか乙女て、私達物理的にはともかく、精神的にはもうそういう年齢じゃないんだけど。私が目覚めたのが2014年ぐらいで、しばらくは人類にバレないように主力艦のみの起動にとどめていたとはいえ、数年前にメンタルモデルと情操を得たタカオが女子高生くらいって考えると私達は既にアラ……

 

 

 

 

 止めよう。

 

 

 

 それにそういう事例が全く無かったわけでもないし。

 

「一人二人居ないことはないけど、あんまり参考にならないと思うよ?」

 

「参考にならないって?」

 

「逆光源氏もどきと過激派百合のどっちの話が聞きたい?」

 

「やっぱりいいや」

 

 だよね。

 

 前者はなんだかんだ涙あり笑いありのラブコメみたいな過程を辿った挙げ句感動のゴールインしたけどそこは黙っておこう。初対面のとき既に高校生かその少し下くらいだったから原作(源氏物語)ほど犯罪臭溢れることにはなってなかったし。

 

 でも「旗艦殿、やはり彼の心を手中に収めるためにはこの夜這いというものがいいのだろうか……」とか真面目な顔して分厚い薄い本を片手に聞かれたときには咳き込んだよね。

 本人曰く網に引っかかってたから乾燥させて復元処理した雑誌の売れ残りらしいけど驚かせないでほしい。「ティルピッツやお嬢に聞いてもはぐらかされるばかりでな……」とかほざいていたがあたりまえだろう。というかティルピッツたちも適当にはぐらかさないでほしい、氷山港の管理役として件の相談者と同等かそれ以上に人間に関わってるだろうに。私?聞かないでよ悲しくなる。

 

 

 後者について?

 

 

 

 

 

 

 この前久しぶりに直接話したらなんか沈静化してた。怖い………

 

 

 

 

「それにしても、どうして急にそんなことを?」

 

 聞く機会自体はこれまでも何度かあったはずだけど……実際、イブキからはタカオに似たようなことを聞かれたからそれっぽいことを言っておいたとの報告を受けている。それにコトノはその……色々初心なタカオと違って良い意味で芯の通った恋愛観を持った人物なので結構意外。

 

「うん、ほら、タカオとかハルナの色々は聞いてるでしょ?これからああいうことが増えるかもしれないから、改めて先達に教えを請おうと思って」

 

 タカオの……は良いとして、ハルナの一件っていうのは北管区にある群像君の母君の家で蒔絵にしたプロポーズこかな。是非現地で見たかったが、彼女達の駆け落ち逃避行は原作通り順調に進んでいるようで何より。というか、基礎研究があったとはいえわずか数ヶ月で振動弾頭とかいう技術比的には成形炸薬レベルの革命的技術を生み出した彼女が何かの事故でぽっくり逝ってしまったら冗談抜きに世界が詰みかねない。

 確保に動いた中央管区の陸軍はその辺分かってたのかなぁ……岩蟹とかいう四脚戦車なんて出したら相手を刺激するなんて考えなかったんだろうか。案の定蒔絵ちゃんのお家が廃墟になった上でその最中で蒔絵ちゃんの開発者兼父親が死んだことでハルナが暴走しちゃうし。

 

 

 まぁヨーロッパとかアメリカでも裏でデザインチャイルドみたいなヤバい人体実験的なことはやっているだろうから世界的に見れば技術の遅れは誤差レベルに留まるのかな?

 

 ……確実に暴走する大戦艦二隻と重巡一隻を人類が止められればの話だけど。

 

 

 

 ん?

 ああいうことが増えるかもしれない、ってことは――

 

「もしかして、中央管区……いや、日本政府と同盟でも組むつもり?」

 

 だとしたら、確かにその先達は世界で唯一私達だけだ。

 

「同盟…って程じゃないかな。最初は合同訓練から始めて、少しずつ価値観をすり合わせていけたらなって。私達もこの体を持って、一人じゃ寂しくなっちゃったみたい」

 

 なんとまぁ、数年前までただの……ただのではないか、高校生だったとはとても思えない力強さだ。実質世界征服を果たした巨大組織の長らしい決断力も、先を予測する思慮も、仲間を率いるカリスマもある。

 

 

 はは、私とは大違いだ。

 

「そっか」

 

 会話が途絶え、季節に似合わない冷たい風がどこからか吹き込んでくる。

 地下特有の淀んで停滞した空気が今になって両肩にのしかかる。

 

 それに耐えきれなくなって、口を開いた。私の口から出た言葉は、少しだけ震えていたかもしれない。

 

「コトノはさ」

 

「私達がどうやってアイスランドに居着いたか、どのくらい知ってる?」

 

「『大海戦』の数年前、当時のアイスランドの首脳と食糧事情をネタに交渉して港湾設備の一部と漁船の護衛任務を買い取った、違う?」

 

 流石総旗艦権限持ち、北洋方面艦隊の独自ネットワークがまだ今ほど強固でなかった時代に抜き取られたかな。

 

「それにしてもよくやるよね、自分たちに銃を突きつけてくる相手に乗り込んで交渉して、そのうえ大成功させちゃうなんて」

 

「若気の至りってやつかな、それに私達は管轄海域の人類船に基本手出ししてなかったから印象も他のところに比べれば多少マシだったからね」

 

 だけど最初に攻撃された霧は私達っていう……まぁ向こうからしたら領海内にイカ漁船みたいな光を放つ無数の幽霊船がたむろってるわけだから、国家として不安要素を排除するのは当たり前なんだけど。

 

「やっぱり初期印象が大「でも」…?」

 

 だけど、これだけは伝えておかなければならない。

 私達と同じ失敗を繰り返させないためにも。不可避に近いものだけど、コトノなら私よりももっとスムーズに、後腐れない形で解決できるはずだから。

 

「27。これが何の数字か分かる?」

 

「え…? うーん……アイスランド以外の国の艦から攻撃された回数とか?」

 

 あぁ、それだったらどれだけ楽なことか。

 

 

 

 

 

「公表から三日の間に私達が借り受けた港湾設備に投げ入れられた殺害予告とか諸々の数。よく分かんないただの投石とかも含めればもっと増える」

 

「………」

 

「ま、その後はちょっとずつ減ってったけどね」

 

 なんというか、原作での翔像さんの根回し力のすごさというか、霧の根深さっていうのをこれでもかと思い知らされた事件だった。あわやクーデーターに繋がりそうなものもあって、なるだけ穏便に済ませるために当時のアイスランド首脳陣にはとても迷惑をかけたことを覚えている。

 

 ただ、一つだけ明確に言える()()が残された。

 

「あれは大成功なんかじゃない。静かに失敗しただけだ」

 

「なんて、格好良く言ってはみたけど、要するに恨み辛みを舐めてると痛い目見るぞって話。こっちから言わせてみれば、蒔絵ちゃんはともかく、親父さんがガッツリ『大海戦』に関わってるのにあの関係を築けてる群像くんが異常なんだよ。北議員みたいな動きのほうが多数派も多数派。激戦区だった日本は尚更ね。少なく見積もっても八割は()()だと思ったほうが良い」

 

 

 もしかしたら現状一番対霧感情が悪いのは日本かもしれない。ヨーロッパは陸上のゴタゴタで忙殺されているし、アメリカもつい最近まで続いていた内戦からの復興に手一杯だ。それでも振動弾頭の量産をかって出られるのはそれはそれで異常という他ないけど。

 

 そこら辺に比べればなまじ内戦レベルの目立った争いがない分、煮込まれ続けた悪感情の根深さは想像もしたくない。

 

「今の時点での宥和は悪手だって言いたいの?」

 

「いやいやまさか、こういうのは早いうちに手を売っておくに越したことはないよ。それにまずは合同演習で統制軍との関係を良くするっていうのは多分限りなく最善の一手なんじゃないかな。特に海軍は楓首相の古巣ってこともあってあの人からの働きかけがしやすいし、このまえのハルナたちの事もあって軍全体が鼻を折られた印象もある。ここで拒否したら今度こそ立つ瀬がなくなるって分かってる人も多い」

 

 ま、問題は『大海戦』に参加していた北さんですら抑えきれないほどの反霧の勢力が軍内部にも存在する地盤があったってことなんだろうけど。

 

「……例えばさ、例えばもう一度、人類の国を味方に着けるとするなら、どうやって手を結ぶのが最善だと思う?」

 

「もう一度? もう一度かぁ……」

 

 知らないよそんなこと!

 

 アイスランドの一件を通してそういうのはもうティルピッツたちに任せるって決めたんだ。

 そもそも私元はただの一般人ぞ?

 

 正直言ってこの乱世を生き残るのが精一杯なんだ。ここにいるのも一種の現実逃避みたいなものだしね。

 

 でも、うーん……適当に答えるのもな〜

 

 

「やっぱり軍部かなぁ……コンタクト取るなら」

 

「ほう、その心は?」

 

「圧倒的な戦力っていうのが今私達が明確に提供できるメリットだからね。なんやかんやして小規模でも良いから発言権を勝ち取ってそっから十数年かけて気の長いなぁなぁで同化を済ませてくことになる……のかなぁ……」

 

「ふーん……」

 

 待って分かってるよ、現実味がないって言いたいんでしょ!?

 それに肝心な部分全部あやふやだし、めっちゃ適当な考えなのは分かってるからその値踏みするみたいな細目止めて!!

 

 ご満足いただけるような意見を出せなくてごめんなさいねぇ!!

 

「成る程ね。ありがとう、参考になったよ。ありがと、()()()()

 

「え……?」

 

 え……? いいの?これで?

 

「行こっか、みんな待たせちゃってるし」

 

 そう言ってコトノはいつの間にか止まっていた足を動かしてスタスタと歩いていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さ、行きますよ局長。定例会議に遅れてしまいます」

 

「む? あぁ、もうそんな時間か。分かった、準備しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、インディ達の撤収準備、ぼちぼち進めておいてくれ」

 

「了解しました」




 ふぅ〜
 受験戦争から生還いたしました。
 無事来月から大学生になれそうです


受験勉強したりアークナイツ始めたり受験勉強したりスカルシュレッダーをリスキルしたり受験勉強したりバ美肉おじさんをラグナロクで焼いたり受験勉強したりサルカズローグやったり受験勉強したり歳ローグやったり共通テストに咽び泣いたり鉱山のくまさんにぶっ飛ばされたりしてました


まぁそれはそれとして、更新が止まってた間も評価押したり感想くれたりした皆さん!!
本当にありがとうございます!!お陰で燃え尽きから抜け出せました!!




え?大半の大学の試験が終わってから三週間ぐらい経ってるだろって?

はは……

ジャン・バールを前倒しして出した結果玉突き事故的に一つ役が余ってしまって……

  • 史実艦で埋め合わせ(多分アラバマになる)
  • 史実IF(例ツェッペリン完成)
  • wowsから持ってくる
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